非営利団体とは?「もうけてはいけない」ではない|法人格の有無で変わる7つの種類と税金の扱いを条文で整理

一般社団法人法
非営利団体をつくりたいのですが、
もうけを出してはいけないのでしょうか?

いいえ、もうけを出すこと自体は自由です。職員に給与を払うことも、理事に報酬を出すことも、事業で黒字を出すこともできます。

非営利が禁じているのは、そのもうけを構成員に分け与えることだけです。株式会社の株主配当にあたるものができない、と考えるとほぼ正確です。

この記事では、非営利団体という言葉が指す範囲、法人格の有無による分かれ方、種類ごとの税金の扱いを、条文にあたって整理します。

非営利団体とは ― 法律にはない言葉

「非営利団体」は法律用語ではありません。ボランティア団体・NPO法人・業界団体・同窓会・自治会・財団など、もうけを構成員に分配しない団体をひとまとめにした日常語です。

そのため、どこまでを非営利団体と呼ぶかは文脈で変わります。狭くはNPO法人だけを指すこともあれば、広くは学校法人・宗教法人・社会福祉法人まで含めることもあります。

本記事では、剰余金を構成員に分配しないすべての団体を非営利団体として扱い、その中身を法人格の有無で切り分けて説明します。

「非営利」の正体は分配の禁止(一般法人法11条2項・35条3項)

一般社団法人の場合、非営利であることは条文ではっきり書かれています。

一般法人法11条2項は、社員に剰余金または残余財産の分配を受ける権利を与える旨の定款の定めは、その効力を有しないと定めています。定款にそう書いても無効になる、という強い規定です。

同法35条3項も、社員総会は、社員に剰余金を分配する旨の決議をすることができないとしています。定款でも総会決議でも分配はできない、という二重の作りです。

株式会社 一般社団法人などの非営利団体
利益を出すこと
給与・役員報酬を払うこと
利益を構成員に分配すること ○(配当) ×
解散したときの残りの財産 株主へ 定款で定めた者へ(社員へは分配できない)
出資持分の売買 そもそも持分がない
POINT 「非営利=無償・ボランティア」ではありません。有料のサービスを提供して黒字を出し、それを翌年の事業や職員の給与に回すのは、非営利団体の通常の運営です。

非営利団体は「法人格があるか」で大きく2つに分かれる

法人格なし(任意団体) 法人格あり
団体名義の銀行口座 原則として開けない 開ける
団体名義の不動産登記 できない できる
契約の当事者 代表者個人 法人そのもの
代表者が交代したとき 名義の書き換えが要る 影響なし
つくる手間 なし(規約と総会で足りる) 登記や認証が要る
税金の扱い 人格のない社団等(収益事業のみ課税) 種類による

法人格のない団体は任意団体と呼ばれ、法律の世界では「権利能力なき社団」「法人でない社団又は財団」と表現されます。民事訴訟法29条により、代表者または管理人の定めがあれば訴訟の当事者にはなれますが、登記名義人にはなれません。

お金や不動産を団体として持ち続けるつもりなら、どこかの時点で法人格を得るかどうかの判断が必要になります。

法人格のある非営利団体7種類を一覧で比べる

種類 つくり方 主な要件 向いている活動
一般社団法人 登記のみ 社員2名以上・理事1名以上 会員制の団体・協会・研究会
一般財団法人 登記のみ 300万円以上の財産の拠出・役員等7名 財産の運用による助成・奨学
公益社団法人 一般社団法人が公益認定を受ける 公益認定法5条の認定基準 不特定多数の利益になる事業
公益財団法人 一般財団法人が公益認定を受ける 公益認定法5条の認定基準 同上(財産型)
NPO法人 所轄庁の認証+登記 社員10人以上・別表の20分野 福祉・まちづくり・環境など
社会福祉法人 所轄庁の認可+登記 社会福祉事業を行うこと 保育所・介護施設など
学校法人・宗教法人・医療法人 所轄庁の認可・認証等 それぞれの根拠法による 学校・寺社・病院など

この中でいちばん手軽なのは一般社団法人です。公証人による定款認証と法務局への登記だけででき、活動分野の制限もありません。設立までおおむね2〜3週間です。

NPO法人は「20分野」に当てはまることが条件(NPO法2条・別表)

NPO法人(特定非営利活動法人)は、誰でも自由につくれるわけではありません。NPO法2条1項は、特定非営利活動とは別表に掲げる活動に該当し、かつ不特定かつ多数のものの利益の増進に寄与することを目的とするもの、と定めています。

別表には20の分野が並んでいます。保健・医療または福祉の増進、社会教育の推進、まちづくりの推進、観光の振興、学術・文化・芸術・スポーツの振興、環境の保全、災害救援、地域安全、人権の擁護、国際協力、男女共同参画、子どもの健全育成、情報化社会の発展、科学技術の振興、経済活動の活性化、職業能力の開発、消費者の保護などです。

