結論から申し上げます。一般社団法人の監事は、理事の職務の執行を監査し、法務省令の定めに従って監査報告を作成しなければなりません(一般法人法99条1項)。これは監事を置いた法人であれば例外なく生じる義務です。
そして、監査報告は実は計算書類についてのものと、事業報告についてのものの2種類があり、書く項目がそれぞれ施行規則36条と45条で決められています。さらに、計算書類を受け取った日から4週間という通知期限があり、これを過ぎると通知がなくても監査を受けたものとみなされます(施行規則37条3項)。
この記事では、監査報告書とは何かから始めて、2種類の監査報告に何を書くのか、いつまでに誰に渡すのか、期限を過ぎるとどうなるのか、会計監査人の会計監査報告とは何が違うのか、そしてNPO法人の監事は何が違うのかを、一般法人法・同施行規則・NPO法の条文に沿って整理します。
- 監査報告書とは ― 監事が「理事の職務執行と計算書類を確かめた結果」を書面にしたもの
- 監査報告は2種類ある ― 計算書類用と事業報告用
- 計算書類の監査報告に書く5項目(施行規則36条)
- 事業報告の監査報告に書く6項目(施行規則45条)
- いつまでに誰に渡すか ― 受領から4週間・附属明細書は1週間
- 期限を過ぎると「監査を受けたものとみなす」 ― 黙っていると承認したことになる
- 監査報告のあとに続く手続き ― 理事会の承認、社員への提供、備置き
- 会計監査人の「会計監査報告」とは別物 ― 意見の書き方が違う
- NPO法人の監事は何が違うのか ― 監査報告の様式は法律で決まっていない
- 監査報告書でよくある間違いを4つ
- 監事の監査報告書についてよくある質問
監査報告書とは ― 監事が「理事の職務執行と計算書類を確かめた結果」を書面にしたもの
監事は理事の職務の執行を監査する機関です(一般法人法99条1項前段)。その監査の結果を、法務省令で定めるところにより書面にまとめたものが監査報告です。実務では「監査報告書」と呼ぶことが多いですが、条文上の名称は「監査報告」です。
監事は、いつでも理事や使用人に事業の報告を求め、法人の業務と財産の状況を調査できます(同条2項)。監査報告は、この調査権を使って確かめた内容を、社員総会の前に理事と社員へ示すための書類です。理事が作った計算書類や事業報告を、理事以外の目で点検した結果がここに集約されます。
監事を置いていない一般社団法人には、この義務はありません。ただし理事会を置く一般社団法人は監事を置かなければならないため(61条)、理事会設置法人では監査報告が毎年必ず発生します。監事そのものの役割は監事とはで、日常の仕事の全体像は監事の仕事で解説しています。
監査報告は2種類ある ― 計算書類用と事業報告用
ここが最初のつまずきどころです。監事設置一般社団法人では、各事業年度の計算書類(貸借対照表と損益計算書)と事業報告、そしてそれぞれの附属明細書が監事の監査を受けなければなりません(一般法人法124条1項)。
施行規則は、このうち計算書類とその附属明細書(条文では「計算関係書類」)についての監査報告の内容を36条で、事業報告とその附属明細書についての監査報告の内容を45条で、それぞれ別に定めています。書く項目が違うので、1通の書面にまとめる場合でも、両方の項目がそろっているかを確かめる必要があります。
会計監査人を置いている法人では分担が変わります。計算書類とその附属明細書は監事と会計監査人の両方が、事業報告とその附属明細書は監事だけが監査します(124条2項)。
| 監査の対象 | 監査するのは誰か | 監査報告の内容を定める条文 |
|---|---|---|
| 計算書類(貸借対照表・損益計算書)とその附属明細書 | 監事(会計監査人設置法人では監事と会計監査人) | 施行規則36条(会計監査人は39条) |
| 事業報告とその附属明細書 | 監事 | 施行規則45条 |
本記事は、制度を一般的に説明したものです。個別の事案についての判断や手続きの代行を行うものではありません。
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計算書類の監査報告に書く5項目(施行規則36条)
監事は、計算関係書類を受領したときは、次の5つを内容とする監査報告を作成しなければなりません(施行規則36条1項)。
一つめは、監事の監査の方法とその内容です。どのような手順で何を確かめたかを書きます。二つめは、計算関係書類が法人の財産と損益の状況をすべての重要な点において適正に表示しているかどうかについての意見です。監査報告の核心はここです。
三つめは、監査のために必要な調査ができなかったときは、その旨と理由です。四つめは追記情報で、正当な理由による会計方針の変更、重要な偶発事象、重要な後発事象など、監事の判断に説明を付す必要がある事項や、計算関係書類の内容のうち強調する必要がある事項を書きます(同条2項)。五つめは、監査報告を作成した日です。
| 号 | 書く内容 | ポイント |
|---|---|---|
| 1号 | 監査の方法及びその内容 | 理事からの報告聴取、帳簿・書類の閲覧、実査など、実際に行った手順 |
| 2号 | 財産及び損益の状況を適正に表示しているかの意見 | 「適正に表示しているものと認める」など、意見を明示する |
