一般社団法人の契約書の名義と締結|ポイントを解説

一般社団法人法
契約書の当事者欄に誰の名前を書くか、誰が署名するか、理事会にかける必要があるか。法人の契約で迷いやすい点を、条文に沿って順番に説明します。

結論から申し上げます。

一般社団法人の契約は、法人そのものが当事者です。理事個人の契約ではありません。

契約書には「一般社団法人〇〇 代表理事 〇〇〇〇」と書き、代表理事が署名または記名押印します。

代表理事は、法人の業務に関する一切の行為をする権限を持ちます(一般法人法77条4項)。

ただし、理事会を置く法人では、多額の借入れや重要な財産の売買は理事会の決議が必要です(90条4項)。

理事本人やその会社と契約するときは、事前に承認を受ける手続があります(84条・92条)。

POINT 名義=法人、署名=代表理事、重要な契約=理事会の決議、理事との取引=事前の承認。この4点を押さえれば、法人の契約で大きく外れることはありません。

契約の当事者は「法人」そのもの

契約の当事者は「法人」そのもの
図:契約の当事者は「法人」そのもの

一般社団法人は、登記によって成立する法人です。法人は自分の名前で契約し、権利と義務を持ちます。

民法34条は、法人は定款で定めた目的の範囲内で権利を持ち、義務を負うと定めています。

そのため契約書の当事者欄には、法人の正式名称を書きます。

名称には「一般社団法人」の文字が必ず入ります(一般法人法5条1項)。

代表理事の個人名だけを当事者欄に書くと、個人の契約なのか法人の契約なのかが争いになります。

事務所の賃貸借、業務委託、物品の購入、借入れなど、どの契約でも考え方は同じです。

書き方 当事者 評価
一般社団法人〇〇協会 代表理事 〇〇〇〇 法人 もっとも確実
〇〇協会 代表理事 〇〇〇〇 法人(と読める) 名称は登記どおり「一般社団法人」を入れる
〇〇〇〇(個人名のみ) 個人と読まれやすい 法人の契約には使わない
一般社団法人〇〇協会(代表者名なし) 法人 誰が締結したか不明になる
一般社団法人〇〇協会 理事長 〇〇〇〇 法人 呼び名は可。登記上の代表理事と一致させる

「理事長」「会長」は法人が付ける呼び名です。書き方の考え方は一般社団法人の代表者の肩書きで詳しく説明しています。

契約書に署名できるのは誰か

法人を代表して契約できる人は、機関設計によって変わります。

理事会を置く法人では、理事会が理事の中から代表理事を必ず選びます(90条3項)。この代表理事が署名します。

理事会を置かない法人では、原則として理事が各自、法人を代表します(77条1項・2項)。

理事会のない法人でも、定款・理事の互選・社員総会の決議で代表理事を定めれば、代表理事だけが代表します(77条3項)。

代表権のない理事や職員は、委任を受けなければ法人の名前で契約できません。

機関設計 契約書に署名する人 根拠
理事会あり 代表理事 一般法人法90条3項・77条4項
理事会なし・代表理事を定めた 代表理事 77条1項ただし書・3項
理事会なし・代表理事を定めていない 各理事 77条1項・2項
理事会なし・理事1人 その理事 77条1項
代表理事から委任を受けた職員等 委任の範囲で代理人として署名 民法99条

