一般財団法人とは|財産に法人格を与える仕組み・設立者と評議員の役割・向いている事業をわかりやすく解説

一般財団法人
「一般財団法人」という名前をよく見かけます。
一般社団法人やNPO法人とは、何が違うのでしょうか。役所の団体なのですか?

一般財団法人は、民間の法人です。役所ではありませんし、国の許可をもらって作るものでもありません。ひとことで言えば、一定の目的のために差し出された「財産」に、法人格を与えたものです。

根拠になる法律は一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(以下「一般法人法」)です。同じ法律で作られる一般社団法人が「人の集まり」であるのに対して、一般財団法人は「財産の集まり」だと説明されます。この違いが、設立の仕方から、運営する人の顔ぶれ、税金、解散の仕組みまで、すべてに効いてきます。

この記事では、一般財団法人とは何かを、条文を確かめながら順番に整理します。一般社団法人との細かい違いは別の記事にまとめているので、ここでは財団そのものの仕組みに絞ります。

一般財団法人とは「財産」に法人格を与えたもの

一般法人法には「一般財団法人とは何か」を一文で定義した条文はありません。その代わり、定款に何を書くかを定めた153条を読むと、財団の正体が見えてきます。

153条1項は、定款の必須記載事項として「設立者の氏名又は名称及び住所」(4号)と、「設立に際して設立者が拠出をする財産及びその価額」(5号)を挙げています。一般社団法人の定款にはない項目です。社団の定款に書くのは「社員の資格の得喪に関する規定」であって、財産を差し出す人の名前ではありません。

一般社団法人 一般財団法人
中身 の集まり(社員) 財産の集まり
定款に書く核 社員の資格の得喪(11条1項5号) 設立者と拠出財産(153条1項4号・5号)
成立後の最高機関 社員総会 評議員会
「持ち主」 社員(ただし持分はない) 誰もいない
POINT 財団には「持ち主」がいません。設立者は財産を差し出した人であって、法人の所有者ではありません。拠出した財産は、法人が成立した時から法人のものになります(164条1項)。ここが、株式会社の株主とも、一般社団法人の社員とも違うところです。

だからこそ財団は、「特定の人の都合」ではなく「最初に決めた目的」に縛られて動きます。目的を後から変えにくい仕組み(後述の200条)も、財産が目的に忠実であり続けるための設計です。

一般財団法人は民間の法人 ― 官庁の許可は要らない

「財団」という言葉から、公的な機関を連想する人は多いです。しかし一般財団法人は、誰でも、行政の許可なしに設立できる民間の法人です。2008年に施行された一般法人法によって、財団は「主務官庁の許可」ではなく「法律の要件を満たして登記する」だけで作れるようになりました(準則主義)。

段階 条文 ポイント
① 定款を作る 152条1項 設立者(複数なら全員)が作成して署名または記名押印
② 公証人の認証 155条 認証がなければ定款は効力を生じない
③ 財産の拠出を履行 157条1項 認証の後、遅滞なく金銭は全額払込み・金銭以外は全部給付
④ 設立の登記 163条 主たる事務所の所在地で登記をした時に成立

途中に「役所の審査」はありません。公証人は定款の形式を確認するだけで、事業の中身が公益にかなうかどうかを判断する立場にはないからです。設立者が個人でも法人でも構いませんし、1人でも設立できます。

もちろん、国や地方公共団体が出資して設立した財団もあります。それでも法人格としては民間の一般財団法人であり、行政機関ではありません。「一般財団法人だから公的」「一般財団法人だから民間」という区別は、名前からはできないということです。

名称には必ず「一般財団法人」の文字を入れます(5条1項)。一般社団法人と誤認されるような文字は使えません(同3項)。略称や英語表記は名称と英語表記の記事で扱っています。

設立者がすること ― 300万円以上の財産を拠出する

財団を作る人を「設立者」といいます。設立者の仕事は、定款を作ることと、財産を差し出すことです。

153条2項は、定款に書く拠出財産の価額の合計額を300万円以上でなければならないと定めています。一般社団法人には出資の最低額がなく、0円でも設立できますから、ここははっきりした違いです。

