名刺にはどう書けばいいですか?
名乗って構いません。ただし、法律が決めている肩書きは「代表理事」であって「理事長」ではありません。理事長・会長・専務理事といった呼び方は、法律にはなく、定款や理事会で決める内部の役職名です。
問題は、その付け方を誤ると法人が損をすることがある点です。代表理事でない理事に「理事長」のような名称を付けると、その理事が勝手にした取引について、法人が責任を負わされることがあります(一般法人法197条で準用する82条)。肩書きは、単なる呼び名の問題ではありません。
この記事では、一般財団法人の肩書きについて、法律上の呼称・内部呼称の決め方・表見代表理事のリスク・名刺の書き方までを条文つきで整理します。法人そのものの名称は名称と英語表記の記事で扱っています。
法律が決めている肩書きは5つだけ
一般法人法が一般財団法人について定めている機関の呼称は、次の5つです。これ以外の肩書きは、すべて法律の外にあります。
| 法律上の肩書き | 根拠 | 人数 | 登記されるか |
|---|---|---|---|
| 評議員 | 170条1項・173条3項 | 3人以上 | される |
| 理事 | 170条1項・177条で準用する65条3項 | 3人以上 | される |
| 代表理事 | 197条で準用する90条3項 | 1人以上(複数可) | される(住所も) |
| 監事 | 170条1項 | 1人以上 | される |
| 会計監査人 | 170条2項・171条 | 任意(大規模財団は必置) | される |
一般財団法人は理事会が必置なので(170条1項)、理事会は理事の中から代表理事を選定しなければなりません(197条で準用する90条3項)。「代表理事がいない一般財団法人」は制度として存在しません。
「理事長」「会長」は法律にない ― 定款で決める内部呼称
理事長・会長・総裁・館長・所長といった呼称は、一般法人法のどこにも出てきません。これらは定款や理事会規程で法人が自由に決められる内部呼称です。
実務では、定款に次のように書いて、法律上の地位と内部呼称を結びつけます。
第○条 この法人に理事長1名を置き、理事会の決議によって理事の中から選定する。
2 理事長は、この法人を代表し、その業務を執行する。
3 前項の理事長をもって、一般社団法人及び一般財団法人に関する法律上の代表理事とする。
3項が要点です。「理事長=代表理事」と定款で明示しておけば、内部呼称と法律上の地位がずれません。この一文がないまま理事長を置くと、次の見出しのリスクが現実になります。
| よくある内部呼称 | 対応させる法律上の地位 | 定款・理事会での決め方 |
|---|---|---|
| 理事長・会長・代表 | 代表理事 | 定款で「理事長をもって代表理事とする」と定める |
| 副理事長・副会長 | 理事(代表権なし)または業務執行理事 | 代表権を与えないことを明確にする |
| 専務理事・常務理事 | 業務執行理事 | 理事会の決議で業務執行理事として選定(197条で準用する91条1項2号) |
| 事務局長 | 理事でない使用人でもよい | 理事でないなら理事会の構成員ではない |
| 名誉会長・顧問・参与 | 機関ではない | 議決権も代表権もない。定款で「議決権を有しない」と明記する |
代表理事でない理事に「理事長」を付けると、法人が責任を負う
一般法人法82条は、一般財団法人にも197条を通じて準用されます。条文はこう定めています。
「表見代表理事」と呼ばれる規定です。代表権がない人に、代表権がありそうな肩書きを与えた側の責任を定めています。
たとえば、代表理事はAなのに、Bという理事に「理事長」の名刺を持たせていたとします。Bが法人の名前で取引先と契約を結んだ場合、取引先がBに代表権がないことを知らなければ(=善意であれば)、法人はその契約の責任を免れません。「Bには代表権がなかった」という内部事情は、相手に対抗できないということです。
- 代表理事に選定した人にだけ「理事長」「会長」「代表」を使う
- 代表権のない理事の肩書きは「理事」「専務理事」「常務理事」にとどめる
- 副理事長・副会長を置くなら、代表権がないことを定款と対外表示で明確にする
- 名刺・ウェブサイト・契約書の署名欄で、肩書きの表記を統一する
