一般財団法人の役員報酬|評議員の報酬は定款に額を書く・理事と監事は評議員会で別々に決める

一般財団法人
一般財団法人で、理事や評議員に報酬を払いたいのですが、
理事会で決めればよいのでしょうか。評議員にも払えますか?

一般財団法人の役員報酬は、理事会では決められません。そして評議員の報酬は、評議員会でも決められません。報酬を受け取る人が自分で自分の報酬を決められないように、一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(以下「一般法人法」)は、決める場所を役職ごとに固定しています。

財団には社員総会がないので、一般社団法人の解説をそのまま当てはめると間違えます。この記事では、評議員・理事・監事のそれぞれについて、誰が・どこで・何を決めるのかを条文で確かめ、非営利型の要件や贈与税の判定にどう跳ね返るかまで整理します。

財団の報酬は「誰の報酬か」で決める場所が違う

誰の報酬か 決める場所 条文
評議員 定款のみ。評議員会の決議では決められない 196条
理事 定款に額の定めがなければ評議員会の決議 197条で準用する89条
監事 定款に額の定めがなければ評議員会の決議。理事とは別に定める 197条で準用する105条
理事会 決められない。評議員会が定めた範囲内での配分を任される運用はある

一般社団法人では、理事と監事の報酬を「定款か社員総会」で決めます(89条・105条)。財団では197条がこれらの条文を準用し、「社員総会」を「評議員会」に読み替えています。ここまでは社団と同じ構造です。

POINT 財団だけにあるのが196条です。評議員には社団の「社員」のような立場の人がいないため、評議員の報酬を決める機関を別に用意する必要があり、法律は定款を選びました。評議員会が自分たちの報酬を決める仕組みにはなっていません。

評議員の報酬は、定款でしか決められない(196条)

196条は短い条文です。「評議員の報酬等の額は、定款で定めなければならない。」これだけです。評議員会の決議で決める、理事会で決める、という選択肢はありません

なぜ定款なのか。評議員会は財団の最高機関で、理事や監事の報酬を決める側です。その評議員が自分の報酬を評議員会で決められるとすると、歯止めがなくなります。定款に書くことにしておけば、額を変えるには定款変更の手続き(評議員会の3分の2以上の決議)が要り、議事録と定款の両方に記録が残ります。

場面 扱い
評議員を無報酬にしたい 定款に「評議員は無報酬とする」旨を定める。何も書かないまま払わない、ではなく定めておく
評議員会の出席ごとに日当を払いたい 日当も職務執行の対価なら「報酬等」。額または計算方法を定款に書く
評議員の報酬額を変えたい 定款変更。評議員会の決議(3分の2以上)で行い、認証は不要
設立時に定めていなかった 定款変更で追加する。定款に定めがないまま支払うと196条に反する

定款には「額」を定めます。実務では、1人当たりの上限額や年間の総額の上限を定款に置き、その範囲内で支給する例が多く見られます。いずれにしても、定款を読めば評議員に幾ら払えるのかが分かる状態にしておくのが196条の趣旨です。

理事の報酬は、定款か評議員会で決める(197条で準用する89条)

89条は、理事の報酬等を「定款にその額を定めていないときは、社員総会の決議によって定める」としています。財団では197条の読み替えで「評議員会の決議」になります。

ここでいう「報酬等」は、89条のかっこ書きで定義されています。「報酬、賞与その他の職務執行の対価として一般社団法人等から受ける財産上の利益」です。月額の報酬だけでなく、賞与も、職務の対価として渡す現物も含みます。

やり方 可否 理由
定款に各理事の額を書く 89条が最初に挙げる方法
評議員会で各理事の額を決める 定款に定めがないときの方法
評議員会で総額の上限を決め、配分は理事会に任せる ○(一般的) 評議員会が「額」を決めた上で、その範囲内の配分を理事会に委ねる運用
理事会だけで決める × 89条・197条に反する。評議員会の決議がない報酬は根拠を欠く
代表理事が個別に決める × 同上