NPO法人ならではの条件

  • 社員10人以上が必要(NPO法10条1項3号)
  • 報酬を受ける役員は、役員総数の3分の1以下(NPO法2条2項1号ロ)
  • 宗教活動・政治活動・特定の候補者や政党の支持を主たる目的にできない(同項2号)
  • 設立には所轄庁の認証が要る(NPO法10条1項)。申請書類は縦覧され、数か月かかる

裏を返すと、20分野に当てはまらない活動や、少人数で始めたい場合は一般社団法人が現実的です。業界団体・同窓会・趣味の団体・資格認定団体などは、NPO法人ではなく一般社団法人が選ばれることがほとんどです。

税金は「どの区分に入るか」で決まる(法人税法2条)

法人税法上の区分 該当する団体 課税される範囲
人格のない社団等(2条8号) 任意団体で代表者または管理人の定めがあるもの 収益事業から生じた所得のみ
公益法人等(2条6号・別表第二) 公益社団法人・公益財団法人・学校法人・社会福祉法人・宗教法人など 収益事業から生じた所得のみ
非営利型法人(2条9号の2) 要件を満たす一般社団法人・一般財団法人 収益事業から生じた所得のみ
普通法人(2条9号) 上記以外の一般社団法人・一般財団法人 すべての所得

NPO法人は法人税法別表第二に掲げられており、公益法人等として扱われます。

ここでいう収益事業とは、法人税法2条13号が「販売業、製造業その他の政令で定める事業で、継続して事業場を設けて行われるもの」と定めるもので、具体的には法人税法施行令5条1項が34の業種を列挙しています。物品販売業・不動産貸付業・請負業・出版業・席貸業・技芸教授業などが含まれます。

会費や寄付は、この34の業種のどれにも当たらなければ、法人税の課税対象には入らないという整理になります。ただし、会費という名目でも実質が対価であれば収益事業と判断されることがあり、判断は事業の実態によります。

一般社団法人が「非営利型」になる4つの要件(法人税法施行令3条1項)

一般社団法人は、放っておくと法人税法上は普通法人です。すべての所得に法人税がかかります。次の4つの要件をすべて満たすと非営利型法人になり、収益事業から生じた所得だけの課税に切り替わります。

非営利性が徹底された法人の要件(施行令3条1項)

  • 定款に剰余金の分配を行わない旨の定めがあること(1号)
  • 定款に、解散したときの残りの財産が国・地方公共団体・公益社団法人などに帰属する旨の定めがあること(2号)
  • 上の2つの定款の定めに反する行為をしたことがないこと。特定の個人や団体に特別の利益を与えたことがないことを含む(3号)
  • 各理事について、その理事と配偶者・三親等以内の親族などである理事の合計が、理事総数の3分の1以下であること(4号)

もうひとつ、会員向けの共益活動を主たる目的とする共益的活動を目的とする法人の類型もあります(施行令3条2項)。こちらは会費の定めが定款にあることなどが条件です。

POINT 4号の3分の1ルールでつまずく例が目立ちます。家族3人が理事で、うち2人が夫婦なら要件を満たしません。設立の段階で理事の顔ぶれを決めておくと、あとから慌てずにすみます。

この記事の位置づけ

本記事は、制度を一般的に説明したものです。個別の事案についての判断や手続きの代行を行うものではありません。

  • 税務の取扱いは、収入の性質や事業の実態によって結論が変わります。具体的な判定や税額の計算については、税理士または所轄の税務署へご確認ください。
  • 設立登記など登記申請の手続きは司法書士が取り扱う業務です。ご自身で法務局へ申請することもできます。

どれを選ぶか ― 3つの質問で切り分ける

質問 はい いいえ
お金や不動産を団体名義で持ちますか? 法人格が必要です(下へ) 任意団体のままでも回ります
活動はNPO法の20分野に当てはまり、10人以上集まりますか? NPO法人も選べます(設立費用は不要・認証に数か月) 一般社団法人が現実的です
先に運用する財産がありますか? 一般財団法人(300万円以上の拠出) 一般社団法人(お金は不要)

公益社団法人・公益財団法人は、いきなりつくることはできません。まず一般社団法人・一般財団法人を設立し、そのうえで行政庁の公益認定を受ける順になります。

迷ったら、まず一般社団法人でつくって活動を始め、実績ができてから公益認定を検討するのが無理のない進め方です。

非営利団体のお金はどこから来るのか

収入 性格 気をつける点
会費 構成員が負担する分担金 対価性が強いと収益事業と見られることがあります。定款または規約に金額の定め方を書いておきます。
寄付 見返りを求めない拠出 記録を残し、会費と分けて経理します。寄付した側の税の優遇は、法人の種類によって扱いが変わります。
事業収入 講座・出版・受託などの対価 34の業種に当たるかどうかで法人税の扱いが変わります。
助成金・補助金 公募に応じて受け取る資金 使途と報告が決まっています。交付決定の前に使った費用は対象外になることがあります。