- 代表理事が交代したら、名刺とウェブサイトを同時に差し替える
なお、代表理事の権限に制限を加えても、その制限は善意の第三者に対抗できません(197条で準用する77条5項)。「1000万円以上の契約は理事会の承認が必要」という内部ルールを作っても、それを知らない相手との契約は有効に成立します。
代表理事の権限は「一切の裁判上・裁判外の行為」
197条で準用する77条4項は、代表理事の権限を法人の業務に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限と定めています。契約、訴訟、登記申請、行政への届出まで、法人の業務全般に及びます。
代表理事は複数置くこともできます。その場合、各自が単独で法人を代表します。「2人の代表理事が共同でなければ代表できない」という共同代表の制度は、現在の一般法人法にはありません。複数置くときは、対外的にはそれぞれが単独で法人を拘束できる点を理解しておく必要があります。
| 場面 | 誰が行うか | 根拠 |
|---|---|---|
| 契約の締結 | 代表理事 | 197条で準用する77条4項 |
| 日常の業務執行 | 代表理事・業務執行理事 | 197条で準用する91条1項 |
| 重要な財産の処分、多額の借財 | 理事会の決議が必要(理事に委任できない) | 197条で準用する90条4項 |
| 代表理事の選定・解職 | 理事会 | 197条で準用する90条2項3号・3項 |
| 理事の選任・解任 | 評議員会 | 177条で準用する63条・70条ほか |
3行目が重要です。代表理事の権限が「一切の行為」に及ぶといっても、重要な財産の処分や多額の借財は理事会の決議事項で、理事に委任できません(197条で準用する90条4項)。肩書きが大きくても、内部の手続きは省略できないということです。
「専務理事」「常務理事」は業務執行理事として理事会で選ぶ
代表理事以外にも、日常の業務を執行する理事を置けます。197条で準用する91条1項2号が定める業務執行理事です。理事会の決議で選定します。
専務理事・常務理事という肩書きは、この業務執行理事に対応させるのが一般的です。代表権はありませんが、理事会から委ねられた範囲で業務を執行します。
業務執行理事には、代表理事と同じ報告義務があります。3か月に1回以上、自己の職務の執行の状況を理事会に報告しなければなりません(197条で準用する91条2項)。定款で「毎事業年度に4か月を超える間隔で2回以上」と定めれば、年2回に緩和できます。
評議員は理事を兼ねられない ―「評議員兼理事」は作れない
173条2項は、評議員は、その一般財団法人またはその子法人の理事・監事・使用人を兼ねることができないと定めています。
したがって「評議員兼理事」「評議員兼事務局長」という肩書きは、一般財団法人では作れません。評議員は理事を選任・解任する立場(177条で準用する63条・70条)にあるため、監督する側とされる側を同じ人が兼ねられないようにしているものです。
| 組み合わせ | 可否 | 根拠 |
|---|---|---|
| 評議員 + 理事 | 不可 | 173条2項 |
| 評議員 + 監事 | 不可 | 173条2項 |
| 評議員 + 使用人(職員) | 不可 | 173条2項 |
| 理事 + 使用人(職員) | 可 | 禁止する規定はない |
| 理事 + 監事 | 不可 | 177条で準用する65条2項 |
| 評議員 + 他法人の理事 | 可 | 兼職禁止は自法人と子法人のみ |
設立時に人数が足りず、同じ人を評議員と理事に重ねてしまう例がありますが、これは登記の段階で問題になります。評議員3人・理事3人・監事1人で、最低7人の別々の人が必要だと考えて人選を進めます。
名刺とウェブサイトでの書き方
対外的な表示では、法人名と肩書きをセットで書きます。法人名には「一般財団法人」の文字が必要です(5条1項)。
| 場面 | 書き方の例 | 注意 |
|---|---|---|
| 代表者の名刺 | 一般財団法人○○ 理事長(代表理事) 山田太郎 | 内部呼称と法律上の地位を併記すると誤解が生じにくい |
| 代表権のない理事の名刺 | 一般財団法人○○ 理事 鈴木花子 | 「理事長」「代表」は使わない |
