公益法人の定期提出書類|事業計画書は事業年度開始の前日まで・事業報告等は3か月以内・出さないと50万円以下の過料

公益法人
公益財団法人の事務局になりました。
毎年「行政庁に出す書類」があると聞きましたが、何を、いつまでに出すのでしょうか。

公益法人(公益社団法人・公益財団法人)は、一般社団法人・一般財団法人にはない行政庁への定期提出の義務を負っています。毎年2回、決まった期限までに、決まった書類を出すのが基本形です。

根拠は公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律(以下「認定法」)の21条・22条と、書類の中身を決めている認定法施行規則(内閣府令)です。2025年4月1日施行の改正で提出書類の中身も変わっているので、古い手引きのまま作ると項目が足りません。

この記事では、「いつまでに」「何を」「どうやって」出すのか、出し忘れると何が起きるのかを条文で整理します。公益認定を受ける前の話は財団の公益認定の記事社団の公益認定の記事に分けています。

定期提出は年2回 ― 事業年度開始の前日までと、経過後3か月以内

認定法21条は「備え置く」義務、22条は「行政庁に提出する」義務を定めています。提出の期限は、備え置く期限と同じ2つに分かれます。

タイミング 出すもの 条文
事業年度開始の日の前日まで 当該事業年度の事業計画書・収支予算書ほか(内閣府令45条) 21条1項・22条1項
事業年度経過後3か月以内 財産目録・役員等名簿・報酬等の支給基準+内閣府令46条の書類+計算書類等・事業報告 21条2項・22条1項
公益認定を受けた事業年度 どちらも「認定を受けた後遅滞なく 21条1項・2項かっこ書き
POINT 3月決算の法人なら、3月31日までに翌年度の事業計画書と収支予算書6月30日までに前年度の決算関係一式という年間リズムになります。定時社員総会・定時評議員会を6月に開く法人が多いのは、この6月30日から逆算しているからです。

事業年度開始の前日までに出すもの(内閣府令45条)

認定法21条1項は「事業計画書、収支予算書その他の内閣府令で定める書類」としています。その内閣府令が施行規則45条で、次の4つです。

書類 中身
① 事業計画書 当該事業年度に行う公益目的事業・収益事業等の計画
② 収支予算書 当該事業年度の収支の予算
③ 資金調達及び設備投資の見込みを記載した書類 借入れの予定や大きな設備投資の見込み。無ければその旨
④ 事業年度開始の日における事業の種類・内容を記載した書類 公益認定申請書の記載事項(認定法7条1項3号・4号=公益目的事業の種類と内容、収益事業等の内容)を、年度開始時点の姿で記載

提出のしかたは施行規則56条にあります。様式第四号の提出書に上の書類を添付し、理事会(社員総会や評議員会で承認した場合はその機関)の承認を受けたことを証する書類を併せて添付します。つまり、事業計画書と収支予算書は年度が始まる前に理事会で承認しておく必要があります。3月決算なら3月中の理事会です。

ここでつまずくのは新設の法人より、事業年度の途中で公益認定を受けた法人です。認定を受けた事業年度については「認定を受けた後遅滞なく」出すことになるので、認定日の直後に、残り期間の事業計画書と収支予算書を出します。

事業年度経過後3か月以内に出すもの(認定法21条2項・内閣府令46条)

こちらは分量が多く、決算関係の書類が中心です。認定法21条2項が3つを名指しし、4号で内閣府令に委ねています。施行規則46条1項はそこに11の書類を並べています。

