役員名簿とは?一般社団法人に作成義務はない理由|NPO法人の年間役員名簿・公益法人の役員等名簿と、住所がどこまで公開されるかを条文で整理

一般社団法人法
役員名簿を出してくださいと言われました。
うちは一般社団法人ですが、
そんな名簿は作っていません。

結論から申し上げます。一般社団法人と一般財団法人には、役員名簿を作成しなければならないという条文はありません。作っていなくても法令違反ではありません。

いっぽうで、NPO法人と公益法人には、はっきりと作成義務があります。しかも書く項目も、備え置く期間も、誰が見られるのかも、法人格ごとに別々に決められています。「役員名簿」という同じ言葉でも、指しているものが違うのです。

この記事では、役員名簿とは何かという話から始めて、一般社団法人に義務がないのはなぜか、NPO法人の役員名簿年間役員名簿はどこが違うのか、公益法人の役員等名簿には誰が載るのか、そして多くの方が気にされる住所がどこまで公開されるのかを、一般法人法・NPO法・認定法の条文に沿って順に整理します。

役員名簿とは ― 「いま誰が役員なのか」を外から確かめるための名簿

役員名簿は、その法人の理事・監事といった役員が誰なのかを一覧にした書面です。一般には、役職名、氏名、住所または居所、報酬を受けているかどうかを並べて書きます。

なぜこうした名簿が制度として求められるのかというと、法人は人ではないので、外から見たときに誰が意思決定をしているのかが見えないからです。取引の相手方も、寄付をする人も、行政も、「この法人を動かしているのは誰か」を確かめる手がかりを必要とします。役員名簿はその手がかりのひとつです。

ここで大切なのは、その手がかりを何で用意させるかが、法人格ごとに違うという点です。登記で公示させる仕組みを持っている法人格と、名簿を作らせて備え置かせる仕組みを持っている法人格があります。この違いが、義務の有無をそのまま説明します。

POINT 役員名簿の義務の有無は、その法人格が登記で役員を公示しているか、それとも所轄庁や行政庁への提出で公開しているかという設計の違いから来ています。

一般社団法人・一般財団法人に役員名簿の作成義務はない

一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(一般法人法)を通しても、役員名簿を作成せよという条文は出てきません。名簿について定めているのは32条ですが、これは社員名簿であって役員名簿ではありません。

32条1項は、一般社団法人は社員名簿を主たる事務所に備え置かなければならないと定めています。社員というのは、この法律では議決権を持つ構成員のことで、従業員のことではありません。理事や監事のことでもありません。

閲覧を請求できる人の範囲も限られています。32条2項で請求できるのは社員だけで、しかも請求の理由を明らかにしてしなければならないとされています。32条3項には法人の側が拒める場合が4つ並んでおり、権利の確保または行使に関する調査以外の目的で請求したときなどが挙げられています。

POINT 一般法人法32条は社員名簿の規定です。「名簿の条文があるのだから役員名簿にも義務があるはずだ」というのは誤りです。

義務がないのは、役員が登記で公示されているから

では、一般社団法人の役員が誰なのかは、外からどうやって分かるのでしょうか。答えは登記です。

一般法人法301条2項は、設立の登記で登記しなければならない事項を並べています。このうち役員に関わるのは次の3つです。

登記する事項 住所も登記するか
301条2項5号 理事の氏名 氏名のみ
301条2項6号 代表理事の氏名及び住所 住所も登記する
301条2項8号 監事設置一般社団法人であるときは、その旨及び監事の氏名 氏名のみ

一般財団法人はもう少し範囲が広く、302条2項5号で評議員、理事及び監事の氏名が登記事項とされています。代表理事の氏名及び住所を登記する点(302条2項6号)は社団と同じです。

登記事項証明書は、手数料を払えば誰でも取れます。つまり一般社団法人・一般財団法人については、名簿を作らせなくても、役員が誰かは公示されているのです。だからあらためて名簿の作成を義務づける必要がありません。

この記事の位置づけ

本記事は、制度を一般的に説明したものです。個別の事案についての判断や手続きの代行を行うものではありません。

  • 設立登記など登記申請の手続きは司法書士が取り扱う業務です。ご自身で法務局へ申請することもできます。

義務がなくても、一般社団法人が役員名簿を作っておくと効く場面

法令上の義務がないことと、作らなくてよいことは別です。実務では、次のような場面で役員名簿の提出を求められます。

役員名簿を求められやすい場面

  • 金融機関で法人口座を開くとき、実質的支配者の確認とあわせて役員の一覧を求められる
  • 助成金や補助金に応募するとき、応募要領で役員名簿が添付書類に指定されている
  • 官公庁や大企業と取引を始めるとき、反社会的勢力でないことの確認資料として求められる
  • 共催や後援の申請をするとき、団体の体制を示す資料として求められる
  • 任期の管理のため、就任日と任期満了日を法人の中で一覧にしておきたいとき

