一般財団法人と任意団体の違い|財産の名義が代表者個人になるリスクと、法人化に必要な300万円と7人

一般財団法人
会の財産が代表の個人口座に入ったままです。
法人にしたほうがよいのでしょうか?

その状態は危険です。任意団体には法人格がないため、団体そのものが財産を持つことができません。お金も不動産も、形のうえでは代表者個人のものか、構成員全員で持っているものとして扱われます。

代表者が交代すれば名義を書き換えなければならず、代表者が亡くなればその財産は相続の対象に含まれかねません。代表者個人が借金を抱えれば、差押えの対象になるおそれもあります。

一般財団法人にすると、拠出した財産は法人自身のものになり、代表者個人の事情から切り離されます。この記事では、任意団体と一般財団法人の違いを、財産の帰属・名義・訴訟・税金・法人化の条件の順に整理します。

任意団体とは ― 法人格を持たない団体のこと

任意団体は法律用語ではありません。同窓会・地域の自治会・研究会・保護者会など、法人としての登記をしていない団体をまとめてこう呼んでいます。法律の世界では「権利能力なき社団」「法人でない社団又は財団」と表現されます。

判例(最高裁昭和39年10月15日判決)は、団体としての組織をそなえ、多数決の原則が行われ、構成員の変更にかかわらず団体そのものが存続し、代表の方法・総会の運営・財産の管理など主要な点が確定していれば、権利能力なき社団として一定の扱いを受けるとしています。

ただし、これはあくまで「法人に準じた扱いを一部認める」というだけで、法人格そのものが与えられるわけではありません。できないことは、次に見るとおり数多く残ります。

いちばんの違いは「財産が誰のものか」

任意団体 一般財団法人
財産の持ち主 構成員全員(総有)または代表者個人 法人そのもの
代表者が交代したら 名義の書き換えが必要 何も起きない(法人名義は変わらない)
代表者が亡くなったら 相続の対象に含まれるおそれがある 影響なし
代表者個人が借金をしたら 差押えの対象になるおそれがある 影響なし
不動産の登記 団体名ではできない 法人名でできる
銀行口座 団体名の口座は開設しにくい 法人名で開設できる
団体が解散したら 財産の行き先が不明確になりやすい 定款で定めた者へ。定めがなければ最終的に国庫へ
POINT 任意団体の最大の弱点は、財産と個人が切り離せないことです。まとまった財産を長く特定の目的に使い続けたいのであれば、その目的のために作られた器が一般財団法人です。

訴訟は団体名でできる ― でも登記はできない

民事訴訟法29条は、「法人でない社団又は財団で代表者又は管理人の定めがあるものは、その名において訴え、又は訴えられることができる」と定めています。任意団体でも、代表者または管理人を決めていれば団体名で裁判の当事者になれるということです。

しかしこれは訴訟の場面に限った特則です。不動産の登記名義人になることはできません。団体で建物を買っても、登記簿には代表者個人の名前か、構成員の共有として記載することになります。

場面 任意団体 一般財団法人
訴訟の当事者になる できる(民訴29条・代表者または管理人の定めが必要) できる
不動産の登記名義人になる できない できる
法人としての登記 そもそも存在しない 設立の登記で成立(一般法人法163条)
契約の当事者 代表者個人として結ぶのが通常 法人が当事者になる
補助金・助成金の申請 法人格を要件とするものは応募できない 応募できる
許認可の取得 法人格を要件とするものは取得できない 取得できる

助成金や指定管理者の公募では、応募資格を法人に限っている例が少なくありません。活動の幅を広げようとした段階で、法人格の有無が壁になることがあります。

税金の扱い ―「人格のない社団等」として扱われる

任意団体は税法上まったくの無関係ではありません。法人税法2条8号は「人格のない社団等」を「法人でない社団又は財団で代表者又は管理人の定めがあるもの」と定義しています。民訴29条とほぼ同じ表現です。

そして法人税法6条は、内国法人である公益法人等または人格のない社団等の所得のうち、収益事業から生じた所得以外の所得については法人税を課さないと定めています。つまり任意団体でも、法人税法施行令の定める収益事業を行えば、その部分には法人税がかかるのが原則です。

任意団体(人格のない社団等) 一般財団法人
法人税法上の区分 人格のない社団等(2条8号) 非営利型なら公益法人等、そうでなければ普通法人
課税の範囲 原則として収益事業から生じた所得(6条) 非営利型は原則として収益事業から生じた所得
法人住民税の均等割 収益事業を行わなければ免除される自治体が多い 所得がなくても原則としてかかる
寄付を受けたとき 個人からの贈与とみなされる場面がある 拠出・寄附に贈与税がかかる場面がある

「法人にすると税金が増える」と言われるのは、主に法人住民税の均等割が所得に関係なく発生するためです。一方で、任意団体のままでも収益事業を行えば申告義務は生じます。判定は実態によって結論が変わるため、具体的な取扱いは税理士または所轄の税務署にご確認ください。

この記事の位置づけ

本記事は、制度を一般的に説明したものです。個別の事案についての判断や手続きの代行を行うものではありません。

  • 税務の取扱いは、収入の性質や事業の実態によって結論が変わります。具体的な判定や税額の計算については、税理士または所轄の税務署へご確認ください。

任意団体から一般財団法人にするには ― 300万円と7人

法人化を決めたときに、最初にぶつかるのがこの2つです。

一般財団法人にするために必要なもの

  • 設立者が拠出する財産の合計額が300万円以上(一般法人法153条2項)
  • 評議員3人以上(173条3項)
  • 理事3人以上(177条で準用する65条3項)
  • 監事1人以上(170条1項)
  • 評議員は理事・監事・使用人を兼ねられない(173条2項)=最低7人の別々の人
  • 定款の公証人による認証(155条)と、設立の登記(163条)