非営利団体の運営でつまずきやすいのは、会費・寄付・事業収入を帳簿の上で分けていないことです。分けていないと、収益事業の判定にも、助成金の実績報告にも答えられなくなります。

法人になる前の任意団体の段階から、この4つを分けて記録しておくと、法人化したあとの経理がそのまま続けられます。

非営利団体でも避けて通れない3つの手続き

手続き 内容 根拠・窓口
設立の登記 一般社団法人・一般財団法人・NPO法人は登記して初めて成立します。任意団体にはこの手続きがありません。 法務局
税務署などへの届出 法人を設立したら、税務署・都道府県・市区町村へ設立の届出を出します。収益事業を始めるときは別の届出が必要になります。 所轄の税務署・自治体
人を雇ったときの保険 法人が人を雇えば、労働保険や社会保険の加入手続きが発生します。団体の性格にかかわらず必要です。 労働基準監督署・ハローワーク・年金事務所

「非営利だから役所の手続きは軽い」ということはありません。むしろ法人になった時点で、株式会社と同じ土俵の事務が発生します。毎年の決算・申告・役員の変更登記も同じです。

NPO法人と公益社団法人・公益財団法人は、これに加えて所轄庁・行政庁への毎年の報告が加わります。一般社団法人にはこの報告義務がないため、事務の負担でいえばいちばん軽い部類です。

よくある3つの誤解

ここを取り違えている例が多い

  • 誤解1「非営利団体は税金がかからない」……かかる場合があります。一般社団法人は、非営利型の要件を満たさなければすべての所得が法人税の対象です。法人住民税の均等割は、所得がなくても原則としてかかります。
  • 誤解2「NPO法人のほうが信用される」……相手によります。所轄庁の認証と毎年の情報公開がある点は強みですが、一般社団法人でも登記事項証明書と決算書で実態を示せます。取引先が見ているのは活動の中身であることがほとんどです。
  • 誤解3「非営利団体は誰でも自由に入退会できる」……定款しだいです。一般社団法人では社員の資格の得喪に関する規定を定款に必ず書きます(一般法人法11条1項5号)。入会に理事会の承認を要する設計もできます。

とくに誤解1は、設立してから気づくと痛みが大きい論点です。非営利型を狙うなら、定款を作る段階で剰余金の不分配と残余財産の帰属先を書き込んでおくのが確実です。あとから定款を変えることもできますが、要件を満たさなかった期間の扱いが問題になります。

非営利団体についてよくある質問

Q. 非営利団体は利益を出してはいけないのですか?

A. いいえ。利益を出すことは自由です。禁じられているのは、その利益を構成員に分配することです。一般社団法人では、社員に剰余金または残余財産の分配を受ける権利を与える旨の定款の定めは効力を有しません(一般法人法11条2項)。利益は翌年の事業や職員の給与に充てることができます。

Q. 非営利団体の職員に給料は払えますか?

A. 払えます。給与は労働の対価であって利益の分配ではありません。理事への報酬も支払えます。ただしNPO法人は、報酬を受ける役員の数を役員総数の3分の1以下に抑える必要があります(NPO法2条2項1号ロ)。

Q. 非営利団体に税金はかかりますか?

A. かかる場合があります。法人税法上どの区分に入るかで変わり、人格のない社団等・公益法人等・非営利型法人は収益事業から生じた所得だけに課税され、それ以外の一般社団法人・一般財団法人はすべての所得に課税されます。収益事業は法人税法施行令5条1項が列挙する34の業種です。

Q. NPO法人と一般社団法人はどちらがよいですか?

A. 活動分野と人数で決まります。NPO法の別表20分野に当てはまり、社員10人以上を集められるならNPO法人も選べます。当てはまらない、または少人数で早く始めたいなら一般社団法人です。NPO法人は設立費用がかからないかわりに所轄庁の認証に数か月かかり、設立後も毎年の報告義務があります。

Q. 任意団体のままではいけませんか?

A. 差し支えありません。ただし団体名義で銀行口座を開いたり不動産を登記したりできないため、財産は代表者個人の名義になりがちです。代表者の交代・死亡・個人の借入れのたびに問題が起きうる点に注意してください。

Q. 非営利団体は解散したら財産をメンバーで分けられますか?

A. 一般社団法人ではできません。残余財産の分配を受ける権利を社員に与える定款の定めは効力を持ちません(一般法人法11条2項)。定款で帰属先を定めておくのが通常で、非営利型法人の要件を満たすには、国・地方公共団体・公益社団法人などに帰属する定めが必要です(法人税法施行令3条1項2号)。

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