一般社団法人の理事会の招集と運営|手続きを解説

一般社団法人法
理事会の招集は、決議そのものより軽く見られがちです。けれども、通知を1人に出し忘れただけで、決議の効力が争われることがあります。誰が、いつまでに、誰へ、どう通知するかを条文で確かめます。

結論から申し上げます。

理事会は、各理事が招集するのが原則です(一般法人法93条1項)。

定款や理事会で招集する理事を決めていれば、その理事(招集権者)が招集します(同項ただし書)。

招集する人は、理事会の日の1週間前までに、各理事と各監事へ通知を発します(94条1項)。

この期間は、定款で短くできます(同項かっこ書)。

理事と監事の全員が同意すれば、招集の手続を省いて開けます(94条2項)。

通知の方法や議題の記載は、法律では決められていません。定款や理事会規程の定めに従います。

POINT 招集で押さえるのは「招集権者」「1週間(定款で短縮可)」「理事と監事の全員」の3点です。社員総会の招集(38条・39条)とはルールが別なので、混同しないように分けて考えます。

理事会の招集のルールが適用される法人

理事会は、一般社団法人なら必ずある機関ではありません。

理事会を置くかどうかは、定款で決めます(60条2項)。

この記事の招集のルールは、定款で理事会を置いた法人(理事会設置一般社団法人)に適用されます。

一般財団法人は理事会が必ず置かれ、招集の規定も準用されます(197条)。

理事会のない一般社団法人では、理事が集まる会合を開いても、一般法人法上の「理事会」にはなりません。

理事会の役割や決議事項の全体像は、理事会とは?役割・決議事項・運営の進め方で説明しています。

招集する人(招集権者)の決め方

法律の原則は、理事全員がそれぞれ招集できるという形です(93条1項本文)。

ただし、93条1項ただし書により、定款か理事会で招集する理事を定めることができます。

よく使われるのは「理事会は理事長(代表理事)が招集する」という定めです。

招集権者が欠けたときや事故があったときに備えて、代わりの順番も決めておきます。

定款の記載例(招集・抜粋)

第〇条(招集)理事会は、理事長が招集する。

2 理事長が欠けたとき又は理事長に事故があるときは、各理事が理事会を招集する。

3 理事会を招集する者は、理事会の日の5日前までに、各理事及び各監事に対してその通知を発しなければならない。

4 前項の規定にかかわらず、理事及び監事の全員の同意があるときは、招集の手続を経ることなく理事会を開催することができる。

第3項は、94条1項かっこ書により1週間より短い期間を定めた例です。短縮しない場合は「1週間前までに」とします。

定款・理事会での定め 招集できる人 根拠
定めなし 各理事 93条1項本文
「理事長が招集する」 理事長(招集権者) 93条1項ただし書
招集権者以外の理事が必要と考えたとき 招集権者に請求→応じなければ自ら招集 93条2項・3項
監事が不正などを認めたとき 招集権者に請求→応じなければ自ら招集 101条2項・3項

通知の期限|「1週間前まで」の数え方

94条1項は、理事会の日の1週間前までに通知を「発しなければならない」と定めています。

基準は発した日です。相手に届いた日ではありません。

期間の計算では、初日を数えないのが民法の原則です(民法140条)。

そのため実務では、通知を発した日と理事会の日の間にまる7日を空ける数え方をします。

期間は末日の終了で満了します(民法141条)。

理事会の日 通知を発する期限 間の日数
2026年11月18日(水) 2026年11月10日(火)まで 11日〜17日の7日間
定款で「5日前」に短縮した場合 2026年11月12日(木)まで 13日〜17日の5日間

