一般財団法人の理事会議事録|書く8項目・署名は出席理事と監事・評議員は許可なしで閲覧できる

一般財団法人
一般財団法人の理事会の議事録には、何を書けばいいですか?
ハンコは全員分いりますか?

書く内容は法律ではなく法務省令が決めていて、一般社団法人及び一般財団法人に関する法律施行規則15条3項が8つの事項を挙げています。署名または記名押印をするのは、出席した理事と監事です(一般法人法197条で準用する95条3項)。

そして一般財団法人には、一般社団法人と決定的に違うところが一つあります。評議員は、裁判所の許可を得なくても、業務時間内ならいつでも議事録を見られることです。一般社団法人の社員には裁判所の許可が要るので、ここは財団だけの取り扱いです。

この記事では、一般財団法人の理事会議事録について、記載事項・署名・閲覧・10年の備置き・登記の添付書面としての使い方までを条文つきで整理します。理事会そのものの運営は理事と理事会の記事、評議員会の議事録は評議員会の記事で扱っています。

財団の理事会議事録は「197条で準用する95条3項」で作る

一般法人法は、一般財団法人の理事会について独自の条文をほとんど置いていません。197条が、一般社団法人の理事会の規定(第3章第3節第5款=90条から98条)をまるごと財団に準用し、「社員総会」を「評議員会」と読み替える、という作りになっています。

ですから、財団の理事会議事録の根拠を書くときは「95条3項」ではなく「197条で準用する95条3項」と書くのが正確です。以下の条文もすべて197条を通して適用されます。

場面 根拠(財団の場合) 内容
理事会の決議 197条で準用する95条1項 議決に加われる理事の過半数が出席し、その過半数で決議
議事録の作成 197条で準用する95条3項 法務省令の定めに従って作成し、出席理事と監事が署名または記名押印
記載事項 施行規則15条3項 8つの事項(次の見出しで一覧)
決議の省略 197条で準用する96条 定款に定めがあるときだけ使える
10年の備置き 197条で準用する97条1項 理事会の日から10年間、主たる事務所に
評議員の閲覧 197条で読み替えた97条2項 裁判所の許可は不要。業務時間内ならいつでも
債権者の閲覧 197条で準用する97条3項 責任追及に必要なときに限り、裁判所の許可を得て
登記の添付書面 317条2項 登記事項に理事会の決議が要るときは議事録を添付
POINT 一般財団法人は理事会が必置です(170条1項)。「理事会を置かない財団」は制度として存在しないので、財団を運営している限り理事会議事録は必ず発生します。

議事録に書くのは、法務省令が決めた8つの事項

施行規則15条3項は、理事会の議事録の内容を次のように定めています。「議事の経過の要領及びその結果」だけを書いた議事録は、この省令の要求を満たしません。

# 記載事項 書き方の注意
1 開催された日時及び場所 その場所にいない理事・監事・会計監査人が出席したときは、出席の方法(ウェブ会議・電話会議など)も書く
2 招集の経緯(該当するとき) 理事の請求を受けて招集された・請求した理事が自ら招集した・監事の請求を受けた・監事が招集した、のいずれかに当たるときはその旨
3 議事の経過の要領及びその結果 発言の逐語録は不要。何を審議し、どう決まったかがたどれる程度
4 特別の利害関係を有する理事の氏名 決議を要する事項について特別の利害関係がある理事がいるときは氏名
5 述べられた意見・発言の概要 競業や利益相反の取引の報告、監事の理事への報告、監事の意見、補償契約の報告があったとき
6 出席した理事の氏名(定款の定めがあるとき) 署名者を代表理事だけにする定款の定めがあるときは、代表理事以外で出席した理事の氏名を書く
7 出席した会計監査人の氏名又は名称 会計監査人を置いている財団のみ
8 議長がいるときは議長の氏名 議長を置かない運営なら不要

2番の「招集の経緯」は、通常の招集(理事会で定めた招集権者が招集した)であれば書く必要はありません。請求を受けて開いたときや、請求した理事・監事が自分で招集したときだけ、その旨を残します。

1番の「出席の方法」は、オンラインで理事会を開く財団では必ず問題になります。会議室に集まった人と、画面越しに参加した人が混在するときは、誰がどの方法で出席したかが議事録から分かるように書きます。

署名するのは「出席した理事と監事」― 定款で代表理事だけにできる

197条で準用する95条3項は、議事録が書面のときの署名者を出席した理事および監事と定めています。財団は監事が必置ですから(170条1項)、監事の署名または記名押印は必ず必要です。

ただし同項には例外があります。「議事録に署名し、又は記名押印しなければならない者を、その理事会に出席した代表理事とする」旨を定款で定めた場合は、署名するのは代表理事と監事だけで足ります。理事が多い財団では、この定款の定めを置いておくと運用が軽くなります。

