一般社団法人とは違うのでしょうか?
結論から申し上げます。いま「社団法人」という法人格は存在しません。2008年(平成20年)12月1日に旧制度が廃止され、現在あるのは一般社団法人と公益社団法人の2つだけです。
名刺やウェブサイトに「社団法人◯◯協会」と書かれている場合、考えられるのは表記が古いまま更新されていないか、法人名の一部として過去の呼び名を残しているかのどちらかです。登記簿上の正式名称は、必ず「一般社団法人」か「公益社団法人」で始まっています。
この記事では、旧制度の社団法人が何だったのか、なぜ廃止されたのか、既存の法人はどうなったのかを、整備法(平成18年法律第50号)の条文にあたって順に整理します。
- 旧制度の「社団法人」=主務官庁の許可でつくる公益法人だった
- なぜ廃止されたのか ― 許可主義の3つの問題
- 施行日に既存の社団法人はどうなったか(整備法40条)
- 特例民法法人とは ― 移行するまでの過渡的な姿(整備法42条)
- 移行の2つの道 ― 「認定」と「認可」は別物(整備法44条・45条)
- 移行しなかった法人は解散とみなされた(整備法46条)
- いまも旧制度を引きずっている法人がある ― 移行法人と公益目的支出計画
- 旧制度と現行制度の違いを一覧で比べる
- いま「社団法人◯◯」と書かれていたら何を疑うか
- 「社団」の意味は現行法にも生きている
- 営利・非営利の意味も旧制度から変わっていない
- これから団体を法人にするなら、どれを選ぶか
- 社団法人についてよくある質問
旧制度の「社団法人」=主務官庁の許可でつくる公益法人だった
2008年11月30日まで、社団法人の根拠は民法にありました。当時の民法34条は、学術・技芸・慈善・祭祀・宗教その他の公益に関する社団または財団で、営利を目的としないものは、主務官庁の許可を得て法人とすることができる、と定めていました。
ここでいう「社団」は人の集まり、「財団」は財産のかたまりを指します。会員が集まって運営する団体は社団法人、寄付された財産を運用して事業を行う団体は財団法人になりました。この社団と財団の区別は、現在の一般社団法人・一般財団法人にもそのまま引き継がれています。
旧制度の特徴は、公益性の判断と法人格の付与が一体だったことです。法人になること自体が「公益活動を行う団体だ」というお墨付きを意味していました。
なぜ廃止されたのか ― 許可主義の3つの問題
| 問題 | 旧制度で起きていたこと |
|---|---|
| 設立できるかが役所しだい | 許可するかどうかは主務官庁の裁量。同じような団体でも省庁や担当者によって結論が変わりうる状態でした。 |
| 公益性の基準がばらばら | 公益性の判断基準が省庁ごとに異なり、外部から検証しにくい仕組みでした。 |
| 公益でない団体の受け皿がない | 同窓会・業界団体・研究会のような「非営利だが公益とまでいえない」団体には、法人格を得る手段が事実上ありませんでした。 |
この3点を解きほぐすために、「法人格を得ること」と「公益性の認定を受けること」を切り離すという設計が採られました。これが2006年(平成18年)に成立した公益法人制度改革の中心的な考え方です。
- 一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(平成18年法律第48号)=登記だけで法人になれる仕組み
- 公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律(平成18年法律第49号)=公益認定の仕組み
- 整備法(平成18年法律第50号)=旧制度の法人をどう移すかを定めた法律
3つの法律はいずれも2008年(平成20年)12月1日に施行されました。施行日は、整備法施行令(平成19年政令第277号)の附則に「整備法の施行の日(平成二十年十二月一日)」と明記されています。
施行日に既存の社団法人はどうなったか(整備法40条)
整備法40条1項は、旧民法34条により設立された社団法人・財団法人で施行の際に現に存するものは、施行日以後は一般社団法人または一般財団法人として存続すると定めました。
つまり、2008年12月1日の時点で、既存の社団法人は手続きをしなくても自動的に一般社団法人になったのです。同条2項により、社団法人の定款はそのまま一般社団法人の定款とみなされ、財団法人の寄附行為は一般財団法人の定款とみなされました。
ただし、これはあくまで法律上の器を移し替えただけで、そのままの状態で置いておくことは認められませんでした。次に説明する「特例民法法人」という過渡的な位置づけが与えられます。
特例民法法人とは ― 移行するまでの過渡的な姿(整備法42条)
整備法42条1項は、40条1項により存続する法人のうち移行の登記をしていないものを「特例社団法人」「特例財団法人」と呼び、同条2項でこの2つを併せて特例民法法人と総称すると定めています。
ここで大事なのが名称の扱いです。一般法人法5条1項は、一般社団法人・一般財団法人は名称中にその文字を用いなければならないと定めていますが、整備法42条1項は、特例民法法人にはこの規定を適用しないとしました。