区分 書類 根拠
法律で名指し 財産目録 21条2項1号
法律で名指し 役員等名簿(理事・監事・評議員の氏名と住所) 21条2項2号
法律で名指し 報酬等の支給の基準を記載した書類 21条2項3号・5条14号
内閣府令 キャッシュ・フロー計算書(作成している場合、または会計監査人が必置の場合) 規則46条1項1号
内閣府令 運営組織に関する重要な事項(社員数・評議員/理事/監事の数・報酬等が2,000万円を超える者がいる場合はその額と理由・会計監査人・職員数・総会/評議員会/理事会の開催日と主な決議事項・事業と組織の体系) 同2号
内閣府令 事業活動に関する重要な事項(寄附を受けた財産の額・金融資産の運用収入・資産/負債/純資産の額・他団体の株式等の保有・関連当事者との取引・海外送金の有無) 同3号
内閣府令 中期的収支均衡に関する数値と計算の明細 同4号
内閣府令 公益目的事業比率に関する数値と計算の明細 同5号
内閣府令 使途不特定財産額に関する数値と計算の明細 同6号
内閣府令 公益充実資金に関する書類 同7号
内閣府令 公益目的事業継続予備財産の限度額・算定根拠・保有する理由 同8号
内閣府令 特定費用準備資金(収益事業等・法人運営に係る将来の活動のための資金)・資産取得資金(法人活動保有財産のための資金)・指定寄附資金に関する書類(該当がある法人のみ) 同9〜11号
一般法人法 計算書類等(貸借対照表・損益計算書・附属明細書・監査報告など)と事業報告 認定法21条5項・一般法人法129条

事業報告には、一般法人法で作る内容に加えて、公益目的事業の実施状況・運営体制など内閣府令で定める事項を書き足さなければなりません(認定法21条4項)。一般社団法人時代の事業報告をそのまま使うと、この追加部分が抜けます。

施行規則46条3項には救済があります。4号から11号までの数値関係の書類は、計算書類等に記載されている場合、または該当するものがない場合は作成を要しません。「該当なし」の項目まで空の書類を作る必要はありません。

提出は様式第五号の提出書に添付して行い、国税・地方税の滞納処分に係る納税証明書を併せて添付します(施行規則57条1項)。行政庁が滞納のないことを確認できる場合は、説明書類で足りることがあります。

「備え置き」と「提出」は別の義務 ― 罰則も別

認定法21条は、作った書類を主たる事務所に備え置く義務です。事業計画書等はその事業年度の末日まで、決算関係の書類は5年間(従たる事務所には写しを3年間)備え置きます。22条は、同じ書類を行政庁に提出する義務です。

義務 内容 違反したとき
備え置き(21条1項・2項) 主たる事務所に原本、従たる事務所に写し。事業計画書等は年度末まで、決算関係は5年(写しは3年) 備え置かない・記載すべき事項を書かない・虚偽記載=30万円以下の罰金(64条3号)
提出(22条1項) 同じ書類を期限までに行政庁へ 提出しない・虚偽記載=理事・監事に50万円以下の過料(66条2号)
POINT 「提出したから備え置かなくてよい」「備え置いてあるから提出は後でよい」のどちらも通りません。電磁的記録で作成・保存することはできます(21条3項)。従たる事務所でオンライン閲覧できる措置をとっていれば、写しの備え置きは不要になります(21条7項・規則55条)。

誰でも閲覧できる ― 財産目録等は公開が前提

認定法21条5項は、何人も、公益法人の業務時間内はいつでも、財産目録等の閲覧を請求できると定め、公益法人は正当な理由がなければ拒めません。対象は、事業計画書等・決算関係の書類・定款・社員名簿・計算書類等です。

ただし役員等名簿と社員名簿については、社員・評議員以外の者からの請求に対しては、個人の住所の部分を除いて閲覧させることができます(21条6項)。

さらに行政庁は、提出を受けた財産目録等を公表します(22条2項。住所は除く)。実際には内閣府の「公益法人information」で各法人の提出書類が公開されており、寄附者や取引先はそこで法人の財務状況を見ています。提出書類は「行政庁に出して終わり」ではなく、外部に読まれる文書として作ることになります。

会計監査人を置く法人は監査の対象が広がる

認定法5条13号で会計監査人の設置が必要な法人(収益・費用等が100億円以上、または負債50億円以上など)では、会計監査人は計算書類だけでなく、財産目録とキャッシュ・フロー計算書も監査します(認定法23条・規則58条)。キャッシュ・フロー計算書は、会計監査人が必置の法人では作成も提出も義務になります(規則46条1項1号)。

