結論から申し上げます。
株式会社の設立は、「基本事項を決める→定款を作る→公証役場で認証→出資を払い込む→法務局で登記」の順に進みます。
法令で決まっている費用は、電子定款なら16万5,000円からです。
この記事では、発起人が1人で、出資も発起人だけで行う「発起設立」を前提に説明します。
個人事業を法人にする「法人成り」も、多くはこの形です。
| ステップ | やること | どこで |
|---|---|---|
| 1 | 会社の基本事項を決める | — |
| 2 | 会社の印鑑を作る | — |
| 3 | 定款を作る | — |
| 4 | 定款の認証を受ける | 公証役場 |
| 5 | 出資金を払い込む | 発起人の銀行口座 |
| 6 | 設立時取締役が調査する | — |
| 7 | 設立の登記を申請する | 本店所在地の法務局 |
| 8 | 登記のあとの届出 | 税務署・都道府県・市町村・年金事務所など |
商号・目的・本店・資本金・発起人・取締役・事業年度
実質的支配者の申告もこの段階
発起人個人の口座へ
申請日が会社の成立日
税務署は2か月以内
発起設立と募集設立の違い
株式会社の設立には、発起設立と募集設立の2つの方法があります(会社法25条1項)。
発起設立は、発行する株式の全部を発起人だけが引き受ける方法です。
募集設立は、発起人のほかに株式を引き受ける人を募る方法です。
募集設立では、株式を引き受けた人を集める「創立総会」を開く必要があります(会社法65条)。
小規模な会社や法人成りでは、手続が少ない発起設立がほとんどです。
| 項目 | 発起設立 | 募集設立 |
|---|---|---|
| 株式を引き受ける人 | 発起人だけ | 発起人+募集に応じた人 |
| 創立総会 | 不要 | 必要 |
| 払込みの証明 | 通帳の写しなどで足りる | 銀行などの払込金保管証明書が必要(会社法64条) |
| 向いているケース | 1人〜少人数での設立・法人成り | 設立時から外部の出資者を募る場合 |
発起人とは
株式会社の設立を企画し、定款を作る人を「発起人」と呼びます。
発起人は定款に署名か記名押印をします(会社法26条1項)。
電子定款の場合は、電子署名をします。
発起人は1人でもかまいません。
各発起人は、設立のときに発行する株式を1株以上引き受けなければなりません(会社法25条2項)。
発起人は個人でも法人でもなれます。
設立の手続で会社に損害を与えた場合などは、発起人が責任を負うことがあります(会社法52条以下)。
ステップ1 会社の基本事項を決める
まず、定款と登記に書く内容を決めます。
決めることは、次のとおりです。
- 商号(会社名)=「株式会社」の文字を入れる(会社法6条2項)
- 目的(どんな事業をするか)
- 本店の所在地
- 資本金の額(1円からでも設立できる)
- 発起人と、それぞれが引き受ける株式の数
- 発行可能株式総数
- 設立時の取締役(1人以上)と代表取締役
- 事業年度(決算をいつにするか)
同じ住所に同じ商号の会社があると、登記ができません(商業登記法27条)。
法務局の登記情報や、国税庁の法人番号公表サイトで、先に確かめておくと安心です。
目的は、許認可が必要な事業なら、その許可の要件に合う書き方にしておきます。
あとから目的を足すと、定款の変更と変更の登記が必要になるためです。
ステップ2 会社の印鑑を作る
設立の登記をオンラインでなく書面で申請する場合、会社の印鑑を届け出ることがあります。
一般に「代表者印」や「実印」と呼ばれるものです。
商号が決まったら、早めに作っておきます。
あわせて、発起人と取締役の個人の印鑑証明書も用意します。
ステップ3 定款を作る
定款は、会社の根本のルールです。
株式会社の定款には、必ず書かなければならない事項があります(会社法27条)。
1つでも欠けると、定款そのものが無効になります。
| 必ず書く事項(絶対的記載事項) | 根拠 |
|---|---|
| 目的 | 会社法27条1号 |
| 商号 | 同2号 |
| 本店の所在地 | 同3号 |
| 設立に際して出資される財産の価額又はその最低額 | 同4号 |
| 発起人の氏名又は名称及び住所 | 同5号 |
| 発行可能株式総数(会社の成立までに定める) | 会社法37条1項 |
第1条(商号)当会社は、株式会社〇〇と称する。
第2条(目的)当会社は、次の事業を行うことを目的とする。1.〇〇の企画・販売 2.前号に附帯する一切の事業
第3条(本店の所在地)当会社は、本店を〇〇県〇〇市に置く。
第4条(公告の方法)当会社の公告は、官報に掲載してする。
第5条(発行可能株式総数)当会社の発行可能株式総数は、〇〇株とする。
第6条(株式の譲渡制限)当会社の株式を譲渡により取得するには、株主総会の承認を受けなければならない。
第7条(取締役の員数)当会社の取締役は、1名以上とする。
第8条(取締役の任期)取締役の任期は、選任後10年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとする。
