NPO法人の議事録は、所轄庁への届出や登記でそのまま使う書類です。
体裁が整っていないと、手続きが止まってしまいます。
書く項目は決まっているので、型さえ覚えれば難しくありません。
この記事では、総会と理事会それぞれの議事録の書き方を解説します。
議事録は何のために作るのか
議事録は、会議で何を決めたのかを記録する書類です。
団体の内部記録という意味もありますが、それだけではありません。
所轄庁への届出や、法務局への登記で添付書類として使います。
設立の認証申請でも、設立総会の議事録の写しを提出します。
定款を変更したときも、総会議事録の写しが必要です。
役員が変わったときも、選任を証する書面として使われます。
つまり、対外的な証明書としての性格を持っています。
その前提で、正確に、後から読んでも分かる形で作りましょう。
手書きでもワープロでも構いませんが、保存しやすい形式が便利です。
議事録に必ず書く項目
議事録には、書くべき項目が決まっています。
第1に、開催した日時です。開始と終了の時刻を書きます。
第2に、開催した場所です。
第3に、社員の総数と、出席した社員の数です。
書面表決や委任状による出席者は、内訳を分けて書きます。
第4に、議事の経過の概要と、その結果です。
第5に、議長の氏名です。
第6に、議事録署名人の氏名と、署名または記名押印です。
定款で議事録署名人の人数を定めている場合は、それに従います。
通常は、議長と出席社員のうち2名という定め方が多く見られます。
- 開催の日時(開始時刻と終了時刻)
- 開催の場所(オンラインならその旨と方法)
- 社員(理事)の総数
- 出席者数(本人出席・書面表決・委任状の内訳)
- 議長の選任と氏名
- 議事の経過の概要
- 議案ごとの決議の結果(賛成数・反対数)
- 議事録署名人の氏名と署名または記名押印
出席者数の書き方
出席者数の記載は、議事録でいちばん間違いやすい部分です。
本人が出席した人数だけを書くと、定足数を満たしていないように見えます。
書面表決をした社員も、出席したものとして扱われます。
委任状を提出した社員も、同じく出席として扱われます。
したがって、内訳を分けて書くのが正確です。
例として、社員総数30名、出席18名(本人10名、書面5名、委任3名)と書きます。
この書き方であれば、定足数を満たしていることが一目で分かります。
所轄庁も、この内訳を見て要件の充足を確認します。
毎回同じ書式を使えば、書き漏らしを防げます。
議事の経過の書き方
議事の経過は、詳細な発言録である必要はありません。
概要で足ります。
議案ごとに、提案の内容、質疑の要旨、採決の結果を書きます。
質疑がなかった場合は、その旨を書けば構いません。
採決の結果は、賛成何名、反対何名と数字で書きます。
全員賛成であれば、全会一致で可決したと書きます。
重要な議案では、反対意見の要旨も残しておくと後で役立ちます。
判断の経緯を説明できる材料になるためです。
一方で、個人を特定できる発言は書き方に配慮しましょう。
総会議事録の記載例
実際の構成を、順番に示します。
冒頭に、法人名と会議の名称を書きます。
次に、開催の日時と場所を書きます。
続けて、社員総数と出席者数の内訳を書きます。
そのうえで、議長の選任について記載します。
定款で理事長が議長になると定めている場合は、その旨を書きます。
議案ごとに、内容と決議の結果を並べます。
最後に、閉会の時刻を書きます。
末尾に、議長と議事録署名人が署名または記名押印します。
日付は、開催日を記載するのが一般的です。
理事会議事録の書き方
理事会の議事録も、基本の構成は総会と同じです。
違うのは、社員ではなく理事の総数と出席者数を書く点です。
監事が出席した場合は、その旨も記載します。
理事会は書面表決を認めない定めにしている団体もあります。
定款の規定に沿って、出席の扱いを書きましょう。
議事録に署名する人も、定款の定めに従います。
出席した理事全員が署名する形にしている団体もあります。
理事会議事録は、所轄庁への提出書類ではありません。
ただし、内部の意思決定の記録として重要です。
役員の責任が問われたとき、判断の経緯を示す資料になります。
| 項目 | 総会議事録 | 理事会議事録 |
|---|---|---|
| 人数の記載 | 社員の総数と出席者数 | 理事の総数と出席者数 |
| 書面表決・委任状 | 認められる(内訳を記載) | 定款の定めによる |
| 署名する人 | 議長と議事録署名人 | 定款の定め(出席理事全員が多い) |
| 所轄庁への提出 | 定款変更・役員変更などで必要 | 原則として不要 |
| 登記での使用 | 役員変更などで使う | 代表理事の選定などで使う場合がある |
| 保管 | 事務所に保管 | 事務所に保管 |
オンライン開催のときの書き方
オンラインで開催した場合も、議事録の作り方は変わりません。
場所の欄に、オンラインで開催した旨を記載します。
使用したシステムの名称を書いておくと、より明確になります。
事務局を置いた場所を、開催場所として書く形もよく使われます。
出席者が音声と映像で参加し、双方向のやり取りができた旨を書き添えます。
この記載があると、出席として扱った根拠が示せます。
会場とオンラインを併用した場合は、その内訳も書きます。
通信の不具合があった場合は、その対応も記録しておきましょう。
定款にオンライン開催の定めを置いておくと、運用が安定します。
押印は必要か
議事録への押印について、法律は署名または記名押印としています。
