公益財団法人になりたいのですが、何から手を付ければいいのでしょうか。
「公益財団法人」は、一般財団法人とは別の法人格ではありません。すでにある一般財団法人が、行政庁から公益認定を受けた状態のことです。設立し直す必要はありません。
根拠になるのは公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律(以下「認定法」)です。そして2025年4月1日から、この法律の改正が施行されています。収支相償・遊休財産といった、これまで解説記事でよく使われてきた言葉そのものが変わりました。古い記事のまま準備を進めると、用意する数字がずれます。
この記事では、一般財団法人が公益認定を受けるまでの道すじを、財団だからこそ引っかかるところを中心に条文で確かめていきます。
名称変更のための決議は要らない ― 認定を受けた時点でみなされる
意外に知られていないところから入ります。公益認定を受けたあと、「公益財団法人」へ名称を変えるための評議員会決議は必要ありません。
認定法9条1項は、公益認定を受けた一般社団法人・一般財団法人は「その名称中の一般社団法人又は一般財団法人の文字をそれぞれ公益社団法人又は公益財団法人と変更する定款の変更をしたものとみなす」と定めています。決議したことにしてくれる、という条文です。
逆にいえば、名称以外の定款の中身は、認定の前に自力で整えておく必要があるということです。ここから先が本題になります。
財団が最初に詰まるのは「定款を直せない」ところ
一般財団法人の定款変更には、社団にはない制限があります。一般社団・財団法人法200条1項は、成立後は評議員会の決議で定款を変更できるとしながら、ただし書で2つの事項を外しているのです。
| 評議員会だけでは変えられない定款の定め | 根拠 |
|---|---|
| 目的(153条1項1号) | 200条1項ただし書 |
| 評議員の選任及び解任の方法(153条1項8号) | 200条1項ただし書 |
公益認定を受けるには、事業の内容や機関の整え方を認定基準に合わせる必要があります。このとき目的の書き方を直したい、あるいは評議員の選び方を第三者委員会方式に改めたいという話になりがちです。ところが、そこがまさに評議員会の決議では動かせない2か所にあたります。
逃げ道は2つだけです。
| 逃げ道 | 中身 | 根拠 |
|---|---|---|
| ① 定款にあらかじめ書いてある | 設立者が、これらの定めを評議員会の決議で変更できる旨を設立時の定款で定めていた場合は、評議員会の決議で変更できる | 200条2項 |
| ② 裁判所の許可を得る | 設立の当時予見することのできなかった特別の事情により、その定款の定めを変更しなければ運営の継続が不可能又は著しく困難になったとき、裁判所の許可を得て評議員会の決議で変更できる | 200条3項 |
なお、評議員の選任・解任の方法として理事または理事会が評議員を選ぶ旨を定めても、その定款の定めは効力を持ちません(153条3項1号)。財団の評議員は理事を監督する側なので、監督される側が選ぶ形は最初から封じられています。
申請先は内閣総理大臣か、都道府県知事か(認定法3条)
公益認定の申請先は「行政庁」です。誰が行政庁になるかは、法人の広がり方で決まります(3条)。
| 行政庁 | どんな法人か |
|---|---|
| 内閣総理大臣 | イ 二以上の都道府県の区域内に事務所を設置するもの ロ 公益目的事業を二以上の都道府県の区域内において行う旨を定款で定めるもの ハ 国の事務又は事業と密接な関連を有する公益目的事業であって政令で定めるものを行うもの |
| 都道府県知事 | 上のいずれにも当たらない法人。窓口はその事務所が所在する都道府県の知事 |
認定基準は21号ある ― 財団が見るべきところだけ抜き出す
認定法5条は、行政庁が公益認定をする基準を1号から21号まで並べています。全部が全部、財団に関係するわけではありません。とくに17号は「一般社団法人にあっては」で始まり、財団には適用されません。社員の資格や議決権、理事会の設置を求める号なので、そもそも社員がいない財団には出番がないのです。
| 号 | 基準の要点 | ひとこと |
|---|---|---|
| 1・2号 | 公益目的事業を行うことを主たる目的とし、それを行う経理的基礎・技術的能力があること | 入口の2つ |
