NPO法人の役員報酬|3分の1の制限と職員給与との違い

一般社団法人法
理事に報酬を出したい。制度上の制限と、決め方の手順を整理します。

NPO法人の役員報酬には、3分の1という制限があります。

ただし、この制限の意味を誤解している団体が多くあります。

職員としての給与とは、扱いが別だからです。

この記事では、役員報酬の考え方と決め方を解説します。

POINT 結論:報酬を受ける役員は、役員総数の3分の1以下でなければなりません。ただしこれは役員としての報酬の話で、職員としての給与は別に扱われます。額の決め方は定款の定めによるため、まず自分たちの条文を確認してください。

役員報酬とは何か

役員報酬は、理事や監事としての職務への対価です。

理事会に出て判断する、団体を代表するといった働きです。

職員として働くことへの給与とは、別のものです。

ここを混同すると、制限の理解を誤ります。

同じ人が、両方を受け取る場合もあります。

理事でありながら、事務局長として働く形です。

この場合、報酬と給与は分けて扱います。

記録も、分けて残しましょう。

説明を求められたとき、区別が必要になります。

3分の1という制限

NPO法には、役員報酬に関する制限があります。

報酬を受ける役員は、役員総数の3分の1以下です。

役員総数とは、理事と監事の合計です。

理事5人、監事1人なら、総数は6人です。

この場合、報酬を受けられるのは2人までです。

3分の1を超えると、要件を欠きます。

認証にも、関わる問題です。

役員を選ぶたびに、確認しましょう。

人数が変わると、上限も変わります。

役員総数 報酬を受けられる上限 備考
4人 1人 3分の1以下
6人 2人 3分の1以下
9人 3人 3分の1以下
12人 4人 3分の1以下
職員としての給与は別 記録を分けて残す

職員としての給与は別

いちばん誤解が多いのが、この点です。

理事が職員として働き、給与を受ける場合があります。

これは、役員報酬には当たりません。

3分の1の制限にも、直接は関わりません。

ただし、実態が伴っている必要があります。

実際に働いていないのに給与を出せば、問題になります。

勤務の記録を、残しておきましょう。

労働の条件も、書面で示します。

雇用に関する手続きは、社会保険労務士の業務範囲です。

無報酬でよいのか

多くの団体は、役員を無報酬としています。

設立のときに、そう決める例がほとんどです。

費用を抑えられる一方、負担は重くなります。

責任を負い、時間も使うためです。

結果として、時間に余裕のある人しか担えません。

担い手の層が、狭まります。

少額でも出せるなら、検討する価値があります。

交通費の実費だけでも、負担感は変わります。

団体の財政に照らして、判断しましょう。

役員報酬を決める前に確認すること

  • 定款に報酬に関する条文があるか
  • 額を誰が決めると書いてあるか
  • 役員総数と、報酬を受ける人数
  • 3分の1を超えていないか
  • 職員としての給与と分けているか
  • 財源が続く見込みがあるか
  • 会員に説明できる水準か
  • 議事録に決定を残したか
  • 親族の制限に触れていないか

