NPO法人には、さまざまな相談が寄せられます。
困っている人の話を、聞く場面が生まれます。
ただし、応じられる範囲には限りがあります。
この記事では、相談への向き合い方を解説します。
相談は自然に持ち込まれる
活動を続けていると、相談が来ます。
利用者から、直接持ちかけられる場合です。
地域の方から、電話が来ることもあります。
団体の分野と、関係ない相談もあります。
困っている人は、話せる相手を探しています。
断ることに、罪悪感を持つ必要はありません。
ただし、対応の方針は決めておきましょう。
決めていないと、担当者が一人で抱え込みます。
それが、いちばん危険な状態です。
できることの中心は聞くこと
できることの中心は、話を聞くことです。
解決しなくても、聞くだけで意味があります。
整理がついて、自分で動ける場合も多くあります。
第一に、途中で遮らないでください。
第二に、評価や説教をしません。
第三に、こちらの経験を語りすぎません。
第四に、事実と気持ちを分けて聞きます。
第五に、何に困っているかを一緒に整理します。
答えを出すことが、目的ではありません。
整理を手伝うことが、いちばんの支援になります。
| 内容 | できること | つなぐ先 |
|---|---|---|
| 気持ちの整理 | 話を聞く | — |
| 制度の情報 | 一般的な情報を伝える | 行政の担当課 |
| 法律の判断 | 一般的な説明まで | 弁護士など |
| 登記の手続き | — | 司法書士 |
| 税務の判断 | — | 税理士・税務署 |
| 労務の手続き | — | 社会保険労務士 |
| 緊急を要する事案 | 安全の確保 | 警察・行政・相談窓口 |
踏み越えてはいけない線
できないことも、はっきりさせておきます。
第一に、個別の事案について法律の判断をすることです。
一般的な制度の説明までは、できます。
この件はこうなる、と断定してはいけません。
第二に、専門的な手続きの代行です。
登記は司法書士、税務は税理士の業務範囲です。
社会保険や労働保険は、社会保険労務士です。
第三に、医療的な判断です。
第四に、他人の権利に関わる交渉です。
よかれと思ってやったことが、問題になります。
つなぎ先の一覧を作る
自分たちで解決しなくてよい、と考えましょう。
適切なところへ、つなげば十分です。
そのために、一覧を作っておきます。
第一に、行政の担当課と電話番号です。
第二に、専門の相談窓口です。
無料の相談窓口が、各地にあります。
第三に、他団体の連絡先です。
第四に、緊急のときの連絡先です。
第五に、専門家の相談会の情報です。
一覧があれば、その場で案内できます。
- 受ける窓口と、担当する人
- 対応できる時間帯
- 1回の対応の時間の目安
- 記録の様式
- つなぎ先の一覧
- 緊急のときの手順
- 複数で対応する基準
- 受けられない相談の範囲
- 守秘の約束の取り方
- 窓口として案内するかどうか
つなぐときの伝え方
つなぐときは、丁寧に伝えます。
断られたと、感じさせないためです。
第一に、なぜそこが適切かを説明します。
第二に、連絡先を書いて渡します。
口頭だけだと、覚えていられません。
第三に、必要なら電話をその場でかけます。
第四に、こちらでできることは続けると伝えます。
第五に、その後どうなったかを気にかけます。
見捨てられたと感じさせない配慮が、大切です。
つなぐことも、立派な支援です。
記録を残す
相談を受けたら、記録します。
第一に、日時と方法です。
第二に、相手の情報です。
名乗らない場合も、その旨を書きます。
第三に、相談の内容です。
第四に、こちらの対応です。
第五に、つないだ先です。
記録は、担当を守る材料になります。
対応が問題にされたときの、根拠にもなります。
個人情報を含むため、保管には注意が要ります。
一人で抱えさせない
相談を受ける人は、負担が重くなります。
重い話を、聞き続けることになるためです。
第一に、一人に集中させない体制を作ります。
第二に、話せる場を用意します。
内容を共有し、対応を一緒に考えます。
守秘に配慮しつつ、内部では共有します。
第三に、対応の限界を決めておきます。
第四に、休める仕組みを作ります。
第五に、外部の相談先を持ちます。
支える人が倒れては、続きません。
緊急の場合
緊急を要する相談も、あり得ます。
生命や身体に、危険がある場合です。
第一に、安全の確保が最優先です。
第二に、迷わず警察や消防に連絡します。
団体で抱え込まないでください。
第三に、行政の相談窓口につなぎます。
第四に、記録を残します。
第五に、責任者へ速やかに報告します。
この手順を、あらかじめ紙に書いておきましょう。
判断に迷う時間を、減らすためです。
専門家との関係を作る
つなぎ先は、名前だけでは動きません。
平時から、関係を作っておきましょう。
第一に、地域の専門家の相談会に参加します。
第二に、中間支援組織に紹介を頼みます。
第三に、行政の担当課に顔を出します。
第四に、他団体から情報を得ます。
第五に、一度つないだ先とは、関係を続けます。
誰に頼めばよいか分かる状態が、力になります。
困ってから探すのでは、間に合いません。
団体として答えられること
専門的な判断はできませんが、できることもあります。
第一に、自分たちの分野の一般的な情報です。
第二に、これまでの活動で得た経験です。
第三に、同じ立場の人の集まりを紹介することです。
第四に、行政の制度の存在を伝えることです。
手続きの詳細は、窓口で確認してもらいます。
第五に、一緒に窓口へ行くことです。