| 3・4号 | 評議員・理事・監事・使用人などの関係者や、営利事業者・特定の個人団体に特別の利益を与えないこと | 財団は評議員も名指しされている |
| 5号 | 投機的な取引・高利の融資など、社会的信用にふさわしくない事業を行わないこと | — |
| 6号 | 14条の収支の均衡が図られると見込まれること | 後述の中期的収支均衡 |
| 8号 | 公益目的事業比率が50%以上と見込まれること(15条) | 改正後も50%のまま |
| 9号 | 使途不特定財産額が16条1項の制限を超えないと見込まれること | 旧・遊休財産規制 |
| 10号 | 特別利害関係にある理事の合計が理事総数の3分の1を超えないこと。監事も同様 | 親族関係など |
| 11号 | 他の同一団体の理事・使用人などである理事が3分の1を超えないこと。監事も同様 | — |
| 12号 | 各理事が、監事と特別利害関係を有しないこと | 2025年4月からの新設 |
| 13号 | 会計監査人を置いていること(政令の基準に達しない場合は不要) | 規模で決まる |
| 14号 | 理事・監事・評議員への報酬等の支給の基準を定めていること | 書面で申請に添付 |
| 15・16号 | 外部理事・外部監事を最低1名ずつ。就任前10年間その法人・子法人の業務執行理事や使用人でなかった者 | 2025年4月からの新設 |
| 18号 | 他の団体の意思決定に関与できる株式などを保有していないこと | 実質支配のおそれがなければ例外あり |
| 19号 | 公益目的事業に不可欠な特定の財産があるときは、その維持と処分の制限を定款で定めること | 財団の基本財産と重なる |
| 20・21号 | 認定取消しや合併消滅のとき公益目的取得財産残額に相当する財産を1か月以内に他の公益法人等へ贈与する旨、清算時の残余財産の帰属先を、定款で定めること | 出口の定めも入口の基準 |
機関の要件は、財団のほうがむしろ有利
一般財団法人は、評議員・評議員会・理事・理事会・監事を置かなければなりません(170条1項)。定款で選べるのは会計監査人だけです(同2項)。つまり財団は生まれつき、理事会も監事も持っていることになります。
一般社団法人は理事1人でも成立するため、公益認定の前に理事会や監事を新設する必要が出ます。その手間が財団には最初からありません。
- 理事のうち、親族など特別利害関係にある者の合計が3分の1以下か(5条10号)
- 監事についても同じ数え方で3分の1以下か(同号後段)
- 理事と監事の間に特別利害関係がないか(5条12号)
- 外部理事が1人以上いるか(5条15号。ただし直近の損益計算書の収益・費用がいずれも3,000万円未満の法人は免除=施行令7条)
- 外部監事が1人以上いるか(5条16号)
- 理事・監事・評議員の報酬等の支給の基準を定めた書面があるか(5条14号・7条2項5号)
外部理事・外部監事の要件と、理事と監事の特別利害関係の禁止は、2025年4月からの新しい基準です。身内で固めた役員構成のまま申請しても通りません。評議員会での役員選任は、認定の準備そのものだと考えたほうが早いです。
2025年4月から、お金のルールの呼び名ごと変わった
ここが古い記事といちばん食い違うところです。2024年に成立した改正法が2025年4月1日から施行され、内閣府はこれを「新しい公益法人制度」と呼んでいます。
| 項目 | 2025年3月まで | 2025年4月から |
|---|---|---|
| 収支のルール | 収支相償。黒字は2年間で解消(過去の赤字と通算できない)。各公益目的事業の単位でも判定 | 中期的収支均衡。黒字は5年間で解消(過去の赤字と通算できる)。公益目的事業の全体で判定 |
| 積立資金 | 特定費用準備資金と資産取得資金が別々にあり、目的ごとに管理 | 公益目的事業のための積立だけが公益充実資金に一本化(規則23条)。収益事業等・法人運営のための特定費用準備資金(規則31条)と資産取得資金(規則36条3項4号)は、改正後も控除対象財産として存続する |
| 財産の保有制限 | 遊休財産規制。使途の定まっていない財産は、その事業年度の事業費が上限 | 使途不特定財産規制。上限は過去5年間の事業費の平均額。別枠で予備財産を持てる |
| 会計監査人の設置基準 | 負債50億円以上、又は収益・費用・損失が1,000億円以上 | 負債50億円以上、又は収益・費用・損失が100億円以上 |
| 事業の変更 | 申請書の記載事項の変更を伴うものは変更認定申請 | 収益事業等の変更は届出に。公益目的事業の「軽微な変更」の範囲も拡大して届出化 |
