結論から申し上げます。ボランティア保険と呼ばれるものには、主に2つの種類があります。
一つは、社会福祉協議会(社協)の窓口で個人ごとに加入する「ボランティア活動保険」です。全国社会福祉協議会が損害保険会社と一括して結ぶ団体契約で、「ふくしの保険」とも呼ばれます。
もう一つは、市区町村が保険料を負担して、地域の市民活動を補償する制度です。名前や条件は自治体ごとに違います。
この記事では、2つの違い、補償の範囲、加入の手続、行事の参加者のための保険、団体として確かめておくことを順に説明します。保険料や保険金額は年度ごとに変わるため、最新の案内で確かめてください。
2種類のボランティア保険の違い
社協のボランティア活動保険は、ボランティア本人が加入者です。加入した人が、日本国内でのボランティア活動中にけがをしたとき、または他人にけがをさせたり物を壊したりして賠償責任を負ったときに備えます。
市区町村の補償制度は、自治体が保険に入り、対象になる活動をまとめて補償する仕組みです。住民が個別に保険料を払う必要はなく、保険料は自治体が負担します。
どちらか一方だけで足りるとは限りません。自治体の制度は、対象になる団体や活動の条件が決まっていて、補償額も制度ごとに違うからです。
| 比較 | 社協のボランティア活動保険 | 市区町村の補償制度 |
|---|---|---|
| 加入者 | ボランティア本人(団体でまとめて申し込むことも多い) | 自治体 |
| 保険料 | 加入者が負担 | 自治体が負担 |
| 手続 | 地域の社会福祉協議会で加入 | 制度ごとに異なる(事前の登録が不要なものもある) |
| 対象の活動 | 加入者のボランティア活動 | 制度が定める条件を満たす市民活動 |
| プラン | 基本プランと天災・地震補償プランなど | 制度ごとに一律 |
| 期間 | 年度単位 | 制度ごと(年度単位が多い) |
社協の「ボランティア活動保険」の仕組み
ボランティア活動保険は、全国社会福祉協議会が損害保険会社と一括して締結する団体契約です。加入の申込みは、地域の社会福祉協議会で受け付けています。
補償は大きく2つです。一つは、活動中の本人のけが(傷害)の補償です。死亡、後遺障害、入院、通院などに保険金が支払われます。
もう一つは、他人にけがをさせたり、他人の物を壊したりしたときの賠償責任の補償です。
プランは、基本のプランと、地震・噴火・津波によるけがにも備える天災・地震補償のプランなどに分かれています。災害ボランティアとして被災地で活動する人は、天災のプランを選ぶのが一般的です。
保険期間は年度単位で、年度の途中で加入した場合も、その年度の終わりまでが対象になります。年度が替わるたびに更新の手続が必要です。
補償の範囲で確かめておくこと
補償の対象になるのは、ボランティア活動中と、活動のための往復の途中とされるのが一般的です。
ここでいうボランティア活動は、グループや団体が企画・運営するものや、社会福祉協議会などに届け出た活動など、一定の条件があります。個人が思い立って一人で行う活動が対象になるかは、条件を確かめる必要があります。
また、活動の内容によっては対象外になることがあります。どんな活動が対象外かは、案内に具体的に書かれています。
保険料、保険金額、対象外の活動の詳細は、毎年度の案内(パンフレット)に書かれています。加入する前に、社会福祉協議会の窓口や全国社会福祉協議会の案内で確かめてください。
- 今年度の保険料と、プランごとの保険金額
- 補償の期間(いつからいつまでか)と、年度の途中に加入した場合の始まり
- 対象になる活動の条件(団体の活動・届出の要否)
- 対象外になる活動や、補償されない場合
- 事故が起きたときの連絡先と、届出の期限
市区町村の補償制度 ― 文京区の例
市区町村の制度は、自治体ごとに名前も条件も違います。一例として、東京都文京区の「ボランティア活動補償制度」を見てみます(区のウェブサイト、2026年5月25日更新の内容)。
対象は、区内に活動拠点を置き、自主的に構成された5人以上の団体による活動で、継続的・計画的に実施される公益性のある直接的な活動とされています。
補償は、損害賠償と傷害の両方があり、活動場所までの往復の途中も含むとされています。
保険料は区が全額負担します。窓口は団体の種類によって分かれていて、町会・自治会は区民課の地域振興・協働推進の担当が案内しています。
このように、自治体の制度は「どの団体の、どんな活動が対象か」がはっきり決まっています。自分の自治体の名前と「ボランティア 補償制度」「市民活動 保険」で調べるか、市区町村の協働・市民活動の担当課に問い合わせると確かめられます。
行事の参加者のための「行事用保険」
ボランティア活動保険は、ボランティア本人のための保険です。行事に参加する住民やこどもは、ボランティア活動保険の対象にはなりません。
地域の祭り、清掃活動、子ども会の遠足など、参加者を集める行事では、参加者のけがに備える保険が別に必要になります。
社会福祉協議会では、ボランティア行事の参加者のための「ボランティア行事用保険」も扱っています。行事ごとに、参加者の人数と日程を届け出て加入する仕組みです。
自治体の補償制度が、行事の参加者まで対象にしている場合もあります。どちらで備えるかを、行事の計画の段階で決めておきます。