「総額を評議員会で決めて、配分は理事会」という運用が広く使われているのは、評議員会は年に1回しか開かない財団が多く、理事ごとの額まで毎回決めるのが現実的でないからです。それでも上限を決めるのは評議員会で、理事会はその中でしか動けません。上限を超えて払いたければ、評議員会に戻ります。

監事の報酬は理事と別枠で決める(197条で準用する105条)

監事の報酬等も、定款に額がなければ評議員会の決議で定めます(105条1項)。理事の報酬と一緒くたに「役員報酬総額」として決めることはできません。監事は理事を監査する側なので、理事に報酬を握られない仕組みになっています。

105条 内容
1項 定款に額を定めていないときは評議員会の決議で定める
2項 監事が2人以上で、各監事の額について定款の定めも評議員会の決議もないときは、定められた総額の範囲内で監事の協議によって定める
3項 監事は、評議員会において監事の報酬等について意見を述べることができる

3項の意見陳述権は、財団の監事にもそのまま準用されます。評議員会の議案に監事の報酬が載るときは、監事が意見を述べる機会を作っておくのが安全です。意見を述べる機会を与えないまま決議した場合、手続きの瑕疵を指摘される余地が残ります。

代表理事や業務執行理事だからといって、理事会で上乗せはできない

一般財団法人は理事会設置が必置なので、理事会は理事の中から代表理事を選定し(197条で準用する90条3項)、代表理事以外の理事を業務執行理事として選定することもできます(同91条1項2号)。

ここで起きやすい誤解が、「理事会が選定した役職だから、報酬も理事会で決めてよい」というものです。役職を決める権限と、報酬を決める権限は別です。代表理事の報酬も、業務執行理事の報酬も、89条の「理事の報酬等」であることに変わりはなく、定款か評議員会の決議が要ります。

評議員会が「理事の報酬等の総額は年額○○円以内」と決めているなら、その範囲内で代表理事に多く配分することは理事会で決められます。範囲を超える上乗せは、評議員会の決議がなければできません。

費用弁償・退職慰労金・賞与はどう扱うか

お金の種類 「報酬等」に当たるか 扱い
交通費・宿泊費などの実費弁償 当たらない 職務執行の「対価」ではなく立替えの精算。規程を作って領収書で精算する
出席1回ごとの日当 当たる 職務執行の対価。評議員なら定款、理事・監事なら定款か評議員会
賞与 当たる 89条のかっこ書きに「賞与」が明記されている
退職慰労金 当たる 「その他の職務執行の対価として受ける財産上の利益」。支給時に評議員会の決議か定款の定めが要る
社宅の提供・車の私的利用など現物の利益 当たる 財産上の利益。金銭でなくても報酬等

実費弁償を「報酬等」から外せるのは、それが対価ではないからです。逆にいえば、実費の名目で定額を渡していると、実態は日当(報酬等)と見られます。実費弁償規程を作り、領収書や旅程で精算する形にしておけば、線引きがはっきりします。

POINT 退職慰労金は、支給する時点で「定款か評議員会の決議」が要ります。「退任した理事に理事会の判断で慰労金を渡した」は、評議員会の決議を欠いた報酬等の支給です。規程を作って総額と計算方法を評議員会で決めておく方法が使われます。

「無報酬」でも、決めておくべきことがある

財団では、評議員・理事・監事が全員無報酬という運営も珍しくありません。無報酬は法律上まったく問題ありません。ただし「決めていない」と「無報酬と決めた」は違います。

無報酬の財団でも整えておくこと

  • 定款に「評議員は無報酬とする」など、評議員の扱いを書く(196条は「額を定款で定める」が要件なので、無報酬もその一形態として定めておく)
  • 理事・監事について、定款に「無報酬とする」と書くか、評議員会で「理事の報酬等は支給しない」と決議して議事録に残す
  • 実費弁償の規程を作り、交通費などは領収書で精算する(実費と報酬の線引き)
  • 後から報酬を出すことになったら、評議員は定款変更、理事・監事は評議員会の決議を先に行う

