法人名は登記事項であり、定款の絶対的記載事項でもあります。
それだけに、名称の付け方を間違えたときは、あとから直すのに手間がかかります。
この記事では、一般財団法人の名称に関する条文と、略称・英語表記の実務をまとめます。
名称に「一般財団法人」の文字を入れる
条文は「一般社団法人又は一般財団法人は、その種類に従い、その名称中に一般社団法人又は一般財団法人という文字を用いなければならない」と定めています(5条1項)。
入れる位置についての決まりはありませんので、前に付けても後ろに付けても構いません。
実務では「一般財団法人○○」と前に付ける例が多数です。
「財団法人○○」とだけ名乗ることは、いま新しく設立する法人ではできません。
「財団法人」という表記は、2008年の公益法人制度改革より前に設立された旧民法上の法人に見られるものです。
一般社団法人との比較は一般社団法人と一般財団法人の違いにまとめています。
紛らわしい名称は過料の対象になる
5条は、種類を取り違えさせる名称を禁じています。
| 禁止されること | 根拠 | 制裁 |
|---|---|---|
| 一般社団法人が「一般財団法人」と誤認されるおそれのある文字を名称に使う | 5条2項 | 20万円以下の過料(344条1号) |
| 一般財団法人が「一般社団法人」と誤認されるおそれのある文字を名称に使う | 5条3項 | 20万円以下の過料(344条2号) |
| 法人でない者が「一般社団法人」「一般財団法人」と誤認されるおそれのある文字を名称・商号に使う | 6条 | 20万円以下の過料(344条3号) |
| 不正の目的で、他の法人と誤認されるおそれのある名称・商号を使う | 7条1項 | 20万円以下の過料(344条4号) |
7条1項に違反する名称を使われて事業に係る利益を侵害された法人は、侵害する者に対してその侵害の停止または予防を請求できます(7条2項)。
過料だけでなく、民事の差止めという手当ても用意されています。
略称の「一財」に法令上の根拠はない
「一社」「一財」「公財」といった略記をよく見かけますが、これらは実務上の慣用にすぎず、法令に根拠のある略称ではありませんです。
法律が求めているのは、名称の中に「一般財団法人」という文字を用いることだけです(5条1項)。
| 場面 | 書き方 |
|---|---|
| 登記申請書・定款 | 一般財団法人○○(正式名称) |
| 契約書・請求書・領収書 | 一般財団法人○○(正式名称) |
| 社内資料・表組み・スペースが足りない箇所 | 「一財○○」も可(あくまで便宜) |
法的な効力にかかわる書面で略称を使うと、法人の特定をめぐって争いになる余地を残します。
迷ったら正式名称で書いてください。
英語表記は General Incorporated Foundation
法務省が公開している日本法令外国語訳では、次のように訳されています。
| 日本語 | 英訳 |
|---|---|
| 一般財団法人 | General Incorporated Foundation |
| 一般社団法人 | General Incorporated Association |
| 理事 | Director |
| 代表理事 | Representative Director |
| 監事 | Auditor |
| 評議員 | Councilor |
| 評議員会 | Board of Councilors |
| 一般社団法人及び一般財団法人に関する法律 | Act on General Incorporated Associations and General Incorporated Foundations |
名刺や英文契約では「General Incorporated Foundation ○○」または「○○, General Incorporated Foundation」と書きます。
