予算案の作り方|自治会・PTA・サークルなど任意団体の予算書のひな形と、前年度実績から数字を置く手順・総会での承認まで

一般社団法人法
会計報告が終わると、次は新しい年度の予算案です。前年度の決算をどう使えば、総会で質問の出にくい予算案になるのか。ひな形と手順で整理しましょう。

結論から申し上げます。任意団体の予算案に、法律で決まった様式はありません。

作り方の基本は一つです。前年度の決算の数字を土台に、今年度の予定で増える分と減る分だけを動かします。

そして、収入の合計と支出の合計を必ず同じ額にそろえます。差が出る分は予備費で調整します。

この記事では、予算案に載せる要素、ひな形、数字の置き方、総会での承認、年度の途中で足りなくなったときの対応までを順に説明します。

予算案と予算書、決算との関係

「予算案」は、総会で承認を受ける前の予算です。承認を受けると「予算」「予算書」と呼ばれます。

予算は、その年度のお金の使い方の約束です。決算(会計報告)は、その約束がどう守られたかの報告です。

この2つは同じ科目・同じ順番で作るのが鉄則です。科目がずれると、年度末に予算と決算を並べて比べられなくなります。

多くの団体の会則には「会計年度の予算は総会の承認を得る」といった定めがあります。会則に定めがあれば、それが予算案を作る根拠になります。

書類 いつ作るか 誰が承認するか
予算案 年度が始まる前、または総会の前 総会(会則の定めによる)
予算(予算書) 総会で承認された後 ―
補正予算案 年度の途中で予算を変えるとき 総会または役員会(会則の定めによる)
会計報告(決算) 年度が終わった後 総会(会則の定めによる)

予算案に載せる5つの要素

一つめは対象の年度です。会則の会計年度をそのまま書きます。

二つめは収入の部です。前年度繰越金、会費、補助金、事業収入、雑収入などを科目ごとに見積もります。

三つめは支出の部です。会議費、印刷費、通信費、行事費、備品費、雑費、予備費などを並べます。

四つめは前年度の予算額と増減です。何を増やし、何を減らしたかが一目でわかります。

五つめは備考(見積もりの根拠)です。「3,000円×29名」のように、計算の式を書いておきます。

POINT 備考に計算の式を書くと、総会の質問の大半が消えます。「なぜこの額か」を読み手が自分で確かめられるからです。

そのまま使える予算案のひな形

以下は、会員30名ほどの任意団体を想定した記入例です。金額は説明のための仮の数字です。

前年度の会計報告で次年度繰越金が63,032円だった団体が、今年度の予算を組む想定にしています。

令和〇年度 〇〇会 予算案

(令和〇年4月1日から令和〇年3月31日まで)

収入の部(単位:円)

科目 今年度予算 前年度予算 増減 備考
前年度繰越金 63,032 52,300 10,732 前年度会計報告の次年度繰越金
会費 87,000 90,000 △3,000 3,000円×29名
補助金 20,000 20,000 0 〇〇市の活動補助(前年度と同額の見込み)
事業収入 30,000 30,000 0 バザー売上(前年度実績34,500円)
雑収入 10 100 △90 預金利息
収入合計 200,042 192,400 7,642

支出の部(単位:円)

科目 今年度予算 前年度予算 増減 備考
会議費 15,000 15,000 0 会場使用料4回
印刷費 20,000 20,000 0 会報・総会資料
通信費 7,000 8,000 △1,000 前年度実績6,300円
行事費 85,000 80,000 5,000 夏祭りの参加者増に対応
備品費 10,000 15,000 △5,000 前年度にテント購入済み
雑費 3,000 5,000 △2,000 前年度実績1,980円
予備費 60,042 49,400 10,642 収入合計と支出合計の差
支出合計 200,042 192,400 7,642

ひな形を使うときの注意

収入の部の先頭に前年度繰越金を入れる形にしています。この形だと、収入合計と支出合計が必ず同じ額になります。

予備費は「収入合計から、予備費以外の支出を引いた残り」です。ひな形では、予備費以外の支出が140,000円なので、200,042円-140,000円=60,042円です。

前年度繰越金は、前年度の会計報告が総会で承認される前に予算案を作ることがあります。そのときは見込み額で置き、備考に「見込み」と書きます。

承認後に額が変わったら、総会の場で差を説明するか、補正予算で直します。

数字の置き方 ― 前年度の決算から始める

予算案の数字は、ゼロから考えるより、前年度の決算から始めるほうが早く正確です。

手順は4つです。

手順 やること ひな形での例
1. 決算を写す 前年度の会計報告の「決算額」を科目ごとに写す 通信費の決算6,300円
2. 予定を足し引きする 今年度だけの行事・購入・値上げを反映する 夏祭りの参加者増で行事費を増額
3. 端数を丸める 千円単位など、見やすい単位にそろえる 6,300円→7,000円
4. 予備費で合わせる 収入合計-予備費以外の支出=予備費 60,042円

