NPO法人の書面表決と委任状|違いと議事録への書き方

一般社団法人法
総会に人が集まらない。書面表決と委任状の使い分けを解説します。

NPO法人の総会では、書面表決と委任状が使えます。

ただし、定款に定めがあることが前提です。

二つは似ていますが、性質がまったく違います。

この記事では、その違いと実務の注意点を解説します。

POINT 結論:書面表決は本人が賛否を決める方法、委任状は判断を他人に預ける方法です。どちらも出席として扱われますが、議案が修正されたときの扱いが変わります。定款に定めがなければ使えないため、まず自分たちの定款を確認してください。

総会に人が集まらない現実

総会の定足数を満たせない団体は、少なくありません。

社員が10人以上いても、全員が集まるとは限りません。

遠方に住んでいる人もいます。

仕事や家庭の都合で、出席が難しい人もいます。

定足数を欠けば、決議ができません。

決算の承認ができなければ、所轄庁への提出も滞ります。

そこで用意されているのが、書面表決と委任状です。

どちらも、出席として扱われます。

正しく使えば、総会は成立します。

書面表決とは

書面表決は、議案ごとに賛否を書いて出す方法です。

本人が、内容を見て判断します。

当日は出席しませんが、意思は本人のものです。

議決権を、自分で行使したことになります。

用紙には、議案ごとに賛成と反対の欄を設けます。

棄権の欄を設ける団体も、あります。

氏名と日付を書いてもらいます。

締切を決めて、事前に回収します。

当日に持参してもらう形でも、かまいません。

委任状とは

委任状は、判断を他人に預ける方法です。

誰に委任するかを、明記します。

議長に一任する形が、多く使われます。

特定の社員を指定することも、できます。

委任を受けた人が、当日に議決権を行使します。

つまり、賛否は受任者が決めます。

本人の意思とは、違う結果になり得ます。

それでも構わないという前提で、預けるものです。

この点が、書面表決との決定的な違いです。

方法 賛否を決めるのは 議案が修正されたら
本人出席 本人 その場で判断できる
書面表決 本人(事前) 元の議案への意思なので扱いに注意
委任状 受任者(当日) 受任者が判断できる
欠席 定足数に数えない

議案が修正されたときの違い

実務でいちばん問題になるのが、修正動議です。

当日の議論で、議案の内容が変わることがあります。

この場合、委任状なら受任者が判断できます。

委任は、その場の判断を預けるものだからです。

一方、書面表決は元の議案への賛否です。

修正された議案への意思は、示されていません。

そのまま数えてよいかは、慎重な判断が要ります。

争いを避けるなら、修正動議を出さない運営が無難です。

事前に議案を固め、通知に正確に書きましょう。

招集の通知に入れるもの

  • 日時と場所
  • 議題(議案の要領)
  • 議案の資料
  • 書面表決書の用紙
  • 委任状の用紙
  • 提出の締切と提出先
  • 定足数と議決の要件の説明
  • 問い合わせ先
  • 記入例(書き方が分からず出さない人が多い)
  • 返信用の封筒
  • 議案が修正される可能性の有無