代表理事の選び方と権限の全体像は、一般社団法人の代表理事の選び方で解説しています。

署名欄・当事者欄の書き方

契約書の末尾には、法人の所在地・名称・代表者の肩書きと氏名を並べます。

所在地は、登記されている主たる事務所の所在場所に合わせると確認がしやすくなります。

代表者の肩書きは、登記と同じ「代表理事」と書くのが確実です。

署名(自署)か、記名(印字)+押印のどちらかで締結するのが一般的です。

本文中では「一般社団法人〇〇協会(以下「甲」という。)」のように略称を定めます。

契約書の当事者欄・署名欄の記載例

(冒頭)一般社団法人〇〇協会(以下「甲」という。)と株式会社△△(以下「乙」という。)は、次のとおり業務委託契約を締結する。

(末尾)本契約の成立を証するため本書2通を作成し、甲乙記名押印のうえ各1通を保有する。

令和〇年〇月〇日

甲 東京都〇〇区〇〇一丁目〇番〇号 一般社団法人〇〇協会 代表理事 〇〇〇〇 ㊞

乙 東京都△△区△△二丁目△番△号 株式会社△△ 代表取締役 △△△△ ㊞

(代理人が締結する場合)甲 一般社団法人〇〇協会 代表理事〇〇〇〇 代理人 事務局長 □□□□ ㊞

代理人が締結する場合は、本人(法人と代表理事)と代理人の両方を書き、代理権を示す委任状を用意します。

相手方の代表権を確かめる方法

法人と契約するとき、署名する人に代表権があるかは登記事項証明書で確かめられます。

一般社団法人は、理事の氏名と代表理事の氏名・住所を登記しています(301条2項5号・6号)。

登記事項証明書は、法務局で誰でも交付を請求できます。オンライン請求も用意されています。

相手が一般社団法人の場合は、署名者の氏名が「代表理事」欄にあるかを見ます。

自分の法人が確認を求められることもあります。代表理事が交代したら、変更の登記を早めに済ませておきます。

定款で代表理事の権限を内部的に制限しても、その制限を知らない相手には主張できません(77条5項)。

締結前に相手方について確認すること

  • 登記事項証明書の名称・所在地が契約書と一致しているか
  • 署名者が代表者として登記されているか
  • 代理人が署名する場合、委任状と代理権の範囲を受け取ったか
  • 相手が理事会決議を要する取引なら、決議の有無を確認したか
  • 契約金額・期間・解約条件が書面に明記されているか

この記事の位置づけ

本記事は、制度を一般的に説明したものです。個別の事案についての判断や手続きの代行を行うものではありません。

  • 設立登記など登記申請の手続きは司法書士が取り扱う業務です。ご自身で法務局へ申請することもできます。

代表理事だけでは決められない契約

代表理事は対外的に法人を代表しますが、何を決めるかは別のルールで決まります。

理事会を置く法人では、次の事項の決定を理事に任せることができません(90条4項)。

重要な財産の処分及び譲受け(1号)、多額の借財(2号)、重要な使用人の選任及び解任(3号)などです。

これらに当たる契約は、理事会で決議してから代表理事が締結します。

「重要」「多額」の線引きは法律に金額がありません。法人の規模や財産に照らして判断されます。

迷いをなくすため、理事会規程や決裁規程で金額の基準を決めている法人が多くあります。

理事会のない法人で理事が2人以上いる場合、業務は定款に別段の定めがなければ理事の過半数で決めます(76条2項)。

契約の例 理事会設置法人での扱い 根拠
事務所用の不動産を買う・売る 理事会の決議(重要な財産なら) 90条4項1号
金融機関から借り入れる 理事会の決議(多額なら) 90条4項2号
事務局長を雇う・解任する 理事会の決議(重要な使用人なら) 90条4項3号
従たる事務所を設ける賃貸借 理事会の決議(事務所の設置) 90条4項4号
日常の備品購入・少額の業務委託 代表理事などに委任できる 90条2項1号・4項の反対解釈

理事会の決議方法や議事録の書き方は、理事会とは?役割・決議事項・運営の進め方で説明しています。

理事との取引には事前の承認がいる

法人と理事の利益がぶつかる契約には、事前の承認が必要です(84条1項)。

対象は、理事が自分や第三者のために法人と取引する場合(2号)です。

法人が理事の借金を保証するなど、理事と利益が相反する取引(3号)も対象です。

理事が法人と同じ種類の事業で取引する場合(1号・競業)も承認が必要です。

承認する機関は、理事会のない法人では社員総会、理事会設置法人では理事会です(84条1項・92条1項)。

承認を受けるときは、その取引の重要な事実を開示します。

理事会設置法人では、取引をした理事は取引後遅滞なく、重要な事実を理事会に報告します(92条2項)。

その取引に特別の利害関係を持つ理事は、理事会の決議に加わることができません(95条2項)。

取引の例 種類 承認する機関(理事会設置法人)
代表理事が所有する建物を法人が借りる 直接取引(84条1項2号) 理事会(92条1項)
理事が経営する会社に業務を委託する 直接取引(第三者のため) 理事会
法人が理事個人の借入れを保証する 間接取引(84条1項3号) 理事会
理事が法人と同じ事業を個人で行う 競業(84条1項1号) 理事会

承認を受けた取引には、自己契約・双方代理を制限する民法108条は適用されません(84条2項)。

反対に、承認のない取引で法人に損害が出ると、関わった理事は任務を怠ったものと推定されます(111条3項)。

承認の手続と記録の残し方は、一般社団法人の利益相反取引とはでさらに詳しく説明しています。

職員や理事に契約を任せるとき

日常の契約をすべて代表理事が署名するのは現実的ではありません。

代表理事から代理権を与えられた職員は、その範囲内で法人のために契約できます(民法99条)。

代理権の範囲は、委任状や職務権限規程で書面にしておきます。

代理権のない人がした契約は、法人が追認しなければ法人に効力が及びません(民法113条1項)。

ただし、相手が権限があると信じる正当な理由があると、法人が責任を負うことがあります(民法110条)。

代表権のない理事に「理事長」などの名称を付けた場合も、法人が善意の第三者に責任を負います(一般法人法82条)。

代表理事が職務として相手に損害を与えたときは、法人が賠償責任を負います(78条)。

委任状の記載例(職員に契約締結を任せる場合)