論点 条文 中身
最低額 153条2項 拠出財産の価額の合計が300万円以上
何を拠出できるか 153条1項5号 金銭に限らない。金銭以外の財産(不動産・有価証券など)も可
いつ履行するか 157条1項 定款の認証の後、遅滞なく全額払込み・全部給付
いつ法人のものになるか 164条1項 生前の処分による拠出は、法人の成立の時から法人に帰属
贈与のルール 158条1項 生前の拠出には、性質に反しない限り民法の贈与の規定を準用

拠出した財産は、設立者の手元には戻りません。株式会社なら株式、一般社団法人でも基金なら返還の仕組みがありますが、財団の拠出財産は返してもらう権利そのものがありません。「会社を作って自分の持ち物にする」感覚で財団を作ると、ここで食い違います。

POINT 遺言で財団を設立することもできます(152条2項)。設立者が遺言で定款の内容を定め、遺言執行者が遺言の効力発生後に定款を作成します。この場合、拠出財産は遺言が効力を生じた時から法人に帰属したものとみなされます(164条2項)。自分の財産を、死後も特定の目的のために使い続けてもらう仕組みとして使われます。

「会員」はいない ― 代わりに評議員が理事を監督する

一般財団法人には、社員(会員)がいません。社員総会もありません。そのままだと、理事を選んだり監督したりする人がいなくなってしまいます。そこで置かれるのが評議員と評議員会です。

評議員のルール 条文 中身
人数 173条3項 3人以上
兼任の禁止 173条2項 財団またはその子法人の理事・監事・使用人を兼ねられない
任期 174条1項 選任後4年以内に終了する事業年度の最終の定時評議員会まで(定款で6年まで伸長可)
選び方の制限 153条3項1号 理事または理事会が評議員を選ぶという定款の定めは無効
決められること 178条2項 法律に規定する事項と定款で定めた事項に限り決議できる

評議員は、理事を監督する側の人です。監督される理事が評議員を選べるようにしてしまうと、監督の意味がなくなるので、153条3項1号がそれを最初から封じています。そして評議員は理事や使用人と兼ねられないため、「経営する人」と「監督する人」が必ず分かれる構造になります。

一般社団法人では、社員が理事を兼ねることは普通です。少人数の社団なら、社員全員が理事ということもあります。財団ではそれができません。この点は、設立に必要な人数にも直結します。

機関は5つが必置 ― 理事会も監事も省略できない

170条1項は、一般財団法人が評議員・評議員会・理事・理事会・監事を置かなければならないと定めています。定款で置くかどうかを選べるのは会計監査人だけです(同2項)。

一般社団法人なら、理事1人・社員2人という最小構成が可能で、理事会も監事も任意です。財団は最初から理事会設置・監事設置の法人として作られます。そのため、必要な人数も社団より多くなります。

機関 最低人数 条文
評議員 3人 173条3項(設立時も3人以上=160条1項)
理事 3人 理事会を置くため(177条で準用する65条3項)。設立時も3人以上=160条1項
監事 1人 170条1項
合計 7人 評議員は理事・監事を兼ねられないので(173条2項)、実人数で7人が要る
POINT 「財産はあるが、人がいない」という状態では財団は作れません。設立者が1人でも、評議員3人・理事3人・監事1人の合計7人を最初に揃える必要があります。設立者自身が理事や評議員になることは禁止されていませんが、評議員になるなら理事は兼ねられない、という173条2項の制限はそのまま働きます。

理事の任期は2年、監事は4年で、いずれも評議員会が選任・解任します。理事会の運営や解任の要件は、理事と理事会の記事監事の記事で詳しく書いています。

一度決めた「目的」は、原則として変えられない

財団の性格をいちばんよく表しているのが、定款変更の制限です。200条1項は、評議員会の決議で定款を変更できるとしながら、ただし書で目的(153条1項1号)と、評議員の選任・解任の方法(同8号)を除外しています。