定款に定めがあるか

書面表決も委任状も、定款の定めが前提です。

定めがなければ、使えません。

多くの定款には、この定めが入っています。

設立のときのひな形に、含まれているためです。

ただし、確認せずに使うのは危険です。

定めがないまま使えば、決議が無効になり得ます。

定めがなければ、定款変更で追加できます。

定款変更には、総会の議決が必要です。

その総会が成立しないという、困った状態にもなり得ます。

早めに確認しておきましょう。

電磁的方法という選択肢

書面に代えて、電磁的方法も使えます。

電子メールや、専用の入力画面を使う方法です。

これも、定款の定めが前提になります。

紙のやり取りより、回収が速くなります。

遠方の社員が多い団体では、効果が大きいものです。

本人からの送信であることを、確認できる形にします。

記録を、保存しておく必要もあります。

印刷して保管する団体も、あります。

定款に電磁的方法の定めがなければ、追加を検討しましょう。

定足数の数え方

定足数は、定款で定めます。

社員総数の2分の1以上の出席とする例が、多く見られます。

書面表決と委任状は、出席に数えます。

そのため、実際の会場が少人数でも成立します。

ただし、数え方を間違えないことが大切です。

社員総数は、当日時点の正確な数です。

退会した人を含めたままだと、計算が狂います。

名簿を、直前に確認しておきましょう。

議事録には、それぞれの数を分けて書きます。

議事録への書き方

議事録には、出席の内訳を書きます。

社員総数、本人出席、書面表決、委任状の数です。

合計が、出席者数になります。

定足数を満たしていることを、明記します。

議案ごとの賛否の数も、書きます。

書面表決の賛否も、その中に含めます。

全員異議なく可決という書き方は、便利です。

ただし、反対があった場合は正確に書きます。

所轄庁への提出や、登記の添付書類になります。

数が合わないと、補正の原因になります。

委任状の書式

委任状には、必要な項目があります。

第一に、総会の日時です。

第二に、委任する相手の氏名です。

議長に一任する場合は、その旨を書きます。

第三に、委任の範囲です。

議決権の行使を委任する、と書きます。

第四に、委任者の氏名と日付です。

押印を求めるかどうかは、団体の判断です。

白紙の委任状を集める運用は、避けましょう。

誰に委任するかを、本人に選んでもらいます。

回収率を上げる工夫

書面や委任状も、返ってこなければ意味がありません。

第一に、締切を明確にします。

第二に、返信の方法を複数用意します。

郵送、持参、電子メールなどです。

第三に、締切の前に一度、案内を出します。

第四に、記入例を添えます。

書き方が分からず出さない人が、意外に多いものです。

第五に、議案の資料を分かりやすくします。

内容が分からなければ、判断できません。

第六に、返信用の封筒を同封します。

全員が書面という状態

実際の出席がゼロという総会も、起こり得ます。

形式上は、定足数を満たせば成立します。

しかし、望ましい状態ではありません。

議論の機会が、まったくないためです。

質問も、意見の交換もできません。

団体としての意思決定が、形骸化します。

出席しやすい日程や場所を、工夫しましょう。

会場に集まる形にこだわらない方法も、あります。

大切なのは、社員が意思を示す機会の確保です。

書面の数だけを追うと、団体としての力は育ちません。

招集の通知が土台になる

書面表決も委任状も、招集の通知が土台です。

議案の内容が分からなければ、判断できません。

通知には、議題を具体的に書きます。

第何号議案として、内容を明示します。

決算の承認なら、決算書を添えます。

役員の選任なら、候補者を示します。

定款変更なら、新旧の対照表を添えます。

通知の期間は、定款で定めます。

5日前までとする定款が、多く見られます。

書面を回収する時間も考えて、早めに出しましょう。

理事会での扱いは違う

理事会には、書面表決や委任状を使えないのが原則です。

理事は、議論に参加することが職務だからです。

判断を他人に預けることは、想定されていません。

善良な管理者としての注意義務にも、関わります。

出席できないなら、欠席として扱います。

定款で、書面による意思表示を認める例もあります。

ただし、総会と同じようには扱えません。

理事会の運用は、定款をよく確認してください。

欠席が続く理事がいるなら、体制の問題です。

日程の決め方から、見直しましょう。

議決権は一人一個

NPO法人の議決権は、社員一人につき一個です。

出資額や会費の額によって、差を付けられません。

この点が、株式会社と大きく違います。

長く関わっている人も、入ったばかりの人も同じです。

定款で、これを変えることはできません。

書面表決や委任状も、この一人一個が前提です。

一人が複数の委任を受けることは、できます。

受任者が持つ議決権は、自分の分と委任された分の合計です。

議事録では、その合計で数えます。

委任が一人に集中しすぎる状態は、避けたいところです。

総会をやり直すことになる場面

手続きに不備があると、決議が争われます。

第一が、招集の通知が届いていない場合です。

名簿が古いと、この事態が起こります。

第二が、通知に議題を書いていない場合です。

第三が、定款に定めのない方法で表決を取った場合です。

第四が、定足数を満たしていない場合です。

第五が、議決の要件を満たしていない場合です。

定款変更は、通常の議決より多い賛成が要ります。

やり直しには、また社員を集める必要があります。

手続きは、面倒でも正確に踏んでください。

総会をやりやすくする工夫

書面に頼りきらない運営も、考えたいところです。

第一に、日程を早めに知らせます。

半年前に決めておけば、予定を空けてもらえます。

第二に、開催の時間帯を工夫します。

平日の昼は、働いている人が出られません。

第三に、総会のあとに交流の場を設けます。

出る理由が、一つ増えます。

第四に、活動の報告を丁寧にします。

自分の会費が何に使われたかが分かると、関心が続きます。

第五に、遠方の人が参加できる方法を用意します。

出席しやすくすること自体が、団体を強くします。

書面表決と委任状のまとめ

書面表決は本人が賛否を決め、委任状は判断を預ける方法です。

どちらも、出席として扱われます。

ただし、定款に定めがなければ使えません。

議案が修正されたときの扱いが、二つで変わります。

争いを避けるなら、事前に議案を固めておきましょう。

議事録には、出席の内訳を分けて書きます。

白紙の委任状を集める運用は、避けてください。

全員が書面という状態は、議論の機会を失わせます。

議決権は社員一人につき一個で、定款でも変えられません。

一人が複数の委任を受けられますが、集中しすぎる状態は避けましょう。

招集の通知に議題を具体的に書くことが、すべての土台になります。

理事会には、書面表決や委任状を使えないのが原則です。

日程を早めに知らせ、出席しやすくすること自体が団体を強くします。

よくある質問

Q. 書面表決と委任状はどう違う?

A. 書面表決は本人が議案ごとに賛否を決める方法、委任状は判断を他人に預ける方法です。委任状では、賛否を決めるのは受任者になるため、本人の意思と違う結果になり得ます。

Q. どちらも出席に数える?

A. 数えます。そのため、実際の会場が少人数でも総会は成立します。ただし議事録には、社員総数・本人出席・書面表決・委任状の数を分けて書いてください。数が合わないと補正の原因になります。

Q. 定款に定めがなくても使える?

A. 使えません。定めがないまま使うと、決議が無効になり得ます。定款変更で追加できますが、その総会自体が成立しないという困った状態にもなり得ます。早めに確認しておきましょう。

Q. 当日に議案が修正されたら?

A. 委任状なら受任者が判断できます。書面表決は元の議案への賛否なので、修正後の議案への意思は示されておらず、扱いに注意が必要です。争いを避けるなら、事前に議案を固めてください。

Q. 電子メールでもいい?

A. 定款に電磁的方法の定めがあれば使えます。本人からの送信であることを確認でき、記録を保存できる形にしてください。遠方の社員が多い団体では、回収が速くなる効果が大きいものです。

Q. 白紙の委任状でもいい?

A. 避けてください。誰に委任するかを本人に選んでもらうのが原則です。議長に一任する場合も、その旨を本人に書いてもらいましょう。総会の日時と委任の範囲も、書式に入れておきます。

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