郵送で通知するなら、投函した日が発した日です。

届くまでの日数を見込む必要はありませんが、早めに出すほど出席の調整がしやすくなります。

メールで通知するなら、送信した日時を記録として残します。

誰に通知するか|監事を忘れない

通知の相手は、各理事と各監事です(94条1項)。

監事は理事会で議決権を持ちませんが、理事会に出席する義務があります(101条1項)。

そのため、監事への通知漏れも招集手続の不備になります。

特別の利害関係があって議決に加われない理事にも、通知は出しておきます。

議決に加われないのは決議だけで、理事会の構成員であることに変わりはないからです(95条2項)。

会計監査人は、94条1項の通知の相手には含まれていません。

通知先の確認

  • 登記されている理事全員(就任・辞任の直後は特に注意)
  • 監事全員
  • 議決に加われない特別利害関係の理事も含めたか
  • 任期満了後も権利義務を持つ理事・監事がいる場合は、その人も含めたか
  • メールアドレスや住所が最新か

理事が欠けて招集できないときの扱いは、一般社団法人の理事が欠けたらで説明しています。

通知の方法と書く内容

理事会の招集通知の方法について、一般法人法に定めはありません。

書面のほか、メールや電話、口頭でも法律上は足ります。

社員総会の招集通知は、理事会設置一般社団法人では書面でしなければならないと定められています(39条2項2号)。

理事会にはこのような規定がない点が違います。

議題(目的である事項)を通知に書くことも、法律上は求められていません。

それでも、定款や理事会規程で「書面で」「議題を示して」と定めている法人では、その定めに従います。

出席者が準備できるよう、議題と資料を一緒に送る運用が実務的です。

理事会招集通知の文例

令和〇年〇月〇日

理事各位・監事各位

一般社団法人〇〇協会 理事長 〇〇〇〇

第〇回理事会開催のご通知

定款第〇条に基づき、下記のとおり理事会を開催しますので、ご出席くださいますようお願い申し上げます。

1 日時 令和〇年〇月〇日(〇)午後〇時から

2 場所 当法人会議室(Web会議システムによる出席も可。接続先は別途ご案内します)

3 議題 第1号議案 令和〇年度事業報告及び計算書類の承認の件 / 第2号議案 定時社員総会の招集の件

4 報告事項 代表理事及び業務執行理事の職務執行状況報告

5 添付資料 議案書・計算書類(案)

法律上は日時・場所・議題の記載は必須ではありませんが、定款・規程で求められていればそれに従います。

招集権者以外の理事が招集を求めるとき

招集権者以外の理事が招集を求めるとき
図:招集権者以外の理事が招集を求めるとき

招集権者を決めている法人では、他の理事は自分で直接招集できません。

その代わり、招集権者に対して理事会の目的である事項を示して招集を請求できます(93条2項)。

請求から5日以内に、請求の日から2週間以内の日を理事会の日とする通知が出なければ、請求した理事が自ら招集できます(93条3項)。

このときも、理事会の日の1週間前(定款の期間)までに全員へ通知を出す必要があります(94条1項)。

1
招集権者に請求する
理事会の目的である事項を示す(93条2項)。日付と内容が残る書面やメールで行う
▼
2
5日間待つ
請求の日から5日以内に招集通知が出るかを見る(93条3項)
▼
3
通知の内容を確かめる
理事会の日が請求の日から2週間以内になっているか
▼
4
自ら招集する
条件を満たさなければ、請求した理事が招集。各理事・各監事へ通知(94条1項)
招集請求書の文例

