NPO法人の定款の設計|あとで変えずに済む書き方

一般社団法人法
定款は、設立のときの書き方で10年分の手間が決まります。

NPO法人の定款は、変更に手間がかかる文書です。

総会の議決が要り、内容によっては認証も必要になります。

だからこそ、最初の書き方が効いてきます。

この記事では、変更しやすい定款の設計を解説します。

POINT 結論:定款に細かく書きすぎると、変えるたびに総会と所轄庁の手続きが要ります。金額、人数、日付は、定款に固定せず別に定める形にしておきましょう。ただし、法律で定款の記載事項とされているものは省けません。

定款を変えるのは重い

定款の変更には、社員総会の議決が必要です。

通常の議決より、多い賛成が求められます。

社員総数の2分の1以上が出席し、その4分の3以上の賛成が原則です。

そのうえ、内容によっては所轄庁の認証が要ります。

認証には、数か月かかります。

届出で足りる事項でも、書類の作成は必要です。

つまり、定款を変えるのは重い作業です。

毎年のように変えていては、運営が回りません。

最初から、変えずに済む書き方をしておきましょう。

認証が要るものと届出で足りるもの

定款変更は、二つに分かれます。

認証が必要なのは、目的、名称、事業などです。

所轄庁が変わる事務所の変更も、認証が必要です。

一方、届出で足りるものもあります。

同じ所轄庁の中での事務所の移転などです。

事業年度の変更も、届出で足りる側です。

どちらに当たるかで、手間がまったく違います。

変更を検討するときは、まずここを確認します。

所轄庁の手引きに、一覧が載っています。

書き方 変更の手間
金額を定款に書く 会費は年5,000円とする 総会の議決が必要
別に定めるとする 会費は総会で別に定める 総会の決議のみ
人数を確定数で書く 理事は5人とする 欠員で定款違反の状態
人数に幅を持たせる 理事は3人以上10人以内 範囲内なら手続き不要
事務所を番地まで書く ○○市○○町1-2-3 移転のたびに定款変更
市区町村まで書く ○○市に置く 同一市区町村内なら不要

金額は定款に書かない

いちばん効くのが、金額の扱いです。

会費の額を、定款に書く団体があります。

すると、値上げのたびに定款変更が必要になります。

入会金や、賛助会費も同じです。

そこで、別に定めるという書き方にします。

会費に関する事項は、総会において別に定める、といった条文です。

これなら、会費規程を総会で決めるだけで済みます。

役員の報酬も、同じ考え方です。

定款には、報酬を受けることができる旨だけを書きます。

具体的な額は、規程や総会の決議で定めます。

人数は幅を持たせる

役員の定数も、書き方で差が出ます。

理事5人と確定数で書くと、一人辞めた時点で定款違反です。

理事3人以上10人以内、と幅を持たせておきましょう。

法律の下限は、理事3人・監事1人です。

これを下回る定めは、置けません。

上限は、少し余裕を持たせます。

人が増えたときに、定款変更をせずに済みます。

社員の人数は、定款に書く必要がありません。

10人以上という要件は、法律にあるためです。

事務所の書き方

主たる事務所の所在地は、定款の記載事項です。

ただし、どこまで書くかは選べます。

市区町村までで足ります。

番地まで書くと、少しの移転でも定款変更が必要です。

同じビルの別の階に移るだけでも、手続きが生じます。

市区町村までなら、その範囲での移転は自由です。

登記には番地まで必要ですが、定款とは別の話です。

設立のときに、この点を意識しておきましょう。

従たる事務所も、必要がなければ置かない選択があります。

定款に固定しないほうがよいもの

  • 会費や入会金の具体的な額
  • 役員の報酬の額
  • 役員の確定した人数
  • 事務所の番地
  • 理事会や委員会の細かい運営方法
  • 事務局の組織や職名
  • 特定の年度だけの事情
  • 協力団体や取引先の固有名詞
  • 会計の具体的な処理の方法
  • 委員会や部会の細かい構成