変えられるか 内容 条文
○ 評議員会の決議で変えられる 名称・事務所・事業年度・公告方法など目的以外の定め 200条1項本文
× 原則変えられない 目的評議員の選任・解任の方法 200条1項ただし書
○ 例外1 設立者が設立時の定款で「評議員会の決議で変更できる」と定めていた場合 200条2項
○ 例外2 設立当時に予見できなかった特別の事情で、変更しなければ運営が不可能または著しく困難なとき、裁判所の許可を得て変更 200条3項

社団なら、社員総会の特別決議で目的をいつでも変えられます。財団でそれができないのは、財産を差し出した設立者の意思を、設立者がいなくなった後も守るためです。言い換えると、設立の時点で、将来まで見通した目的を書いておく必要があるということです。

純資産が2期連続で300万円を下回ると解散する

財団は財産の集まりなので、財産が痩せると存在の前提が崩れます。202条2項は、ある事業年度とその翌事業年度の貸借対照表上の純資産額がいずれも300万円未満となった場合、翌事業年度の定時評議員会の終結の時に解散すると定めています。決議は要りません。

設立時の300万円は「拠出する財産の価額」の話で、設立後も持ち続けなければならないという規定ではありません。しかし純資産が2期続けて300万円を割れば自動的に解散するので、結果として、財団は常に300万円を上回る純資産を保つ運営を求められます。

なお「基本財産」は、目的である事業を行うために不可欠なものとして定款で定めたときだけ存在する概念です(172条2項)。定款で定めた基本財産があれば、理事はこれを維持し、事業の妨げになる処分をしてはなりません。定めなければ基本財産はありません。拠出財産・基本財産・純資産の3つは別のものです。

税金は「非営利型」かどうかで大きく変わる

一般財団法人は、それだけで税金が安くなる法人ではありません。法人税法は一般財団法人を非営利型法人とそれ以外(普通型)に分け、非営利型なら収益事業から生じた所得だけに法人税がかかり、普通型ならすべての所得にかかります(法人税法2条9号の2・6条)。

非営利型になるには、剰余金を分配しない旨と残余財産の帰属先を定款に定め、特定の人に特別の利益を与えず、各理事について親族等の理事が3分の1以下であること、という要件をすべて満たす必要があります(法人税法施行令3条1項)。

財団にはさらに、拠出した財産そのものに贈与税がかかることがあるという、社団ではあまり問題にならない論点があります(相続税法66条4項)。個人の財産を財団に移して相続税を減らす、という使い方を防ぐための規定です。ここは一般財団法人の税金の記事で条文ごとに整理しています。

この記事の位置づけ

本記事は、制度を一般的に説明したものです。個別の事案についての判断や手続きの代行を行うものではありません。

  • 税務の取扱いは、収入の性質や事業の実態によって結論が変わります。具体的な判定や税額の計算については、税理士または所轄の税務署へご確認ください。

一般財団法人に向いている事業・向いていない事業

財団は「財産を目的のために使い続ける器」です。そのため、まとまった財産が先にあって、それを長期にわたって特定の目的に充てたい場面に向いています。

向いている 理由
奨学金・研究助成・文化芸術への助成 元手となる財産を運用しながら、目的に沿って配り続ける典型例
美術館・博物館・記念館の運営 所蔵品や建物という財産そのものが事業の核になる
創業者・故人の記念事業 遺言による設立(152条2項)も使え、目的を変えにくい性質が「意思を守る」方向に働く
企業や地域の基金 設立者が拠出したあとは設立者から独立して運営され、私物化されにくい
特定の財産(土地・建物・株式)を目的に縛って管理したい場合 基本財産として定款に定めれば処分を制限できる(172条2項)
向いていない 理由
会員が集まって活動するサークル・業界団体 財団に会員はいない。会費で回す活動は一般社団法人の型
少人数で機動的に事業を始めたい 最低7人が要り、理事会・監事も必置。目的の変更も原則不可
まとまった財産がない 拠出財産300万円以上が必須で、純資産が2期連続300万円未満なら解散
状況に合わせて目的や事業を変えていきたい 200条1項ただし書で目的は原則固定

財団でも収益事業はできます。ただし、収益事業から生じた所得には非営利型でも法人税がかかることと、定款で定めた目的の範囲で行うものであることは押さえておく必要があります。事業のイメージは一般社団法人の事業例の記事も参考になります。