定款の条文を確認する

報酬の決め方は、定款で定めます。

多くの定款には、条文が置かれています。

役員は、報酬を受けることができる。

このような書き方が、一般的です。

額を定款に書いている団体も、あります。

その場合、変更のたびに定款変更が必要です。

別に定めるという書き方が、実務では扱いやすくなります。

総会で決めるか、理事会で決めるかも確認します。

定款に書いていなければ、追加を検討しましょう。

誰が決めるか

額を決める場所も、重要です。

役員が自分の報酬を決めるのは、望ましくありません。

利益相反にあたるためです。

総会で決める形が、いちばん明確です。

定款で、そう定めている団体もあります。

総額を総会で決め、内訳を理事会で決める方法もあります。

いずれにせよ、本人が議決に加わらない形にします。

議事録に、その旨を書いておきましょう。

説明を求められたとき、根拠になります。

額をどう決めるか

額の決め方に、決まった基準はありません。

第一に、団体の財政を見ます。

毎年続けられる水準かを、考えます。

第二に、職務の重さを見ます。

代表者と、他の役員では負担が違います。

第三に、他の団体の水準を参考にします。

中間支援組織に、相談する方法もあります。

第四に、会員に説明できるかを考えます。

情報公開の対象になるためです。

高すぎる報酬は、信用を損ないます。

情報公開の対象になる

役員報酬は、外から見える情報です。

年間役員名簿に、報酬の有無を書きます。

事業報告書等の一部として、提出します。

備え置きと、閲覧の対象にもなります。

認定を目指す場合は、報酬の規程も対象です。

説明できない額は、置かないでください。

逆に、正当な額なら堂々と示せます。

働きに対する対価であることを、記録で示します。

議事録と、勤務の記録がその材料です。

規程を作る

報酬を出すなら、規程を作りましょう。

額の決め方、支払いの時期、対象者を書きます。

毎回その場で決めると、不公平が生じます。

規程があれば、判断が安定します。

定款の委任を受けた形にしてください。

委任の条文がなければ、追加します。

交通費や、実費の扱いも書いておきます。

謝金との違いも、整理しておきましょう。

規程は、理事会で議決して制定します。

実費の弁償は報酬ではない

交通費や、立て替えた費用の精算は別です。

これは、報酬ではありません。

実費の弁償として、扱われます。

3分の1の制限にも、関わりません。

ただし、記録は必要です。

領収書や、区間の記録を残しましょう。

定額で支給する場合は、扱いに注意します。

実費を超える部分の扱いが、問題になり得ます。

税務上の取扱いは、税務署または税理士へご確認ください。

報酬を出す団体の実際

実際に報酬を出している団体は、多くありません。

財政に余裕がないためです。

出している場合も、額は控えめです。

会議への出席に対して、少額を支給する形もあります。

出席1回いくら、という決め方です。

常勤の代表者に、生活できる水準を出す団体もあります。

この場合、職員としての給与とすることが多いものです。

規模が大きくなるほど、体制も変わります。

無理のない形から、始めましょう。

謝金との違い

報酬と似たものに、謝金があります。

講師を務めた、専門的な助言をしたといった場面です。

役員が、この立場で受け取ることもあります。

役員としての職務への対価では、ありません。

個別の仕事に対する、対価です。

ただし、区別が曖昧になりやすい部分でもあります。

記録を分けて、根拠を残しましょう。

謝金の基準を、規程で決めておくと安定します。

役員だけが高い額を受け取る形は、疑問を持たれます。

外部の人と、同じ基準にするのが無難です。

報酬を出し始めるとき

無報酬から、報酬を出す形に変えることもあります。

事業が広がり、負担が重くなった場合です。

第一に、定款の条文を確認します。

第二に、財源が続くかを見ます。

一度出し始めると、下げにくくなります。

第三に、総会で決議します。

第四に、会員に理由を説明します。

突然の決定は、不信を招きます。

第五に、規程を作ります。

順序を踏めば、納得は得られます。

役員名簿への書き方

年間役員名簿には、報酬の有無を書きます。

有給と無給を、区別して記載する形です。

額そのものを書く様式も、あります。

所轄庁によって、指定が異なります。

手引きを確認しておきましょう。

年度の途中で変わった場合も、書きます。

前任と後任を、期間とあわせて記載します。

3分の1を超えていないかは、この名簿で確認できます。

作成のたびに、数えてください。

提出したあとで気づくと、対応が難しくなります。

