一般財団法人の監事は、一般社団法人の監事と同じ条文を使う場面が多くあります。
ところが準用のときに「いつでも解任できる」という条文だけが外されているため、いざ交代させたいときに手続きが止まります。
この記事では、一般財団法人の監事だけに当てはまるルールを条文で整理します。
一般財団法人に「監事を置かない」という選択肢はない
一般財団法人は、評議員・評議員会・理事・理事会・監事を置かなければなりません(170条1項)。
一般社団法人では監事を置くかどうかを選べますが、財団にその選択肢はありません。
そのため一般社団法人の条文に出てくる「監事設置一般社団法人」という区別が、財団では意味を持ちません。すべての一般財団法人が監事設置法人だからです。
| 一般社団法人 | 一般財団法人 | |
|---|---|---|
| 監事 | 原則は任意(理事会を置くなら必置) | 常に必置(170条1項) |
| 監事を選ぶ機関 | 社員総会 | 評議員会(63条1項・177条準用) |
| 解任 | 社員総会の決議でいつでも(70条1項) | 事由が必要(176条1項)+3分の2以上(189条2項1号) |
| 任期 | 4年(定款で2年まで短縮可) | 4年(定款で2年まで短縮可・67条1項) |
員数の下限は条文にありません。1人でも足りますが、後述する会計監査人の解任(71条2項)や報酬の協議(105条2項)は複数いる前提の規定なので、規模が大きい法人ほど2人以上を置く実益があります。
理事側の必置ルールは一般財団法人の理事と理事会|理事会は必置・3人以上・解任には事由が要るにまとめています。
監事は評議員会が選ぶ ― 理事が勝手に候補者を決められない
監事は評議員会の決議によって選任します(63条1項・177条準用。条文の「社員総会」は「評議員会」と読み替えます)。
ここで見落とされやすいのが、議案を出す段階で現任監事の同意が要るという規定です。
これは「監事を監査される側が選ぶ」状態を避けるための仕組みです。
実務では、理事会で監事候補を決めたあと、評議員会の招集を決議する前に現任監事の同意を書面で取っておく流れになります。同意を取らずに提出した議案は、決議の取消し事由になり得ます。
なお、補欠の監事をあらかじめ選んでおくこともできます(63条2項)。監事が1人しかいない財団では、欠員が出た瞬間に法定の員数を欠くので、補欠選任は現実的な備えです。
監事になれない人・兼ねられない役職
監事の資格は、社団の規定を準用します(65条・177条準用)。
欠格事由に当たるのは次の人です。
- 法人(65条1項1号)
- この法律・会社法の規定に違反し、または民事再生法・会社更生法・破産法などの一定の罪を犯して刑に処せられ、執行を終わった日などから2年を経過しない人(同3号)
- それ以外の法令に違反して拘禁刑以上の刑に処せられ、執行を終わるまで等の人(刑の執行猶予中の人は除く)(同4号)
また「成年被後見人・被保佐人は役員になれない」も誤りです。欠格事由からは削除済みで、いまは65条の2により、成年後見人が本人(と後見監督人)の同意を得て本人に代わって就任を承諾する、被保佐人は保佐人の同意を得る、という手続きに変わっています。
兼任の制限は2方向あります。
| 兼ねられない組み合わせ | 根拠 |
|---|---|
| 監事 = その法人・子法人の理事または使用人 | 65条2項・177条準用 |
| 監事 = その法人・子法人の評議員 | 173条2項 |
「事務局長に監事も兼ねてもらう」は使用人との兼任にあたるため使えません。評議員との兼任も同様です。財団は評議員3人以上・理事3人以上・監事1人以上を、重複なしでそろえる必要があるという点が、設立時の実質的なハードルになります。
評議員側の条件は評議員とは?役割・選ばれ方・理事との違いをわかりやすく解説で確認できます。
任期は4年、短くできるのは定款だけ
監事の任期は、選任後4年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時評議員会の終結の時までです(67条1項・177条準用)。
