一般財団法人を運営していると、事業を広げたい、事務所を移したい、事業年度を決算期に合わせたい、といった場面が出てきます。
そのたびに定款を直すことになりますが、一般財団法人の定款変更は一般社団法人とは条文の作りが違います。
この記事では、どの決議で変えられるのか・認証は要るのか・どこまで登記が必要かの3点を条文で整理します。
定款変更は評議員会の決議でできる
一般財団法人には社員がいないため、定款を変える決定権は評議員会にあります。
条文は「一般財団法人は、その成立後、評議員会の決議によって、定款を変更することができる」と定めています(200条1項本文)。
一般財団法人は評議員・評議員会・理事・理事会・監事のすべてを置かなければならない法人なので(170条1項)、評議員会は必ず存在します。定款変更のためにわざわざ機関を新設する必要はありません。
評議員は3人以上と決まっているので(173条3項)、最低でも3人で決議を行うことになります。
目的と評議員の選任方法だけは別ルールになる
200条1項にはただし書があり、153条1項1号と8号に係る定款の定めは、この原則から外されています。
1号が目的、8号が評議員の選任及び解任の方法です。
一般財団法人は「財産に法人格を与える」制度なので、設立者が決めた目的と、評議員という監督側の人選ルールを、法人が後から自由に書き換えられないようにしてあります。
| 変更できるか | 根拠 | |
|---|---|---|
| 原則 | 評議員会の決議では変更できない | 200条1項ただし書 |
| 例外① | 設立者が定款で「評議員会の決議によって変更できる」と定めていたとき → 変更できる | 200条2項 |
| 例外② | 設立当時予見できなかった特別の事情により、変更しなければ運営の継続が不可能または著しく困難になったとき → 裁判所の許可を得て変更できる | 200条3項 |
例外①は設立のときにしか作れない仕組みです。定款にその一文がなければ、あとから足すこともできません。
例外②の「特別の事情」は、設立当時に予見できなかったことが前提です。単に事業を広げたいという理由では通りません。
ここまでの可否の整理は、一般財団法人の基本財産と純資産300万円の解散ルールでも触れています。
決議要件は「評議員の3分の2以上」で、社団とは数え方が違う
200条の評議員会は、189条2項3号によって特別の決議要件が課されています。
「議決に加わることができる評議員の3分の2(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上に当たる多数」です。
ここが一般社団法人と混同されやすいところです。
| 定款変更の決議要件 | 根拠 | |
|---|---|---|
| 一般社団法人 | 総社員の半数以上であって、総社員の議決権の3分の2以上 | 49条2項4号(146条の社員総会) |
| 一般財団法人 | 議決に加わることができる評議員の3分の2以上 | 189条2項3号(200条の評議員会) |
一般社団法人は「頭数の半数以上」と「議決権の3分の2以上」を両方満たす必要がありますが、一般財団法人は評議員の頭数の3分の2以上という一本の要件だけです。
普通決議のような出席要件(189条1項)は、この特別決議には重ねてかかりません。
評議員が3人なら2人、6人なら4人の賛成が必要になる計算です。
決議について特別の利害関係を有する評議員は議決に加われないため(189条3項)、その人を除いた人数で3分の2を数えます。
変更後の定款に公証人の認証は要らない
設立のときは、定款は公証人の認証を受けなければ効力を生じません(155条)。
この155条が対象にしているのは152条1項・2項の定款、つまり設立者が作成した設立時の定款だけです。
定款変更について認証を求める規定はどこにもありません。
したがって、評議員会で決議した時点で新しい定款が効力を持ちます。公証役場に行く必要はなく、認証手数料もかかりません。
法人の側で用意するのは、評議員会の議事録と、変更後の内容を反映した定款です。
登記が必要な変更・必要でない変更
定款を変えたら必ず登記、というわけではありません。登記が必要かどうかは、変更した事項が登記事項に含まれるかどうかで決まります。
一般財団法人の登記事項は302条2項に並んでいます。
| 定款の記載事項 | 登記事項か | 変更したときの手続き |
|---|---|---|
| 目的(153条1項1号) | 登記事項(302条2項1号) | 2週間以内に変更の登記 |