さらに同条3項は、特例社団法人は名称中に「一般社団法人」「公益社団法人」「公益財団法人」の文字を用いてはならないと定めています(財団は4項で同様)。
移行の2つの道 ― 「認定」と「認可」は別物(整備法44条・45条)
| 公益社団法人・公益財団法人へ | 通常の一般社団法人・一般財団法人へ | |
|---|---|---|
| 根拠条文 | 整備法44条 | 整備法45条 |
| 行政庁の処分 | 移行の認定 | 移行の認可 |
| 求められるもの | 公益認定法の基準を満たすこと(公益目的事業を行うこと等) | 公益目的で取得した財産を計画的に使い切ること等 |
| 移行後の税制 | 公益法人等として優遇あり | 原則として普通法人(非営利型なら公益法人等) |
| 名称 | 「公益社団法人◯◯」 | 「一般社団法人◯◯」 |
この2つは字面が似ていますが、認定は「公益にふさわしいと認める」処分、認可は「一般法人になることを認める」処分で、審査の中身がまったく違います。公益を続ける体力がある法人は44条の認定を、そうでない法人は45条の認可を選びました。
どちらの申請期間も、整備法44条が定める「施行日から起算して五年を経過する日までの期間」=移行期間です。施行日が2008年12月1日ですから、期限は2013年(平成25年)11月30日でした。
移行しなかった法人は解散とみなされた(整備法46条)
整備法46条1項は、移行期間内に44条の認定も45条の認可も受けなかった特例民法法人は、移行期間の満了の日に解散したものとみなすと定めています。
ただし書があり、期間内に申請をしていて、満了日までに行政庁の処分が出ていない場合は解散とみなされません。申請さえ間に合っていれば、審査の遅れで解散させられることはありませんでした。
同条2項では、解散したものとみなされた法人について、旧主務官庁が登記所に解散の登記を嘱託しなければならないと定めています。法人が自分で手続きをしなくても、役所の側から登記が入る仕組みです。
なお整備法43条1項は、施行日前に旧民法34条の許可を申請していて施行日の前日までに処分がされなかった場合、その申請は同日に却下されたものとみなすとしています。旧制度は、申請中の案件も含めてここで完全に閉じられました。
いまも旧制度を引きずっている法人がある ― 移行法人と公益目的支出計画
整備法45条の認可を受けて一般社団法人・一般財団法人になった法人のうち、認可の時点で一定額を超える純資産を持っていた法人には、ひとつ宿題が残されました。
整備法119条1項は、そうした法人に対し、公益目的財産額に相当する金額を公益の目的のために支出して零にするための計画=公益目的支出計画をつくらなければならないと定めています。寄付や補助で積み上がった財産を、一般法人になったからといって自由に使ってよいことにはしない、という趣旨です。
この計画を実施し終えたという確認を受けるまでの法人を、整備法123条1項は移行法人と呼びます。移行法人には次の義務があります。
- 計画どおりに支出する(整備法123条1項)
- 行政庁の監督を受ける……認可行政庁は計画の履行を確保するために必要な範囲で監督します(同条2項)
- 計画を変えるには認可が要る……軽微な変更を除き認可行政庁の認可が必要(整備法125条1項)。名称・住所・代表者の変更などは届出(同条3項)
- 毎年、実施報告書を出す……各事業年度ごとに公益目的支出計画実施報告書を作成し、事業年度の経過後3か月以内に計算書類等とあわせて認可行政庁へ提出(整備法127条1項・3項)
- 誰でも見られる……行政庁に閲覧・謄写の請求があれば応じさせなければならない(同条4項)
旧制度と現行制度の違いを一覧で比べる
| 旧・社団法人(〜2008年11月30日) | 一般社団法人(2008年12月1日〜) | |
|---|---|---|
| 根拠法 | 民法(旧34条) | 一般社団法人及び一般財団法人に関する法律 |
| 設立のしかた | 主務官庁の許可 | 登記のみ(許可も認可も不要) |
| 公益性 | 必要 | 不要(何をする団体でもよい) |
| 設立にかかる期間 | 数か月〜年単位になることもあった | 2〜3週間程度 |
| 監督 | 主務官庁が継続的に監督 | 原則として監督官庁なし |
| 税制 | 原則として公益法人等 | 原則は普通法人。要件を満たせば非営利型 |
| 最低人数 | 運用上まちまち | 社員2名以上・理事1名以上 |
いちばん実務に効くのは設立のしかたです。いまは公証人による定款認証と法務局への登記だけで法人になれます。許可を待つ必要がなくなったことで、設立のハードルは大きく下がりました。
いま「社団法人◯◯」と書かれていたら何を疑うか
- 登記簿(登記事項証明書)で正式名称を確認する……正式名称は必ず「一般社団法人」か「公益社団法人」で始まります。
- 国税庁の法人番号公表サイトで検索する……商号・所在地・法人番号が公表されており、名称の変更履歴も確認できます。
- 古い印刷物・ドメイン・メールの署名を疑う……移行から10年以上が経ちますが、名刺や封筒の表記が残っている例はあります。