| 業務執行理事の名刺 | 一般財団法人○○ 常務理事 佐藤次郎 | 代表権があるように読める語を足さない |
| ウェブサイトの役員一覧 | 評議員・理事・監事を分けて掲載 | 評議員を「役員」欄に混ぜない |
| 契約書の署名欄 | 一般財団法人○○ 代表理事 山田太郎 | 法律上の地位で書くのが最も安全 |
契約書の署名欄については、内部呼称の「理事長」だけでも定款で代表理事と結びついていれば有効ですが、代表理事と書いておくほうが、相手方の確認も登記事項証明書との突合も容易です。
登記事項証明書に載るのは法律上の肩書きだけで、「理事長」「会長」といった内部呼称は登記されません。何が登記されるかは登記事項の記事で整理しています。
本記事は、制度を一般的に説明したものです。個別の事案についての判断や手続きの代行を行うものではありません。
- 設立登記など登記申請の手続きは司法書士が取り扱う業務です。ご自身で法務局へ申請することもできます。
公益認定を受けると法人名は変わるが、肩書きは変わらない
公益認定を受けると、法人の名称は「一般財団法人」から「公益財団法人」に変わります。認定法9条1項によって定款が変更されたものとみなされるので、名称変更のための評議員会の決議は要りません。
一方、代表理事・理事・監事・評議員という肩書きそのものは変わりません。公益財団法人になっても、機関の呼称は一般法人法のままです。変わるのは法人名の頭の部分と、外部理事・外部監事を各1名以上置く必要が生じる点などです。詳しくは公益認定の記事で扱っています。
よくある質問
A. 法律上の肩書きは「代表理事」です(197条で準用する90条3項)。「理事長」は定款で定める内部呼称で、法律には出てきません。定款で「理事長をもって代表理事とする」と定めていれば、どちらを名乗っても実質は同じですが、契約書や登記に関する書面では「代表理事」と書くのが確実です。
A. 問題ありません。法律上の地位と内部呼称を併記する書き方で、実務でも広く使われています。相手方が代表権の有無を判断しやすくなるという意味では、むしろ望ましい書き方です。
A. 避けるべきです。代表理事でない理事に代表権があると認められる名称を付けると、その人の行為について法人が善意の第三者に責任を負います(197条で準用する82条)。副理事長を置くなら、代表権がないことを定款と対外表示の両方で明確にします。
A. 置けます。人数の上限はありません。ただし各自が単独で法人を代表するため(197条で準用する77条2項の考え方)、2人の同意がなければ代表できないという共同代表は、現在の法律では設定できません。内部で制限しても善意の第三者には対抗できません(同77条5項)。
A. 定款で定めれば置けます。評議員会の議長は、施行規則が議事録の記載事項として「議長が存するときは、議長の氏名」を挙げており、議長を置くことが前提とされています。ただし議長であっても、他の評議員より強い権限を持つわけではありません。
A. 理事でない名誉会長や顧問は理事会の構成員ではないため、議決権はありません(197条で準用する90条1項)。オブザーバーとして同席させること自体は可能ですが、定款や理事会規程で「議決権を有しない」と明記しておくと運用が明確になります。
A. 作れません。一般財団法人は理事会が必置で(170条1項)、理事は3人以上必要です(177条で準用する65条3項)。これに評議員3人以上と監事1人以上が加わります。
A. 内部呼称だけの変更(理事長を会長に改めるなど)で、代表理事が同じ人であれば登記は不要です。登記されているのは法律上の地位だからです。代表理事そのものが交代したときは、変更から2週間以内に登記を申請します(303条)。
理事会で代表理事を選定したときの議事録の書き方と、登記の添付書面としての使い方はこちらです。
代表理事・業務執行理事という区分は、責任の免除額と責任限定契約の可否に直結します。詳しくはこちらです。
医療法人の理事長は原則として医師または歯科医師です(医療法46条の6)。肩書きの制約の違いはこちらで解説しています。
代表理事は、犯収法上の「実質的支配者」としても申告の対象になります(施行規則11条2項4号)。一般財団法人での判定はこちらで整理しています。
📖 参考にした公的機関の情報


