一般社団法人を一般財団法人に変更できる?組織変更の制度と合併という唯一の道

株式会社と合同会社の間にある「組織変更」は、一般社団法人と一般財団法人の間には存在しません。

一般社団法人として設立したものの、寄付や基本財産を軸にした運営に変えたい。

そういう場面で「一般財団法人に変更できないか」という質問が出てきます。

結論を先に言うと、種類を変える「組織変更」という制度は法律に用意されていません

ただし、まったく手がないわけでもありません。この記事では、条文がどう組み立てられているかを順に見ていきます。

POINT 結論:一般社団法人及び一般財団法人に関する法律には「組織変更」という制度が存在しません(条文に語自体が出てきません)。種類を変えるには合併を使うしかなく(242条)、しかも合併する法人が社団だけなら社団、財団だけなら財団にしかなれません(243条1項)。社団と財団が混在する合併でのみ種類を選べますが、その一般社団法人が基金の全額を返還していないときは社団にしかなれません(243条2項)。

一般法人法に「組織変更」という制度はない

株式会社と合同会社の間には、会社法に組織変更の手続きが用意されています。

一方、一般社団法人及び一般財団法人に関する法律には、これに相当する制度がありません。

条文を通して検索しても、「組織変更」という語が一度も出てきません

つまり「一般社団法人のまま中身を財団に切り替える」という手続きは、法律上そもそも想定されていません。

この点を最初に押さえておかないと、登記所や公証役場で手続きを探して時間を使うことになります。

合併なら、社団と財団をまたげる

種類に関係する唯一の入口が合併です。

242条は、一般社団法人又は一般財団法人は、他の一般社団法人又は一般財団法人と合併をすることができる、と定めています。

読み方が大事で、社団と財団の組み合わせも認められているということです。

株式会社と一般社団法人のように法人格の系統が違うもの同士は合併できませんが、社団と財団は同じ法律のなかの2つの種類なので、またぐことができます。

ただし243条が「合併後の種類」を縛る

合併できるからといって、合併後の種類を自由に選べるわけではありません。

243条1項が、合併する法人の顔ぶれによって合併後の種類を決めています。

合併する法人 合併後の法人 根拠
一般社団法人のみ 一般社団法人でなければならない 243条1項1号
一般財団法人のみ 一般財団法人でなければならない 243条1項2号
社団と財団が混在 種類を選べる(ただし次の条件あり) 243条2項の反対解釈

ここが誤解されやすいところで、一般社団法人どうしが合併しても財団にはなれません

「合併を使えば種類を変えられる」という説明は、相手方に一般財団法人がいる場合に限った話です。

つまり、種類を変えたい一般社団法人は、合併してくれる一般財団法人を見つけてくる必要があります。

混在する合併のカギは「基金の全額返還」

243条2項は、社団と財団が混在する合併について、もう一段の条件を置いています。

合併をする一般社団法人が合併契約の締結の日までに基金の全額を返還していないときは、合併後存続する法人または合併により設立する法人は、一般社団法人でなければならない。

基金の状態 合併後に選べる種類
基金を設けていない 社団・財団のどちらも可
基金を設けたが、契約締結日までに全額返還済み 社団・財団のどちらも可
基金が一部でも残っている 一般社団法人のみ

基金は、拠出者に返還を予定した一般社団法人固有の制度です。

返還先である社員という受け皿が財団には存在しないため、基金を残したまま財団になることはできないという整理になっています。

基金を使っている法人が財団化を考えるなら、合併契約の締結日までに返還を終えておく必要があります。

財団になると増える負担も見ておく

一般社団法人 一般財団法人
機関 理事1人以上でよい(60条1項)。理事会・監事は任意(同2項) 評議員・評議員会・理事・理事会・監事がすべて必置(170条1項)
最低人数 理事1人から 評議員3人(173条3項)+理事3人+監事1人
兼任 評議員は理事・監事・使用人を兼ねられない(173条2項)
解散 社員が欠けたとき(148条4号) 上記に加え純資産が2期連続で300万円未満なら解散(202条2項)
目的の変更 社員総会の決議で可能 原則できない(200条1項ただし書)

種類を変えることは、これらの制約を引き受けることでもあります。

とくに目的を後から変えられなくなる点(200条)と、純資産による解散(202条2項)は、社団にはない性質です。

なお、新設合併により設立した一般財団法人については、純資産のルールに成立の日の属する事業年度の特則があります(202条3項)。

現実的にはどう考えるか

整理すると、選択肢は次の3つです。

選択肢 内容 ハードル
そのまま運営 一般社団法人のまま定款・機関設計を見直す 低い
合併 相手方の一般財団法人と合併して財団を残す(または新設する) 相手方が必要・基金の全額返還・債権者保護手続き
新たに設立 一般財団法人を別に設立する 300万円以上の拠出(153条2項)・評議員3人などの体制

合併の手続きそのもの(吸収合併と新設合併の違い、債権者保護手続き、登記、費用)は、

一般社団法人の合併とは?吸収合併・新設合併の手続きと流れにまとめています。

多くの場合、種類を変えるより、いまの法人のなかで目的や機関設計を整えるほうが現実的な着地になります。

よくある質問

Q. 一般社団法人を一般財団法人に組織変更できますか?

A. できません。株式会社と合同会社の間にあるような「組織変更」の制度は、一般社団法人及び一般財団法人に関する法律には置かれていません。法律の条文に「組織変更」という語自体が出てきません。

Q. では種類を変える方法はまったくないのですか?

A. 合併という方法があります。一般社団法人は他の一般財団法人と合併することができ(242条)、一定の条件を満たせば合併後に残る法人を一般財団法人にできます(243条)。ただし相手方となる一般財団法人が必要で、自分だけで種類を変えることはできません。

Q. 一般社団法人どうしが合併したら財団になれますか?

A. なれません。合併をする法人が一般社団法人のみである場合、合併後存続する法人または合併により設立する法人は一般社団法人でなければならないと定められています(243条1項1号)。財団どうしの場合も同じで、財団にしかなりません(同2号)。

Q. 基金があると何が変わりますか?

A. 一般社団法人と一般財団法人が混在する合併では、合併をする一般社団法人が合併契約の締結の日までに基金の全額を返還していないときは、合併後の法人は一般社団法人でなければなりません(243条2項)。つまり基金が残っていると財団を選べません。

Q. 財団になると運営はどう変わりますか?

A. 評議員・評議員会・理事・理事会・監事のすべてが必置になり(170条1項)、評議員は3人以上(173条3項)、理事も3人以上必要です。さらに貸借対照表上の純資産額が2期連続で300万円未満になると解散します(202条2項)。社団にはない制約です。

Q. 実務ではどう考えればよいですか?

A. 相手方の財団を探して合併するコストと、いま一般社団法人のまま運営を続けるコストを比べることになります。多くの場合は、種類を変えるより定款や機関設計を見直すほうが現実的です。

【免責事項】本記事は一般的な情報提供を目的として作成したものであり、正確性・最新性に配慮していますが、内容の完全性・正確性を保証するものではありません。法令・制度・税制は改正される場合があり、個別の事情により取り扱いが異なることもあります。本記事の情報を利用して行われた一切の行為およびその結果について、当サイトおよび筆者は責任を負いかねます。実際のお手続きや判断にあたっては、必ず公的機関の最新情報をご確認のうえ、必要に応じて専門家にご相談ください。