設立趣旨書は、なぜこの法人を作るのかを述べる文書です。
様式が細かく決まっていないぶん、書き方に迷いやすい書類でもあります。
ただし、書く要素は決まっています。
この記事では、構成の型と、通りやすい書き方を解説します。
設立趣旨書とは何か
設立趣旨書は、認証申請の添付書類のひとつです。
法人を設立する動機と、目指すものを説明する文書です。
定款が形式的な規則であるのに対し、こちらは思いを述べる場所になります。
所轄庁の担当者が、団体の姿を最初につかむ書類でもあります。
縦覧の対象になるため、一般の市民も読むことができます。
つまり、対外的な自己紹介としての性格も持っています。
ここでの説明が具体的であれば、その後の審査もスムーズに進みます。
逆に、抽象的な理念だけが並んでいると、質問が増えます。
時間をかけて書く価値のある書類です。
2部構成で書く
設立趣旨書は、大きく2つの部分で構成します。
前半が趣旨、後半が申請に至るまでの経過です。
趣旨では、なぜこの活動が必要なのかを述べます。
経過では、これまで何をしてきて、どう準備を進めたかを書きます。
この2部構成は、多くの所轄庁の記載例でも採られています。
見出しを立てて、はっきり分けて書くと読みやすくなります。
分量は、趣旨が3分の2、経過が3分の1くらいが目安です。
A4で1枚から2枚程度に収めるのが標準的です。
長すぎると、かえって要点がぼやけます。
- 地域や社会にある課題(できれば数字や事実で示す)
- その課題に対して自分たちが何をするのか
- 誰を対象とした活動なのか(不特定かつ多数であること)
- なぜ任意団体ではなく法人格が必要なのか
- どの活動分野に該当するのか
- これまでの活動歴(あれば)
- 設立の準備をどう進めてきたか(発起人会・設立総会など)
- 設立総会の開催日と決議の内容
趣旨の書き方
趣旨は、課題の提示から始めるのが自然です。
地域や社会に、どんな困りごとがあるのかを書きます。
思いだけでなく、数字や事実で裏づけると説得力が増します。
自治体の統計や、公的な調査の結果が使えます。
次に、その課題に対して自分たちが何をするのかを述べます。
具体的な事業の名前を挙げると、イメージが伝わります。
誰を対象とするのかも、明確に書きましょう。
会員だけでなく、広く市民に開かれた活動であることを示します。
最後に、なぜ法人格が必要なのかを述べます。
契約や助成金の受け皿として必要である、といった理由が一般的です。
法人格が必要な理由の書き方
この部分は、審査でよく読まれるところです。
任意団体のままでは何が不便なのかを、具体的に書きます。
契約を代表者個人の名義で結ばざるを得ない、という説明はよく使われます。
事務所を借りたり、職員を雇ったりするのに支障がある点も挙げられます。
助成金や委託事業に応募できないことも、実務的な理由になります。
代表者が交代したときに、財産の引き継ぎが不安定である点も説明できます。
社会的な信頼を得たい、という理由だけでは弱く見えます。
実際に困っている場面を挙げると、必要性が伝わります。
自分たちの経験にもとづいて書くのが、いちばん説得力があります。
経過の書き方
後半の経過では、時系列で準備の流れを書きます。
任意団体として活動していた期間があれば、その実績から書き始めます。
何年から、どんな活動を、どのくらいの規模で行ってきたかを示します。
参加人数や開催回数などの数字があると、実態が伝わります。
次に、法人化を検討し始めた時期と、そのきっかけを書きます。
発起人会を開いた日付と、そこで決めたことを記載します。
最後に、設立総会の開催日と決議の内容を書きます。
定款、事業計画、活動予算、役員を決議した旨を記載します。
この日付は、設立総会議事録と一致させてください。
| 構成 | 書く内容 | 分量の目安 |
|---|---|---|
| 1 趣旨 | 課題の提示 | 全体の3割 |
| 自分たちが行う活動 | 全体の2割 | |
| 対象と、法人格が必要な理由 | 全体の2割 | |
| 2 経過 | これまでの活動歴 | 全体の1割 |
| 発起人会と準備の流れ | 全体の1割 | |
| 設立総会の開催と決議 | 全体の1割 |
定款や事業計画書との整合
設立趣旨書は、単独で完結する書類ではありません。
定款の目的や事業と、内容がそろっている必要があります。
趣旨書に書いた事業が、定款にないと不整合になります。
事業計画書に書いた事業とも、名称をそろえましょう。
活動分野についても、定款に列挙したものと一致させます。
対象者の書き方も、統一しておくと読み手が迷いません。
日付についても、設立総会議事録と矛盾しないよう確認します。
書類がそろった段階で、通しで読み返すことをおすすめします。
一人で書くと気づかないので、別の人に読んでもらうと確実です。
通りにくい設立趣旨書の特徴
第一に、理念だけが並んでいて具体的な活動が見えないものです。
社会をよくしたい、という言葉だけでは審査が進みません。
第二に、会員のための活動に読めてしまうものです。
不特定かつ多数の利益に向いていることを、明確に示す必要があります。
第三に、法人格が必要な理由が書かれていないものです。
任意団体のままでよいのでは、と受け取られてしまいます。
第四に、経過が抽象的で準備の実態が見えないものです。
第五に、定款や事業計画書と内容が食い違っているものです。
第六に、長すぎて要点が読み取れないものです。
書き方のコツ
まず、箇条書きで要素を洗い出してから文章にしましょう。
