NPO法人の理事会は、法律で義務づけられた機関ではありません。
株式会社の取締役会のような法定の規定が、NPO法にはないのです。
その代わり、定款で自由に設計できます。
この記事では、理事会の置き方と運営のルールを解説します。
理事会は法定の機関ではない
特定非営利活動促進法には、理事会に関する規定がありません。
法律が定めているのは、社員総会と役員についてだけです。
したがって、理事会を置くかどうかは団体の判断に委ねられています。
ただし実務では、ほとんどの団体が定款で理事会を設置しています。
日常の意思決定を、そのつど総会にかけるのは現実的でないためです。
社員10人以上を毎回集めるのは、大きな負担になります。
理事だけで機動的に決められる場があると、運営がスムーズになります。
法律に規定がないぶん、定款で細かく定める必要があります。
ここを曖昧にすると、後で運用に迷うことになります。
定款で定めること
理事会について、定款で定める事項はいくつかあります。
第1に、理事会を置く旨と、その構成です。
第2に、理事会の権限、つまり何を決められるのかです。
第3に、招集の手続きと、招集権者です。
第4に、開催の頻度です。
第5に、定足数と、議決に必要な賛成の数です。
第6に、議長を誰にするかです。
第7に、議事録の作成と署名についてです。
所轄庁のひな形には、これらの条文が用意されています。
まずはひな形をベースに、自分たちの規模に合わせて調整しましょう。
総会と理事会の役割分担
何を総会で決め、何を理事会に委ねるかが設計の要です。
定款の変更、解散、合併は、必ず総会の決議が必要です。
事業計画と予算、事業報告と決算も、総会の承認とするのが一般的です。
役員の選任と解任も、通常は総会の決議事項です。
一方、日常の業務執行は理事会に委ねます。
規程の制定や改廃、職員の採用、少額の支出などが該当します。
会員の入会承認を、理事会の権限とする団体も多く見られます。
この線引きが曖昧だと、意思決定のたびに迷います。
定款に加えて、決裁の基準を規程で定めておくと運用が安定します。
| 決めること | 一般的な決定機関 |
|---|---|
| 定款の変更・解散・合併 | 社員総会(法律上必須) |
| 事業計画・活動予算 | 社員総会 |
| 事業報告・決算 | 社員総会 |
| 役員の選任・解任 | 社員総会 |
| 規程の制定・改廃 | 理事会 |
| 会員の入会承認 | 理事会 |
| 職員の採用・処遇 | 理事会 |
| 日常の支出(基準額以下) | 理事長または事務局 |
理事会の招集
招集する権限を誰が持つかは、定款で定めます。
理事長が招集すると定めるのが一般的です。
一定数の理事から請求があったときは招集しなければならない、という定めも置きます。
監事が、必要と認めたときに招集できる形にする団体もあります。
招集の通知は、開催日の何日前までに出すかを定めます。
総会より短く、5日前や1週間前とする例が多く見られます。
緊急の場合に短縮できる旨を、あわせて定めておくと便利です。
通知の方法は、書面のほか電子メールでも構いません。
定款に、その旨を書いておきましょう。
定足数と議決
定足数は、理事の過半数の出席とする定めが一般的です。
議決は、出席した理事の過半数で行います。
可否同数のときは、議長が決するという定めもよく置かれます。
理事の人数が少ない団体では、定足数を満たすのが難しくなることがあります。
定数を実態に合わせて見直すことも検討しましょう。
書面による決議を認めるかどうかも、定款で定めます。
認める場合は、その要件を明確に書いておきます。
全理事の同意があれば書面決議ができる、という定め方が一般的です。
遠方の理事がいる団体では、この規定が実務を助けます。
オンラインでの開催
理事会も、オンラインで開催することができます。
双方向で意思疎通ができる環境であれば、出席として扱えます。
定款に、その旨を定めておくと運用が安定します。
議事録には、オンラインで開催した旨と方法を記載します。
会場とオンラインを併用する形も可能です。
理事が全国に散らばっている団体では、開催の頻度を上げられます。
移動の負担がなくなるぶん、参加率が上がることも少なくありません。
資料を事前に共有しておくと、議論の時間を確保できます。
開催の頻度
理事会をどのくらいの頻度で開くかも、定款で定めます。
年2回以上と定める団体が多く見られます。
実務では、決算前と事業計画を立てる時期に開くのが基本です。
活動が活発な団体では、四半期に1回や毎月開く例もあります。
頻度を高く定めすぎると、開催できなかったときに定款違反になります。
最低限の回数を定め、必要に応じて臨時に開く形が現実的です。
定例の開催日をあらかじめ決めておくと、理事も予定を空けやすくなります。
年間のスケジュールを、年度初めに共有しておきましょう。
理事会を機能させるコツ
理事会が形だけになっている団体は、少なくありません。
報告を聞くだけの場になると、理事の参加意欲も下がります。
第一に、決める議案を必ず用意することです。
第二に、資料を事前に配ることです。
その場で読ませると、議論の時間がなくなります。
第三に、決まったことを議事録で共有することです。
欠席した理事にも、必ず届ける仕組みを作りましょう。
第四に、時間を決めて終わらせることです。
長引く会議は、次回の出席率を下げます。
第五に、現場の報告を1件は入れることです。活動の実感が判断を支えます。
理事会を置かない選択
理事会を置かないという選択も、法律上は可能です。
理事が3人しかいない小さな団体では、そのほうが身軽なこともあります。
その場合、業務執行の決定は理事長や理事の協議で行います。
ただし、決定の記録は必ず残しましょう。
記録がないと、後で判断の経緯を説明できません。