ただし書で短縮できますが、限度は2年以内に終了する事業年度のうち最終のものまでで、しかも短縮できるのは「定款によって」だけです。評議員会の決議だけで短くすることはできません。
理事の任期は2年(66条)なので、監事のほうが長いのが原則です。理事と監事の改選時期をそろえたい場合は、定款で監事を2年に短縮する方法をとります。
任期満了や辞任で法定・定款の員数を欠いた場合は、退任した監事が新しい監事の就任まで権利義務を持ち続けます(75条1項・177条準用)。登記上も退任できないため、後任を決めないまま辞められない点に注意してください。
解任は「いつでも」ではない ― 事由+3分の2の決議
ここが一般社団法人といちばん違うところです。
社団には「役員はいつでも社員総会の決議によって解任できる」という70条1項があります。しかし177条は70条を準用の対象から明文で外しています。
代わりに使うのが176条1項です。
- 職務上の義務に違反し、または職務を怠ったとき
- 心身の故障のため、職務の執行に支障があり、またはこれに堪えないとき
さらに決議要件も重くなっています。
| 評議員会の決議 | 必要な賛成 | 根拠 |
|---|---|---|
| 理事の解任 | 過半数が出席し、その過半数 | 189条1項 |
| 監事の解任 | 議決に加わることができる評議員の3分の2以上 | 189条2項1号 |
つまり同じ評議員会でも、理事は普通決議・監事は特別決議という差があります。「理事と監事をまとめて交代させる」議案を一括で処理しようとすると、決議要件を取り違えます。
「方針が合わない」「報告が遅い」といった理由は、そのままでは176条1項の事由になりません。事由が示せないときに現実的なのは、任期満了で再任しないという選び方です。任期が4年と長いぶん、就任時に定款で2年へ短縮しておく判断がここで効いてきます。
監事の仕事は「理事会に出て意見を言う」ところから始まる
職務の中身は、社団の規定を準用します(197条。「社員総会」は「評議員会」と読み替え)。
| やること | 中身 | 根拠 |
|---|---|---|
| 監査と監査報告 | 理事の職務の執行を監査し、監査報告を作成する | 99条1項 |
| 調査 | いつでも理事・使用人に事業の報告を求め、業務と財産の状況を調べられる。子法人にも及ぶ | 99条2項・3項 |
| 理事会への報告 | 不正の行為やそのおそれ、法令・定款違反の事実を見つけたら遅滞なく理事会へ報告する | 100条 |
| 理事会への出席 | 理事会に出席し、必要があると認めるときは意見を述べなければならない(義務) | 101条1項 |
| 理事会の招集 | 必要なら招集を請求でき、5日以内に2週間以内の日を理事会の日とする通知が出ないときは自ら招集できる | 101条2項・3項 |
| 評議員会提出議案の調査 | 議案・書類を調査し、法令定款違反や著しく不当な事項があれば評議員会に報告する | 102条 |
| 差止め | 目的の範囲外の行為などで法人に著しい損害が生じるおそれがあるとき、理事にその行為をやめるよう請求できる | 103条 |
| 訴訟での代表 | 法人と理事の間の訴えでは、監事が法人を代表する | 104条 |
実務でいちばん効くのは101条1項の出席義務です。理事会は財団の意思決定の中心なので、監事が欠席を重ねている法人は、その時点で監査が機能していない状態になります。
職務の執行にかかった費用は、法人が「職務に必要でなかった」と証明しない限り拒めません(106条)。交通費や専門家への相談料を自腹にする必要はありません。
監査の進め方そのものは、法人格が違っても共通する部分が多くあります。手順は監事とは?仕事・権限・責任をわかりやすく解説【一般社団法人】が参考になります。
監事の報酬は定款か評議員会で決める(評議員とは扱いが違う)
監事の報酬等は、定款にその額を定めていないときは評議員会の決議で定めます(105条1項・197条準用)。