役職名も上の対訳にそろえておくと、英文の契約書や登記事項証明書の翻訳と食い違いません。
一般社団法人側の書き方は一般社団法人の英語表記(名刺・海外取引での書き方)で詳しく解説しています。
同じ名称の法人があるとどうなるか
一般社団法人等に関する登記には、商業登記法の一部が準用されています(330条)。
そのなかに27条(同一所在場所における同一商号の登記の禁止)が含まれているため、主たる事務所の所在場所が同一で、かつ名称も同一の法人は登記できません。
逆にいえば、所在場所が違えば同じ名称でも登記自体は通ります。
なお、商法11条から15条まで、および19条から24条までの商号に関する規定は、一般社団法人および一般財団法人には適用されません(9条)。
会社の商号と同じ感覚で考えると外れる部分があるので、名称の保護は7条(不正目的での使用禁止と差止請求)を軸に考えることになります。
名称を変えるときの手続き
名称は定款の絶対的記載事項です(153条1項2号)。変更するには次の順序を踏みます。
| 順序 | やること | 根拠 |
|---|---|---|
| ① | 評議員会の決議で定款を変更する(議決に加わることができる評議員の3分の2以上) | 200条1項・189条2項3号 |
| ② | 名称は登記事項なので、変更が生じたときは2週間以内に変更の登記をする | 302条2項2号・303条 |
| ③ | 登記を怠ると100万円以下の過料(法人ではなく個人に科される) | 342条1号 |
定款変更のうち、目的と評議員の選任及び解任の方法だけは原則として変更できませんが、名称はその制限の対象外ですので、通常の定款変更として進められます。
手続きの詳細は一般財団法人の定款変更の手続き(評議員会の3分の2・認証不要)をご覧ください。
変更後の定款について公証人の認証を受け直す必要はありません(認証が要るのは設立時の定款だけです)。
よくある質問
Q. 名称のどこに「一般財団法人」を入れますか?
A. 位置の決まりはありません。5条1項は「その種類に従い、その名称中に一般社団法人又は一般財団法人という文字を用いなければならない」と定めているだけなので、前に付けても後ろに付けても構いません。実務では前に付ける例が多数です。
Q. 「財団法人○○」とだけ名乗ってもよいですか?
A. 現在新しく設立する法人ではできません。5条1項により、名称の中に「一般財団法人」という文字を用いる必要があります。「財団法人」だけの名称は、2008年の制度改正前に設立された旧民法上の法人に見られる表記です。
Q. 「一般社団法人」と紛らわしい名称は使えますか?
A. 使えません。一般財団法人は、その名称中に一般社団法人であると誤認されるおそれのある文字を用いてはならないと定められています(5条3項)。違反した者は20万円以下の過料に処せられます(344条2号)。
Q. 法人ではない団体が「一般財団法人」と名乗ったら?
A. 禁止されています。一般社団法人または一般財団法人でない者は、その名称または商号中に、これらであると誤認されるおそれのある文字を用いてはなりません(6条)。違反すると20万円以下の過料です(344条3号)。
Q. 略称の「一財」は正式なものですか?
A. 法令に根拠のある略称ではありません。「一社」「一財」「公財」といった略記は実務上の慣用にすぎないため、登記申請書・定款・契約書・請求書など法的な効力にかかわる書面では「一般財団法人○○」と正式名称で書いてください。社内資料や表組みのスペースが足りない場面に限って使うのが安全です。
Q. 英語ではどう書きますか?
A. 法務省の日本法令外国語訳では、一般財団法人は General Incorporated Foundation と訳されています。法律名そのものは Act on General Incorporated Associations and General Incorporated Foundations です。名刺や英文契約では「General Incorporated Foundation ○○」または「○○, General Incorporated Foundation」と書きます。
Q. 役員の英語表記も決まっていますか?
A. 同じ日本法令外国語訳では、理事が Director、監事が Auditor、評議員が Councilor、評議員会が Board of Councilors と訳されています。代表理事は Representative Director です。英文の名刺や契約書ではこれに合わせておくと齟齬が起きません。
Q. 同じ名称の法人が近くにあってもよいですか?
A. 主たる事務所の所在場所が同一で名称も同一の場合は登記できません。一般社団法人等の登記には商業登記法27条が準用されているためです(330条)。所在場所が違えば同じ名称でも登記自体は可能ですが、不正の目的で他の法人と誤認されるおそれのある名称を使うことは禁止されており(7条1項)、侵害された法人は使用の停止または予防を請求できます(同2項)。
Q. 名称を変えるにはどうしますか?
A. 名称は定款の絶対的記載事項なので(153条1項2号)、まず評議員会の決議で定款を変更します。決議は議決に加わることができる評議員の3分の2以上です(189条2項3号)。名称は登記事項でもあるため(302条2項2号)、変更が生じたときは2週間以内に変更の登記をしなければならず(303条)、怠ると100万円以下の過料に処せられます(342条1号)。
Q. 自分の法人名を他人に使わせても大丈夫ですか?
A. リスクがあります。自己の名称を使用して事業または営業を行うことを他人に許諾した法人は、その法人が事業を行うものと誤認して取引した者に対し、その他人と連帯して債務を弁済する責任を負います(8条)。名義貸しは避けてください。
📖 参考にした公的機関の情報