いずれも法令ではなく、相手方が定めた提出書類として求められるものです。したがって書式は相手方の指定に従います。指定がなければ、役職名・氏名・住所または居所・就任日・任期満了日を並べた表で足ります。

ひとつだけ気をつけたいのは、役員名簿は個人情報を集めた書面だということです。住所や生年月日まで書いた名簿を、目的を伝えないまま外部へ渡すのは避けたほうがよいでしょう。提出先が求めている項目だけを載せた版を別に作るのが安全です。

NPO法人の役員名簿は2種類ある ― これがいちばん間違えやすい

NPO法人(特定非営利活動法人)には、中身の違う名簿が2つあります。どちらもNPO法28条に出てきますが、載せる人も、作る時期も、保存の期間も違います。

役員名簿(28条2項) 年間役員名簿(28条1項)
載せる人 いま在任している役員 前事業年度において役員であったことがある者全員(年度の途中で辞めた人も入る)
作る時期 常に最新のものを置く 毎事業年度初めの3月以内
備え置く期間 期間の定めはなく、事務所に備え置く 作成の日から起算して5年が経過した日を含む事業年度の末日まで
所轄庁への提出 提出書類ではない 事業報告書等の一部として毎事業年度1回提出(29条)
報酬の欄 各役員についての報酬の有無 前事業年度における報酬の有無

とくに見落とされやすいのが、年間役員名簿の「全員」という言葉です。事業年度の途中で辞任した理事も、途中から就任した理事も、その年度に一度でも役員だった人は全員書きます。年度末時点の顔ぶれを書いた名簿は、年間役員名簿にはなりません。

POINT 決算のときに作るのは年間役員名簿、事務所に置きっぱなしにしておくのが役員名簿です。同じファイルを使い回すと、辞めた人が抜け落ちます。

NPO法人の役員名簿に書く3項目

役員名簿という言葉は、NPO法10条1項2号イに定義があります。設立の認証を申請するときの添付書類として出てきて、役員の氏名及び住所又は居所並びに各役員についての報酬の有無を記載した名簿と書かれています。そして「以下同じ」とされているので、NPO法のほかの条文に出てくる役員名簿も、この3項目の名簿を指します。

項目 書き方の注意
氏名 戸籍どおりの表記で書きます。通称や旧姓だけを書くことはできません
住所又は居所 住民票のとおりに書きます。生活の本拠が住民票と違う場合に居所を書くことが認められています
報酬の有無 「有」「無」で足ります。金額を書く欄ではありません。役員としての報酬の有無であって、職員として働いた分の給与は役員報酬にはあたりません

報酬の有無をわざわざ書かせるのには理由があります。NPO法2条2項1号ロで、報酬を受ける役員の数は役員総数の3分の1以下でなければならないと定められているためです。名簿はこの制限を満たしているかを確かめる資料でもあります。

設立のときは、役員名簿が2週間だけ公衆の縦覧に供される

NPO法人の設立認証を申請すると、所轄庁はその旨をインターネットの利用その他の方法で公表し、あわせて一部の添付書類を申請書を受理した日から2週間、公衆の縦覧に供します(10条2項)。

縦覧の対象になるのは、定款、役員名簿、設立趣旨書、設立当初の事業年度および翌事業年度の事業計画書と活動予算書です。この5つをまとめて「特定添付書類」と呼びます。

ここで押さえておきたいのが、役員名簿だけは役員の住所又は居所に係る記載の部分を除いたものが縦覧に供される、と条文に書かれていることです(10条2項かっこ書き)。設立の段階で役員の自宅の住所が一般に公開されるわけではありません。

縦覧は、認証または不認証の決定がされるまでの間、行われます(10条3項)。2週間が過ぎたら公表も終わるという趣旨です。

誰が見られるのか ― 法人へ請求する場合と所轄庁へ請求する場合

役員名簿を見たい人がとれる経路は2つあります。法人に直接請求する経路と、所轄庁に請求する経路です。2つは請求できる人の範囲も、住所の扱いも違います

法人へ請求(28条3項) 所轄庁へ請求(30条)
請求できる人 社員その他の利害関係人 誰でも請求できる
対象になる書類 事業報告書等・役員名簿・定款等 過去5年間に提出を受けた事業報告書等・役員名簿・定款等
できること 閲覧 閲覧または謄写
断れるか 正当な理由がある場合を除いて閲覧させなければならない 所轄庁の義務
住所の扱い 条文上の除外規定はない 個人の住所又は居所に係る記載の部分を除いたものを見せる