つまり、自筆で署名するなら押印は不要です。
名前を印字する形であれば、押印が必要になります。
実務では、記名押印の形を採る団体が多く見られます。
登記の添付書類として使う場合は、印鑑の要件を法務局に確認しましょう。
就任承諾書などと組み合わせて、印鑑証明書が必要になることもあります。
所轄庁へ提出する写しについては、原本と同一である旨を記載します。
代表者が、原本に相違ない旨を書いて記名押印する形が一般的です。
議事録の保管
議事録は、法人の事務所に保管します。
総会議事録は、後の手続きで繰り返し使います。
年度ごとにファイルにまとめておくと、探す手間が省けます。
原本を保管し、提出には写しを使うのが基本です。
電子データでも保存しておくと、紛失に備えられます。
担当者が変わるときの引き継ぎ物としても、明確にしておきましょう。
過去の議事録は、意外な場面で必要になります。
定款の解釈が問題になったとき、当時の議論が手がかりになります。
捨てずに、長く残しておくことをおすすめします。
議事録でよくある失敗
第一に、出席者数を本人出席だけで書いてしまうケースです。
定足数を満たしていないように見え、手続きで止まります。
第二に、通知していない議案を決議してしまうケースです。
議事録に残ると、決議の効力が問題になります。
第三に、議事録署名人が定款の定めと合っていないケースです。
第四に、日付が事業計画や他の書類と矛盾しているケースです。
第五に、そもそも議事録を作っていないケースです。
数年後に定款変更をしようとして、過去の記録がなく困ることがあります。
第六に、決議の内容が曖昧で、何が決まったのか読み取れないケースです。
議事録を作る手順
議事録は、会議の直後に作るのがいちばん効率的です。
記憶が新しいうちに、骨組みだけでも書き起こしましょう。
当日は、担当者を決めてメモを取ってもらいます。
出席者数は、開会の時点で確定させて読み上げます。
議案ごとの採決結果も、その場で記録します。
会議後、雛形に沿って清書します。
議長と議事録署名人に確認してもらい、署名を集めます。
署名がそろったら、ファイルに綴じて保管します。
所轄庁へ提出する必要があるなら、写しを作って手続きに進みます。
議事録署名人の決め方
議事録署名人を誰にするかは、定款で定めます。
議長と、出席した社員のうち2名という定めが最も一般的です。
総会の冒頭で、議事録署名人を選任する流れにします。
選任したこと自体も、議事録に記載します。
毎回同じ人にする必要はありません。
むしろ、持ち回りにすると会員の関与が深まります。
署名人が欠席してしまうと、後から署名をもらう手間が生じます。
当日出席している人から選ぶのが確実です。
定款の定めと実際の運用がずれていないか、一度確認しておきましょう。
提出用の写しの作り方
所轄庁や法務局へ出すのは、原本ではなく写しです。
原本をコピーし、末尾に原本に相違ない旨を記載します。
そのうえで、代表者が記名押印します。
この一文がないと、受理されないことがあります。
複数ページになる場合は、契印を求められることもあります。
提出先によって扱いが違うので、事前に確認しましょう。
写しを作ったら、控えを1部手元に残しておきます。
どの手続きにどの議事録を使ったかを記録しておくと、後で追えます。
同じ議事録を複数の手続きで使うことも珍しくありません。
総会と理事会で議事録を使い分ける
同じ日に総会と理事会を続けて開く団体もあります。
その場合も、議事録は必ず別々に作ります。
出席者の数え方も、決議の要件も違うためです。
総会の議事録に理事会の決議を混ぜてしまうと、後で使えません。
会議の名称を、表題に明記しておきましょう。
第◯回通常総会議事録、第◯回理事会議事録という書き方が分かりやすくなります。
通し番号を振っておくと、過去の記録を探しやすくなります。
ファイルも、総会と理事会で分けて綴じます。
所轄庁へ提出するのは総会の議事録が中心なので、分けておくと取り出しが早くなります。
議事録のまとめ
議事録には、日時、場所、総数と出席者数、議事の経過と結果を書きます。
議長と議事録署名人が、署名または記名押印します。
出席者数は、本人出席、書面表決、委任状の内訳を分けて書きます。
議事の経過は概要で足り、詳細な発言録は不要です。
オンライン開催なら、その旨と方法を記載します。
所轄庁への届出や登記で使うため、正確さが求められます。
会議の直後に作り、署名を集めて保管する流れを定着させましょう。
よくある質問
A. 開催の日時と場所、社員(理事)の総数と出席者数、議事の経過の概要と結果、議長と議事録署名人の署名または記名押印です。
A. 本人出席のほか、書面表決や委任状による表決も出席として扱います。内訳を分けて記載すると、定足数を満たしていることが一目で分かります。
A. ありません。議事の経過の概要で足ります。議案ごとに提案内容、質疑の要旨、採決の結果を書けば十分です。
A. 署名または記名押印です。自筆で署名するなら押印は不要ですが、実務では記名押印の形が多く見られます。登記で使う場合は法務局に確認してください。
A. 場所の欄にオンラインで開催した旨と使用したシステムを記載し、双方向のやり取りができた旨を書き添えます。事務局を置いた場所を開催場所とする形も一般的です。
A. 定款変更や役員変更の手続きができなくなります。決議を証明する書面がないためです。過去の判断の経緯も残らないため、必ず作成してください。
📖 参考にした公的機関の情報


