一般財団法人の決算|計算書類は評議員会の承認・貸借対照表は公告・純資産300万円で解散

一般財団法人
一般財団法人の決算は、数字を締めて終わりではありません。純資産の額しだいでは、その定時評議員会で法人が解散します。

一般財団法人の計算(決算)は、一般社団法人の条文をまるごと準用しています(199条)。

ただし「社員総会」を「評議員会」に読み替え、一部の条文が準用から外されるため、社団の手順書をそのまま使うと抜けが出ます。

この記事では、一般財団法人の決算だけに当てはまるルールを条文で整理します。

POINT 財団の決算は監事の監査 → 理事会の承認 → 定時評議員会の承認という三段階(124条・126条2項・199条準用)。終わったら貸借対照表の公告(128条)。そして🔴純資産が2期連続で300万円未満なら、その定時評議員会の終結の時に解散します(202条2項)。

財団の決算は「監査 → 理事会 → 評議員会」の三段階

一般財団法人は理事会も監事も必置です(170条1項)。そのため社団のように「監事がいない」「理事会がない」パターンが存在せず、決算の手順は常に一本道になります。

順番 やること 根拠
計算書類・事業報告・附属明細書を作る 123条2項
監事の監査を受ける 124条1項
理事会の承認を受ける 124条3項
招集通知に際して評議員に提供する 125条(「社員に」→「評議員に」)
定時評議員会で計算書類の承認/事業報告は報告 126条2項・3項
貸借対照表を公告する 128条1項
POINT 199条は126条1項の1号・2号・4号を準用から外しています。残るのは3号(理事会設置法人=124条3項の承認を受けたもの)だけ。つまり財団では「理事会の承認を経ていない計算書類」を評議員会に出す道がありません

事業報告は「報告」であって承認事項ではありません(126条3項)。議事録で承認と報告を書き分けておくと、後から見たときに手順の正しさが残ります。

作る書類と、10年の保存義務

各事業年度について作るのは次のものです(123条2項)。

  • 計算書類=貸借対照表 と 損益計算書(正味財産増減計算書として作成する法人が多い)
  • 事業報告
  • これらの附属明細書

設立したときは、それとは別に成立の日における貸借対照表も作ります(123条1項)。

保存期間は計算書類と附属明細書が10年(123条4項)、会計帳簿と重要資料は閉鎖の時から10年(120条2項)です。電磁的記録での作成も認められています(123条3項)。

会計帳簿は「適時に、正確に」作る義務があります(120条1項)。期末にまとめて記帳する運用は、この条文の求めるところではありません。

評議員の会計帳簿閲覧は、理由を言わなくていい

ここは社団と大きく違うところです。

社団では、会計帳簿の閲覧を請求できるのは総社員の議決権の10分の1以上を持つ社員で、しかも請求の理由を明らかにする必要があり、法人側にも5つの拒否事由があります(121条1項・2項)。

ところが199条は、121条1項の後段(理由を明らかにする部分)と2項(拒否できる場合)を、まるごと準用から外しています。そのうえで「議決権の10分の1以上を有する社員」を「評議員」と読み替えます。

結果として財団では

  • 評議員は1人でも会計帳簿の閲覧・謄写を請求できる
  • 請求の理由を示す必要がない
  • 法人側に条文上の拒否事由がない

「何のために見るのか」を問い返して先延ばしにする対応は、条文の想定と噛み合いません。評議員から請求があったら、業務時間内に見せる前提で準備しておくのが安全です。

計算書類等(監査報告を含む)についても、評議員と債権者が業務時間内にいつでも閲覧・謄本交付を請求できます(129条3項。「社員」を「評議員」と読み替え)。

定時評議員会の2週間前から備え置く

計算書類等は、定時評議員会の日の2週間前の日から5年間、主たる事務所に備え置かなければなりません(129条1項)。従たる事務所には写しを3年間です(同2項)。

財団は理事会設置法人にあたるため、社団の「1週間前」ではなく2週間前が起算点になります。

みなし決議(194条1項)で定時評議員会を開かずに済ませた場合は、その提案があった日が起算日です(129条1項の読み替え)。

POINT 招集通知は1週間前まで(182条1項)ですが、備置きは2週間前からです。備置きのほうが早いので、逆算するときは備置き日を基準に決算スケジュールを組みます。

