一般財団法人の維持費|毎年かかるお金の一覧と、維持費が純資産300万円を削って解散になる仕組み

一般財団法人
一般財団法人を作ったあと、毎年どれくらいお金がかかりますか?
活動が少ない年でも払うものはありますか?

あります。一般財団法人は、活動の大小に関係なく、法人として存在しているだけで毎年出ていくお金があります。法人住民税の均等割、貸借対照表の公告、役員の変更登記がその代表です。

そして財団には、一般社団法人にはない事情があります。維持費で純資産が減り、2期連続で300万円を下回ると、決議なしで解散することです(一般法人法202条2項)。維持費の話は、財団では「いくらかかるか」で終わらず、「財産が持つか」の話になります。

この記事では、一般財団法人に毎年かかるお金を条文つきで一覧にし、純資産との関係と、維持費を抑える設計まで整理します。設立のときにかかるお金は設立手続きの記事で扱っています。

維持費は「必ず出ていくもの」と「運営次第のもの」に分かれる

区分 項目 根拠 目安
必ず出ていく 法人住民税の均等割 地方税法52条・312条 標準税率で年額合計7万円
必ず出ていく 貸借対照表の公告 一般法人法199条で準用する128条 電子公告なら実費のみ。官報なら掲載料
周期的に出ていく 役員の変更登記(登録免許税) 登録免許税法 別表第一 24号(1)カ 申請1件につき1万円
周期的に出ていく 主たる事務所の移転登記など 同 24号(1)ヲ ほか 移転は1か所につき3万円
運営次第 評議員・理事・監事の報酬 一般法人法196条・197条 無報酬も可
運営次第 評議員会・理事会の開催実費 一般法人法179条ほか 会場費・郵送費など
運営次第 会計監査人の報酬 一般法人法171条 負債200億円以上の財団のみ必置
運営次第 事務所の家賃・通信費・会計ソフト 自宅なら抑えられる
運営次第 法人税・消費税 法人税法・消費税法 非営利型で収益事業がなければ法人税なし
POINT 「必ず出ていく」の2つは、収入ゼロ・活動ゼロの年でも消えません。一般財団法人の維持費の最低ラインは、均等割と公告だと考えておくと見積もりを外しません。

法人住民税の均等割は、所得がなくても年額合計7万円

均等割は、所得に関係なく法人の存在に対してかかる税金です。地方税法52条1項の表は、道府県民税の均等割の標準税率を法人の区分ごとに定めていて、一般財団法人は非営利型でも普通型でも、最も低い区分の年額2万円に入ります。市町村民税の均等割は312条1項の表で、同じ区分が年額5万円です。合わせて年額7万円が標準税率です。

区分 道府県民税(52条) 市町村民税(312条)
非営利型の一般財団法人 年額2万円(表1号イ=公益法人等) 年額5万円(表1号)
普通型の一般財団法人 年額2万円(表1号ハ) 年額5万円(表1号)

「非営利型なら均等割もかからない」という誤解があります。地方税法25条1項2号は均等割を課せない法人を列挙していますが、そこにあるのは社会福祉法人・学校法人・宗教法人などで、公益財団法人でさえ博物館の設置や学術研究を主たる目的とするものに限られています。一般財団法人は載っていません。非営利型であっても均等割はかかります。

ただし、条例で減免を設けている自治体があります。収益事業を行わない公益法人等について申請により均等割を減免する例です。減免の有無と要件は自治体ごとに違うので、所在地の都道府県と市町村で確認してください。減免を受けるにも申告と申請は要るので、所得がなくても法人住民税の申告書は毎年出すものと考えておきます。

貸借対照表の公告は毎年の義務 ― 公告方法で費用が変わる

一般財団法人は、定時評議員会の終結後遅滞なく、貸借対照表を公告しなければなりません(199条で準用する128条1項)。大規模一般財団法人は損益計算書も公告します。これは毎年の義務です。

公告方法(331条1項) 公告する内容 費用の性質
官報に掲載 要旨で足りる(128条2項) 掲載料が毎年かかる
日刊新聞紙に掲載 要旨で足りる(同) 掲載料が毎年かかる(官報より高額になりやすい)
電子公告 貸借対照表の全文を、定時評議員会の終結の日後5年間継続して掲載(128条3項) 自法人のサイトなら実費のみ

公告方法は定款の必須記載事項です(153条1項9号)。電子公告を選べば、毎年の公告費用はほぼゼロになりますが、5年間掲載を続ける管理と、サイトが止まったときの代替公告(331条2項で官報か日刊新聞紙を定められる)を考えておく必要があります。公告を怠ると過料の対象になります(342条)。

役員の任期が来るたびに、変更登記の登録免許税がかかる

一般財団法人の役員は任期があり、任期満了のたびに改選と登記が要ります。同じ人が続ける「重任」でも登記は必要です。理事・監事・代表理事・評議員に関する事項の変更の登記は、申請1件につき1万円です(登録免許税法別表第一24号(1)カ。会社の資本金1億円以下と同じ扱いで、一般社団法人等は一律1万円)。