| 誰のための保険か | 主な備え方 |
|---|---|
| 活動するボランティア本人 | 社協のボランティア活動保険/自治体の補償制度 |
| 行事の参加者(住民・こども) | 社協のボランティア行事用保険/自治体の補償制度/民間の行事保険 |
| 団体の役員・スタッフ(有償) | 活動の実態に応じて別の保険を検討 |
| 施設や設備(集会所など) | 火災保険など別の保険 |
団体として確かめておくこと
ボランティア団体の代表や役員は、年度の初めに次のことを確かめておくと安心です。
一つめは、メンバーが保険に入っているかです。団体でまとめて加入するなら、名簿と加入の控えを保管します。個人で加入する人がいる場合は、加入しているかを確認します。
二つめは、自治体の補償制度の対象になるかです。対象の条件(団体の人数、活動の内容、届出の要否)を確かめ、必要なら登録や届出をしておきます。
三つめは、行事の参加者への備えです。参加者を集める行事では、行事用保険の要否を計画の段階で決めます。
四つめは、事故が起きたときの連絡の流れです。けがをした人の手当て、保険の窓口への連絡、事故の記録の作成を、誰が行うかを決めておきます。
- けがをした人の手当てと、必要なら救急への連絡
- 日時・場所・活動の内容・けがの状況を記録する
- 写真や目撃した人の連絡先を残す
- 加入している保険の窓口(社協・自治体)に連絡する
- 病院の領収書・診断書など、請求に必要な書類を保管する
活動の種類ごとの備え方の目安
どの保険で備えるかは、活動の形で考えると整理しやすくなります。
定期的に活動するボランティアグループなら、メンバー全員が年度の初めにボランティア活動保険に加入し、自治体の制度の対象にもなるか確かめておくのが基本です。
年に一度の地域の祭りや清掃のように、多くの住民が参加する行事なら、スタッフはボランティア活動保険、参加者は行事用保険か自治体の制度、と分けて考えます。
災害ボランティアとして被災地へ行く場合は、出発前に、住んでいる地域の社会福祉協議会で天災のプランに加入しておくのが一般的です。被災地の災害ボランティアセンターから、加入を求められることもあります。
こどもを対象とする活動(子ども会、子ども食堂、学習支援など)は、スタッフと参加するこどもの両方への備えが必要です。こどもの参加者は、行事用保険や、活動の種類に合った保険で備えます。
| 活動の形 | スタッフ(ボランティア) | 参加者 |
|---|---|---|
| 定期的なグループ活動 | ボランティア活動保険(年度) | 活動に参加者がいれば行事用保険など |
| 地域の行事(祭り・清掃) | ボランティア活動保険/自治体の制度 | 行事用保険/自治体の制度 |
| 災害ボランティア | ボランティア活動保険(天災のプラン) | ― |
| こども向けの活動 | ボランティア活動保険 | 行事用保険など |
加入の手続の流れ
社協のボランティア活動保険は、次の流れで加入します。
まず、地域の社会福祉協議会に、加入の申込書と加入者の名簿を出します。団体でまとめて申し込む場合は、代表者が名簿を作ります。
次に、保険料を払います。窓口で払う方法のほか、振込で受け付けている社会福祉協議会もあります。
加入の手続が済んだら、加入の控えを受け取り、団体の書類と一緒に保管します。メンバーが増えたら、その都度追加で加入の手続をします。
年度の終わりが近づくと、翌年度の更新の案内が出ます。更新を忘れると、新しい年度の初めの活動が無保険になるので、担当と時期を決めておきます。
保険料を団体の会計でどう扱うか
ボランティア活動保険の保険料を、団体がまとめて払う場合は、団体の会計で支出として記録します。科目は「保険料」を立てるか、「雑費」に入れて摘要に書きます。
メンバーから保険料を集めて社協に払う場合は、団体の収入と支出に入れず、預り金として区別すると、会計報告がわかりやすくなります。
毎年同じ時期に更新が必要になるので、予算案に計上し、年度の初めの役員会で更新の担当を決めておきます。加入の控えは、会計の証憑と一緒に綴じておきます。
ボランティア保険についてよくある質問
A. 主に、社会福祉協議会で個人ごとに加入する「ボランティア活動保険」と、市区町村が保険料を負担して市民活動を補償する制度の2種類があります。
A. 地域の社会福祉協議会で申し込めます。全国社会福祉協議会が損害保険会社と一括して締結する団体契約です。
A. ボランティア活動のための往復の途中も対象とされるのが一般的です。対象になる活動の条件は、毎年度の案内で確かめてください。
A. ボランティア活動保険はボランティア本人のための保険です。参加者のけがには、社会福祉協議会のボランティア行事用保険や、自治体の補償制度などで備えます。
A. 自治体の制度は対象になる団体や活動の条件が決まっており、補償額も制度ごとに違います。自分たちの活動が対象になるかを確かめたうえで、社協の保険と併用するかを決めます。
A. 保険料はプランや年度によって変わります。社会福祉協議会の窓口や全国社会福祉協議会の今年度の案内で確かめてください。
A. 年度の途中でも加入でき、補償はその年度の終わりまでとなるのが一般的です。年度が替わるたびに更新の手続が必要です。
📖 参考にした公的機関の情報