評議員会そのものの進め方は一般財団法人の評議員会|招集は1週間前・代理出席は不可・議事録は10年保存にまとめています。

貸借対照表の公告は義務 ― 公告方法で手間が変わる

定時評議員会の終結後、遅滞なく貸借対照表を公告しなければなりません(128条1項)。大規模一般財団法人は損益計算書も公告します。

ここは株式会社と違って小さい法人でも免除されません。公告方法は定款で定めた方法によります。

公告方法 公告する内容 根拠
官報/日刊新聞紙 要旨で足りる 128条2項
電子公告 全文 128条1項
自社サイト等での継続開示 貸借対照表の内容である情報を定時評議員会の終結の日後5年を経過する日まで継続して提供する措置をとれば、公告に代えられる 128条3項

128条3項の措置をとった場合は、1項・2項の公告義務は適用されません。官報掲載料をかけずに済ませたい法人は、この経路を定款の公告方法とあわせて設計します。ただし5年間ページを落とさない運用が前提です。

公告方法は登記事項でもあります(302条2項12号)。定款と登記と実際の運用が食い違っていないかは、決算のたびに確認しておくと安全です。

決算の数字が、そのまま解散に直結する

一般財団法人だけにある仕組みです。

202条2項 ある事業年度及びその翌事業年度に係る貸借対照表上の純資産額がいずれも300万円未満となった場合、当該翌事業年度に関する定時評議員会の終結の時に解散する。

解散事由(202条1項)に列挙された6つとは別枠で、決算の結果だけで自動的に解散します。決議も裁判所の関与も必要ありません。

ポイントは「2期連続」であることと、判定に使うのが「貸借対照表上の純資産額」であることです。

  • 1期だけ300万円を下回っても解散しません。次の期までに立て直せば回避できます
  • 設立時に拠出した300万円(153条2項)や、定款で定めた基本財産(172条2項)とは別の概念です
  • そのため、1期目の決算で純資産が300万円を割った時点が実質的な警報になります。翌期の予算と寄付の計画をその時点で組み直します

新設合併で設立した財団には、成立の日の属する事業年度についての特則もあります(202条3項)。

3つの「300万円」の違いは一般財団法人の基本財産とは?純資産300万円を2期連続で下回ると解散する仕組みで整理しています。

会計監査人を置いている財団の特則

会計監査人は定款で任意に置けますが(170条2項)、大規模一般財団法人は必置です(171条)。

会計監査人を置くと、監査の担当が分かれます(124条2項)。

  • 計算書類とその附属明細書=監事 および 会計監査人
  • 事業報告とその附属明細書=監事のみ

さらに、理事会の承認を受けた計算書類が法務省令の要件(適正に表示していること)を満たす場合は、定時評議員会の承認が不要になり、理事が内容を報告するだけで足ります(127条・199条準用)。

会計監査人の位置づけそのものは会計監査人とは?一般社団法人で必要になる条件と監事との違いを参照してください。監事側の職務は一般財団法人の監事|必置・評議員会が選ぶ・解任には事由と3分の2が要るにまとめています。

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よくある質問

Q. 収益事業をしていなくても決算は必要ですか。
必要です。計算書類の作成義務(123条2項)と貸借対照表の公告義務(128条1項)は、法人税の申告義務とは別に一般法人法が課しているものです。

Q. 定時評議員会を開かずに決算を済ませられますか。
194条1項のみなし決議(提案に対する評議員全員の書面等による同意)を使えば可能です。その場合、備置きの起算日は提案があった日になります(129条1項の読み替え)。ただし公告義務はなくなりません。

Q. 決算公告をしなかったらどうなりますか。
公告を怠った場合は過料の対象になり得ます。実務上は、電子公告や128条3項の継続開示を選び、決算のたびに更新する運用にしておくのが確実です。

Q. 純資産が300万円を下回りそうです。何ができますか。
判定は2期連続なので、翌事業年度の末までに純資産を回復させれば解散しません。寄付の受入れ、費用の圧縮、拠出の追加などを翌期の計画に織り込みます。

Q. 評議員から会計帳簿を見たいと言われました。断れますか。
条文上の拒否事由が準用されていないため、原則として断れません。理由の説明を求める必要もありません(121条1項後段・2項は準用外)。

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