委任状

私は、当法人の職員□□□□を代理人と定め、次の権限を委任します。

1 〇〇業務に関する業務委託契約(契約金額〇〇万円以下のもの)の締結

2 前号の契約に関する請求書・領収書の受領

委任期間 令和〇年〇月〇日から令和〇年〇月〇日まで

令和〇年〇月〇日 東京都〇〇区〇〇一丁目〇番〇号 一般社団法人〇〇協会 代表理事 〇〇〇〇 ㊞

金額の上限・契約の種類・期間を書いておくと、権限の範囲が明確になります。

印鑑と署名の考え方

契約は、法令に特別の定めがある場合を除き、書面や押印がなくても合意だけで成立します(民法522条)。

それでも書面に署名や押印をするのは、後で証拠として使うためです。

私文書は、本人または代理人の署名か押印があるときは、真正に成立したものと推定されます(民事訴訟法228条4項)。

法人の契約では、代表理事の署名、または記名と法人の印鑑の押印で締結するのが一般的です。

法務局に印鑑を届け出た代表理事は、その印鑑の証明書の交付を請求できます(一般法人法330条で準用する商業登記法12条1項)。

不動産の売買や金融機関からの借入れでは、印鑑証明書の添付を求められることがよくあります。

日常の契約では、角印や銀行印など、どの印鑑を使うかを社内規程で決めておくと混乱しません。

印鑑 主な用途 注意点
代表者印(法務局に届け出た印鑑) 重要な契約・登記・印鑑証明書が必要な場面 保管者と押印記録を決める
銀行印 金融機関の口座取引 代表者印と分けると管理しやすい
角印(法人名の印) 請求書・見積書など日常の書類 契約書に使うかは規程で決める
署名のみ(押印なし) 押印を求めない契約 自署で成立・証拠になる

印鑑の種類と作り方は、一般社団法人の印鑑は何種類必要?で説明しています。

電子契約で締結する場合

契約の成立に書面は原則として不要なので、電子契約でも契約は有効に成立します(民法522条2項)。

電子署名法は、本人による一定の電子署名が行われた電磁的記録は真正に成立したものと推定すると定めています(3条)。

ここでいう電子署名は、作成者を示し、改変がないかを確認できる措置です(2条1項)。

一方で、法令が書面を求める契約もあります。たとえば保証契約は書面でしなければ効力を生じません(民法446条2項)。

ただし保証契約は、電磁的記録でした場合も書面でしたものとみなされます(同条3項)。

電子契約を使うときは、相手方の同意、代表理事のアカウント管理、データの保存方法を決めておきます。

電子契約を導入するときに決めること

  • 誰のアカウントで署名するか(代表理事本人か、権限を委ねた職員か)
  • 職員に操作させる場合の承認手順と金額の上限
  • 締結済みデータの保存場所と検索方法
  • 紙の契約書を求める相手への対応
  • 理事会決議が必要な契約で、決議を確認してから送信する手順

契約書に貼る収入印紙

契約書の種類と記載金額によっては、印紙税がかかります(印紙税法2条・3条)。

課税される文書は印紙税法の別表第一に列挙されています。すべての契約書が対象ではありません。

たとえば不動産売買契約書、土地の賃貸借契約書、金銭消費貸借契約書などが国税庁の一覧表に掲げられています。

法人が作った契約書に課税されるかどうかは、文書の内容で判断します。

税額や課否の判定は、国税庁のタックスアンサー「印紙税額の一覧表」で確認できます。

この記事の位置づけ

本記事は、制度を一般的に説明したものです。個別の事案についての判断や手続きの代行を行うものではありません。

  • 税務の取扱いは、収入の性質や事業の実態によって結論が変わります。具体的な判定や税額の計算については、税理士または所轄の税務署へご確認ください。

締結から保管までの流れ

締結から保管までの流れ
図:締結から保管までの流れ

契約ごとに手順を固定しておくと、承認漏れや署名者の誤りを防げます。

1
契約の内容と金額を確認する
理事会決議や理事との取引の承認が必要かを判定する
▼
2
必要な決議・承認を得る
理事会設置法人は理事会、理事会なしは理事の過半数や社員総会(76条2項・84条1項)
▼
3
相手方の代表権を確認する
登記事項証明書や委任状で署名者を確かめる
▼
4
代表理事または代理人が締結する
法人名・肩書き・氏名を正しく書く
▼
5
原本または電子データを保管する
決議の議事録と一緒に綴じると、後から経緯をたどれる