定款に必ず書くこと

一方、省けないものもあります。

法律で、定款の記載事項が決まっているためです。

目的、名称、その行う特定非営利活動の種類が含まれます。

主たる事務所の所在地も、記載事項です。

社員の資格の得喪に関する事項も、書きます。

役員に関する事項、会議に関する事項も同様です。

資産、会計、事業年度に関する事項も入ります。

解散に関する事項、定款の変更に関する事項もあります。

これらを規程に落とすことは、できません。

一覧を確認しながら、作りましょう。

委任の条文を入れておく

細かいことを規程に落とすには、根拠が要ります。

定款に、委任の条文を置いておきましょう。

この定款に定めるもののほか、必要な事項は理事会が別に定める、といった条文です。

この一文があるかどうかで、規程の位置づけが変わります。

委任の根拠がないまま作った規程は、扱いが不安定です。

設立のときに、必ず入れておきましょう。

すでにない場合は、定款変更で追加できます。

ただし、定款に反する規程は無効です。

委任があっても、その範囲内にとどまります。

事業の書き方

定款の事業の条文は、慎重に書きます。

書いていない事業は、行えないためです。

将来やる予定のものも、含めておきましょう。

ただし、抽象的すぎると補正の原因になります。

具体的に、しかし幅を持たせるのが要点です。

前各号に掲げる事業に附帯する事業、という項を置く例もあります。

その他この法人の目的を達成するために必要な事業、という書き方もあります。

特定非営利活動に係る事業と、その他の事業を分けて書きます。

事業を追加するには、認証が必要になります。

設立の段階で、数年先まで考えておきましょう。

会議に関する条文

総会と理事会の条文も、実務に直結します。

招集の通知の期間を、何日前とするかを書きます。

短すぎると、準備が間に合いません。

長すぎると、急な議題に対応できません。

書面表決と委任状の定めも、必ず入れておきます。

これがないと、出席が足りないときに困ります。

電磁的方法の定めも、入れておくと便利です。

定足数と議決の要件も、書きます。

法律の要件を下回る定めは、置けません。

実際に運営できる水準で、決めましょう。

あとから困る書き方

実務で困る書き方には、傾向があります。

第一が、会費の額を定款に書いた場合です。

第二が、役員を確定数で書いた場合です。

第三が、事務所を番地まで書いた場合です。

第四が、書面表決の定めがない場合です。

第五が、委任の条文がない場合です。

第六が、事業が狭すぎる場合です。

第七が、任期が短すぎる場合です。

1年とすると、毎年改選と登記が必要になります。

2年以内が上限なので、2年とするのが一般的です。

ひな形をそのまま使わない

所轄庁が、定款のひな形を公開しています。

出発点としては、非常に有用です。

ただし、そのまま使うのは避けましょう。

団体の実情と、合わない部分があるためです。

会議の回数や、役員の人数がその例です。

守れない条文を置くと、常に違反した状態になります。

理事会を毎月開くと書いて、実際は年2回という団体もあります。

実態に合わせるか、実態を条文に合わせるかです。

どちらにせよ、放置してはいけません。

定款を見直す機会

設立から一度も見直していない団体は、多くあります。

見直す機会を、意識して作りましょう。

第一が、代表者が交代するときです。

第二が、事業が大きく変わるときです。

第三が、他の定款変更を行うときです。

まとめて議決すれば、認証は一度で済みます。

第四が、認定を目指すときです。

要件に合っているかを、確認する必要があります。

第五が、10年など節目の年です。

年に一度、条文を読む機会を作るだけでも違います。

事業年度の決め方

事業年度も、定款の記載事項です。

4月から翌年3月とする団体が、多くを占めます。

ただし、これは決まりではありません。

活動の繁忙期と、決算作業が重ならない時期を選べます。

夏に大きな催しがあるなら、3月末決算が合います。

春に事業が集中するなら、別の時期が向きます。

事業年度の変更は、届出で足りる側です。

認証までは、必要ありません。

それでも総会の議決は要るため、設立時に考えておきましょう。

毎年の忙しさが、この一点で変わります。

解散に関する条文

解散に関する事項も、定款の記載事項です。

設立のときには、意識しにくい部分です。

しかし、いざというときに効いてきます。

残余財産の帰属先を、書いておきます。

帰属先は、法律で範囲が決まっています。

他のNPO法人や、国、地方公共団体などです。

特定の個人や、営利法人にはできません。

書いていないと、国庫に帰属することになります。

同じ分野で活動する団体を、想定しておきましょう。

解散の議決の要件も、あわせて確認します。

資産と会計の条文

資産と会計に関する事項も、記載事項です。

ただし、細かく書く必要はありません。

資産の構成、管理、会計の原則を、簡潔に書きます。

具体的な処理の方法は、経理規程に落とします。

会計の年度は、事業年度と一致させます。

別々にすると、書類の作成が煩雑になります。

会計の具体的な処理は、専門家に相談してください。

定款には、原則だけを置くのが実務的です。

書きすぎると、実務が変わるたびに定款変更が必要になります。

定款の設計のまとめ

定款の変更は、総会の議決と所轄庁の手続きが要る重い作業です。

金額、確定人数、番地は、定款に固定しないでおきましょう。

会費や報酬の額は、別に定めるという書き方にします。

役員の定数は、幅を持たせて書きます。

事務所は、市区町村までの記載で足ります。

委任の条文を置いて、細かいことは規程に落とします。

ただし、法律で定款の記載事項とされているものは省けません。

事業は、数年先まで見込んで書いておきましょう。

事業年度は、活動の繁忙期と決算作業が重ならない時期を選べます。

残余財産の帰属先も、設立のときに書いておいてください。

書いていないと、解散のときに国庫へ帰属することになります。

ひな形は出発点として使い、守れる水準の条文に直しましょう。

よくある質問

Q. 会費の額は定款に書く?

A. 書かないほうが実務は楽です。書くと値上げのたびに定款変更が必要になります。会費に関する事項は総会において別に定める、という書き方にしておきましょう。役員の報酬も同じ考え方です。

Q. 役員の人数はどう書く?

A. 幅を持たせます。理事5人という確定数だと、一人辞めた時点で定款違反の状態になります。理事3人以上10人以内のように書けば、範囲内なら手続きが要りません。法律の下限は理事3人・監事1人です。

Q. 事務所は番地まで書く?

A. 市区町村までで足ります。番地まで書くと、同じビルの別の階に移るだけでも定款変更が必要になります。登記には番地まで必要ですが、定款とは別の話です。設立のときに意識しておきましょう。

Q. 何でも規程に落とせる?

A. できません。目的、名称、事業、社員、役員、会議、資産、会計、事業年度、解散、定款変更に関する事項は、法律で定款の記載事項とされています。一覧を確認しながら作ってください。

Q. ひな形をそのまま使ってもいい?

A. 出発点としては有用ですが、そのままは避けてください。理事会を毎月開くと書いて実際は年2回、といった食い違いが生じます。実態に合う水準にしましょう。

Q. 定款はいつ見直す?

A. 代表者の交代、事業の大きな変更、他の定款変更を行うとき、認定を目指すときです。他の変更とまとめて議決すれば、認証は一度で済みます。年に一度、条文を読む機会を作るだけでも違います。

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