公益認定を受けたあと、基準を満たせなくなったらどうなるのか。
行政庁から報告を求められたが、これは取消しの前触れなのか。
公益社団法人・公益財団法人にとって、認定の取消しは法人の存続そのものではなく、名称と財産に効く処分です。
根拠は、公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律(認定法)の28条から30条です。
この記事では、取消しの2つの類型、取消しに至るまでの流れ、そして取り消されたあとに何が起こるのかを条文に沿って整理します。
取消しには「しなければならない」と「できる」の2種類がある
認定法29条は、取消しを2つに分けています。
1項は行政庁は……その公益認定を取り消さなければならないという書き方で、行政庁に裁量がありません。
該当するのは次の4つです。
1号は、欠格事由を定めた6条各号(2号を除く)のいずれかに該当するに至ったときです。
2号は、偽りその他不正の手段により公益認定、変更の認定または認可を受けたときです。
3号は、正当な理由がなく、28条3項の命令に従わないときです。
4号は、公益法人から公益認定の取消しの申請があったときです。
一方、2項は「取り消すことができる」という書き方で、行政庁の判断の余地があります。
1号が5条各号の認定基準のいずれかに適合しなくなったとき、2号が前節の規定(公益法人の事業活動等に関する規律)を遵守していないとき、3号がそのほか法令または法令に基づく行政機関の処分に違反したときです。
収支相償や公益目的事業比率といった基準を満たせなくなった場合は、この2項1号の側に入ります。
| 条文 | 主な事由 | 行政庁の裁量 | |
|---|---|---|---|
| 必ず取り消される | 29条1項 | 欠格事由該当/不正の手段による認定/命令に従わない/法人からの取消し申請 | なし |
| 取り消すことができる | 29条2項 | 認定基準に適合しなくなった/事業活動の規律を守っていない/法令違反 | あり |
いきなり取り消されるわけではない|勧告・公表・命令という段階
2項の類型では、通常はその前に段階があります。
認定法28条1項は、29条2項各号のいずれかに該当すると疑うに足りる相当な理由がある場合に、行政庁が期限を定めて必要な措置をとるべき旨を勧告できると定めています。
そして28条2項により、勧告の内容は公表されます。
勧告を受けた法人が、正当な理由がなくその措置をとらなかったときは、28条3項により命令が出されます。
命令をしたときは、28条4項によりその旨が公示されます。
この命令に正当な理由なく従わないと、29条1項3号に該当し、今度は必ず取り消されることになります。
つまり、勧告の段階で対応できるかどうかが分かれ目です。
勧告が公表される時点で、寄付者や取引先に伝わることも想定しておく必要があります。
取り消されると名称が自動で「一般」に変わる
取消しは、法人を消す処分ではありません。
認定法29条5項は、取消しの処分を受けた公益法人は、その名称中の「公益社団法人」または「公益財団法人」という文字を、それぞれ「一般社団法人」「一般財団法人」と変更する定款の変更をしたものとみなすと定めています。
自分で定款変更の決議をしなくても、法律上そう扱われるということです。
さらに29条6項により、行政庁は遅滞なく、主たる事務所の所在地を管轄する登記所に名称の変更の登記を嘱託します。
登記の書き換えも法人側の申請を待たずに進みます。
また、29条4項により、取り消したことは公示されます。
法人としては存続しますが、公益法人としての税制上の扱いは失われます。
いちばん重いのは財産|公益目的取得財産残額の贈与
実務で最も影響が大きいのは、認定法30条です。
公益法人は、認定を受ける前提として、公益認定が取り消された場合に公益目的取得財産残額に相当する額の財産を、類似の事業を目的とする他の公益法人などに贈与する旨を定款に定めています(認定法5条20号)。
30条1項は、取消しの日から1か月以内にその贈与に係る書面による契約が成立しないときは、行政庁が内閣総理大臣なら国、都道府県知事なら当該都道府県に対して、同額の金銭を贈与する契約が成立したものとみなすと定めています。
一部だけ契約が成立した場合、残りの部分についても同じ扱いです。
つまり、贈与先を決めずに1か月が過ぎると、国または都道府県への支払義務が確定します。
公益目的取得財産残額の計算方法は30条2項に定義があり、細目は内閣府令に委ねられています。
行政庁は、算定した残額と契約が成立した旨を法人に通知します(30条4項)。
なお、30条5項により、公益法人はこの5条20号の定款の定めを変更することができません。
あらかじめ抜け道を用意しておくことはできない、という設計です。
自分から取消しを申請することもできる
見落とされがちですが、29条1項4号は法人からの取消しの申請を挙げています。
公益認定を維持するための事務負担が重い、公益目的事業比率を継続的に満たす見通しが立たない、といった理由で、自ら一般法人に戻る選択です。
この場合も取消しであることに変わりはなく、名称の変更も、30条の財産の贈与も同じように適用されます。
「自主的だから財産は残せる」ということにはなりません。
認定を返上するかどうかを検討するときは、まず公益目的取得財産残額がいくらになるかを試算するのが出発点です。
その金額を手放しても運営が続くのかどうかで、判断が変わります。
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Q. 公益認定が取り消されると法人はなくなりますか?
A. なくなりません。名称中の「公益社団法人」「公益財団法人」の部分を「一般社団法人」「一般財団法人」に変更する定款変更をしたものとみなされ、一般法人として存続します(認定法29条5項)。
Q. 取消しはいきなり行われますか?
A. 認定基準に適合しなくなった類型では、通常は勧告(公表あり)→命令(公示あり)という段階があります(認定法28条)。命令に正当な理由なく従わない場合は、必ず取り消されます(29条1項3号)。
Q. 取り消されると財産はどうなりますか?
A. 定款の定めに従い、公益目的取得財産残額に相当する額の財産を贈与する必要があります。取消しの日から1か月以内に書面による契約が成立しないときは、国または都道府県に同額の金銭を贈与する契約が成立したものとみなされます(認定法30条1項)。
Q. 自分から公益認定を返上できますか?
A. できます。法人からの取消しの申請は認定法29条1項4号に定められており、この場合も必ず取り消されます。名称の変更や財産の贈与の扱いは同じです。
Q. 名称の変更登記は自分で申請しますか?
A. 行政庁が登記所に嘱託します(認定法29条6項)。法人側の申請を待たずに登記が変更されます。
📖 参考にした公的機関の情報