無報酬と決めておく実益は、後述の非営利型の要件や贈与税の判定で「役員に利益を与えていない」ことを示しやすくなる点にもあります。議事録や定款に残っていれば、説明に困りません。

報酬の払い方が、非営利型の要件を壊すことがある

法人税法上の非営利型法人になるには、法人税法施行令3条1項の要件を全て満たす必要があります。報酬に関係するのは3号と4号です。

要件 報酬との関係
3号 特定の個人又は団体に特別の利益を与えることを決定し、又は行ったことがないこと 勤務実態に見合わない高額の報酬、働いていない親族への給与は「特別の利益」と見られる。一度でも行うと以後ずっと要件を満たさない
4号 各理事について、配偶者・三親等以内の親族などの理事が理事総数の3分の1以下 報酬を受け取る理事の顔ぶれの問題。親族で固めた理事会に報酬を出すと、この号と3号の両方が問題になる
3項 使用人以外で経営に従事している者は理事とみなす 肩書のない設立者に「顧問料」を払っている場合、その人は理事として4号の計算に入る

「報酬を出すこと」自体は非営利型を壊しません。壊すのは、職務の対価を超えた部分を特定の人に流すことです。評議員会で決めた額を、規程に沿って払っている限り、それは対価です。評議員会を通さずに理事会や代表理事の判断で払った報酬は、法人法上の根拠を欠くだけでなく、税務上も「特別の利益」と見られやすくなります。

設立者や拠出者に戻る報酬は、贈与税の判定にも効く

財団に固有の話です。個人が財団に財産を拠出したとき、拠出者の親族などの相続税・贈与税の負担が不当に減少すると認められると、財団に贈与税がかかることがあります(相続税法66条4項)。その判定基準を定めた相続税法施行令33条3項2号は、贈与者・設立者・役員等やその親族等に対して、「給与の支給」その他の特別の利益を与えないことを要件に挙げています。

つまり、設立者やその家族が財団から給与や報酬を受け取る構造は、非営利型の判定だけでなく、拠出財産に贈与税がかかるかどうかの判定にも直接つながります。普通型の財団では、贈与の前3年以内に特別の利益を与えていないことが要件に上乗せされます(同条4項2号)。

POINT 設立者が理事として実際に職務を執行し、評議員会が決めた相当な額の報酬を受け取ること自体は禁じられていません。問題になるのは対価性のない給与です。「誰が決めたか」「働きに見合っているか」を、議事録と規程で示せるようにしておくことが、法人税・贈与税の両方の備えになります。

この記事の位置づけ

本記事は、制度を一般的に説明したものです。個別の事案についての判断や手続きの代行を行うものではありません。

  • 税務の取扱いは、収入の性質や事業の実態によって結論が変わります。具体的な判定や税額の計算については、税理士または所轄の税務署へご確認ください。

公益財団法人になると「支給の基準」が必要になる

一般財団法人のままなら、報酬の額や基準を公表する義務はありません。公益認定を受けると事情が変わります。公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律(認定法)5条14号は、理事・監事・評議員に対する報酬等について、民間事業者の役員の報酬等や従業員の給与、法人の経理の状況などを考慮して、不当に高額なものとならないような支給の基準を定めていることを認定の基準にしています。

認定法 内容
5条14号 報酬等(報酬・賞与・職務遂行の対価としての財産上の利益・退職手当)の支給の基準を定めていることが認定基準
20条 公益法人は、その支給の基準に従って報酬等を支給しなければならない
21条2項3号 支給の基準を記載した書類を毎事業年度経過後3か月以内に作成し、主たる事務所に5年間備え置く
21条5項 何人も業務時間内はいつでも、その書類の閲覧などを請求できる

認定法の「報酬等」は、退職手当を明示的に含む点で一般法人法の定義より広くなっています。将来の公益認定を視野に入れる財団は、一般財団法人の段階から報酬規程を整えておくと、申請時の手戻りが減ります。