令和〇年〇月〇日

一般社団法人〇〇協会 理事長 〇〇〇〇 殿

理事 〇〇〇〇

理事会招集請求書

一般社団法人及び一般財団法人に関する法律第93条第2項に基づき、下記の事項を目的とする理事会の招集を請求します。

記 理事会の目的である事項:〇〇事業の契約締結の件

請求した日を証明できるよう、控えを残します。

監事が招集を求めるとき

監事は、理事の不正行為やそのおそれ、法令・定款違反などを認めたとき、遅滞なく理事会に報告しなければなりません(100条)。

この場合に必要があれば、監事は招集権者に理事会の招集を請求できます(101条2項)。

請求から5日以内に、請求の日から2週間以内の日を会日とする通知が出なければ、監事が自ら招集できます(101条3項)。

監事の招集請求は、100条の報告が必要な場面に限られています。

日常の議題のために監事が理事会を招集する規定ではありません。

監事の権限全体は、監事とは?仕事・権限・責任で説明しています。

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社員総会の招集との違い
図:社員総会の招集との違い

理事会と社員総会は、招集のルールがかなり違います。

理事会設置一般社団法人では、社員総会の日時・場所・議題などを理事会の決議で決めます(38条2項)。

つまり、社員総会を開くには、その前に理事会を開く必要があります。

項目 理事会 社員総会(理事会設置一般社団法人)
招集する人 各理事または招集権者(93条1項) 理事(招集事項は理事会で決定・38条2項)
通知の期限 1週間前まで。定款で短縮可(94条1項) 1週間前まで。書面・電磁的方法による議決権行使を認めるなら2週間前まで(39条1項)
通知の相手 各理事・各監事 社員
通知の方法 法律上の定めなし 書面(社員の承諾があれば電磁的方法)(39条2項・3項)
議題の記載 法律上の定めなし 必要(39条4項・38条1項2号)
招集手続の省略 理事・監事の全員の同意(94条2項) 社員全員の同意。書面投票等を定めた場合は不可(40条)

社員総会の招集は社員総会の招集、両者の役割の違いは社員総会と理事会の違いで説明しています。

決算理事会から定時社員総会までの逆算

招集の期限がいちばん問題になるのは、決算の時期です。

理事会設置一般社団法人では、計算書類と事業報告を理事会で承認します(124条3項)。

承認を受けた計算書類等は、定時社員総会の日の2週間前の日から主たる事務所に備え置きます(129条1項)。

そのため、決算理事会は備置きの開始日より前に終える必要があります。

次の表は、定時社員総会を2027年6月25日(金)に開く場合の逆算の一例です。

手続 期限の目安 根拠
決算理事会の招集通知 6月2日(水)まで(理事会を6月10日に開く場合) 94条1項
決算理事会(計算書類の承認・総会の招集決定) 6月10日(木) 124条3項・38条2項
計算書類等の備置き開始 6月11日(金)から 129条1項
社員総会の招集通知(書面投票等を定めない場合) 6月17日(木)まで 39条1項
社員総会の招集通知(書面投票等を定める場合) 6月10日(木)まで 39条1項ただし書
定時社員総会 6月25日(金) ―

監事の監査(124条1項)は、決算理事会より前に終えておきます。監事の監査報告の期限も合わせて日程を組みます。

決算全体の流れは、一般社団法人の決算・会計は何をする?で説明しています。

招集の前に決めておく運営ルール

招集の段階で、当日の進め方に関わる点も確認しておきます。

代表理事と業務執行理事は、3か月に1回以上、職務の執行状況を理事会に報告しなければなりません(91条2項)。

定款で毎事業年度に4か月を超える間隔で2回以上と定めれば、その回数で足ります(同項ただし書)。

この報告は、報告の省略(98条1項)が使えません(98条2項)。

つまり、少なくとも定款で定めた回数は、実際に会議を開いて招集する必要があります。

理事が法人と取引をする議案では、その理事は議決に加われません(95条2項・92条・84条1項)。

議決に加われる理事の過半数が出席できるかを、招集前に確かめておきます(95条1項)。

招集前の確認リスト

  • 招集権者は誰か、定款を確認したか(93条1項)
  • 理事会の日から逆算して通知期限を確認したか(94条1項)
  • 理事・監事の全員に通知したか(94条1項)
  • 特別利害関係の理事がいる議案はないか(95条2項)
  • 議決に加われる理事の過半数が出席できる見込みか(95条1項)
  • オンライン出席を認める場合、接続方法を伝えたか
  • 議事録の署名者(出席理事・監事、または定款で定めた代表理事)を把握したか(95条3項)