28条3項の「利害関係人」には、会員、寄付をした人、取引先、助成をした団体などが含まれると考えられています。無関係な第三者からの請求まで受ける義務はありません。

他方で30条の経路には、請求できる人の限定がありません。つまり役員名簿の内容は、住所を除けば実質的に誰でも見られる状態にあります。役員に就任していただくときには、この点を先にお伝えしておくとあとで行き違いになりません。

公益法人の「役員等名簿」は、評議員も載せる

公益社団法人・公益財団法人には、公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律(認定法)21条2項2号で役員等名簿の作成義務があります。

条文の定義は、理事、監事及び評議員の氏名及び住所を記載した名簿です。NPO法人の役員名簿と比べると、次の3点が違います。

NPO法人の役員名簿 公益法人の役員等名簿
載せる人 理事・監事(NPO法人に評議員はいない) 理事・監事・評議員
住所の書き方 住所又は居所 住所
報酬の欄 報酬の有無を書く 名簿には書かない。報酬等の支給の基準を記載した書類が別に必要(21条2項3号)

備え置きの期間も細かく決まっています。毎事業年度経過後3月以内に作成し、主たる事務所に5年間、その写しを従たる事務所に3年間備え置きます(21条2項)。

閲覧を請求できる人の範囲は、NPO法人よりさらに広くなります。21条5項は何人も、公益法人の業務時間内は、いつでも閲覧の請求ができるとしたうえで、公益法人は正当な理由がないのにこれを拒んではならないと定めています。

ただし住所については逃げ道が用意されています。21条6項により、その公益法人の社員または評議員以外の者から請求があった場合には、個人の住所に係る部分を除外して閲覧させることができます。「しなければならない」ではなく「できる」なので、除外するかどうかは法人の判断です。

行政庁へ提出したあとの扱いも決まっています。22条1項で毎事業年度の経過後3月以内に提出し、22条2項で行政庁がこれを公表します。このとき役員等名簿については個人の住所に係る記載の部分を除くとされています。

住所がどこまで出るのか ― 場面ごとに整理する

住所の扱いは、法人格ではなくどの場面かで決まります。同じ法人でも、場面によって出る範囲が変わります。

場面 住所は出るか 根拠
一般社団法人・一般財団法人の登記事項証明書 代表理事の住所だけ出る。ほかの理事・監事・評議員は氏名のみ 一般法人法301条2項5号6号8号・302条2項5号6号
NPO法人の設立認証申請の縦覧 出ない(住所又は居所の部分を除いたものを縦覧に供する) NPO法10条2項
NPO法人へ利害関係人が閲覧請求 除外を定めた条文はない NPO法28条3項
NPO法人の書類を所轄庁で閲覧・謄写 出ない(個人の住所又は居所の部分を除く) NPO法30条
公益法人へ社員・評議員以外の者が閲覧請求 法人の判断で除外できる 認定法21条6項
公益法人の書類を行政庁が公表 出ない(個人の住所に係る部分を除く) 認定法22条2項
POINT 役員の自宅住所が広く公開されるのは、実は代表理事の登記だけです。名簿の経路は、いずれも住所を落とす仕組みが用意されています。

3つの法人格を一覧で比べる

一般社団法人・一般財団法人 NPO法人 公益社団法人・公益財団法人
役員名簿の作成義務 なし あり(役員名簿・年間役員名簿) あり(役員等名簿)
根拠 (規定なし。社員名簿は32条) NPO法10条1項2号イ・28条 認定法21条2項2号
載せる人 理事・監事 理事・監事・評議員
報酬の記載 報酬の有無を書く 名簿には書かない
備え置き 年間役員名簿は5年経過日を含む事業年度末まで 主たる事務所5年・従たる事務所は写しを3年
行政への提出 毎事業年度1回、所轄庁へ(29条) 毎事業年度経過後3月以内、行政庁へ(22条1項)
外部の閲覧 登記事項証明書で役員の氏名を確認できる 利害関係人は法人へ、誰でも所轄庁へ 何人も法人へ請求できる