役職 任期 条文 登記のタイミング
理事 2年(定款で短縮のみ可) 177条で準用する66条 2年ごと
監事 4年(定款で2年まで短縮可) 177条で準用する67条 4年ごと
評議員 4年(定款で6年まで伸長可 174条 4年ごと(伸長すれば6年ごと)
代表理事 理事の任期に従う 197条で準用する90条 理事の改選のたび

1回の申請にまとめられれば1万円で済みますが、理事の改選(2年)と評議員の改選(4年)がずれると、申請の回数が増えます。事業年度の区切りと選任の時期を揃えておくと、申請を1回にまとめやすくなります。

POINT 登記は変更から2週間以内です(303条)。遅れると100万円以下の過料の対象になり(342条1号)、財団では評議員も過料の名宛人に入っています。維持費として見るなら「登録免許税1万円」ですが、忘れたときの出費のほうが大きい項目です。

評議員会と理事会の運営にかかるお金

一般財団法人は評議員会・理事会・監事が必置なので(170条1項)、最低でも評議員3人・理事3人・監事1人の7人を動かす運営費がかかります。

項目 内容 抑え方
定時評議員会 毎事業年度の終了後一定の時期に必ず開く(179条1項)。招集通知は1週間前までに書面(182条) 書面通知の郵送費。全員同意の省略は財団では使えない
理事会 業務執行の決定。代表理事は3か月に1回以上の職務執行報告(197条で準用する91条2項) 定款で年2回以上に緩和できる
議事録 評議員会は10年(193条2項)、理事会も10年保存(197条で準用する97条) 電子保存で場所代を抑える
役員報酬 評議員は定款、理事・監事は定款か評議員会で定める 無報酬とすることも可能。実費弁償は別
役員賠償保険など 任意 規模に応じて

一般社団法人なら、社員全員の同意で社員総会を省略する方法(58条)がありますが、財団の評議員会は代理出席も書面投票もできず、みなし決議(194条)を使うには理事が提案して評議員全員が書面で同意する手続きが要ります。「集まるコスト」は社団より下げにくいと考えておきます。

会計監査人が必要になるのは、負債200億円以上の財団だけ

会計監査人(公認会計士または監査法人)の報酬は、置けば大きな維持費になります。ただし一般財団法人で会計監査人が必置になるのは、最終事業年度の貸借対照表の負債の部の合計が200億円以上の「大規模一般財団法人」だけです(171条・2条3号)。それ以外の財団は、定款で置くと定めた場合に限って置きます(170条2項)。

つまり、通常の財団に会計監査人の費用はかかりません。監事による監査は必置ですが(170条1項)、監事は評議員会で選ぶ内部の役員で、無報酬にもできます。

税金の維持費は「非営利型か」「収益事業があるか」で決まる

均等割以外の税金は、財団の区分と事業の中身で変わります。

税目 非営利型・収益事業なし 非営利型・収益事業あり 普通型
法人税 かからない(法人税法6条) 収益事業の所得にかかる すべての所得にかかる
法人住民税の法人税割 かからない 法人税額に応じてかかる かかる
法人住民税の均等割 かかる かかる かかる
法人事業税 かからない 収益事業の所得にかかる かかる
消費税 課税売上の有無と規模で判定 同左 同左

非営利型の要件を保てば、法人税・法人税割・事業税は収益事業がない限りかかりません。財団の維持費として毎年確実に残るのは均等割です。非営利型の4要件と、拠出財産に贈与税がかかる財団固有の論点は財団の税金の記事で整理しています。

この記事の位置づけ

本記事は、制度を一般的に説明したものです。個別の事案についての判断や手続きの代行を行うものではありません。

  • 税務の取扱いは、収入の性質や事業の実態によって結論が変わります。具体的な判定や税額の計算については、税理士または所轄の税務署へご確認ください。

財団固有のリスク ― 維持費が純資産を削り、300万円を割ると解散する

ここが、一般社団法人の維持費の話と決定的に違うところです。202条2項は、ある事業年度とその翌事業年度の貸借対照表上の純資産額がいずれも300万円未満となった場合、翌事業年度の定時評議員会の終結の時に解散すると定めています。評議員会の決議は要りません。自動的に解散します。

純資産の動き(拠出300万円ちょうど・収入なし・維持費が年10万円の例) 202条2項
設立時 300万円
1期目末 290万円 300万円未満(1期目)
2期目末 280万円 300万円未満(2期連続)
2期目の定時評議員会終結時 解散 決議なしで解散
POINT 拠出財産が300万円ちょうどで、収入の見込みがない財団は、設立した瞬間から解散への時計が動きます。均等割7万円と公告費だけでも、2期で300万円を割るのに十分です。