| 3号 | 必要な調査ができなかったときはその旨と理由 | 該当がなければ書かなくてよい |
| 4号 | 追記情報 | 会計方針の変更・偶発事象・後発事象など(36条2項) |
| 5号 | 監査報告を作成した日 | 通知期限の起算と突き合わせるため必ず記載 |
事業報告の監査報告に書く6項目(施行規則45条)
事業報告とその附属明細書を受領したときの監査報告は、施行規則45条が定めています。計算書類用と重なる項目もありますが、理事の職務執行に関する項目が加わる点が違います。
一つめは監査の方法とその内容。二つめは、事業報告とその附属明細書が法令又は定款に従い法人の状況を正しく示しているかどうかの意見。三つめは、理事の職務の遂行に関し、不正の行為や法令・定款に違反する重大な事実があったときはその事実です。この三つめが、計算書類用の監査報告にはない項目です。
四つめは必要な調査ができなかったときはその旨と理由。五つめは、事業報告に記載された内部統制に関する事項(施行規則34条2項2号)の内容が相当でないと認めるときはその旨と理由。六つめは監査報告を作成した日です。
なお、監事は不正の行為やそのおそれ、法令・定款違反や著しく不当な事実を認めたときは、監査報告を待たずに遅滞なく理事(理事会設置法人では理事会)に報告する義務があります(一般法人法100条)。監査報告に書くのは年に一度の総括であり、100条の報告はその都度です。
いつまでに誰に渡すか ― 受領から4週間・附属明細書は1週間
監査報告は作るだけでは足りず、内容を理事に通知して初めて「監査を受けた」ことになります。計算書類については、特定監事は、計算書類の全部を受領した日から4週間を経過した日、附属明細書を受領した日から1週間を経過した日、特定理事と特定監事が合意で定めた日、のいずれか遅い日までに、特定理事に監査報告の内容を通知しなければなりません(施行規則37条1項)。
事業報告についても同じ構造で、事業報告を受領した日から4週間、附属明細書を受領した日から1週間、合意で定めた日、のいずれか遅い日が期限です(同46条1項)。
「特定理事」は、通知を受ける理事を定めたときはその理事、定めていないときは計算書類や事業報告の作成に関する職務を行った理事です。「特定監事」は、監事が2人以上いて通知すべき監事を定めたときはその監事、定めていないときはすべての監事、監事が1人ならその監事です(37条4項・5項、46条4項・5項)。
| 対象 | 期限(いずれか遅い日) | 根拠 |
|---|---|---|
| 計算書類 | ①計算書類の全部を受領した日から4週間 ②附属明細書を受領した日から1週間 ③合意で定めた日 | 施行規則37条1項 |
| 事業報告 | ①事業報告を受領した日から4週間 ②附属明細書を受領した日から1週間 ③合意で定めた日 | 施行規則46条1項 |
期限を過ぎると「監査を受けたものとみなす」 ― 黙っていると承認したことになる
ここが監事にとっていちばん重要な条文です。特定監事が通知すべき日までに監査報告の内容を通知しない場合、その通知をすべき日に、計算関係書類は監事の監査を受けたものとみなされます(施行規則37条3項)。事業報告についても同様です(46条3項)。
つまり、監事が「まだ確認中です」と黙ったまま期限を過ぎると、法律上は監査が終わった扱いになり、理事はそのまま理事会の承認や社員総会へ進むことができます。意見を留保したいなら、期限内に「必要な調査ができなかった」旨と理由を書いた監査報告を通知しなければなりません(36条1項3号・45条1項4号)。
逆に、特定理事が通知を受けた日に監査を受けたものとされます(37条2項・46条2項)。監査報告の作成日と通知日は、後で争いにならないよう記録に残しておくべき日付です。
監査報告のあとに続く手続き ― 理事会の承認、社員への提供、備置き
理事会設置一般社団法人では、監事の監査を受けた計算書類と事業報告、その附属明細書は、理事会の承認を受けなければなりません(一般法人法124条3項)。監査が終わらないと理事会の承認に進めない順番です。
理事会設置法人では、理事は定時社員総会の招集通知に際して、承認を受けた計算書類と事業報告に加えて監査報告を社員に提供しなければなりません(125条)。監査報告は監事と理事の間で完結する書類ではなく、社員が計算書類を承認する判断材料として届く書類です。
さらに、計算書類等(監査報告を含む)は定時社員総会の日の1週間前(理事会設置法人は2週間前)から5年間、主たる事務所に備え置き、社員と債権者は業務時間内いつでも閲覧を請求できます(129条1項・3項)。年間の流れは一般社団法人の決算・会計にまとめています。
会計監査人の「会計監査報告」とは別物 ― 意見の書き方が違う
会計監査人を置く一般社団法人では、会計監査人が計算書類とその附属明細書を監査し、会計監査報告を作成します(一般法人法107条1項)。監事の監査報告とは別の書類です。
会計監査報告の内容は施行規則39条が定めており、意見の区分が明文化されている点が監事の監査報告と違います。無限定適正意見、除外事項を付した限定付適正意見、不適正意見の三つのいずれかを、その区分に応じた文言で書きます。意見がないときはその旨と理由を書きます(39条1項2号・3号)。
