財産目録とは?一般社団法人に作成義務はある?NPO法人・公益法人・清算時との違いを条文で整理

一般社団法人法
財産目録は、法人格によって「作らなければならない法人」と「作らなくてよい法人」がはっきり分かれる書類です。まず自分の法人がどちらなのかを条文で確かめましょう。

結論から申し上げます。一般社団法人と一般財団法人には、毎年財産目録を作成しなければならないという条文はありません。毎事業年度に作るのは貸借対照表・損益計算書・事業報告とその附属明細書です(一般法人法123条2項)。

いっぽうで、NPO法人と公益法人には、財産目録の作成と備置きが法律で義務づけられています。さらに一般社団法人でも、解散して清算に入った瞬間から財産目録は必須になります(一般法人法225条)。「財産目録」という同じ言葉でも、法人格と場面によって、作る時期も見られる相手もまったく違うのです。

この記事では、財産目録とは何かという話から始めて、貸借対照表との違い、一般社団法人に義務がないのはなぜか、NPO法人・公益法人ではいつ作って誰に見せるのか、清算のときに何が変わるのかを、一般法人法・NPO法・公益認定法の条文に沿って順に整理します。

財産目録とは ― ある日の時点で「何をいくら持ち、いくら負っているか」を一つずつ書き出した一覧

財産目録は、ある特定の日を基準にして、法人が持っている資産と負っている負債を、項目ごとに個別に列挙した書類です。現金と預金がいくら、未収の会費がいくら、備品や車両がいくら、借入金がいくら、という具合に一つひとつを並べ、最後に資産の合計から負債の合計を差し引いた正味財産を示します。

似た書類に貸借対照表がありますが、役割が違います。貸借対照表は「現金及び預金」「固定資産」のように科目ごとに合計した金額を並べるのに対し、財産目録はその内訳を個別の財産の単位まで開いて示します。貸借対照表が地図なら、財産目録は住所録に近い書類です。

そのため財産目録は、法人の財産の中身を第三者が確かめたい場面で求められます。行政庁への提出、社員や利害関係人からの閲覧請求、そして解散後の清算で債権者に財産の全容を示す場面です。どの法人格でどの場面に義務があるのかを、次から順に見ていきます。

一般社団法人・一般財団法人に、毎年の財産目録を作る義務はない

一般法人法が毎事業年度の作成を求めている書類は、計算書類(貸借対照表と損益計算書)、事業報告、そしてそれらの附属明細書です(123条2項)。この条文のどこにも財産目録という語は出てきません。成立の日に作るのも貸借対照表だけです(123条1項)。

一般財団法人も同じで、199条が123条を準用しているため、毎年の作成書類は社団と変わりません。財産目録の作成を義務づける条文が一般法人法の通常運営の章にはない、というのが出発点です。

では一般法人法に財産目録がまったく出てこないかというと、そうではありません。過料を定めた342条7号には「定款、社員名簿、議事録、財産目録、会計帳簿、貸借対照表…」と並んでいます。これは、後で説明する清算の場面で財産目録が義務になるからです。通常運営で義務がない書類が、解散を境に必須の書類に変わります。

書類 一般社団法人(通常運営) 根拠
貸借対照表・損益計算書 毎事業年度に作成。作成時から10年保存 一般法人法123条2項・4項
事業報告・附属明細書 毎事業年度に作成 同123条2項
成立の日の貸借対照表 設立時に作成 同123条1項
会計帳簿 適時に正確に作成。閉鎖時から10年保存 同120条
財産目録 通常運営では作成義務なし(清算に入ると必須) 同225条

この記事の位置づけ

本記事は、制度を一般的に説明したものです。個別の事案についての判断や手続きの代行を行うものではありません。

  • 設立登記など登記申請の手続きは司法書士が取り扱う業務です。ご自身で法務局へ申請することもできます。

義務がなくても、一般社団法人が財産目録を持っておくと効く場面

義務がないことと、作る意味がないことは別です。一般社団法人でも、財産目録があると話が早い場面がいくつかあります。

ひとつは補助金や助成金の申請です。交付元は法人の財政状態を確かめるために、貸借対照表だけでなく財産の内訳を求めることがあります。もうひとつは公益認定を目指すときです。公益法人になれば毎年の作成が義務になるため(後述)、移行前から様式をそろえておくと切り替えがスムーズです。

三つめは解散を視野に入れたときです。清算に入ると解散日時点の財産目録を作らなければならないので、日ごろから固定資産台帳や預金口座の一覧が整っていれば、清算人の負担がまったく違います。四つめは理事の交代です。財産の全容を一覧で引き継げるので、新旧の理事の間で「何を預かったか」が明確になります。

解散すると財産目録は必須になる ― 清算人が就任後すぐに作る

一般社団法人が解散して清算法人になると、清算人は就任後遅滞なく法人の財産の現況を調査し、解散の日における財産目録と貸借対照表を作成しなければなりません(一般法人法225条1項)。条文はこの二つをまとめて「財産目録等」と呼びます。