| 名称(同2号) | 登記事項(同2号) | 2週間以内に変更の登記 |
| 主たる事務所の所在地(同3号) | 登記事項(同3号) | 2週間以内に変更の登記 |
| 公告方法(同9号) | 登記事項(同12号) | 2週間以内に変更の登記 |
| 評議員の選任及び解任の方法(同8号) | 登記事項ではない | 定款を直すだけでよい |
| 事業年度(同10号) | 登記事項ではない | 定款を直すだけでよい |
登記事項に変更が生じたときは、2週間以内に、主たる事務所の所在地において変更の登記をしなければなりません(303条)。
起算点は「定款を変えた日」ではなく「登記事項に変更が生じたとき」です。効力発生日を先の日付にしたときは、その日から2週間で数えます。
設立のときに決めておくべき2つ
後から変えにくい項目は、設立の段階で決め切っておくのが結局いちばん安く済みます。
目的は、いま予定している事業だけでなく、数年先に手を広げそうな領域まで含めて書いておきます。書き方そのものは一般社団法人の事業目的の書き方|定款の記載例とポイントの考え方がそのまま使えます。
評議員の選任及び解任の方法には、条文上の制約がもう1つあります。
評議員そのものの役割や兼任の制限は評議員とは?役割・選ばれ方・理事との違いにまとめています。
設立手続き全体の流れは一般財団法人の設立手続き(300万円の拠出・定款の認証・登記)を参照してください。
よくある質問
Q. 一般財団法人の定款は変更できますか?
A. できます。一般財団法人は成立後、評議員会の決議によって定款を変更できます(200条1項本文)。ただし「目的」(153条1項1号)と「評議員の選任及び解任の方法」(同8号)の2つだけは、原則としてこの方法では変更できません(200条1項ただし書)。
Q. 目的や評議員の選任方法を変える方法はありますか?
A. 2つあります。1つは、設立者が定款に「これらも評議員会の決議で変更できる」と定めていた場合で、このときは評議員会の決議で変更できます(200条2項)。もう1つは、設立当時予見できなかった特別の事情により、変更しなければ運営の継続が不可能または著しく困難になったときで、裁判所の許可を得たうえで評議員会の決議によって変更します(200条3項)。
Q. 定款変更の決議要件は何ですか?
A. 議決に加わることができる評議員の3分の2以上の多数です(189条2項3号)。一般社団法人の定款変更(総社員の半数以上かつ総社員の議決権の3分の2以上・49条2項4号)とは数え方が違い、財団のほうは出席要件がなく、母数が評議員の頭数になります。評議員が3人なら2人の賛成が必要です。
Q. 評議員会を開かずに定款を変更できますか?
A. 理事が提案し、議決に加わることができる評議員の全員が書面または電磁的記録で同意すれば、評議員会の決議があったものとみなされます(194条1項)。この場合、法人は同意の書面等を主たる事務所に10年間備え置かなければなりません(194条2項)。
Q. 変更した定款に公証人の認証は必要ですか?
A. 必要ありません。公証人の認証を受けなければ効力を生じないとされているのは設立時の定款だけです(155条)。変更後の定款を改めて認証してもらう必要はありません。
Q. 定款を変更したら必ず登記が必要ですか?
A. 変更した事項が登記事項かどうかで決まります。目的・名称・主たる事務所および従たる事務所の所在場所・公告方法などは登記事項なので(302条2項)、変更が生じたときは2週間以内に変更の登記をしなければなりません(303条)。一方、評議員の選任及び解任の方法や事業年度は登記事項ではないため、定款を直すだけで登記は不要です。
Q. 変更の登記を忘れるとどうなりますか?
A. 登記をすることを怠ったときは、理事や評議員などが100万円以下の過料に処せられます(342条1号)。定款を変えた日ではなく登記事項に変更が生じた日から2週間が起算点になるので、決議の日を基準に手続きを組み立ててください。
Q. 設立の段階で気をつけることはありますか?
A. 目的と評議員の選任及び解任の方法は後から変えにくいので、この2つは設立時に慎重に決めます。特に評議員の選任及び解任の方法については、理事または理事会が評議員を選任・解任する旨の定めを置いても効力を有しません(153条3項1号)。評議員選定委員会など、理事側から独立した仕組みを定款に書き込むのが一般的です。
📖 参考にした公的機関の情報