定款の定め 署名・記名押印する人 議事録に追加で書くこと
定めなし(原則) 出席した理事全員+監事
「署名者は出席した代表理事」と定めた 出席した代表理事+監事 代表理事以外で出席した理事の氏名(規則15条3項6号)

議事録を電磁的記録で作る場合は、署名や記名押印に代わる措置(法務省令で定める電子署名)をとります(197条で準用する95条4項)。

POINT 署名を代表理事だけにする定款の定めを置いたときは、代表理事以外で出席した理事の氏名を議事録に書く義務が新たに発生します(規則15条3項6号)。署名を省く代わりに記載が増える、という関係です。

評議員は、裁判所の許可なしにいつでも閲覧できる(社団との最大の違い)

ここが一般社団法人と一般財団法人で最も大きく違うところです。

一般社団法人では、社員が理事会議事録を見るには「その権利を行使するため必要があるとき」に裁判所の許可を得なければなりません(97条2項)。ところが197条は、財団についてこの部分を次のように読み替えています。

97条2項中「社員は、その権利を行使するため必要があるときは、裁判所の許可を得て」とあるのは「評議員は、一般財団法人の業務時間内は、いつでも」と読み替える(一般法人法197条)

つまり財団の評議員は、理由を説明する必要も、裁判所の許可を得る必要もなく、業務時間内であればいつでも理事会議事録の閲覧・謄写を請求できます。評議員が理事を監督する立場にあることの裏づけになっている規定です。

請求する人 一般社団法人 一般財団法人
社員/評議員 社員=権利行使に必要なとき+裁判所の許可 評議員=業務時間内ならいつでも(許可不要)
債権者 理事・監事の責任追及に必要なとき+裁判所の許可 同じ(197条で準用する97条3項)
裁判所が許可しない場合 閲覧で法人に著しい損害が生じるおそれがあるとき 同じ。ただし債権者の請求についてだけの話になる

3つ目の行は細かい点ですが実務では効きます。社団では97条4項が「前二項の請求」=社員と債権者の両方を対象にしているのに対し、財団では197条が「前項の請求」と読み替えるため、裁判所が拒否できるのは債権者の請求だけになります。評議員の閲覧は、法人に不都合だという理由では止められません。

備置きは理事会の日から10年間、主たる事務所に

197条で準用する97条1項は、理事会の日から10年間、議事録等を主たる事務所に備え置くことを義務づけています。「議事録等」には、決議を省略したときの同意の意思表示を記載した書面も含まれます。

備置きで間違えやすい点

  • 起算点は理事会の日。決議を省略したときは、決議があったものとみなされた日から10年
  • 置く場所は主たる事務所。従たる事務所への備置き義務は、理事会議事録にはない
  • 10年は経過措置ではなく、毎回の理事会ごとに個別に進む。古いものから順に期間が満了する
  • 電磁的記録で作ったときも同じ10年。閲覧できる状態を保つ必要がある
  • 評議員会の議事録は10年・その写しは従たる事務所に5年で、理事会とは別のルール

最後の点は混同しやすいところです。評議員会の議事録には従たる事務所に写しを5年置く義務がありますが、理事会議事録にはその義務がありません。詳しくは評議員会の記事で扱っています。

決議の省略(みなし決議)を使うと、議事録の中身が変わる

理事会を開かずに決議を成立させる「決議の省略」は、定款にその定めがあるときにしか使えません(197条で準用する96条)。定款に書いていない財団は、この方法を使えません。

決議の省略が成立する条件(197条で準用する96条)

  • 定款に「決議の省略ができる」旨の定めがある
  • 理事が、決議の目的である事項について提案をした
  • その事項について議決に加わることができる理事の全員が、書面または電磁的記録で同意した
  • 監事が異議を述べていない

この方法で決議したときの議事録は、通常の議事録とは記載事項が入れ替わります(施行規則15条4項1号)。開催していない以上、日時・場所や議事の経過は書けないからです。

決議を省略したときに書く事項 内容
決議があったものとみなされた事項の内容 何が可決されたか
提案をした理事の氏名 提案者
決議があったものとみなされた日 全員の同意がそろった日
議事録の作成に係る職務を行った理事の氏名 作成担当

報告を省略したとき(197条で準用する98条1項)も同様に、報告を要しないものとされた事項の内容などを議事録に残します(規則15条4項2号)。

POINT ただし、業務執行理事が3か月に1回以上行う職務執行状況の報告(197条で準用する91条2項)は、この報告の省略ができません(197条で準用する98条2項)。年に最低2回は、実際に理事会を開く必要があります。

特別の利害関係がある理事は議決に加われない ― 氏名を議事録に残す

197条で準用する95条2項は、決議について特別の利害関係を有する理事は議決に加わることができないと定めています。そして規則15条3項4号が、その理事の氏名を議事録に書くよう求めています。