収入は固めに、支出は少し余裕をもって

予算で困るのは、収入が見込みより少ない年です。そこで収入は「確実に入る額」で置きます。

会費は、在籍している会員数で計算します。入会の見込みは入れません。

補助金は、交付が決まっていなければ、前年度と同額を「見込み」として置き、備考に書きます。

バザーなどの事業収入は、前年度の実績より少し低めに置きます。ひな形でも実績34,500円に対し30,000円にしています。

支出は、前年度の実績に少し余裕を持たせます。ただし、余裕を各科目に散らすと、どこでお金が余ったのかが見えなくなります。

余裕は予備費にまとめるのが基本です。

予備費はどのくらい置けばよいか

予備費の割合に決まりはありません。

ただし、繰越金が多い団体で予備費が大きくなりすぎると、「会費を下げるべきでは」という意見が出やすくなります。

繰越金が年間の支出を大きく超えて積み上がっている場合は、会費の見直しや、将来の備品購入のための積立として目的を示すことも考えます。

予備費を使うときの手続も、会則や予算の備考で決めておきます。例えば「予備費の使用は役員会の承認による」と書いておくと、年度の途中で迷いません。

総会で承認を受けるまで

予算案は、会計が一人で作るものではありません。役員で予定を出し合ってから数字にします。

ステップ やること 時期の目安
1. 年間の予定を集める 行事・購入・会報の回数などを役員から集める 総会の2か月前
2. 予算案を作る 前年度の決算を写し、予定を反映し、予備費で合わせる 総会の1か月前
3. 役員会で確認する 増減の理由と、総会での説明の仕方を決める 総会の2週間前
4. 総会資料に載せる 会計報告・監査報告・事業計画と一緒に配る 総会の1〜2週間前
5. 総会で承認を受ける 会計が増減の大きい科目だけ説明し、議決をとる 総会当日

総会での説明と議事録

総会では、全科目を読み上げる必要はありません。前年度から大きく増減した科目と、その理由だけを説明します。

会費の額を変える場合は、予算案とは別の議案にするのが一般的です。会費の額が会則に書いてある団体では、会則の変更の手続が必要になります。

承認を受けたら、議事録に「第〇号議案 令和〇年度予算案の件は、賛成多数で原案どおり承認された」と残します。

修正して承認された場合は、修正した科目と額も議事録に書きます。

年度の途中で予算が足りなくなったら

年度の途中で、予定になかった支出が必要になることがあります。

まず、予備費の範囲で足りるかを確かめます。予備費の使い方が決まっていれば、その手続で支出します。

予備費でも足りないときは、補正予算を組みます。補正予算は、変える科目と額、理由を書いた表を作り、会則に定めた機関の承認を受けます。

会則に補正予算の定めがない団体では、臨時総会で承認を受けるのが確実です。

科目の間でお金を融通する「流用」も、ルールを決めておくと迷いません。例えば「科目間の流用は役員会の承認による」と会則や予算の備考に書いておきます。

予算案を配る前の最終チェック

  • 収入合計と支出合計が同じ額になっている
  • 前年度繰越金が、前年度の会計報告の次年度繰越金と一致している(見込みなら「見込み」と書いた)
  • 科目の名前と順番が、会計報告と同じになっている
  • 会費の額が会則・前回の総会の決議と一致している
  • 備考に計算の式や増減の理由が書いてある
  • 予備費の使い方(誰の承認で使えるか)が決まっている

大きな行事は、行事ごとの内訳を別表にする

夏祭りやバザーのように、1つの行事で収入と支出の両方が大きく動く場合があります。

このとき、行事費を1行にまとめるだけでは、どこにいくら使うのかが総会で見えません。

行事ごとに「収入・支出・差引」の内訳表を別に付けると、行事の担当者も予算を管理しやすくなります。

内訳表の合計は、予算案の本表の「事業収入」「行事費」と一致させます。本表と別表の数字がずれていないかは、配る前に必ず確かめます。

予算を決めたら、帳簿の科目もそろえておく

予算の科目と帳簿(出納帳)の科目がずれていると、年度末の会計報告で集計し直す手間が生まれます。

年度の初めに、出納帳の科目欄を予算と同じ名前にそろえておくのがコツです。表計算ソフトで帳簿を付けている団体なら、科目ごとの合計が自動で出るようにしておくと、年度の途中でも予算の残りを確かめられます。

半年に一度、役員会で「予算額・使った額・残り」を並べて確認すると、年度末に予算が足りなくなる事態を防げます。

法人になると、予算の扱いが変わる

任意団体の予算案は、会則で決めた団体内部のルールです。

NPO法人や一般社団法人になると、法律や定款で書類や手続が決まってきます。例えばNPO法人は、設立の申請のときに設立当初の事業年度と翌事業年度の活動予算書を出します(NPO法10条1項)。

法人の予算書の扱いは、別の記事で詳しく整理しています。法人化を考えている団体は、任意団体の最後の年度の予算と決算を、法人の最初の予算の土台にすると移行が楽になります。

予算案についてよくある質問

Q. 予算案に決まった様式はありますか?

A. 任意団体の予算案の様式を定めた法律はありません。収入の部と支出の部を科目ごとに並べ、前年度予算との増減と備考を付ける形が一般的です。

Q. 収入と支出の合計は同じでないといけませんか?

A. 前年度繰越金を収入に含める形なら、同じ額にそろえるのが基本です。差が出る分は予備費で調整します。

Q. 前年度の決算が承認される前に予算案を作ってもよいですか?

A. 作れます。前年度繰越金は見込み額で置き、備考に「見込み」と書きます。確定した額との差は総会で説明するか、補正予算で直します。

Q. 予備費はどのくらい置けばよいですか?

A. 割合の決まりはありません。予定外の支出に備える額を置き、使うときの手続(役員会の承認など)を決めておきます。

Q. 年度の途中で予算が足りなくなったらどうしますか?

A. まず予備費で対応できるかを確かめます。足りなければ補正予算を組み、会則に定めた機関(総会や役員会)の承認を受けます。

Q. 予算を使い切れずに余ったらどうなりますか?

A. 余った額は次年度繰越金になり、翌年度の予算の前年度繰越金に入ります。毎年大きく余る場合は、会費の額や予算の立て方を見直します。

Q. 予算案は誰が作るのですか?

A. 会計が取りまとめるのが一般的です。ただし、行事や購入の予定は役員全員から集め、役員会で確認してから総会に出します。

📖 参考にした公的機関の情報

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