監事が2人以上いて、定款にも評議員会の決議にも各人の配分がないときは、決議で決めた総額の範囲内で監事の協議によって決めます(105条2項)。監事は評議員会で報酬について意見を述べることもできます(同3項)。
無報酬とする場合も、定款や議事録に「無報酬とする」旨を残しておくと、後任者との条件の食い違いを防げます。
会計監査人を置く財団では、監事の役割がもう一段増える
会計監査人は定款の定めによって任意に置けますが(170条2項)、大規模一般財団法人は必置です(171条)。
会計監査人を置くと、監事には解任権が生まれます。
- 会計監査人が職務上の義務違反・職務懈怠、会計監査人としてふさわしくない非行、心身の故障のいずれかに当たるとき、監事は会計監査人を解任できる(71条1項・177条準用)
- 監事が2人以上いるときは、全員の同意が必要(同2項)
- 解任したら、解任後最初に招集される評議員会に、その旨と理由を報告する(同3項)
会計監査人そのものの位置づけは会計監査人とは?一般社団法人で必要になる条件と監事との違いで整理しています。
よくある質問
Q. 監事は1人でもいいですか。
条文に員数の下限はないので1人でも適法です。ただし会計監査人の解任(71条2項)や報酬の協議(105条2項)は複数を想定した規定で、欠員が出たときに即座に法定の機関を欠くことにもなります。可能なら2人以上が安全です。
Q. 監事に任期途中で辞めてもらえますか。
辞任は本人の意思でできます。ただし176条1項の事由がないと法人側から解任はできません。また辞任によって員数を欠くときは、後任が就任するまで権利義務が続きます(75条1項・177条準用)。
Q. 理事の親族を監事にできますか。
一般法人法には親族制限の規定はありません(NPO法人の役員には親族制限があります)。ただし監査の実効性という観点では望ましくなく、公益認定を目指す場合は別途、理事・監事の親族等の割合の基準がかかります。
Q. 監事の変更は登記が必要ですか。
必要です。監事は登記事項なので、就任・退任・氏名の変更があったときは2週間以内に変更登記を申請します。
Q. 監事が理事会に出席しなかった決議は無効ですか。
出席は監事の義務ですが(101条1項)、監事の欠席そのもので理事会決議が当然に無効になるわけではありません。ただし招集通知を監事に出していなかった場合は、招集手続の瑕疵として決議の効力が争われ得ます。
- 一般財団法人の登記事項|評議員も登記する・変更は2週間以内・怠ると100万円以下の過料
- 一般財団法人の解散と清算|決議では解散できない・登記5年でみなし解散・残余財産は国庫へ
- 一般財団法人の決算|計算書類は評議員会の承認・貸借対照表は公告・純資産300万円で解散
- 一般財団法人の理事と理事会|理事会は必置・3人以上・解任には事由が要る
- 一般財団法人の評議員会|招集は1週間前・代理出席は不可・議事録は10年保存
- 評議員とは?役割・選ばれ方・理事との違いをわかりやすく解説
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- 監事とは?仕事・権限・責任をわかりやすく解説【一般社団法人】
- 会計監査人とは?一般社団法人で必要になる条件と監事との違い
公益認定では、監事についても3分の1規制に加えて外部監事1名以上が求められます(認定法5条16号)。
監事が必置である理由を含め、財団の5つの機関の全体像はこちらで解説しています。
監事の報酬は理事とは別の議案で決め、監事は評議員会で意見を述べられます(197条で準用する105条)。
監事は理事会に出席して議事録に署名または記名押印します。その議事録の記載事項と署名のルールはこちらで整理しています。
公益財団法人では監事のうち1人以上が外部監事(就任前10年間その法人の理事・使用人でなかった者)である必要があります(認定法5条16号)。
監事が負う賠償責任と、責任限定契約を結べる「非業務執行理事等」の範囲はこちらで整理しています。
📖 参考にした公的機関の情報