予備財産は、正式には公益目的事業継続予備財産といいます。災害その他の予見し難い事由が起きても公益目的事業を続けるために必要な限度で持てる財産で、使途不特定財産額から除かれます(16条2項)。ただし持っている場合は、翌事業年度の開始後すみやかに保有する理由と額を公表しなければなりません(同3項)。黙って積んでおけるお金ではない、ということです。
変わらなかったものもあります。公益目的事業比率50%以上は、改正後も15条にそのまま残っています。公益目的事業の費用が、公益目的事業費・収益事業等の費用・運営に必要な経常的経費の合計に対して50%以上、という数え方です。
申請書に何を書き、何を付けるか(認定法7条)
| 申請書に書くこと(7条1項) | 添付する書類(7条2項) |
|---|---|
| ① 名称及び代表者の氏名 ② 公益目的事業を行う都道府県の区域(定款に定めがある場合に限る)と主たる事務所・従たる事務所の所在場所 ③ その行う公益目的事業の種類及び内容 ④ その行う収益事業等の内容 |
① 定款 ② 事業計画書及び収支予算書 ③ 事業に許認可等が必要な場合は、それがあること等を証する書類 ④ 経理的基礎を明らかにする財産目録・貸借対照表その他 ⑤ 5条14号の報酬等の支給の基準を記載した書類 ⑥ そのほか内閣府令で定める書類 |
申請書の②を見るとわかるとおり、「公益目的事業を行う都道府県の区域」は定款に定めがある場合だけ書く項目です。3条ロの行政庁の振り分けと直結しているので、定款の書き方は申請先の選択と一体で考えることになります。
申請そのものは行政庁の電子申請窓口から行います。審査では合議制の機関(公益認定等委員会など)が公益性を審査する仕組みで、ここは2025年の改正後も変わっていません。
本記事は、制度を一般的に説明したものです。個別の事案についての判断や手続きの代行を行うものではありません。
- 設立登記など登記申請の手続きは司法書士が取り扱う業務です。ご自身で法務局へ申請することもできます。
- 税務の取扱いは、収入の性質や事業の実態によって結論が変わります。具体的な判定や税額の計算については、税理士または所轄の税務署へご確認ください。
認定を受けたあとに背負うもの ― 財産は自分のものではなくなる
公益認定は、資格をもらって終わりではありません。5条20号は、認定が取り消されたときや合併で法人が消滅するときに公益目的取得財産残額があれば、その額に相当する財産を1か月以内に、類似の事業を目的とする他の公益法人や国・地方公共団体などへ贈与する旨を、あらかじめ定款に定めておくことを求めています。
贈与先として条文に並ぶのは、学校法人・社会福祉法人・更生保護法人・独立行政法人・国立大学法人・地方独立行政法人などです。21号は清算する場合の残余財産についても同じ趣旨の定めを求めます。
なお、自発的な申請による認定の取消しについては、2025年4月からその後5年間は公益認定を受けられないという欠格の対象から外されました。一度公益法人になったら後戻りできない、という状況は少し緩んでいます。
準備の順番をひとつにまとめる
| 順番 | やること | 根拠・注意 |
|---|---|---|
| ① | 定款のどこを直す必要があるかを洗い出す | 19号・20号・21号は定款の定めが基準そのもの |
| ② | 直す先に目的・評議員の選解任方法が含まれるかを判定 | 含まれるなら200条2項の定めがあるか確認。なければ200条3項の裁判所の許可 |
| ③ | 役員構成を組み替える | 3分の1規制・理事と監事の特別利害関係・外部理事・外部監事 |
| ④ | 報酬等の支給の基準を定める | 5条14号・添付書類 |
| ⑤ | 事業計画書と収支予算書を、中期的収支均衡と50%基準で組み直す | 14条・15条。2025年4月以降の考え方で |
| ⑥ | 使途不特定財産の見込みを計算する | 16条。上限は過去5年間の事業費の平均額 |
| ⑦ | 評議員会で定款変更を決議する | 3分の2以上の多数(定款で加重可)。認証は不要 |
| ⑧ | 行政庁へ申請する | 3条で内閣総理大臣か都道府県知事かを確認 |
| ⑨ | 認定後、名称変更の登記をする | 定款変更の決議は不要(9条1項)。認定を証する書面を添付(同2項) |
