一般財団法人の基本財産とは?純資産300万円を2期連続で下回ると解散する仕組み

一般財団法人の「300万円」は3つあります。混ぜると、置かなくてよいものを置いたり、解散のリスクを見落としたりします。

一般財団法人の解説を読むと、あちこちに300万円という数字が出てきます。

設立に300万円、基本財産が300万円、純資産が300万円。

これらは全部ちがう条文の、ちがう話です。

この記事では、3つを条文で分けたうえで、実務でいちばん怖い「2期連続で下回ると解散する」という仕組みを整理します。

POINT 結論:設立時に拠出する財産の合計が300万円以上(153条2項)。基本財産は定款で定めたときにだけ生じる概念で、必ず置くものではありません(172条2項)。そして貸借対照表上の純資産額が2期連続で300万円未満になると、当該翌事業年度に関する定時評議員会の終結の時に解散します(202条2項)。

「基本財産」は必ず置くものではない

一般法人法172条2項は、こう定めています。

理事は、一般財団法人の財産のうち一般財団法人の目的である事業を行うために不可欠なものとして定款で定めた基本財産があるときは、定款で定めるところにより、これを維持しなければならず、かつ、これについて目的である事業を行うことを妨げることとなる処分をしてはならない。

注目すべきは「定款で定めた基本財産があるときは」という条件つきの書き方です。

つまり基本財産は、定款で定めて初めて生まれる概念であり、一般財団法人に必ず置かなければならないものではありません。

「一般財団法人には基本財産300万円が必要」という説明を見かけますが、条文はそう書いていません。

基本財産を定款で定めると、理事に2つの義務が生じる

義務 内容
維持義務 定款で定めるところにより、基本財産を維持しなければならない
処分の制限 基本財産について、目的である事業を行うことを妨げることとなる処分をしてはならない

基本財産を定款に書くことには、資金の裏づけを対外的に示せるという利点があります。

一方で、その財産は自由に動かせなくなります。

公益認定を目指す場合など、あえて基本財産を定める設計は合理的ですが、事業の柔軟性とのトレードオフになる点は理解しておく必要があります。

混同されやすい3つの300万円

何の300万円か 根拠 必須か
拠出財産 設立に際して設立者が拠出する財産の価額の合計 153条2項 必須。下回ると設立できない
基本財産 目的事業に不可欠なものとして定款で定めた財産 172条2項 任意。金額の定めもない
純資産 貸借対照表上の純資産額 202条2項 下回り続けると解散

設立のときに拠出した300万円は、法人の財産として事業に使えます。

使ってはいけないお金ではありません。

ただし使い切って純資産が300万円を割り込んだ状態が2期続くと、次に説明する解散のルールに当たります。

純資産が2期連続で300万円未満だと解散する

一般法人法202条2項は、次のように定めています。

一般財団法人は、ある事業年度及びその翌事業年度に係る貸借対照表上の純資産額がいずれも300万円未満となった場合においても、当該翌事業年度に関する定時評議員会の終結の時に解散する。

起きること
1期目に300万円未満 解散しない。ここが立て直しの機会
2期目も300万円未満 解散が確定する
解散の時点 2期目の事業年度に関する定時評議員会が終結した時。決算日ではない

重要なのは、1期だけなら解散しないことです。

1期目の決算で純資産が300万円を下回ったら、その事業年度のうちに寄付を募る、事業を見直すなどの手を打てば解散を回避できます。

逆に、決算書を作ったまま放置していると、2期目の定時評議員会が終わった瞬間に法人が解散します。

設立時にちょうど300万円だけを拠出する設計が危ういのは、初年度の赤字がそのまま解散リスクになるからです。

なお、新設合併により設立した一般財団法人には、成立の日の属する事業年度についての特則があります(202条3項)。

解散事由は全部で6つ、それに純資産のルールが加わる

解散事由(202条1項)
1号 定款で定めた存続期間の満了
2号 定款で定めた解散の事由の発生
3号 基本財産の滅失その他の事由による目的である事業の成功の不能
4号 合併(当該法人が消滅する場合)
5号 破産手続開始の決定
6号 解散を命ずる裁判(261条1項・268条)

3号に基本財産の滅失が出てきます。

基本財産を定款で定めていた場合、それが失われて目的事業が続けられなくなると解散事由になる、という関係です。

ここでも基本財産は「定めていれば効いてくる」概念として登場します。

目的と評議員の選任方法は、原則として変更できない

一般財団法人は、成立後、評議員会の決議によって定款を変更できます(200条1項本文)。

ただし目的(153条1項1号)と評議員の選任および解任の方法(同8号)は、この原則から除かれています。

変更できる場合 根拠
原則 変更できない 200条1項ただし書
例外1 設立者が「評議員会の決議で変更できる」旨を定款で定めていたとき 200条2項
例外2 設立当時予見できなかった特別の事情により運営の継続が不可能または著しく困難になり、裁判所の許可を得たとき 200条3項

財産に法人格を与える制度なので、設立者が定めた目的を後から自由に書き換えられないようになっています。

設立の段階で目的を広めに書いておくかどうかは、この制約を踏まえて決めることになります。

よくある質問

Q. 一般財団法人に基本財産は必ず必要ですか?

A. 必須ではありません。一般法人法172条2項は「目的である事業を行うために不可欠なものとして定款で定めた基本財産があるときは」という書き方をしており、基本財産を置くかどうかは定款の設計にゆだねられています。設立時に300万円以上の財産を拠出する義務(153条2項)とは別の話です。

Q. 基本財産を定款で定めると何が変わりますか?

A. 理事に2つの義務が生じます。定款で定めるところにより基本財産を維持しなければならず、かつ目的である事業を行うことを妨げることとなる処分をしてはなりません(172条2項)。売却や担保設定に定款上の制約がかかることになります。

Q. 純資産が300万円を下回ったらすぐ解散ですか?

A. 1期だけでは解散しません。ある事業年度とその翌事業年度の貸借対照表上の純資産額がいずれも300万円未満になった場合に、当該翌事業年度に関する定時評議員会の終結の時に解散します(202条2項)。1期目に下回った時点で立て直せば解散は避けられます。

Q. 解散のタイミングはいつですか?

A. 2期連続で下回った翌事業年度に関する定時評議員会が終結した時点です(202条2項)。決算日ではありません。

Q. 一般社団法人にも同じ解散ルールがありますか?

A. ありません。一般社団法人の解散事由は148条に定められており、純資産額による解散は含まれていません。かわりに「社員が欠けたこと」が解散事由になります(148条4号)。

Q. 法人の目的は後から変えられますか?

A. 原則として変えられません。定款変更は評議員会の決議でできますが、目的(153条1項1号)と評議員の選任・解任の方法(同8号)は除かれています(200条1項)。ただし設立者が定款で変更できる旨を定めていた場合(同2項)と、設立当時予見できなかった特別の事情により運営の継続が不可能または著しく困難になった場合に裁判所の許可を得た場合(同3項)は変更できます。

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