一般財団法人の設立手続き|300万円の拠出・定款の認証から登記までを解説

一般社団法人は「人」から、一般財団法人は「財産」から始まります。手続きの形が根本から違います。

一般社団法人と一般財団法人は、名前が一文字違うだけです。

しかし設立の手続きは、同じ法律のなかで別物として組み立てられています。

一般社団法人が人の集まりであるのに対し、一般財団法人は拠出された財産そのものに法人格を与える仕組みだからです。

この記事では、一般財団法人の設立を、一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(一般法人法)の条文に沿って順番に整理します。

POINT 結論:一般財団法人を設立するには、設立者が定款を作成して公証人の認証を受け、合計300万円以上の財産を拠出し、主たる事務所の所在地で設立登記をします(一般法人法152条・155条・153条2項・157条・163条)。設立後は評議員・評議員会・理事・理事会・監事のすべてが必置で(同170条1項)、評議員は3人以上、理事も3人以上必要です。

一般財団法人の設立は5つのステップで進む

やること 根拠条文
1 設立者が定款を作成し、署名または記名押印する 152条1項
2 公証人の認証を受ける(手数料5万円) 155条/公証人手数料令35条3号
3 認証の後、遅滞なく財産を全額払い込む・全部給付する 157条1項
4 設立時評議員・設立時理事・設立時監事が選任される 153条1項6号
5 主たる事務所の所在地で設立の登記をする(登録免許税6万円) 163条/登録免許税法別表第一24号(1)ロ

一般社団法人と大きく違うのは、3の「財産の拠出」が手続きに組み込まれている点です。

一般社団法人には、設立時に財産を出す義務がありません。

一般財団法人は財産を出さなければ成立しないので、ここが手続きの中心になります。

定款に必ず書く10項目

一般法人法153条1項は、定款の記載事項を10個列挙しています。

記載事項
1号 目的
2号 名称
3号 主たる事務所の所在地
4号 設立者の氏名または名称および住所
5号 設立に際して各設立者が拠出をする財産およびその価額
6号 設立時評議員・設立時理事・設立時監事の選任に関する事項
7号 会計監査人設置法人とする場合は設立時会計監査人の選任に関する事項
8号 評議員の選任および解任の方法
9号 公告方法
10号 事業年度

一般社団法人の定款(同11条1項)と比べると、4号・5号・8号が財団に固有の項目です。

とくに8号の評議員の選任および解任の方法は、次に説明するとおり書き方を誤ると効力を失います。

書いても無効になる定款の定めが2つある

一般法人法153条3項は、次の2つの定めは効力を有しないと明記しています。

無効になる定め なぜか
1号 理事または理事会が評議員を選任し、または解任する旨の定め 評議員は理事を監督する立場なので、監督される側が監督する側を選ぶ構造を禁じている
2号 設立者に剰余金または残余財産の分配を受ける権利を与える旨の定め 非営利法人の根幹。出したお金は戻ってこない

1号は実務でよく起きる失敗です。評議員の選任機関としては、評議員選定委員会のように理事会から独立した仕組みを定款で設計するのが一般的です。

2号は、300万円を出した設立者が後からその財産を引き上げられないことを意味します。

一般社団法人の「基金」が返還を予定した制度であるのとは、性質がまったく異なります。

300万円のルールを正確に理解する

一般法人法153条2項は、定款に記載する拠出財産の価額の合計額は300万円を下回ってはならないと定めています。

ここでよくある誤解が3つあります。

よくある理解 正確には
「基本財産が300万円必要」 条文の300万円は設立に際して拠出する財産の話です(153条2項)。「基本財産」は定款で定めたときに生じる別の概念で(172条2項)、必ず置かなければならないものではありません
「300万円は現金でなければならない」 金銭以外の財産でも給付できます(157条1項)。定款に財産とその価額を書きます
「300万円は使えないお金」 法人の財産として事業に使えます。ただし純資産が2期連続で300万円未満になると解散します(202条2項)

3つ目が実務上いちばん重いところで、設立時にぎりぎり300万円を用意する設計は、その後の解散リスクを抱え込むことになります。

遺言でも設立できる

一般法人法152条2項は、設立者が遺言で定款の記載事項を定めて設立の意思を表示できると定めています。

この場合、遺言の効力が生じた後、遺言執行者が遅滞なく定款を作成し、署名または記名押印します。

遺言による設立でも、公証人の認証(155条)と設立登記(163条)は同じように必要です。

個人の財産を特定の目的のために残したい、という場面で使われる仕組みです。

一般社団法人との違いを一覧で比べる

一般社団法人 一般財団法人
出発点 人(社員) 財産
設立に必要な人 社員になろうとする者が共同して定款を作成(10条1項) 設立者は1人でも可(152条1項)
財産の拠出 不要 合計300万円以上(153条2項)
理事 1人以上(60条1項) 3人以上(65条3項・177条準用)
理事会 定款で置くことができる(任意・60条2項) 必置(170条1項)
監事 定款で置くことができる(任意・60条2項) 必置(170条1項)
評議員 制度なし 3人以上・必置(170条1項・173条3項)
最高機関 社員総会 評議員会
純資産による解散 なし 2期連続で300万円未満なら解散(202条2項)

機関の数だけを見ても、一般財団法人は評議員3人・理事3人・監事1人の最低7人が必要です。

評議員は理事・監事・使用人を兼ねられない(173条2項)ので、少人数では運営できない構造になっています。

「small に始めたい」という目的であれば、一般社団法人のほうが適していることが多いのはこのためです。

よくある質問

Q. 一般財団法人の設立にはいくら必要ですか?

A. 財産の拠出が300万円以上(一般法人法153条2項)、定款の認証手数料が5万円(公証人手数料令35条3号)、設立登記の登録免許税が6万円(登録免許税法別表第一24号(1)ロ)です。拠出した300万円は法人の財産になるので、消えてなくなるお金ではありません。

Q. 設立者は1人でもよいですか?

A. 1人でも設立できます。条文は「設立者(設立者が二人以上あるときは、その全員)」という書き方で、1人を前提に置いています(一般法人法152条1項)。一般社団法人が「社員になろうとする者が共同して定款を作成する」と定めている(同10条1項)のと対照的です。

Q. 定款に収入印紙は必要ですか?

A. 不要です。印紙税法別表第一6号の課税対象は「会社の設立時の定款の原本」に限られており、一般財団法人は会社ではありません。「電子定款にすれば4万円が浮く」という話は株式会社のものです。

Q. 300万円は現金でなければいけませんか?

A. 現金以外の財産でも拠出できます。条文は「拠出に係る金銭の全額を払い込み、又は同号に規定する拠出に係る金銭以外の財産の全部を給付しなければならない」と定めています(一般法人法157条1項)。ただし定款に財産とその価額を記載する必要があります(同153条1項5号)。

Q. 遺言で一般財団法人をつくれますか?

A. できます。設立者は遺言で定款の記載事項を定めて設立の意思を表示でき、遺言の効力が生じた後、遺言執行者が遅滞なく定款を作成します(一般法人法152条2項)。この定款も公証人の認証が必要です(同155条)。

Q. 理事や評議員は何人必要ですか?

A. 評議員は3人以上(一般法人法173条3項)、理事は3人以上です(同65条3項を177条で準用。財団は理事会が必置のため)。監事も必ず置きます(同170条1項)。評議員は理事・監事・使用人を兼ねられません(同173条2項)。

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