①②を最初に置いているのは、財団では定款を直せるかどうかが、そもそも申請できるかどうかを決めてしまうからです。役員や数字は後から動かせますが、200条1項ただし書だけは動かせません。
よくある質問
A. 変わりません。一般財団法人のまま、公益認定を受けた状態になります。設立し直す必要はなく、名称中の「一般財団法人」の文字が「公益財団法人」に変わる定款変更をしたものとみなされます(認定法9条1項)。あとは名称変更の登記をします。
A. 必要ありません。認定法9条1項のみなし規定があるためです。ただし名称以外の定款の中身は、申請の前に自力で整えておく必要があります。
A. 原則として変えられません(一般社団・財団法人法200条1項ただし書)。設立者が設立時の定款で「評議員会の決議で変更できる」と定めていた場合に限り可能です(同2項)。それがない場合は、設立当時に予見できなかった特別の事情があるときに裁判所の許可を得て変更する道が残るだけです(同3項)。
A. 二以上の都道府県に事務所を置く、公益目的事業を二以上の都道府県で行う旨を定款で定める、国の事務・事業と密接な関連を有する政令で定める公益目的事業を行う、のいずれかなら内閣総理大臣です。それ以外は事務所が所在する都道府県の知事になります(認定法3条)。
A. 2025年4月1日からは中期的収支均衡に変わりました。黒字の解消期間が2年から5年になり、過去の赤字と通算できるようになっています。判定も各事業単位ではなく公益目的事業の全体で行います。
A. 名称が使途不特定財産に変わり、上限はその事業年度の事業費から過去5年間の事業費の平均額に見直されました。あわせて、災害などに備える公益目的事業継続予備財産を別枠で保有できます。ただし保有している場合は、翌事業年度の開始後すみやかに理由と額を公表します(認定法16条3項)。
A. 緩和されていません。認定法15条の50%以上という基準は改正後もそのまま残っています。
A. 2025年4月からは必要です。就任前10年間その法人や子法人の業務執行理事・使用人でなかった者を、理事に1人以上、監事に1人以上置くことが基準に加わりました(認定法5条15号・16号)。あわせて、各理事が監事と特別利害関係を有しないことも求められます(同12号)。
A. 財産の扱いです。公益認定を受けると、認定の取消しや合併消滅の際に公益目的取得財産残額に相当する財産を1か月以内に他の公益法人等へ贈与する旨を定款で定めていることが基準になります(認定法5条20号)。公益目的のために積んだ財産は、法人の外へ出ていく前提の財産になります。
公益認定を考える前提として、一般財団法人そのものの仕組み(目的の固定・評議員・必置機関)を整理した記事です。
公益認定を受けると利子・配当の所得税が課されなくなります(所得税法11条・別表第一)。一般財団法人のままの税金はこちらです。
公益認定では理事・監事・評議員の報酬等の支給の基準を定めていることが基準になります(認定法5条14号)。一般財団法人の段階での決め方はこちらです。
公益認定を受けたあとは、毎年2回の定期提出(事業計画書等は年度開始の前日まで・決算関係は3か月以内)が始まります。中身と期限はこちらです。
認定を受けたあとに事業や事務所を変えるときは、変更認定(11条)か届出(13条)が要ります。2025年4月から収益事業の変更は届出です。
認定後は行政庁の監督(立入検査・勧告・命令)を受けます。何を見られ、断るとどうなるかはこちらで整理しています。
認定基準6号の「14条の収支の均衡」の中身=中期的収支均衡の計算式と5年判定を、施行規則16〜23条で整理した記事です。
認定基準9号の「使途不特定財産額」の計算(資産−負債−控除対象財産−予備財産)と、上限=過去5年の事業費平均の意味はこちらです。
認定基準8号の「公益目的事業比率50%以上」の計算式と、改正後も据え置きである点はこちらで整理しています。
認定基準10〜16号の役員構成(3分の1規制・理事と監事の特別利害関係の禁止・外部理事・外部監事)の中身と、小規模法人の免除基準はこちらです。
公益法人になると、財産目録等を「何人も」閲覧できる状態にし、公益充実資金や予備財産は自分から公表する義務が生じます(21条・16条3項)。
財団の認定手続に入る前に、公益法人制度の全体像(誰が認定するか・認定基準21号・認定後の義務・監督)を1本で押さえるならこちらです。
認定基準の1つ「理事・監事・評議員の報酬等の支給の基準」(5条14号)に何を書くか、評議員の報酬との関係はこちらで整理しています。
📖 参考にした公的機関の情報