会計監査人は、いつでも会計帳簿とこれに関する資料を閲覧・謄写し、理事や使用人に会計に関する報告を求めることができます(107条2項)。会計監査人を置くかどうかは一般社団法人の会計監査人で解説しています。
| 監事の監査報告 | 会計監査人の会計監査報告 | |
|---|---|---|
| 作る人 | 監事 | 会計監査人(公認会計士・監査法人) |
| 対象 | 計算書類・事業報告とそれぞれの附属明細書 | 計算書類とその附属明細書 |
| 根拠 | 一般法人法99条1項・施行規則36条・45条 | 一般法人法107条1項・施行規則39条 |
| 意見の区分 | 適正に表示しているかどうかの意見 | 無限定適正/限定付適正/不適正の3区分+意見不表明 |
NPO法人の監事は何が違うのか ― 監査報告の様式は法律で決まっていない
NPO法人の監事の職務は、NPO法18条に列挙されています。理事の業務執行の状況を監査すること、法人の財産の状況を監査すること、その結果不正の行為や法令・定款に違反する重大な事実を発見したときは社員総会または所轄庁に報告すること、そのために必要があれば社員総会を招集すること、理事に意見を述べることです。
一般法人法との大きな違いは、監査報告の記載事項や通知期限を定める省令がないことです。一般社団法人の監事は施行規則36条・45条の項目を書き、37条・46条の期限に縛られますが、NPO法人の監事にはそれに当たる条文がありません。監査報告書の様式は、定款や所轄庁の手引きに従って法人ごとに整えることになります。
もう一つの違いは報告先です。一般社団法人の監事が不正等を報告する相手は理事または理事会ですが(一般法人法100条)、NPO法人の監事は社員総会または所轄庁です(NPO法18条3号)。所轄庁という外部機関が報告先に入っている点は、NPO法人の監事に特有です。NPO法人の監事についてはNPO法人の監事とNPO法人の監査で扱っています。
| 一般社団法人の監事 | NPO法人の監事 | |
|---|---|---|
| 監査報告の作成義務 | あり(一般法人法99条1項) | 法律上の様式の定めはない |
| 書く項目 | 施行規則36条・45条で法定 | 法定なし(定款・所轄庁の手引きによる) |
| 通知期限 | 受領から4週間・附属明細書は1週間(37条・46条) | 法定なし |
| 不正発見時の報告先 | 理事または理事会(100条) | 社員総会または所轄庁(NPO法18条3号) |
監査報告書でよくある間違いを4つ
一つめは、計算書類用の項目だけを書いて事業報告用の項目を落とすことです。理事の職務遂行に関する不正・違反の有無(45条1項3号)は事業報告用にしかない項目なので、1通にまとめるなら必ず入れます。
二つめは、作成日を書かないことです。作成日は36条・45条の必須項目であり、通知期限との関係を示す日付でもあります。三つめは、期限を意識せずに監査を続けることです。4週間を過ぎると監査を受けたものとみなされ、留保したかった意見が反映されません。
四つめは、監査報告を理事に渡して終わりにすることです。理事会設置法人では監査報告は社員総会の招集通知とともに社員へ提供され(125条)、5年間備え置かれて社員・債権者の閲覧に供されます(129条)。第三者が読む前提で書く書類です。
監事の監査報告書についてよくある質問
A. 計算書類についての監査報告は、監査の方法と内容、財産及び損益の状況を適正に表示しているかの意見、必要な調査ができなかった旨と理由、追記情報、作成日の5項目です(一般法人法施行規則36条1項)。事業報告についての監査報告は、これに理事の職務遂行に関する不正・違反の事実などを加えた6項目です(同45条1項)。
A. 計算書類の全部を受領した日から4週間を経過した日、附属明細書を受領した日から1週間を経過した日、特定理事と特定監事が合意で定めた日のうち、いずれか遅い日までに特定理事へ通知します(施行規則37条1項)。事業報告についても同じ構造です(同46条1項)。
A. 通知をすべき日に、計算関係書類(または事業報告等)は監事の監査を受けたものとみなされます(施行規則37条3項・46条3項)。意見を留保したい場合は、期限内に「必要な調査ができなかった」旨と理由を記載した監査報告を通知する必要があります。
A. 必要ありません。監査報告の作成義務は監事の義務です(一般法人法99条1項)。ただし理事会設置一般社団法人は監事を置かなければならないため(61条)、理事会を置く法人では毎年発生します。
A. 別のものです。監査報告は監事が作成し(99条1項)、会計監査報告は会計監査人が作成します(107条1項)。会計監査報告には無限定適正意見・限定付適正意見・不適正意見という意見の区分が明文で定められています(施行規則39条)。
A. NPO法には監査報告の記載事項や通知期限を定める条文がありません。監事の職務は理事の業務執行と財産の状況の監査、不正等を発見したときの社員総会または所轄庁への報告などです(NPO法18条)。様式は定款や所轄庁の手引きに従って整えます。
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