同行するだけで、相手の負担は大きく減ります。
専門家にはできない役割が、ここにあります。
自分たちの強みを、見誤らないでください。
広報での書き方
相談を受け付ける旨を、広報に書く場合があります。
ここでも、範囲を明示しましょう。
何でも相談を受けます、とは書かないでください。
期待と、実際のずれが生じます。
対応できる内容を、具体的に書きます。
対応の時間帯も、示します。
専門的な判断はできない旨も、添えます。
無料か有料かも、はっきりさせます。
書いてあるとおりに運用することが、信用になります。
広げすぎた案内は、あとで苦しくなります。
研修を受ける
相談に応じる人は、学ぶ機会を持ちましょう。
傾聴の研修が、各地で開かれています。
中間支援組織や、社会福祉協議会が開く場合があります。
第一に、聞き方の基本を学べます。
第二に、自分の限界を知る機会になります。
第三に、他団体の人と知り合えます。
第四に、つなぎ先の情報も得られます。
複数人で受けると、共通の言葉ができます。
対応の質が、そろいます。
年間の予定に、入れておきましょう。
繰り返し来る相談
同じ人から、繰り返し相談が来ることがあります。
毎日のように、電話が来る場合もあります。
対応の限界を、決めておきましょう。
第一に、1回の時間の目安を決めます。
第二に、頻度の目安も決めます。
第三に、同じ内容には同じ回答を返します。
第四に、担当を交代で務めます。
第五に、専門の相談機関へつなぎます。
継続的な支援が必要な場合、団体では担いきれません。
冷たいのではなく、適切な支援につなぐ判断です。
守秘を約束する
相談で知ったことは、外に出しません。
この約束が、信頼の土台になります。
第一に、関わる人に守秘の約束をしてもらいます。
ボランティアも、対象です。
第二に、内部での共有の範囲を決めます。
対応のために必要な範囲に、限ります。
第三に、記録の保管を厳重にします。
第四に、事例として話す場合は特定できない形にします。
研修や報告で使う場面が、あるためです。
第五に、本人の同意を得る場面も決めておきます。
相談から事業が生まれる
寄せられる相談は、団体にとって情報でもあります。
同じ困りごとが、繰り返し来ることがあります。
それは、地域の課題が見えている状態です。
記録を、集計してみましょう。
どんな相談が、何件来たかです。
傾向が見えれば、新しい事業の根拠になります。
助成金の申請でも、強い材料になります。
行政への提案にも、使えます。
現場を持つ団体だけが、持てる情報です。
記録を、生かしてください。
相談窓口を名乗るかどうか
相談窓口として、看板を掲げるかは判断が要ります。
掲げれば、相談は増えます。
一方、体制がないと回りません。
第一に、担える人が複数いるかを確かめます。
第二に、対応の時間を確保できるかを見ます。
第三に、つなぎ先が整っているかを確認します。
第四に、記録と共有の仕組みがあるかを見ます。
これらがない段階では、掲げないほうが無難です。
活動の中で自然に受ける形から、始めましょう。
体制ができてから、正式に案内すれば足ります。
相談を受けるときのまとめ
相談への対応は、聞くこととつなぐことが基本です。
解決しなくても、整理を手伝うだけで意味があります。
個別の事案についての法律の判断は、してはいけません。
登記は司法書士、税務は税理士、労務は社会保険労務士の業務範囲です。
つなぎ先の一覧を、あらかじめ作っておきましょう。
つなぐときは、見捨てられたと感じさせない配慮が要ります。
記録を残し、担当が一人で抱えない体制を作ってください。
広報では、対応できる範囲を具体的に書きましょう。
相談に応じる人は、傾聴の研修を受ける機会を持ってください。
繰り返し来る相談には、時間と頻度の目安を決めておきます。
守秘の約束を、ボランティアも含めて交わしましょう。
寄せられた相談の記録を集計すると、新しい事業の根拠になります。
相談窓口として看板を掲げるのは、体制ができてからにしましょう。
よくある質問
A. 話を聞くことと、適切なところへつなぐことが基本です。個別の事案について法律の判断をしたり、専門的な手続きを代行したりはできません。医療的な判断や、他人の権利に関わる交渉も避けてください。
A. 一般的な制度の説明までは差し支えありません。ただし、この件はこうなる、と断定するのは避けてください。詳細は窓口で確認してもらいましょう。
A. 行政の担当課、専門の相談窓口、他団体、緊急時の連絡先を一覧にしておきます。平時から関係を作っておくと、実際に動いてもらえます。
A. なぜそこが適切かを説明し、連絡先を書いて渡します。必要ならその場で電話をかけ、こちらでできることは続けると伝えてください。
A. 一人に集中させない体制を作ってください。内容を内部で共有し、対応の限界を決め、休める仕組みと外部の相談先を持つことが必要です。
A. 何でも相談を受けます、とは書かないでください。対応できる内容と時間帯を具体的に書き、専門的な判断はできない旨も添えます。
本記事は、制度を一般的に説明したものです。個別の事案についての判断や手続きの代行を行うものではありません。
- 設立登記など登記申請の手続きは司法書士が取り扱う業務です。ご自身で法務局へ申請することもできます。
- 税務の取扱いは、収入の性質や事業の実態によって結論が変わります。具体的な判定や税額の計算については、税理士または所轄の税務署へご確認ください。
- 社会保険・労働保険の加入手続きは、社会保険労務士が取り扱う業務です。
📖 参考にした公的機関の情報