よくある間違いを4つ

ここを取り違えている例が多い

  • 社員名簿と役員名簿を同じものと考える……一般法人法32条の社員名簿は議決権を持つ構成員の名簿で、役員の名簿ではありません
  • 年間役員名簿に年度末の役員だけを書く……前事業年度に一度でも役員だった人は全員書きます(NPO法28条1項)
  • 報酬の有無の欄に職員としての給与を書いてしまう……役員としての報酬の有無を書く欄です
  • 一般社団法人でも役員名簿の備置き義務があると考える……備置きの義務があるのは社員名簿で、役員は登記で公示されています

もうひとつ、名簿そのものではありませんが、役員が交代したときに名簿を直しただけで手続きが終わったと思ってしまう例があります。一般社団法人であれば変更の登記が、NPO法人であれば所轄庁への届出と登記が別に必要です。名簿の更新は、その手続きの代わりにはなりません。

役員名簿についてよくある質問

Q. 一般社団法人ですが、役員名簿を作っていません。違反になりますか?

A. なりません。一般社団法人及び一般財団法人に関する法律には、役員名簿を作成しなければならないという規定がありません。同法32条が備置きを義務づけているのは社員名簿です。ただし助成金の応募や口座開設の場面で提出を求められることは多いので、任意の書式で用意しておくと手間が減ります。

Q. 役員名簿と年間役員名簿は、どう違うのですか?

A. NPO法人にある2つの名簿です。役員名簿は現に在任している役員の名簿で、事務所に備え置きます(NPO法28条2項)。年間役員名簿は前事業年度において役員であったことがある者全員の名簿で、毎事業年度初めの3月以内に作成し、作成の日から起算して5年が経過した日を含む事業年度の末日まで備え置きます(同条1項)。年度の途中で辞めた役員が入るかどうかが最大の違いです。

Q. 役員名簿には何を書けばよいですか?

A. NPO法人の場合は、NPO法10条1項2号イに定義があり、役員の氏名、住所または居所、各役員についての報酬の有無の3項目です。公益法人の役員等名簿は、認定法21条2項2号により理事、監事および評議員の氏名および住所です。公益法人の名簿には報酬の欄はなく、報酬等の支給の基準を記載した書類が別に必要になります。

Q. 役員の住所は公開されてしまいますか?

A. 経路によって違います。NPO法人については、設立認証申請の縦覧(NPO法10条2項)でも、所轄庁での閲覧・謄写(同30条)でも、住所または居所に係る記載の部分は除かれます。公益法人については、社員または評議員以外の者からの請求であれば住所を除外して閲覧させることができ(認定法21条6項)、行政庁の公表でも住所は除かれます(同22条2項)。広く公開されるのは、一般社団法人・一般財団法人の代表理事の住所が登記されている点です。

Q. 報酬の有無の欄には、何を書けばよいですか?

A. 「有」または「無」と書きます。金額を書く欄ではありません。ここでいう報酬は役員としての報酬なので、職員を兼ねている方が労働の対価として受け取っている給与は含みません。NPO法2条2項1号ロで、報酬を受ける役員は役員総数の3分の1以下と定められているため、この欄が確認の資料になります。

Q. 役員名簿の閲覧を求められたら、必ず見せないといけませんか?

A. NPO法人は、社員その他の利害関係人から請求があった場合、正当な理由がある場合を除いて閲覧させなければなりません(NPO法28条3項)。公益法人は、何人からの請求についても、正当な理由がないのに拒んではならないとされています(認定法21条5項)。一般社団法人の社員名簿については、一般法人法32条3項に拒むことができる4つの場合が定められています。

Q. 役員が任期の途中で辞めました。年間役員名簿はどう書きますか?

A. その方も書きます。年間役員名簿は前事業年度において役員であったことがある者全員を記載するものだからです。報酬の有無の欄は、前事業年度における報酬の有無を書きます。在任していた期間が短くても、記載を省くことはできません。

Q. 役員名簿を更新すれば、役員変更の手続きは済みますか?

A. 済みません。名簿は法人の中に備え置く書面で、対外的な手続きとは別です。一般社団法人では役員の変更の登記が必要で、NPO法人では所轄庁への届出と、代表権を持つ役員が変わる場合の登記が必要です。

Q. 公益法人の役員等名簿には、なぜ評議員も載るのですか?

A. 認定法21条2項2号が、役員等名簿を「理事、監事及び評議員の氏名及び住所を記載した名簿」と定義しているためです。公益財団法人では評議員会が理事の選任・解任を行う機関なので、法人の運営を見るうえで評議員が誰かも重要になります。公益社団法人に評議員を置く例は多くありませんが、条文は両方をあわせて定義しています。

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