親族が役員にいる場合

報酬と、親族の制限は別の規定です。

ただし、あわせて確認する場面が多くあります。

役員に配偶者や三親等以内の親族が含まれる場合、制限があります。

役員総数が6人以上なら、1人まで認められます。

5人以下なら、入れられません。

報酬を出す相手が親族だと、外から見て説明が難しくなります。

手続きを、より丁寧に踏みましょう。

本人が議決に加わらないことは、当然です。

額の根拠も、記録に残します。

疑われない形を、意識して作ってください。

報酬を下げる・やめるとき

財政が苦しくなり、報酬を減らす場面もあります。

一度出したものを下げるのは、簡単ではありません。

受け取る側の生活に、関わる場合もあります。

早い段階で、見通しを共有しましょう。

決めるのは、出すときと同じ手続きです。

総会または理事会で、議決します。

議事録に、理由も残します。

職員としての給与を下げる場合は、扱いが違います。

労働の条件の変更にあたるためです。

判断は、社会保険労務士に相談してください。

会員への説明の仕方

報酬を出すなら、会員に説明できる形にします。

総会の議案として、金額と理由を示します。

何の職務に対する対価かを、はっきりさせましょう。

週に何時間、どんな仕事かを説明します。

無報酬でやってきた団体ほど、丁寧さが要ります。

不信を持たれると、あとから覆せません。

事業報告書にも、記載が残ります。

毎年、目に触れる情報になります。

最初に納得を得ておくことが、いちばん確実です。

質問を受ける時間も、必ず取りましょう。

役員報酬の決め方のまとめ

報酬を受ける役員は、役員総数の3分の1以下です。

これは、役員としての報酬に関する制限です。

職員としての給与は、別に扱われます。

ただし、実態が伴っている必要があります。

額の決め方は、定款の条文を確認してください。

本人が議決に加わらない形にしましょう。

報酬は情報公開の対象なので、説明できる額にします。

交通費などの実費の弁償は、報酬とは別です。

謝金も役員報酬とは別ですが、区別が曖昧になりやすい部分です。

外部の人と同じ基準にしておくのが、いちばん無難です。

年間役員名簿を作るたびに、3分の1を超えていないか数えましょう。

親族が役員にいる場合は、手続きをより丁寧に踏んでください。

一度出した報酬は下げにくいため、財源の見通しを先に立てます。

よくある質問

Q. 報酬を出せるのは何人まで?

A. 役員総数の3分の1以下です。理事5人と監事1人なら総数6人なので、2人までとなります。人数が変わると上限も変わるため、役員を選ぶたびに確認してください。

Q. 理事が職員として給与を受けられる?

A. 受けられます。役員報酬とは別に扱われ、3分の1の制限にも直接は関わりません。ただし実態が伴う必要があり、勤務の記録と労働条件の書面が要ります。

Q. 額は誰が決める?

A. 定款の定めによります。役員が自分の報酬を決めるのは利益相反にあたるため、総会で決める形が明確です。本人が議決に加わらないようにしてください。

Q. 額の基準はある?

A. 決まった基準はありません。団体の財政、職務の重さ、他団体の水準、会員に説明できるかで判断します。情報公開の対象になるため、説明できない額は置かないでください。

Q. 交通費は報酬に含まれる?

A. 含まれません。実費の弁償として扱われ、3分の1の制限にも関わりません。ただし領収書や区間の記録は残してください。定額で支給する場合は、実費を超える部分の扱いに注意が要ります。

Q. 無報酬のままでいい?

A. 多くの団体が無報酬です。ただし時間に余裕のある人しか担えなくなり、担い手の層が狭まります。少額でも出せるなら検討する価値があります。


この記事の位置づけ

本記事は、制度を一般的に説明したものです。個別の事案についての判断や手続きの代行を行うものではありません。

  • 税務の取扱いは、収入の性質や事業の実態によって結論が変わります。具体的な判定や税額の計算については、税理士または所轄の税務署へご確認ください。
  • 社会保険・労働保険の加入手続きは、社会保険労務士が取り扱う業務です。

【免責事項】本記事は一般的な情報提供を目的として作成したものであり、正確性・最新性に配慮していますが、内容の完全性・正確性を保証するものではありません。法令・制度・税制は改正される場合があり、個別の事情により取り扱いが異なることもあります。本記事の情報を利用して行われた一切の行為およびその結果について、当サイトおよび筆者は責任を負いかねます。実際のお手続きや判断にあたっては、必ず公的機関の最新情報をご確認のうえ、必要に応じて専門家にご相談ください。