NPO法人の設立申請には、1か月の縦覧という手続きがあります。
提出した書類が、一般に公開される期間です。
その後の審査を経て、認証されるかどうかが決まります。
この記事では、申請から認証までに何が起きるのかを解説します。
認証までの3つの段階
設立申請から認証までは、3つの段階に分かれます。
第一が、受理です。
書類を提出し、形式上の不備がなければ受理されます。
不備があると、その場で受理されないこともあります。
第二が、縦覧です。
受理された日から1か月間、書類の一部が公開されます。
第三が、審査と決定です。
所轄庁が内容を審査し、認証するかどうかを決めます。
この期間は、受理から2か月以内とされています。
合計すると、申請から最長で3か月ほどかかる計算になります。
縦覧とは何か
縦覧とは、提出書類を一般に公開する手続きです。
市民が広く、その団体の設立をチェックできるようにする仕組みです。
所轄庁の窓口やホームページで、閲覧できる状態になります。
かつては、この期間が2か月でした。
法改正により、1か月に短縮されています。
短縮されたとはいえ、待つしかない期間であることは変わりません。
急いでいても、この1か月は縮められません。
活動の開始時期を決めているなら、逆算して申請しましょう。
この期間を、準備に充てるのが賢明です。
縦覧されるもの
すべての書類が公開されるわけではありません。
定款は、縦覧の対象になります。
設立趣旨書も公開されます。
事業計画書と活動予算書も、対象に含まれます。
一方、役員名簿や社員名簿は、住所などの扱いに配慮がなされます。
所轄庁によって、公開の範囲や方法に違いがあります。
心配な点があれば、事前相談で確認しておきましょう。
公開されることを前提に、書類を作ることが大切です。
内輪向けの表現や、他者を批判する記述は避けてください。
| 段階 | 内容 | 期間の目安 |
|---|---|---|
| 受理 | 書類を提出し、形式上の確認を受ける | 1日 |
| 縦覧 | 書類の一部が一般に公開される | 1か月 |
| 審査 | 所轄庁が内容を審査する | 受理から2か月以内 |
| 認証または不認証 | 結果が書面で通知される | — |
| 設立登記 | 認証書を受け取ってから登記 | 2週間以内 |
| 成立 | 登記の完了によって法人が成立 | — |
縦覧期間に何ができるか
待つだけの期間に見えますが、やれることはあります。
第一に、設立登記の書類を準備しましょう。
認証書が届いてから2週間しかないので、先に作っておきます。
第二に、法人の実印を作成します。
第三に、事務所の準備を進めます。
賃貸を借りるなら、この時期に交渉を始めるとよいでしょう。
第四に、銀行口座の開設に必要な条件を調べておきます。
第五に、会員への説明や、活動の広報の準備を進めます。
第六に、開始する事業の段取りを詰めておきます。
この1か月を使えるかどうかで、設立後の立ち上がりが変わります。
審査で見られること
審査では、法律の要件を満たしているかが確認されます。
第一に、活動が法定の20分野に該当するかどうかです。
第二に、社員が10人以上いるかどうかです。
第三に、役員の人数と欠格事由、親族の制限です。
第四に、営利を目的としていないかどうかです。
第五に、宗教活動や政治活動が主たる目的でないかどうかです。
第六に、暴力団などとの関係がないかどうかです。
あわせて、書類の記載に矛盾がないかも見られます。
定款、趣旨書、事業計画書、予算書の整合が問われます。
実現の見込みがない計画も、疑問を持たれる原因になります。
補正を求められるとき
審査の途中で、補正を求められることがあります。
書類の記載に不備や不整合があった場合です。
珍しいことではなく、多くの団体が一度は経験します。
内容によっては、その場で直せるものもあります。
定款そのものを直す場合は、注意が必要です。
総会の決議をやり直すことになる可能性があるためです。
だからこそ、設立総会の前の事前相談が重要になります。
補正に対応する期間の分だけ、スケジュールは後ろにずれます。
指摘を受けたら、内容を確認して速やかに直しましょう。
- 定款の事業の書き方が抽象的
- 事業計画書と活動予算書が対応していない
- 定款にない事業を計画に書いている
- 設立趣旨書と定款で活動分野の記載が違う
- 設立総会の日付が他の書類と矛盾している
- 報酬を受ける役員が3分の1を超えている
- 役員の親族の制限に触れている
- 社員名簿の人数が10人に満たない
不認証になる場合
要件を満たさない場合は、不認証となります。
主な理由は、活動が20分野に該当しないことです。
社員が10人に満たない場合も、認証されません。
宗教活動や政治活動が主たる目的である場合も同様です。
暴力団などとの関係がある場合も、当然に不認証です。
不認証の場合は、その理由が書面で通知されます。
理由が分かれば、直したうえで再度申請できます。
ただし、書類の作り直しと総会のやり直しが必要になります。
事前相談を丁寧に行えば、多くの場合は避けられます。
縦覧中に意見が出たら
縦覧の期間中に、市民から意見が出ることがあります。
団体の活動に懸念を持つ人が、所轄庁へ申し出る形です。
この場合、所轄庁は意見の内容も踏まえて審査します。
意見が出たからといって、必ず不認証になるわけではありません。
事実関係を確認したうえで、要件に照らして判断されます。
団体側に、説明の機会が与えられることもあります。