出席がそろわないときの対処は定足数不足で成立しないときの対処法、議事録は理事会議事録の作り方で説明しています。

招集に不備があったとき

一般法人法には、社員総会の決議取消しの訴えのような、理事会決議を争う専用の訴えの規定はありません。

それでも、通知漏れや期限不足があると、決議の効力が争われるおそれがあります。

特に、代表理事の選定(90条3項)や重要な財産の処分(90条4項1号)の決議は、登記や取引の前提になります。

不備に気づいたら、正しい手続で理事会を開き直し、改めて決議するのが確実です。

全員が出席できるなら、全員の同意を得て招集手続を省略し、その場で決議し直す方法もあります(94条2項)。

決議に参加して議事録に異議をとどめなかった理事は、決議に賛成したものと推定されます(95条5項)。

この記事の位置づけ

本記事は、制度を一般的に説明したものです。個別の事案についての判断や手続きの代行を行うものではありません。

  • 設立登記など登記申請の手続きは司法書士が取り扱う業務です。ご自身で法務局へ申請することもできます。

よくある誤解

誤解1:理事会は代表理事しか招集できない。

法律の原則は各理事が招集します。

招集権者を決めるのは定款か理事会です(93条1項)。

誤解2:通知は届いた日から1週間あればよい。基準は「発した日」で、理事会の日の1週間前までに発します(94条1項)。

誤解3:監事には通知しなくてよい。通知の相手は各理事と各監事です(94条1項)。

誤解4:招集通知は必ず書面で、議題を書かなければならない。理事会については法律に定めはなく、定款・規程の定めに従います。

誤解5:全員の同意があれば会議を開かなくてよい。

94条2項で省けるのは招集の手続だけです。

会議を開かずに決めるには、定款の定めにもとづく決議の省略(96条)が必要です。

誤解6:理事会の通知期限も社員総会と同じ2週間。

理事会は1週間(定款で短縮可)です。

社員総会で2週間になるのは書面投票などを定めた場合です(39条1項)。


一般社団法人の理事会の招集についてよくある質問

Q. 理事会は誰が招集しますか?

A. 原則は各理事です。定款や理事会で招集する理事を定めたときは、その理事が招集します(一般法人法93条1項)。

Q. 招集通知はいつまでに出せばよいですか?

A. 理事会の日の1週間前までに発します。定款でこれより短い期間を定めることもできます(94条1項)。基準は発した日です。

Q. 監事にも招集通知が必要ですか?

A. 必要です。通知の相手は各理事と各監事です(94条1項)。監事には理事会に出席する義務があります(101条1項)。

Q. 招集通知はメールでも構いませんか?

A. 理事会の招集通知の方法は法律で決められていないため、メールでも足ります。定款や規程で書面と定めていれば、それに従います。

Q. 招集手続を省略できるのはどんなときですか?

A. 理事と監事の全員が同意したときです(94条2項)。省略できるのは招集の手続だけで、会議は開きます。

Q. 招集権者が理事会を開いてくれないときは?

A. 他の理事は目的事項を示して招集を請求できます。5日以内に2週間以内の日を会日とする通知が出なければ、自ら招集できます(93条2項・3項)。

Q. 監事は理事会を招集できますか?

A. 理事の不正などを報告する必要があるときに招集を請求でき、応じてもらえなければ自ら招集できます(101条2項・3項)。

Q. 一般財団法人の理事会の招集も同じですか?

A. 同じです。一般財団法人の理事会には、一般社団法人の理事会の規定が準用されます(197条)。

【免責事項】本記事は一般的な情報提供を目的として作成したものであり、正確性・最新性に配慮していますが、内容の完全性・正確性を保証するものではありません。法令・制度・税制は改正される場合があり、個別の事情により取り扱いが異なることもあります。本記事の情報を利用して行われた一切の行為およびその結果について、当サイトおよび筆者は責任を負いかねます。実際のお手続きや判断にあたっては、必ず公的機関の最新情報をご確認のうえ、必要に応じて専門家にご相談ください。