2025年4月の改正で、提出する数値の名前が変わった

2025年4月1日施行の改正認定法で、財務基準の用語が置き換わり、それに合わせて提出書類(規則46条)の項目も改められました。旧制度の「収支相償」は「中期的収支均衡」に、「遊休財産」は「使途不特定財産」に、公益目的事業のための「特定費用準備資金」と「資産取得資金」は「公益充実資金」に統合されるという改正です(収益事業等・法人運営のための同資金は残ります)。旧用語の様式で作った書類は項目が合いません。

提出する数値 2025年3月まで(改正前) 2025年4月から
収支の基準 改正前の収支相償の計算(黒字は2年で解消・廃止) 中期的収支均衡の数値と計算の明細(規則46条1項4号)
財産の保有制限 改正前の遊休財産額(上限=当年度の事業費・廃止) 使途不特定財産額の数値と計算の明細(同6号)。上限は過去5年の事業費平均
積立資金 公益目的事業のための積立は改正前は特定費用準備資金と資産取得資金に分かれていた 公益充実資金に統合(同7号)。収益事業等・法人運営のための特定費用準備資金・資産取得資金は改正後も別の資金として残る(9号・10号・規則31条・36条)
予備の財産 制度なし 公益目的事業継続予備財産の限度額・算定根拠・保有理由(同8号)
公益目的事業比率 50%以上 50%以上のまま(認定法15条・規則46条1項5号)

認定法14条は「内閣府令で定める期間において、その収支の均衡が図られるようにしなければならない」という書き方に変わり、内閣府の説明資料はこの期間を5年としています。16条の見出しは「使途不特定財産額の保有の制限」です。改正前後の違いは公益認定の記事で表にしています。

出し忘れたら何が起きるか ― 過料・勧告・認定取消し

段階 内容 条文
① 過料 財産目録等を提出しない、虚偽の記載をして提出した=理事・監事・清算人に50万円以下の過料 66条2号
② 罰金 備え置かない、記載事項を書かない、虚偽記載=30万円以下の罰金(法人にも科される) 64条3号・65条
③ 勧告・命令 認定基準に適合しない疑いなどがあれば、行政庁が期限を定めて勧告し、その内容を公表。従わなければ命令し、その旨を公示 28条
④ 認定の取消し 認定法の遵守事項を守っていない・命令に従わない=公益認定を取り消すことができる/取り消さなければならない 29条1項3号・2項2号

認定法の「前節の規定」(14条〜26条)には22条の提出義務が含まれるので、提出を怠ること自体が29条2項2号の取消し事由に当たります。取消しになれば、公益目的取得財産残額に相当する財産を1か月以内に他の公益法人等へ贈与する定款の定めが動きます(5条20号・30条)。書類1通の出し忘れが、法人の財産の行き先まで変えうる構造です。

年間スケジュール(3月決算の例)

時期 やること 根拠
1〜2月 翌年度の事業計画書・収支予算書の原案を作る。資金調達・設備投資の見込みも 規則45条
3月 理事会で事業計画書・収支予算書を承認(定款で総会・評議員会の承認事項ならその機関) 規則56条
3月31日まで 様式第四号で行政庁へ提出。主たる事務所に備え置く 21条1項・22条1項
4〜5月 決算。監事監査(会計監査人設置法人は会計監査人監査)。財産目録・役員等名簿・規則46条の書類を作成 21条2項
5〜6月 理事会で計算書類等を承認 → 定時社員総会・定時評議員会 一般法人法124〜126条(199条準用)
6月30日まで 様式第五号で行政庁へ提出(納税証明書を添付)。5年間備え置き 21条2項・22条1項・規則57条
通年 閲覧請求への対応。変更があれば変更認定・変更届出 21条5項・11条・13条

一般社団法人・一般財団法人の決算スケジュールに、「3月31日」と「6月30日」の2つの提出期限が乗る形です。貸借対照表の公告(一般法人法128条)も同じ時期に来るので、6月は手続きが集中します。