地域と関わる活動では、事前に周辺への説明をしておくと安心です。
施設を設ける活動などは、特に配慮が必要になります。
設立の前から、地域との関係を作っておくことが有効です。
認証されたあとの流れ
認証されると、認証書が交付されます。
ここから2週間以内に、設立登記をしなければなりません。
この期限は短いので、書類は先に準備しておきます。
登記が完了すると、法人が成立します。
その後、所轄庁へ設立登記完了届出書を提出します。
税務署や自治体への届出も、順次進めます。
銀行口座の開設も、この段階で行います。
職員を雇うなら、社会保険と労働保険の手続きも必要です。
認証はゴールではなく、出発点だと考えましょう。
スケジュールの立て方
活動を始めたい時期から、逆算して計画します。
認証まで約3か月、登記に2週間を見込みます。
その前に、社員10人の確保と書類の作成が必要です。
ここに1か月から2か月かかります。
事前相談を複数回行うなら、さらに余裕が要ります。
全体では、半年程度をみておくと現実的です。
助成金の申請に間に合わせたい場合は、特に注意が必要です。
法人格を要件とする制度なら、認証だけでは足りません。
登記が完了して初めて、法人として応募できます。
締切から逆算して、着手の時期を決めましょう。
事前相談が審査を短くする
認証までの期間は、法律で決まった部分は縮められません。
しかし、補正で伸びる分は自分たちで防げます。
そのために効くのが、事前相談です。
所轄庁の担当者は、過去の申請を数多く見ています。
どこが指摘されやすいかを、あらかじめ教えてもらえます。
定款、事業計画書、活動予算書の3点は、必ず見てもらいましょう。
設立趣旨書も、読みにくい点を指摘してもらえます。
相談は無料で、多くの所轄庁が受け付けています。
複数回にわたって相談する団体も、珍しくありません。
結果として、いちばん早く認証にたどり着く方法になります。
申請の時期を選ぶ
申請の時期は、こちらで選ぶことができます。
年度の切り替わりは、所轄庁の窓口も混み合います。
担当者の異動もあるため、余裕をみておきましょう。
設立初年度の事業年度をどう取るかも、時期に関わります。
3月末を年度末にするなら、いつ登記するかで初年度の長さが変わります。
数か月しかない初年度になると、計画も予算も小さくなります。
それ自体は問題ありませんが、事業計画書との整合が必要です。
助成金の公募時期に合わせたいなら、そこから逆算します。
認証だけでなく、登記の完了までを見込んでください。
法人格を要件とする制度は、登記が終わって初めて応募できます。
所轄庁によって運用が違う
NPO法人の認証は、都道府県または政令指定都市が行います。
法律は同じでも、運用の細かい部分には違いがあります。
書類の様式が、所轄庁ごとに用意されていることが多いものです。
提出する部数も、正副で異なる指定がある場合があります。
縦覧の方法も、窓口だけの所と、ホームページに載せる所があります。
事前相談の予約の取り方も、それぞれです。
他県の団体のやり方を、そのまま持ち込むのは避けましょう。
手引きが公開されているので、まずそれを読むのが近道です。
分からない点は、電話で確認すれば教えてもらえます。
自分たちの所轄庁がどこかを、最初に確定させてください。
待つ間に気をつけること
縦覧と審査の期間は、団体としては動きにくい時期です。
法人がまだ存在しないため、法人名義の契約はできません。
設立を前提とした約束は、慎重に扱いましょう。
認証されなかった場合に、個人が責任を負う形になり得ます。
大きな支出を伴う契約は、認証を待つのが安全です。
寄付を集める場合も、まだ法人ではないことを伝えます。
名刺やチラシに法人名を使うのも、成立後にしましょう。
設立準備会という名称であれば、誤解を招きません。
正確に伝えることが、信頼の土台になります。
縦覧と認証審査のまとめ
申請が受理されると、書類が1か月間縦覧されます。
審査は受理から2か月以内で、認証まで標準約3か月です。
縦覧期間は法律で決まっており、短縮できません。
この1か月を、登記の準備や事務所の手配に充てましょう。
審査では、20分野への該当、人数、役員の要件などが見られます。
補正を避けるには、設立総会の前の事前相談が最も有効です。
認証後2週間以内の登記まで含めて、計画を立ててください。
所轄庁ごとに様式や運用が違うため、手引きを最初に読みましょう。
待つ間は法人名義の契約ができない点にも、注意が必要です。
全体では半年程度をみておくと、無理のない計画になります。
よくある質問
A. 申請が受理された後、提出書類の一部が1か月間一般に公開される手続きです。市民が広く団体の設立をチェックできるようにする仕組みです。
A. 縦覧1か月と、受理から2か月以内の審査を合わせて、標準で約3か月です。補正があると、その分だけ後ろにずれます。
A. できません。法律で定められた期間なので、急いでも縮められません。この1か月は登記の準備や事務所の手配に充てましょう。
A. 定款、設立趣旨書、事業計画書、活動予算書などが対象です。名簿の扱いは所轄庁によって配慮が異なるため、事前相談で確認しておきましょう。
A. 珍しくありません。多くの団体が一度は経験します。ただし定款を直す場合は総会のやり直しになる可能性があるため、設立総会の前の事前相談が重要です。
A. 理由が書面で通知されます。その理由を直したうえで、あらためて申請できます。ただし書類の作り直しと総会のやり直しが必要になります。
📖 参考にした公的機関の情報