第9条(事業年度)当会社の事業年度は、毎年〇月1日から翌年〇月末日までとする。
第10条(設立に際して出資される財産の価額)当会社の設立に際して出資される財産の価額は、金〇〇万円とする。
第11条(発起人の氏名及び住所)〇〇県〇〇市〇〇 〇〇〇〇
第6条のように全部の株式に譲渡制限をつけると、取締役の任期を10年まで延ばせます。公告の方法は、定めがなければ官報になります(会社法939条4項)。実際の定款は、事業の内容に合わせて作ります。
このほか、株式の譲渡に会社の承認を要する旨(譲渡制限)や、取締役の任期なども定款で決めます。
株式の全部に譲渡制限をつけた会社(非公開会社)は、取締役の任期を定款で10年まで延ばせます(会社法332条2項)。
定款は、紙で作るか、PDFの電子定款で作るかを選べます(会社法26条2項)。
紙の定款には4万円の収入印紙が必要です。電子定款なら印紙税はかかりません。
定款の考え方は、定款とは?法人の根本規則をわかりやすく解説で詳しく整理しています。
ステップ4 公証役場で定款の認証を受ける
株式会社の定款は、公証人の認証を受けなければ効力が生じません(会社法30条1項)。
認証は、本店所在地の都道府県にある公証役場の公証人に頼みます。
認証の前に、「実質的支配者となるべき者」の申告をします。
会社の議決権の多くを持つ人など、会社を実質的に支配する人を公証人に伝える手続です。
電子定款の場合は、オンラインで申請し、テレビ電話で認証を受ける方法もあります。
| 資本金の額など | 認証の手数料(公証人手数料令35条) |
|---|---|
| 100万円未満 | 3万円(下の3つを全部満たすと1万5,000円) |
| 100万円以上300万円未満 | 4万円 |
| 300万円以上 | 5万円 |
- 発起人が全員個人で、3人以下であること
- 発起人が設立時に発行する株式を全部引き受ける旨が定款にあること
- 取締役会を置く旨が定款にないこと
このほか、定款の謄本の交付手数料が1枚250円かかります(公証人手数料令40条)。
公証役場の探し方や持ち物は、公証役場とは?で説明しています。
ステップ5 出資金を払い込む
発起人は、引き受けた株式の分の出資金を全額払い込みます(会社法34条1項)。
払込みは、発起人が定めた銀行などで行います(同条2項)。
会社はまだできていないので、発起人個人の口座に振り込むのが一般的です。
払込みは、定款を作った日以後に行います。
通帳のコピー(表紙・名義のページ・入金のページ)と払込みの証明書を、登記の書類に付けます。
お金以外の財産(車やパソコンなど)で出資する「現物出資」は、定款に記載が必要です(会社法28条1号)。
ステップ6 設立時取締役が調査する
設立時の取締役は、選ばれたあと遅滞なく、次のことを調べます(会社法46条1項)。
出資の払込みが終わっていること。
設立の手続が法令や定款に違反していないこと。
現物出資がある場合は、その価額が相当であることも調べます。
調査の結果は、調査報告書にまとめて登記の書類に付けます。
ステップ7 法務局で設立の登記を申請する
株式会社は、本店所在地で設立の登記をすることで成立します(会社法49条)。
登記の申請は、取締役の調査が終わった日か、発起人が定めた日のどちらか遅い日から2週間以内に行います(会社法911条1項)。
登記の申請をした日が、会社の成立日になります。
登録免許税は、資本金の1000分の7で、15万円に満たないときは15万円です(登録免許税法 別表第一24号(一)イ)。
資本金が約2,142万円までなら、15万円です。
申請書の様式は、法務局のウェブサイトに掲載されています。
- 株式会社設立登記申請書
- 登録免許税の収入印紙を貼った台紙
- 認証を受けた定款
- 発起人の決定書(定款で本店の番地や役員を決めていない場合)
- 設立時取締役の就任承諾書
- 設立時取締役の印鑑証明書
- 払込みがあったことを証する書面(通帳の写しなどを綴じたもの)
- 設立時取締役の調査報告書
- 印鑑届書(会社の印鑑を届け出る場合)
必要な書類は、会社の機関の設計や現物出資の有無で変わります。法務局の申請書様式のページに、ケースごとの記載例があります。
登記がいつ終わるかの目安は、各法務局が「登記完了予定日」としてウェブサイトで公表しています。
本記事は、制度を一般的に説明したものです。個別の事案についての判断や手続きの代行を行うものではありません。
- 設立登記など登記申請の手続きは司法書士が取り扱う業務です。ご自身で法務局へ申請することもできます。
ステップ8 登記のあとの届出
登記が終わったら、会社としての届出をします。
税務署には、法人設立届出書を設立の日から2か月以内に出します(法人税法148条)。
都道府県と市町村にも、法人の設立の届出をします。
役員報酬を払う会社は、年金事務所で健康保険・厚生年金保険の手続が必要です。
従業員を雇うときは、労働基準監督署やハローワークへの届出も加わります。
銀行で法人の口座を作るときは、登記事項証明書と会社の印鑑などを求められます。