一般社団法人・公益財団法人・NPO法人との違いをひとことで

法人 何の集まりか 設立 ひとことで
一般財団法人 財産 認証+登記(許可不要) 財産を目的に縛って使い続ける器
一般社団法人 人(社員) 認証+登記(許可不要) 人が集まって活動する器。出資額の下限なし
公益財団法人 財産 一般財団法人が公益認定を受ける 別の法人格ではなく、認定を受けた一般財団法人
NPO法人 人(社員10人以上) 所轄庁の認証 特定非営利活動促進法の法人。活動分野が法定

公益財団法人は、一般財団法人が公益認定を受けた状態を指します。認定を受けると名称中の「一般財団法人」が「公益財団法人」へ変わる定款変更をしたものとみなされ(認定法9条1項)、設立し直す必要はありません。

設立から運営までの流れ

段階 やること 関連
① 設計 目的・名称・拠出財産・評議員の選任方法を決める。目的は後から原則変えられない 200条
② 人を揃える 評議員3人・理事3人・監事1人(兼任不可) 160条・170条・173条
③ 定款作成と認証 設立者が作成し、公証人の認証を受ける 152条・155条
④ 財産の拠出 認証後、遅滞なく300万円以上を払込み・給付 153条2項・157条
⑤ 設立の登記 主たる事務所の所在地で登記して成立。評議員の氏名も登記事項 163条・302条
⑥ 運営 理事会で業務執行、評議員会で決算承認・役員選任。貸借対照表は公告 178条・199条
⑦ 変更登記 役員の交代や事務所移転は2週間以内に登記 303条

設立手続きの細かい書類は設立手続きの記事、登記事項の一覧は登記事項の記事にまとめています。

この記事の位置づけ

本記事は、制度を一般的に説明したものです。個別の事案についての判断や手続きの代行を行うものではありません。

  • 設立登記など登記申請の手続きは司法書士が取り扱う業務です。ご自身で法務局へ申請することもできます。

よくある質問

Q. 一般財団法人は民間の団体ですか?

A. 民間の法人です。行政の許可は要らず、定款の認証と設立の登記で成立します(一般法人法155条・163条)。国や自治体が財産を出して設立した財団もありますが、法人格としては民間の一般財団法人です。

Q. 一般財団法人は1人で作れますか?

A. 設立者は1人で構いません。ただし、評議員3人・理事3人・監事1人が必置で、評議員は理事や監事を兼ねられないため、実際には合計7人を揃える必要があります(170条1項・173条2項・3項・160条1項)。

Q. 拠出する300万円は現金でなければいけませんか?

A. 金銭に限りません。定款には「拠出をする財産及びその価額」を書くので、不動産や有価証券などの財産でも構いません(153条1項5号)。価額の合計が300万円以上であることが要件です(同2項)。

Q. 設立者は理事や評議員になれますか?

A. なれます。設立者が役員になることを禁じる条文はありません。ただし評議員になった場合は、理事・監事・使用人を兼ねられません(173条2項)。

Q. 拠出した財産は、後で返してもらえますか?

A. 返してもらえません。拠出した財産は法人の成立の時から法人に帰属し(164条1項)、設立者に返還を求める権利はありません。株式や基金のような持分もありません。

Q. 解散したとき、残った財産は誰のものになりますか?

A. 定款で定めた帰属先に渡ります。定款に定めがなければ評議員会の決議で定め、それでも定まらなければ国庫に帰属します(239条)。設立者に自動的に戻る仕組みはありません。

Q. 一般財団法人と公益財団法人は別の法人ですか?

A. 別の法人格ではありません。一般財団法人が行政庁の公益認定を受けた状態が公益財団法人です。認定を受けると名称を変更する定款変更をしたものとみなされ、名称変更の登記をします(認定法9条)。

Q. 一般財団法人の目的を、後から変えることはできますか?

A. 原則としてできません(200条1項ただし書)。設立者が設立時の定款で評議員会の決議による変更を認めていた場合(同2項)か、設立当時に予見できなかった特別の事情があり裁判所の許可を得た場合(同3項)に限られます。

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