また、重要な事項をそのつど総会にかける負担も生じます。
会員が増えて総会の開催が重くなったら、理事会の設置を検討してください。
定款変更が必要になるので、成長を見込むなら最初から置くほうが楽です。
理事会と事務局の関係
理事会が決め、事務局が実行するというのが基本の形です。
この役割分担が曖昧だと、どちらも動けなくなります。
事務局長を置く場合は、その権限を規程で定めましょう。
いくらまでの支出を事務局で決めてよいかを、金額で示すと明確です。
事務局からの報告を、理事会の定例議題にしておくと情報が回ります。
現場の状況が理事に伝わらないと、判断が的外れになります。
逆に、理事会で決まったことが現場に届かないのも問題です。
議事録を事務局にも共有する仕組みを作りましょう。
小さな団体では、理事が事務局を兼ねることもよくあります。
その場合も、決定と実行を意識して分けて記録しておくと後で困りません。
理事会の設計でよくある失敗
第一に、理事会の権限を定款に書いていないケースです。
何を決められるのかが不明確で、運用のたびに迷います。
第二に、定足数を高く設定しすぎているケースです。
理事が集まらず、決議ができなくなります。
第三に、開催頻度を多く定めすぎているケースです。
定款どおりに開けないと、それ自体が問題になります。
第四に、議事録を作っていないケースです。
判断の経緯が残らず、役員の責任が問われたときに説明できません。
第五に、総会の決議事項を理事会で決めてしまうケースです。
決議が無効になる恐れがあるため、線引きを確認しておきましょう。
理事会と監事の関係
監事は、理事会の構成員ではありません。
ただし、理事の業務執行を監査する立場にあります。
そのため、理事会に出席してもらう運用が一般的です。
定款に、監事は理事会に出席して意見を述べることができる旨を定めます。
議決に加わることはできませんが、その場で指摘できる意味は大きくなります。
不適切な支出や手続きの漏れを、早い段階で止められます。
議事録には、監事が出席した旨を記載します。
監査の時期に、初めて問題が見つかるのでは遅すぎます。
日常的に見てもらう仕組みにしておきましょう。
理事会規程を作るという方法
定款に書ききれない細かい運用は、理事会規程にまとめられます。
招集の方法、資料の配付時期、議事録の様式などです。
規程なら、理事会の決議で見直せるようにしておけます。
定款に書き込むと、変更のたびに総会の決議が必要になります。
運用が固まってきた段階で、規程として整理するとよいでしょう。
担当者が変わっても、同じ手順で回せるようになります。
新しく就任した理事にも、規程を渡せば説明が早く済みます。
書式のテンプレートも、あわせて用意しておくと便利です。
毎回ゼロから作る必要がなくなり、事務の負担が軽くなります。
理事の人数と理事会の運営
理事の人数は、理事会の運営のしやすさに直結します。
法律上の最低は3人ですが、3人だと1人欠けただけで定足数を割ります。
5人から7人程度にしている団体が、比較的多く見られます。
人数が多いほど多様な意見が集まりますが、日程調整は難しくなります。
15人を超えると、実質的な議論がしにくくなる傾向があります。
定款では、何人以上何人以内という幅のある定め方にしておきましょう。
欠員が出ても、すぐに補充義務が生じにくくなります。
役員の親族制限との関係でも、人数の設計は影響します。
設立の段階で、5年先の体制まで想像して決めてください。
新任の理事に伝えておくこと
理事に就任してもらうときは、役割を具体的に説明しましょう。
理事会に出席して意思決定に加わることが、基本の仕事です。
年に何回開かれるのか、1回あたりどれくらいの時間かを伝えます。
報酬の有無も、最初にはっきりさせておきます。
氏名と住所が公開されることも、必ず説明してください。
任期は2年以内で、再任のたびに登記が必要な点も伝えます。
善良な管理者としての注意義務を負うことも、あわせて説明します。
過度に脅かす必要はありませんが、隠すのはよくありません。
定款と直近の事業報告書を渡しておくと、団体の姿がつかめます。
納得したうえで就任してもらうことが、長く続く関係につながります。
理事会のまとめ
NPO法人の理事会は、法律上の必須機関ではありません。
定款で任意に設置し、権限や運営方法もすべて定款で定めます。
総会で決めることと理事会で決めることの線引きが、設計の要です。
招集権者、定足数、議決の方法を明確にしておきましょう。
オンライン開催や書面決議も、定款に定めれば可能です。
議事録は必ず作成し、欠席した理事にも共有します。
決める議案を用意し、事前に資料を配ることが、機能させる近道です。
よくある質問
A. 法律上の義務ではありません。特定非営利活動促進法に理事会の規定はなく、定款で任意に設置します。ただし実務ではほとんどの団体が設置しています。
A. 定款で定めます。一般には規程の制定、会員の入会承認、職員の採用、日常の支出などです。定款変更や解散、決算の承認は総会の決議が必要です。
A. 理事の過半数の出席とする定めが一般的です。議決は出席理事の過半数で行い、可否同数なら議長が決するという定めもよく置かれます。
A. 定款に定めれば可能です。全理事の同意があれば書面決議ができる、という定め方が一般的です。遠方の理事がいる団体では実務を助けます。
A. 定款で定めます。年2回以上とする団体が多く見られます。頻度を高く定めすぎると、開催できなかったときに定款違反になるため注意してください。
A. 所轄庁への定期的な提出書類ではありません。ただし代表理事の選定などで登記に使う場合があり、内部の記録としても重要です。
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