まれに、法人名そのものの一部に「社団法人」という語を含んでいる例もあります。たとえば「一般社団法人 日本◯◯社団法人連合会」のような形です。この場合も先頭の「一般社団法人」が法人格を示す部分で、後ろの語は固有名詞の一部にすぎません。
なお、海外の団体を日本語に訳すときに「社団法人」という語を当てることがあります。これは日本の法人格とは無関係な訳語ですので、取引の前には登記の有無そのものを確認してください。
「社団」の意味は現行法にも生きている
制度は変わりましたが、社団=人の集まり/財団=財産のかたまりという考え方は、そのまま現行法に引き継がれています。
| 一般社団法人 | 一般財団法人 | |
|---|---|---|
| 成り立ち | 人(社員)の集まり | 財産のかたまり |
| 設立に必要な人 | 社員2名以上 | 設立者1名以上+理事3名・監事1名・評議員3名 |
| 設立に必要なお金 | 不要 | 300万円以上の財産の拠出 |
| 意思を決める機関 | 社員総会 | 評議員会 |
| 向いている活動 | 会員制の団体・協会・研究会 | 財産の運用による助成・奨学など |
「社員」は従業員のことではなく、社員総会で議決権を持つ構成員のことです。旧制度でも同じ意味で使われていた言葉で、ここも変わっていません。
営利・非営利の意味も旧制度から変わっていない
一般社団法人は「非営利法人」に分類されますが、これは儲けてはいけないという意味ではありません。事業で利益を出すことは自由で、職員に給与を払うことも、理事に報酬を出すこともできます。
非営利とはもうけを構成員に分配しないという意味です。一般法人法11条2項は、社員に剰余金または残余財産の分配を受ける権利を与える旨の定款の定めはその効力を有しないと定めています。同法35条3項も、社員総会は社員に剰余金を分配する旨の決議をすることができないとしています。
株式会社の株主配当にあたるものが法律上できない、というのが「非営利」の正体です。旧制度の社団法人でも同じ考え方が採られていました。
これから団体を法人にするなら、どれを選ぶか
| 選択肢 | 向いている場合 |
|---|---|
| 一般社団法人 | 会員制の団体・協会・研究会。まず法人格がほしい、公益認定は将来考えたい、という場合の標準的な選択です。 |
| 公益社団法人 | 不特定多数の利益になる事業が中心で、行政庁の監督と情報公開に対応できる体制がある場合。まず一般社団法人をつくり、あとから公益認定を申請する順が一般的です。 |
| NPO法人 | 特定非営利活動促進法の20分野に当てはまる活動で、所轄庁の認証(数か月)を待てる場合。設立費用はかかりません。 |
| 一般財団法人 | 運用する財産が先にある場合。300万円以上の拠出と最低7人の役員等が必要です。 |
迷ったときは、「人が集まっているのか、財産が先にあるのか」で切り分けると判断しやすくなります。会員がいて会費で回すなら社団、寄付された財産を運用するなら財団です。
本記事は、制度を一般的に説明したものです。個別の事案についての判断や手続きの代行を行うものではありません。
- 設立登記など登記申請の手続きは司法書士が取り扱う業務です。ご自身で法務局へ申請することもできます。
- 税務の取扱いは、収入の性質や事業の実態によって結論が変わります。具体的な判定や税額の計算については、税理士または所轄の税務署へご確認ください。
社団法人についてよくある質問
A. できません。旧民法34条は2008年12月1日に廃止され、同条にもとづく許可の制度そのものがなくなりました。いまつくれるのは一般社団法人(登記のみ)で、公益社団法人は一般社団法人になったあとに公益認定を受ける形になります。
A. 違います。社団法人は旧民法34条により主務官庁の許可を受けて設立された法人の呼び名で、公益性があることが前提でした。一般社団法人は登記だけで設立でき、公益性は求められません。なお、旧制度の社団法人は整備法40条により2008年12月1日にいったん一般社団法人として存続しています。
A. 整備法46条1項により、移行期間の満了の日(2013年11月30日)に解散したものとみなされました。ただし期間内に申請をしていて処分が出ていなかった法人は除かれます。解散とみなされた法人については、同条2項により旧主務官庁が解散の登記を嘱託します。
A. 移行期間はすでに終わっているため、通常は残っていません。移行期間の満了時点で申請中だった法人について、その後の処分を待つ期間があっただけです。
A. はい。財団法人も旧民法34条にもとづく法人でしたので、同じ経緯で一般財団法人・公益財団法人に分かれました。整備法40条1項は社団法人と財団法人を同じ条文で扱っています。
A. 法人格としての上下関係はありません。公益社団法人は行政庁から公益認定を受けている分だけ税制上の優遇が広く、そのかわり事業や財産の使い方に基準があり、行政庁の監督と情報公開の義務を負います。
「社団法人」を含む非営利団体全体の見取り図(任意団体・NPO法人・公益法人・社会福祉法人など7種類)はこちらです。
旧制度の社団法人では「寄附行為」と呼ばれた文書もありました。定款とは何かはこちらです。
旧制度から現行制度へ移るときも、動いたのは法人格の枠組みでした。法人格とは何かはこちらです。
📖 参考にした公的機関の情報