清算人会を置いている法人では、この財産目録等は清算人会の承認を受けなければなりません(同条2項)。そのうえで社員総会の承認を受け、清算結了までの間これを保存します。清算のスタート地点で「法人に何がいくら残っているか」を確定させ、債権者への弁済と残余財産の分配をこの数字に基づいて進める仕組みです。

解散から清算結了までの流れそのものは、一般社団法人の解散・清算の流れで解説しています。財産目録はその流れの最初の一歩にあたります。

NPO法人の財産目録は「成立のとき」と「毎年」の二段構え

NPO法人には、財産目録に関する条文が二つあります。まず設立時です。特定非営利活動法人は、成立の時に財産目録を作成し、常にこれを事務所に備え置かなければなりません(NPO法14条)。設立直後の法人に何があるかを、最初に確定させる趣旨です。

次に毎年です。毎事業年度初めの3か月以内に、前事業年度の事業報告書、計算書類(活動計算書と貸借対照表)、財産目録、年間役員名簿、社員10人以上の名簿を作成し、これらを「事業報告書等」として、作成の日から5年を経過した日を含む事業年度の末日まで事務所に備え置きます(NPO法28条1項)。

会計の原則も条文に書かれています。計算書類と財産目録は、会計簿に基づいて、事業の実績と財政状態に関する真実な内容を明瞭に表示したものでなければなりません(NPO法27条3号)。財産目録は帳簿から独立した書類ではなく、帳簿の裏づけがある書類として位置づけられています。

場面 いつ作るか どこに置くか 根拠
設立時 成立の時 常に事務所に備置き NPO法14条
毎年 事業年度初めの3か月以内 作成日から5年経過日を含む事業年度末まで事務所に備置き NPO法28条1項
所轄庁への提出 毎事業年度1回 事業報告書等として提出 NPO法29条

NPO法人の財産目録は、社員と利害関係人が閲覧できる

NPO法人は、社員その他の利害関係人から事業報告書等の閲覧の請求があった場合、正当な理由がある場合を除いて閲覧させなければなりません(NPO法28条3項)。財産目録は事業報告書等に含まれるので、この閲覧の対象です。

さらに事業報告書等は毎事業年度1回、所轄庁に提出します(NPO法29条)。提出された書類は所轄庁で閲覧や公表の対象になるため、NPO法人の財産目録は、法人の中だけでなく外からも見られる前提の書類だと考えておく必要があります。

NPO法人の毎年の書類全体については、NPO法人の事業報告書NPO法人の会計と帳簿で詳しく扱っています。

公益法人の財産目録は「財産目録等」の筆頭 ― 誰でも閲覧でき、行政庁が公表する

公益社団法人・公益財団法人は、毎事業年度経過後3か月以内に、財産目録、役員等名簿、報酬等の支給基準を記載した書類などを作成し、主たる事務所に5年間、その写しを従たる事務所に3年間備え置かなければなりません(公益認定法21条2項)。財産目録はこの条文で最初に挙げられている書類です。

公益法人の特徴は閲覧できる相手の広さです。何人も、公益法人の業務時間内はいつでも、これらの書類や定款、社員名簿、計算書類等(条文はまとめて「財産目録等」と呼びます)の閲覧を請求でき、公益法人は正当な理由がないのにこれを拒んではなりません(同条5項)。社員でも利害関係人でもない第三者からの請求にも応じる義務がある点が、NPO法人と違います。

そのうえで、財産目録等(定款を除く)は毎事業年度経過後3か月以内に行政庁へ提出し(同法22条1項)、行政庁はこれを公表します(同条2項)。役員等名簿と社員名簿については個人の住所の部分を除いて公表され、閲覧の場面でも社員・評議員以外の人に対しては住所を除外して閲覧させることができます(21条6項)。

項目 公益法人 根拠
作成期限 毎事業年度経過後3か月以内 認定法21条2項
備置き 主たる事務所5年・従たる事務所(写し)3年 同21条2項
閲覧できる人 何人も(正当な理由なく拒めない) 同21条5項
行政庁への提出・公表 毎事業年度経過後3か月以内に提出。行政庁が公表 同22条
住所の扱い 役員等名簿・社員名簿は住所を除外できる/公表時は除外 同21条6項・22条2項

公益法人が毎年提出する書類の全体像は、公益法人の定期提出書類公益法人の情報公開と閲覧にまとめています。

3つの法人格と清算時を一覧で比べる

ここまでの内容を一つの表にまとめます。同じ「財産目録」でも、作る時期、置く場所、見られる相手がここまで違います。

一般社団・財団法人 NPO法人 公益法人 清算法人(一般社団・財団)
作成義務 なし あり(成立時+毎年) あり(毎年) あり(解散日時点)
作成時期 成立時/事業年度初め3か月以内 事業年度経過後3か月以内 清算人の就任後遅滞なく
備置き 5年経過日を含む事業年度末まで 主5年・従3年 清算結了まで保存
閲覧できる人 社員その他の利害関係人 何人も ―(清算人会・社員総会の承認)
行政への提出 所轄庁へ毎年 行政庁へ毎年・公表
根拠 一般法人法123条 NPO法14・27・28・29条 認定法21・22条 一般法人法225条