本記事は、制度を一般的に説明したものです。個別の事案についての判断や手続きの代行を行うものではありません。
- 税務の取扱いは、収入の性質や事業の実態によって結論が変わります。具体的な判定や税額の計算については、税理士または所轄の税務署へご確認ください。
- 社会保険・労働保険の加入手続きは、社会保険労務士が取り扱う業務です。
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法定費用の合計
株式会社の設立で、法令により必ずかかる費用をまとめます。
| 費用 | 電子定款 | 紙の定款 |
|---|---|---|
| 定款の収入印紙 | 0円 | 4万円 |
| 定款認証の手数料 | 1万5,000円〜5万円 | 1万5,000円〜5万円 |
| 定款の謄本 | 1枚250円 | 1枚250円 |
| 登録免許税 | 15万円〜 | 15万円〜 |
| 合計 | 16万5,000円〜(+謄本代) | 20万5,000円〜(+謄本代) |
この表には、印鑑の作成代、印鑑証明書や登記事項証明書の取得費、専門家への報酬は含んでいません。
電子定款を自分で作るには、電子署名のための機器やソフトが必要です。
自分で手続するか、専門家に頼むか
株式会社の設立は、自分で全部進めることもできます。
専門家に頼む場合は、業務ごとに頼む先が分かれます。
| 手続 | 頼む先 | ポイント |
|---|---|---|
| 定款の作成・認証の手続 | 行政書士 | 電子定款で作ってもらえば、紙の定款の収入印紙4万円がかからない |
| 設立登記の申請 | 司法書士 | 登記の申請を代わりに行えるのは司法書士(本人申請も可) |
| 設立後の税務の届出・決算 | 税理士 | 法人の税務申告は毎年必要 |
| 社会保険・労働保険の手続 | 社会保険労務士 | 役員報酬を払う会社は健康保険・厚生年金の手続が必要 |
自分で進める場合も、電子定款の電子署名や登記のオンライン申請には、機器やソフトの準備が要ります。
かかる手間と、専門家への報酬を比べて決めましょう。
合同会社で設立する場合との比較
同じ会社でも、合同会社なら定款の認証が要りません。
登録免許税の最低額も6万円で、株式会社より9万円低くなります。
その代わり、株式による資金調達や上場はできません。
どちらにするかは、事業の規模や、将来出資を受けるかどうかで考えます。
| 項目 | 株式会社 | 合同会社 |
|---|---|---|
| 定款の認証 | 必要(1万5,000円〜5万円) | 不要 |
| 登録免許税の最低額 | 15万円 | 6万円 |
| 法定費用(電子定款) | 16万5,000円〜 | 6万円〜 |
| 役員の任期 | 原則2年(非公開会社は10年まで) | なし |
| 決算公告 | 必要 | 不要 |
| 株式による資金調達・上場 | できる | できない |
合同会社の仕組みは、合同会社とは?株式会社との違いを一覧表で比較で詳しく説明しています。
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本店をどこに置くか
本店所在地は登記され、誰でも見られる情報になります。
自宅を本店にすると、自宅の住所が登記事項証明書に載ります。
賃貸住宅の場合は、契約で事務所としての利用が認められているかも確かめましょう。
自宅の住所を出したくない場合は、登記に使えるバーチャルオフィスを使う方法もあります。
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株式会社の設立についてよくある質問
A. まず商号・目的・本店所在地・資本金・発起人・取締役などの基本事項を決めます。そのあと定款を作り、公証役場で認証を受け、出資金を払い込んでから法務局で登記を申請します。
A. 株式会社の設立を企画し、定款に署名か記名押印をする人です(会社法26条1項)。1人でもかまいませんが、各発起人は設立時に発行する株式を1株以上引き受けなければなりません(会社法25条2項)。
A. 目的・商号・本店の所在地・設立に際して出資される財産の価額又はその最低額・発起人の氏名又は名称及び住所です(会社法27条)。発行可能株式総数も会社の成立までに定めます(会社法37条1項)。
A. 株式会社の定款は、公証人の認証を受けなければ効力が生じません(会社法30条1項)。合同会社の定款には認証は要りません。
A. 法令で決まっている費用は、電子定款なら定款認証1万5,000円〜5万円と登録免許税15万円〜で、16万5,000円からです。紙の定款なら収入印紙4万円が加わります。
A. できます。ただし登録免許税は最低15万円で、資本金を少なくしても下がりません。
A. 設立時取締役の調査が終わった日か、発起人が定めた日のいずれか遅い日から2週間以内です(会社法911条1項)。
A. 法人設立届出書を、設立の日から2か月以内に所轄の税務署へ出します(法人税法148条)。都道府県と市町村への届出も必要です。
📖 参考にした公的機関の情報