対策は2つしかありません。数年分の維持費を上乗せして拠出するか、維持費を賄う収入源を最初から設計するかです。寄付を集める、基本財産の運用益を得る、目的の範囲で収益事業を行う、のいずれかを事業計画に入れておく必要があります。「300万円あれば作れる」は正しいのですが、「300万円あれば続く」ではありません。

維持費を抑える設計 ― 設立時に決めておくと効くもの

定款と運営で決められること

  • 公告方法を電子公告にする(153条1項9号・331条)。毎年の掲載料をなくし、代替公告を官報と定めておく
  • 評議員の任期を定款で6年に伸長する(174条1項ただし書)。変更登記の回数が減る
  • 理事の任期2年と評議員の任期の満了時期を同じ定時評議員会に揃え、登記申請を1件にまとめる
  • 役員を無報酬と定め、実費弁償規程で交通費だけ精算する
  • 主たる事務所を自宅や既存の事務所に置き、家賃を発生させない
  • 会計監査人は置かない(負債200億円未満なら任意)
  • 非営利型の4要件を定款と実態で守り、法人税・法人税割・事業税を発生させない
  • 所在地の自治体に均等割の減免制度があるか確認し、あれば毎年申請する

これらは、設立時の定款で決めるものが多いです。財団は目的と評議員の選解任方法を後から変えにくい法人ですが(200条1項ただし書)、公告方法や任期は評議員会の決議で変更できる事項です。それでも、最初に入れておけば定款変更の手間がありません。

年間の維持費モデル ― 最小構成と一般的な構成

項目 最小構成(無報酬・電子公告・自宅事務所) 一般的な構成(官報公告・事務所あり・報酬あり)
均等割 7万円 7万円
公告 実費のみ 官報の掲載料
変更登記 1万円を数年に1回 1万円を数年に1回(時期がずれると複数回)
役員報酬 0円 定款・評議員会で定めた額
事務所 0円 家賃・光熱費
会議運営 郵送費程度 会場費・郵送費
税務・会計 非営利型で収益事業なしなら法人税の申告なし。均等割の申告は要る 収益事業があれば法人税・事業税の申告
年間の固定部分 7万円台から 規模による

最小構成でも年額7万円台の固定費は消えません。この額を「何年分、拠出財産に上乗せするか」が、設立時に決めるべき最初の数字です。純資産300万円のラインを、維持費の年数で割り戻して考えます。

この記事の位置づけ

本記事は、制度を一般的に説明したものです。個別の事案についての判断や手続きの代行を行うものではありません。

  • 設立登記など登記申請の手続きは司法書士が取り扱う業務です。ご自身で法務局へ申請することもできます。

よくある質問

Q. 一般財団法人は活動していなくても税金がかかりますか?

A. かかります。法人住民税の均等割は所得に関係なく課され、標準税率で道府県民税2万円・市町村民税5万円の年額合計7万円です(地方税法52条・312条)。非営利型でも一般財団法人は非課税の対象(25条1項2号)に含まれていません。

Q. 決算公告は毎年しなければいけませんか?

A. 毎年必要です。定時評議員会の終結後遅滞なく貸借対照表を公告します(一般法人法199条で準用する128条1項)。官報や日刊新聞紙なら要旨で足り、電子公告なら全文を5年間掲載します(同2項・3項)。

Q. 役員の変更登記にはいくらかかりますか?

A. 理事・監事・代表理事・評議員に関する事項の変更の登記は、申請1件につき1万円です(登録免許税法別表第一24号(1)カ)。重任でも登記は必要で、変更から2週間以内に申請します(一般法人法303条)。

Q. 会計監査人は必ず置かなければいけませんか?

A. 負債の部の合計が200億円以上の大規模一般財団法人だけが必置です(一般法人法171条・2条3号)。それ以外は定款で置くと定めた場合だけです(170条2項)。監事は規模にかかわらず必置です(170条1項)。

Q. 維持費で純資産が300万円を下回るとどうなりますか?

A. ある事業年度とその翌事業年度の貸借対照表上の純資産額がいずれも300万円未満になると、翌事業年度の定時評議員会の終結の時に解散します(一般法人法202条2項)。決議は不要で、自動的に解散します。拠出300万円ちょうどで収入がない財団は、維持費だけでこの状態になります。

Q. 維持費を最も抑えるにはどうすればよいですか?

A. 公告方法を電子公告にし、役員を無報酬にし、評議員の任期を定款で6年に伸長して登記回数を減らし、事務所を自宅などに置く設計です。それでも均等割の年額合計7万円は残ります。

Q. 一般社団法人と比べて維持費は高いですか?

A. 均等割と公告の義務は同じですが、財団は評議員3人・理事3人・監事1人が必置で、評議員会は書面投票や代理出席ができないため、会議の運営コストは下げにくいです。また純資産300万円を2期連続で下回ると解散する規定は財団だけにあります。

Q. 均等割の減免は受けられますか?

A. 自治体によります。収益事業を行わない公益法人等に対し、条例で申請による減免を設けている自治体があります。所在地の都道府県と市町村で要件を確認し、該当すれば毎年申告と申請を行います。

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