この記事の位置づけ

本記事は、制度を一般的に説明したものです。個別の事案についての判断や手続きの代行を行うものではありません。

  • 設立登記など登記申請の手続きは司法書士が取り扱う業務です。ご自身で法務局へ申請することもできます。
  • 税務の取扱いは、収入の性質や事業の実態によって結論が変わります。具体的な判定や税額の計算については、税理士または所轄の税務署へご確認ください。

提出前チェックリスト

事業年度開始の前日までの提出(様式第四号)

  • 事業計画書・収支予算書・資金調達及び設備投資の見込み・事業の種類と内容の4点が揃っている(規則45条)
  • 理事会(または総会・評議員会)の承認を証する書類を添付した(規則56条)
  • 提出後、主たる事務所に備え置き、従たる事務所に写しを置いた(21条1項)
事業年度経過後3か月以内の提出(様式第五号)

  • 財産目録・役員等名簿・報酬等の支給基準の3点(21条2項)
  • 規則46条の書類のうち該当するもの(中期的収支均衡・公益目的事業比率・使途不特定財産額・公益充実資金・予備財産など)を、改正後の用語と様式で作った
  • 計算書類等と、公益目的事業の実施状況等を書き足した事業報告(21条4項)
  • 納税証明書を添付した(規則57条1項)
  • 5年間の備え置きと、閲覧請求への対応体制(住所を除外する運用)を決めた(21条2項・5項・6項)

よくある質問

Q. 公益法人が毎年行政庁に出す書類は何ですか?

A. 事業年度開始の日の前日までに、事業計画書・収支予算書・資金調達及び設備投資の見込み・事業の種類と内容を記載した書類(認定法21条1項・施行規則45条)。事業年度経過後3か月以内に、財産目録・役員等名簿・報酬等の支給基準・施行規則46条の書類・計算書類等・事業報告です(21条2項・22条1項)。

Q. 提出期限はいつですか?

A. 事業計画書等は事業年度開始の日の前日まで、決算関係は事業年度経過後3か月以内です。3月決算なら3月31日と6月30日です。公益認定を受けた事業年度は、いずれも認定を受けた後遅滞なく提出します(認定法21条・22条)。

Q. 提出を忘れるとどうなりますか?

A. 財産目録等を提出しない、または虚偽の記載をして提出すると、理事・監事に50万円以下の過料が科されます(認定法66条2号)。提出義務の不履行は認定法29条2項2号の公益認定の取消し事由にも当たり、行政庁の勧告・命令(28条)を経て取り消されることがあります。

Q. 備え置きと提出は同じことですか?

A. 別の義務です。21条は主たる事務所に備え置く義務(事業計画書等は年度末まで、決算関係は5年)、22条は行政庁に提出する義務です。備え置き違反は30万円以下の罰金(64条3号)、提出違反は50万円以下の過料(66条2号)と、罰則も別です。

Q. 提出した書類は誰が見られますか?

A. 何人も業務時間内に閲覧を請求でき、公益法人は正当な理由なく拒めません(認定法21条5項)。役員等名簿と社員名簿は、社員・評議員以外には住所を除いて閲覧させることができます(同6項)。行政庁も提出書類を公表します(22条2項)。

Q. 2025年4月の改正で提出書類はどう変わりましたか?

A. 施行規則46条の数値関係の書類が、中期的収支均衡・使途不特定財産額・公益充実資金・公益目的事業継続予備財産の項目に改められました。改正で廃止された収支相償や遊休財産の旧様式で作った書類は項目が合いません。公益目的事業比率50%以上は変わっていません。

Q. 該当しない項目の書類も作る必要がありますか?

A. ありません。施行規則46条3項により、数値関係の書類は計算書類等に記載されている場合や該当するものがない場合は作成を要しません。

Q. 会計監査人がいる法人は何が違いますか?

A. 会計監査人は計算書類に加えて財産目録とキャッシュ・フロー計算書を監査し(認定法23条・規則58条)、キャッシュ・フロー計算書の作成・提出が必須になります(規則46条1項1号)。

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