契約書の条項ごとの確認ポイントは、一般社団法人の契約実務で解説しています。

NPO法人・一般財団法人との違い

一般財団法人にも、代表理事の権限と理事会の決議事項について一般社団法人と同じ規定が準用されます(197条)。

一般財団法人では、理事との取引を承認するのは理事会です(197条で84条1項を読み替え)。

NPO法人は、理事全員が法人を代表するのが原則で、定款で代表権を制限できます(NPO法16条)。

NPO法人と理事の利益が相反する事項では、理事は代表権を持ちません。

所轄庁が特別代理人を選任します(NPO法17条の4)。

NPO法人の契約の注意点は、NPO法人が契約するときの注意で説明しています。

項目 一般社団法人 NPO法人
契約する人 代表理事(理事会なしは各理事も可) 理事(定款で代表権を制限可)
理事との利益相反取引 社員総会または理事会の承認(84条・92条) 特別代理人を選任(17条の4)
根拠法 一般法人法 特定非営利活動促進法

よくある誤解

誤解1:理事なら誰でも法人の契約に署名できる。

理事会設置法人で代表権を持つのは代表理事です。

他の理事は委任がなければ代理できません。

誤解2:代表理事が署名すれば理事会の決議は要らない。重要な財産の処分や多額の借財は理事会の決議事項です(90条4項)。

誤解3:自分の法人と自分の会社の取引は、自分で決めてよい。理事と法人の取引は事前の承認が必要です(84条1項)。

誤解4:押印がない契約は無効。契約は合意で成立します(民法522条2項)。押印は証拠としての意味です。

誤解5:定款で代表理事の権限を制限すれば、相手にも主張できる。制限を知らない相手には対抗できません(77条5項)。


NPO法人について詳しく

一般社団法人の契約書についてよくある質問

Q. 契約書の名義は代表理事個人ですか、法人ですか?

A. 法人です。「一般社団法人〇〇 代表理事 〇〇〇〇」と書き、法人が当事者であることを示します(民法34条・一般法人法5条1項)。

Q. 代表理事でない理事が契約書に署名できますか?

A. 理事会設置法人では、代表理事から委任を受けた範囲でなければ法人を代理できません。理事会のない法人で代表理事を定めていなければ、各理事が代表します(一般法人法77条1項・2項)。

Q. どんな契約に理事会の決議が必要ですか?

A. 理事会設置法人では、重要な財産の処分・譲受け、多額の借財、重要な使用人の選任・解任などの決定を理事に委任できません(一般法人法90条4項)。

Q. 理事が経営する会社と契約するときの手続は?

A. 重要な事実を開示して、理事会設置法人は理事会、それ以外は社員総会の承認を受けます(一般法人法84条1項・92条1項)。利害関係のある理事は理事会の決議に加われません(95条2項)。

Q. 契約書に法人の実印は必ず押しますか?

A. 法律上の必須ではありません。契約は合意で成立し、署名か押印があれば文書は真正に成立したと推定されます(民法522条2項・民事訴訟法228条4項)。相手から印鑑証明書を求められる場面では届け出た印鑑を使います。

Q. 電子契約でも有効ですか?

A. 有効です。契約に書面は原則不要で、本人による一定の電子署名がある電磁的記録は真正に成立したものと推定されます(民法522条2項・電子署名法3条)。

Q. 相手の法人の代表者が本物か確かめる方法は?

A. 登記事項証明書を取り寄せ、署名者が代表理事として登記されているかを確認します(一般法人法301条2項6号)。

Q. 職員に契約を任せるには何が必要ですか?

A. 代表理事から代理権を与え、委任状や職務権限規程で範囲を書面にします。代理人は権限内で法人のために契約できます(民法99条)。

【免責事項】本記事は一般的な情報提供を目的として作成したものであり、正確性・最新性に配慮していますが、内容の完全性・正確性を保証するものではありません。法令・制度・税制は改正される場合があり、個別の事情により取り扱いが異なることもあります。本記事の情報を利用して行われた一切の行為およびその結果について、当サイトおよび筆者は責任を負いかねます。実際のお手続きや判断にあたっては、必ず公的機関の最新情報をご確認のうえ、必要に応じて専門家にご相談ください。