決め方の手順と、定款・議事録の書き方

順番 やること 根拠
定款を確認する。評議員・理事・監事それぞれについて、額の定め・無報酬の定めがあるか 196条・89条・105条
評議員の報酬を出すなら、定款に額(または上限額)を定める。なければ定款変更の決議 196条・200条
理事の報酬等の総額(上限)を評議員会の議案にする 197条で準用する89条
監事の報酬等を理事と別の議案にし、監事に意見を述べる機会を与える 197条で準用する105条
評議員会で決議し、議事録に額と決議結果を残す(議事録は10年保存) 193条
総額の範囲内での各理事への配分を理事会で決め、理事会議事録に残す 運用
実費弁償規程・役員報酬規程を作り、支給はその規程に沿って行う
書く場所 記載例(考え方)
定款(評議員) 「評議員の報酬等の額は、1人当たり年額○○円以内とし、その支給の方法は評議員会の決議で定める」
定款(無報酬) 「評議員、理事及び監事は、無報酬とする。ただし、職務執行に要した費用は実費を支給する」
評議員会議事録(理事) 「理事の報酬等の総額を年額○○円以内とし、各理事への配分は理事会に一任する旨を決議した」
評議員会議事録(監事) 「監事の報酬等の額を年額○○円以内とする旨を、監事○○が意見を述べた上で決議した」

報酬の額は登記事項ではありません。定款に書いた額を変えても、定款変更の登記は不要です。残るのは定款と議事録だけなので、その2つを整えておけば足ります。

この記事の位置づけ

本記事は、制度を一般的に説明したものです。個別の事案についての判断や手続きの代行を行うものではありません。

  • 設立登記など登記申請の手続きは司法書士が取り扱う業務です。ご自身で法務局へ申請することもできます。

よくある質問

Q. 一般財団法人の理事の報酬は、理事会で決められますか?

A. 決められません。理事の報酬等は、定款に額の定めがないときは評議員会の決議で定めます(一般法人法197条で準用する89条)。評議員会が総額の上限を決め、その範囲内での配分を理事会に任せる運用は可能です。

Q. 評議員に報酬を払えますか?

A. 払えます。ただし評議員の報酬等の額は定款で定めなければなりません(196条)。評議員会の決議だけで決めることはできず、定款に定めがなければ定款変更が先です。

Q. 監事の報酬は理事の報酬と一緒に決めてよいですか?

A. 別に決めます。監事の報酬等は定款に額がなければ評議員会の決議で定め(197条で準用する105条1項)、監事は評議員会で報酬等について意見を述べることができます(同3項)。理事と合算した「役員報酬総額」として決議する方法は避けてください。

Q. 役員全員が無報酬でも問題ありませんか?

A. 問題ありません。ただし「決めていない」状態ではなく、定款や評議員会の決議で無報酬を定め、交通費などは実費弁償規程で精算する形にしておくと、非営利型の要件や贈与税の判定でも説明しやすくなります。

Q. 退職慰労金を払うときも評議員会の決議が要りますか?

A. 要ります。退職慰労金は「職務執行の対価として受ける財産上の利益」として報酬等に含まれるため、定款の定めか評議員会の決議が必要です。規程で総額と計算方法を定め、評議員会で決めておく方法が使われます。

Q. 設立者が理事として報酬を受け取ることはできますか?

A. できます。設立者が理事になることを禁じる条文はなく、評議員会が定めた額の報酬を受け取ることも可能です。ただし職務に見合わない給与は、法人税法施行令3条1項3号の「特別の利益」や、相続税法施行令33条3項2号の「給与の支給」に当たり、非営利型の要件や拠出財産の贈与税の判定に影響します。

Q. 報酬の額を変えたら登記は必要ですか?

A. 不要です。役員の報酬は登記事項ではありません。定款の額を変えたときも、定款変更の登記は要りません。定款と評議員会・理事会の議事録に残しておけば足ります。

Q. 公益財団法人になると報酬について何が変わりますか?

A. 理事・監事・評議員の報酬等について「不当に高額とならないような支給の基準」を定めていることが認定基準になり(認定法5条14号)、その基準に従って支給し(20条)、基準を記載した書類を主たる事務所に5年間備え置いて閲覧に応じる必要があります(21条)。

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