いきなり書き始めると、話があちこちに飛びます。
一文を短くし、段落ごとに1つのことを述べます。
専門用語は避け、初めて読む人にも分かる言葉を選びます。
数字を入れると、説得力が一段上がります。
自分たちの経験や、実際にあった出来事を1つ入れると印象に残ります。
書き上げたら、声に出して読んでみてください。
読みにくい部分は、文が長すぎるか、話が飛んでいる箇所です。
所轄庁のホームページに記載例があれば、必ず目を通しましょう。
提出前の確認
完成したら、提出前に事前相談で見てもらいましょう。
所轄庁の担当者は、過去の申請を数多く見ています。
どこが分かりにくいかを、具体的に指摘してもらえます。
指摘を受けて直しておけば、受理後の補正を減らせます。
設立総会の前に相談しておくと、なお確実です。
総会後に趣旨書を大きく直すと、議事録との整合が問題になります。
定款と事業計画書も、あわせて見てもらうのが効率的です。
一度で完璧を目指さず、相談しながら仕上げる姿勢で臨みましょう。
設立後も使える書類
設立趣旨書は、認証申請だけの書類ではありません。
助成金の申請で、団体の背景を説明する材料になります。
ウェブサイトの団体紹介ページのもとにもなります。
新しい会員や理事に、団体の成り立ちを伝えるときにも使えます。
数年経つと、なぜ始めたのかを忘れてしまうことがあります。
原点を記した文書として、手元に残しておきましょう。
活動が広がったら、書き直して最新版を作るのもよい方法です。
毎年の総会で読み返す団体もあります。
設立の思いを共有し続けることが、団体の軸を守ります。
課題の書き方をもう少し具体的に
課題の記述は、設立趣旨書の出来を左右します。
漠然と困っている人がいる、では伝わりません。
誰が、どんな場面で、何に困っているのかを書きます。
対象を具体的にすると、活動の輪郭もはっきりします。
自治体が公表している統計を引用すると、客観性が加わります。
高齢化率や、待機児童の数などが使えます。
数字が見つからない分野なら、現場で見聞きした事実を書きます。
相談を受けた件数や、実際にあった出来事でも構いません。
大切なのは、書き手の実感が伝わることです。
借りてきた言葉を並べても、審査する人には見抜かれます。
誰が書くのがよいか
設立趣旨書は、代表になる人が書くのが基本です。
活動への思いを、いちばん持っている人だからです。
ただし、一人で完成させる必要はありません。
発起人で分担し、持ち寄って整える方法もあります。
書き上げたら、活動を知らない人に読んでもらいましょう。
専門用語や、内輪でしか通じない表現が見つかります。
所轄庁の担当者も、その分野の専門家とは限りません。
誰が読んでも分かる言葉に直すことが、通りやすさにつながります。
文章が苦手なら、話した内容を書き起こす方法もあります。
活動分野との対応を示す
設立趣旨書のなかで、活動分野に触れておくと親切です。
自分たちの活動が、法定の20分野のどれに当たるのかを書きます。
定款に列挙した分野と、当然そろえます。
複数にまたがる場合は、主たるものから順に書きます。
審査する側は、この対応関係を必ず確認します。
趣旨書の段階で示しておけば、疑問を持たれません。
分野の名称は、法律の表現をそのまま使いましょう。
独自の言い回しに変えると、どれに当たるのか分からなくなります。
対象を不特定かつ多数と読み取れる書き方にすることも忘れないでください。
趣旨書と縦覧
申請が受理されると、書類が1か月間公開されます。
これを縦覧といい、設立趣旨書もその対象に含まれます。
つまり、近隣の住民や関係者が読む可能性があります。
内輪向けの書き方をしていると、思わぬ誤解を招くことがあります。
特定の団体や個人を批判するような表現は避けましょう。
課題を書くときも、誰かを責める形にならないよう注意します。
現状を客観的に述べ、自分たちが何をするかに焦点を当てます。
公開されることを前提に読み返すと、表現が整います。
設立後の広報にそのまま使える文章になれば理想的です。
設立趣旨書のまとめ
設立趣旨書は、趣旨と経過の2部構成で書きます。
趣旨では、課題、行う活動、対象、法人格が必要な理由を述べます。
経過では、これまでの活動歴と設立準備の流れを時系列で書きます。
数字や具体例を入れると、説得力が上がります。
定款、事業計画書、議事録と内容と日付をそろえましょう。
A4で1枚から2枚程度が目安です。
設立総会の前に、事前相談で見てもらうのが確実です。
よくある質問
A. A4で1枚から2枚程度が目安です。長すぎると要点がぼやけるため、必要な要素を押さえて簡潔にまとめましょう。
A. 前半の趣旨で、地域や社会の課題、自分たちが行う活動、対象、なぜ法人格が必要なのかを書きます。後半の経過で、これまでの活動歴と設立準備の流れを時系列で書きます。
A. 書けます。実績がない場合は、なぜこの活動を始めようと思ったのか、準備をどう進めてきたかを丁寧に書きましょう。発起人会の開催なども準備の実績です。
A. 任意団体のままでは何が不便なのかを具体的に書きます。契約が代表者個人名義になる、助成金に応募できない、代表交代時に財産の引き継ぎが不安定といった実務的な理由が説得力を持ちます。
A. よくありません。趣旨書に書いた事業が定款にない、活動分野が一致しないといった食い違いは、補正の原因になります。書類がそろった段階で通しで読み返してください。
A. 細かくは決まっていませんが、所轄庁が記載例を公開していることが多くあります。提出先のホームページを必ず確認してください。
📖 参考にした公的機関の情報