財産目録と貸借対照表はどこが違うのか

両方とも「ある日の財政状態」を示す書類ですが、粒度と役割が違います。貸借対照表は資産・負債・正味財産を科目単位で集計した表で、毎年の計算書類として一般社団法人にも作成義務があります。財産目録は同じ日の資産と負債を、個別の財産の単位まで開いて列挙します。

たとえば貸借対照表では「什器備品 850,000円」と一行で済むところを、財産目録では「事務机5台」「ノートパソコン3台」「複合機1台」のように品目ごとに書きます。預金も「普通預金」の一行ではなく、金融機関と口座ごとに分けて示すのが通常です。

この違いがあるため、財産目録は帳簿や台帳が整っていないと作れません。逆に言えば、固定資産台帳と預金口座の一覧、未収金・未払金の明細を日ごろから整えておけば、必要になったときにすぐ作れる書類でもあります。

貸借対照表 財産目録
単位 科目ごとの合計 個別の財産ごと
一般社団法人の義務 毎事業年度あり(123条2項) なし(清算時のみ225条)
主な読み手 社員・債権者(129条の備置き・閲覧) 行政庁・利害関係人・債権者
作る根拠 会計帳簿 会計帳簿と台帳・実査

財産目録に書く項目 ― 資産・負債・正味財産の3ブロック

法人格によって様式は少しずつ違いますが、骨格は共通です。まず資産の部に、流動資産(現金、預金、未収会費、前払金など)と固定資産(建物、車両、什器備品、敷金、投資有価証券など)を、品目ごとに数量・所在・金額を添えて並べます。

次に負債の部に、流動負債(未払金、預り金、前受会費、短期借入金など)と固定負債(長期借入金、退職給付引当金など)を、相手先や内容が分かる形で並べます。最後に資産合計から負債合計を差し引いた正味財産を示します。

基準日は、通常運営で作る場合は事業年度の末日、清算で作る場合は解散の日です。どの日の状態を写した書類なのかを表題に明記しておくと、後で貸借対照表と突き合わせるときに迷いません。

よくある間違いを4つ

一つめは「一般社団法人も毎年財産目録を提出しなければならない」という思い込みです。一般法人法には毎年の作成義務も提出義務もありません。毎年作るのは計算書類と事業報告です。

二つめは、清算に入ったのに財産目録を作らないことです。解散後の財産目録等は清算人の義務で、怠れば100万円以下の過料の対象になり得ます(一般法人法342条)。過料は法人ではなく清算人個人に科されます。

三つめは、NPO法人で設立時の財産目録を作ったきり、毎年の分を作っていないことです。14条の設立時と28条の毎年は別の義務です。四つめは、公益法人で財産目録を「内部資料」だと思っていることです。何人もの閲覧請求に応じる義務があり、行政庁が公表する書類です。

財産目録についてよくある質問

Q. 一般社団法人に財産目録の作成義務はありますか?

A. 通常運営では義務はありません。毎事業年度に作成が義務づけられているのは貸借対照表・損益計算書・事業報告とその附属明細書です(一般法人法123条2項)。ただし解散して清算に入ると、清算人は解散の日における財産目録と貸借対照表を作成しなければなりません(同法225条1項)。

Q. 財産目録と貸借対照表はどう違いますか?

A. 貸借対照表は資産・負債・正味財産を科目ごとに集計した表で、財産目録は同じ日の資産と負債を個別の財産の単位まで列挙した一覧です。一般社団法人に毎年の作成義務があるのは貸借対照表のほうです。

Q. NPO法人はいつ財産目録を作りますか?

A. 成立の時に作成して常に事務所に備え置き(NPO法14条)、その後は毎事業年度初めの3か月以内に前事業年度分を作成して事業報告書等の一部として備え置きます(同法28条1項)。所轄庁にも毎年提出します(同法29条)。

Q. 公益法人の財産目録は誰が見られますか?

A. 何人も、業務時間内はいつでも閲覧を請求でき、公益法人は正当な理由がないのに拒めません(公益認定法21条5項)。行政庁に提出された財産目録等は行政庁が公表します(同法22条2項)。

Q. 清算のときの財産目録は誰が承認しますか?

A. 清算人会を置く法人では清算人会の承認が必要です(一般法人法225条2項)。そのうえで社員総会(一般財団法人では評議員会)の承認を受けます。

Q. 財産目録を作らなかったらどうなりますか?

A. 作成義務がある場面で作らなかったり、虚偽の記載をしたりすると、一般法人法では100万円以下の過料の対象になります(342条7号)。NPO法人・公益法人も、それぞれの法律に備置きや提出の義務違反に対する過料の定めがあります。

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