典型は、理事自身が財団と取引をする場合(利益相反取引の承認)や、その理事の解任・代表理事からの解職を決議する場合です。該当する理事は定足数の計算からも外れます。95条1項の「議決に加わることができる理事」に含まれないためです。

状況 定足数の母数 議事録に書くこと
理事5人・特別利害関係者0人 5人
理事5人・特別利害関係者1人 4人(過半数は3人) その1人の氏名
理事3人・特別利害関係者2人 1人 2人の氏名。決議の有効性は慎重に検討する

母数を間違えると決議そのものが無効になりかねません。議事録に氏名を書くルールは、あとから定足数の計算を検証できるようにするためのものです。

異議をとどめないと「賛成した」と推定される

197条で準用する95条5項は、理事会の決議に参加した理事であって議事録に異議をとどめないものは、その決議に賛成したものと推定すると定めています。

これは責任の話に直結します。違法な決議や、財団に損害を与える決議に「反対だったが押し切られた」場合でも、議事録にその旨が残っていなければ賛成したものとして扱われ、任務懈怠の責任(198条で準用する111条)を問われる余地が生まれます。

反対した理事は、議事録に反対したことを記載してもらうよう求めるべきです。「推定する」ですから反証は可能ですが、議事録という書面がある以上、それを覆すのは容易ではありません。

登記が必要な決議のときは、議事録が添付書面になる

一般法人法317条2項は、登記すべき事項について理事会の決議を要するときは、申請書にその議事録を添付しなければならないと定めています。代表理事を選定したときの変更登記が代表例です。

決議を省略した場合は、議事録に代えて「決議があったものとみなされる場合に該当することを証する書面」を添付します(317条3項)。同項は、96条が197条で準用される場合を含むと明記しているので、財団にもそのまま当てはまります。

変更の登記は、変更が生じてから2週間以内に申請します(303条)。議事録の作成が遅れると登記も遅れるので、代表理事の選定を含む理事会のあとは、議事録を優先して仕上げます。

この記事の位置づけ

本記事は、制度を一般的に説明したものです。個別の事案についての判断や手続きの代行を行うものではありません。

  • 設立登記など登記申請の手続きは司法書士が取り扱う業務です。ご自身で法務局へ申請することもできます。

よくある質問

Q. 理事会議事録に押すのは実印ですか、認印ですか?

A. 法律は「署名し、又は記名押印」としか定めておらず(一般法人法197条で準用する95条3項)、印章の種類までは決めていません。ただし登記の添付書面として使う場合には、法務局から印鑑証明書の添付を求められることがあります。登記が絡む決議のときは、事前に管轄の法務局または司法書士にご確認ください。

Q. 監事が欠席した理事会の議事録は、監事の署名がなくても有効ですか?

A. 署名または記名押印を求められているのは「出席した」理事および監事です(197条で準用する95条3項)。欠席した監事の署名は不要です。ただし監事は理事会に出席する義務があり(197条で準用する101条1項の前提)、常態的な欠席は監査体制として問題になります。

Q. 評議員は理事会に出席できますか?

A. 法律上、評議員に理事会への出席権はありません。評議員が理事の職務執行を確認する手段は、議事録の閲覧・謄写(197条で読み替えた97条2項)と評議員会での質疑です。そのぶん閲覧が裁判所の許可なしにできる仕組みになっています。

Q. 議事録を作らなかった場合、罰則はありますか?

A. 議事録の作成・備置きを怠ったり、虚偽の記載をしたりした場合は、理事などに100万円以下の過料が科されることがあります(一般法人法342条)。刑事罰ではありませんが、行為をした人個人に課される点に注意が必要です。

Q. ウェブ会議で理事会を開けますか?

A. 開けます。施行規則15条3項1号が「当該場所に存しない理事、監事又は会計監査人が理事会に出席した場合における当該出席の方法」を議事録の記載事項として挙げており、遠隔での出席が前提とされています。議事録には、誰がどの方法で出席したかを書きます。

Q. 理事会議事録は誰でも見られますか?

A. 見られません。閲覧・謄写を請求できるのは評議員(許可不要)と債権者(裁判所の許可が必要)だけです(197条で準用・読み替えた97条2項・3項)。一般の第三者に開示する義務はありません。

Q. 決議の省略を使いたいのですが、定款に定めがありません。

A. 定款を変更しない限り使えません(197条で準用する96条)。一般財団法人の定款変更は評議員会の決議によりますが、目的と評議員の選任・解任の方法は原則として変更できません(200条1項)。決議の省略の定めはこれらに当たらないため、評議員会の決議で追加できます。

Q. 議事録の10年が過ぎたら捨ててよいですか?

A. 法律上の備置き義務は10年で終わります(197条で準用する97条1項)。ただし過去の代表理事の選定経緯や利益相反取引の承認は、後日の紛争で証拠になります。法人の重要書類として、期間経過後も保管しておく運用が安全です。

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