注意したいのは、拠出した300万円は設立者に返ってこないことです。設立者に剰余金や残余財産の分配を受ける権利を与える定款の定めは効力を持ちません(153条3項2号)。「団体の財産を安全な場所に移す」ことはできますが、「あとで自分に戻す」ことはできません。

手続きの流れは設立手続きの記事で整理しています。

財団にこだわらない選択肢 ― 一般社団法人

任意団体の実態が「人の集まり」であることは多く、その場合は一般財団法人より一般社団法人のほうが自然です。

一般社団法人 一般財団法人
成り立ち の集まり 財産の集まり
設立時に必要な財産 定めなし(0円でも可) 300万円以上
必要な人数 社員2人以上(理事1人でも可) 7人(評議員3・理事3・監事1)
最高の意思決定機関 社員総会 評議員会
会員制度 社員という形で持てる 社員はいない
向いている団体 会員が活動する団体、業界団体、同窓会 まとまった財産を目的に縛りたいとき

会費を集めて会員が活動している任意団体なら、一般社団法人のほうが実態に合いますし、費用も人数も軽くて済みます。財産を出す人と使う人が分かれていて、その財産を将来にわたって目的から外させたくないという場合に、一般財団法人が意味を持ちます。

法人化しないなら ― 任意団体のままできる備え

法人化には費用も人数もかかります。いますぐ踏み切らない場合でも、財産と代表者個人を可能なかぎり切り離しておくことはできます。

任意団体のままでも整えておきたいこと

  • 規約に財産の帰属を明記する ― 「本会の財産は本会に帰属する」「解散したときの財産の行き先」まで書く
  • 代表者個人の口座と必ず分ける ― 団体名を冠した口座にし、生活費の口座と混ぜない
  • 通帳・印鑑・カードの管理者を分ける ― 1人に集中させない
  • 会計を年1回は総会に報告し、議事録に残す ― 権利能力なき社団と認められる要件のひとつ
  • 代表者または管理人を規約で定める ― 民訴29条の当事者能力の前提になる
  • 高額な財産を持つことになったら、その時点で法人化を再検討する

これらは判例が権利能力なき社団の要件として挙げる「団体としての組織」「多数決の原則」「代表の方法・総会の運営・財産の管理の確定」にそのまま対応します。整えておくと、任意団体のままでも財産をめぐる争いが起きにくくなります。

ただし、どれだけ規約を整えても不動産の登記名義人にはなれません。土地や建物を持つ段階まで来たら、法人化を避けて通ることはできません。

どちらを選ぶか

状況 おすすめ 理由
数人で気軽に活動しているだけ 任意団体のまま 法人化の費用と手間に見合わない
団体名で不動産を持ちたい 法人化 任意団体は登記名義人になれない
法人格が要件の助成金に応募したい 法人化 応募資格を満たすため
会員が主体で活動している 一般社団法人 社員という制度がある。財産要件がない
まとまった財産を目的に固定したい 一般財団法人 拠出財産が法人のものになり、取り戻せない
代表者の相続や借金から財産を守りたい 法人化 法人名義になれば代表者個人の事情から切り離される

法人化は「団体を立派にする」ためではなく、財産と責任を個人から切り離すための手段です。守るべき財産があるかどうかが、判断の分かれ目になります。

この記事の位置づけ

本記事は、制度を一般的に説明したものです。個別の事案についての判断や手続きの代行を行うものではありません。

  • 設立登記など登記申請の手続きは司法書士が取り扱う業務です。ご自身で法務局へ申請することもできます。

よくある質問

Q. 任意団体でも銀行口座は作れますか?

A. 金融機関によっては、規約・構成員名簿・代表者の本人確認書類などを提出すれば「団体名+代表者名」の口座を作れる場合があります。ただし法人口座ではないため、代表者が交代するたびに手続きが必要で、代表者個人の口座と区別がつきにくい状態は残ります。

Q. 任意団体のまま不動産を買うとどうなりますか?

A. 登記名義人は代表者個人か構成員の共有になります。団体名では登記できません。代表者が亡くなったときに相続財産に含まれてしまったり、代表者個人の債務で差し押さえられたりするおそれがあり、実務上のリスクが大きい状態です。

Q. 任意団体は訴えられることがありますか?

A. あります。民事訴訟法29条により、代表者または管理人の定めがある任意団体はその名において訴え、訴えられることができます。「法人でないから訴訟の相手にならない」ということはありません。

Q. 法人化すると税金は必ず増えますか?

A. 必ずとは言えませんが、法人住民税の均等割は所得がなくても原則としてかかります。一方、任意団体でも収益事業を行えば法人税の申告義務が生じます(法人税法6条)。実際の増減は活動の内容によるため、税理士または所轄の税務署にご確認ください。

Q. 一般財団法人と一般社団法人のどちらにすべきですか?

A. 団体の実態が人の集まりなら一般社団法人が自然です。一般社団法人は設立時の財産要件がなく、社員2人から作れます。一般財団法人は300万円以上の拠出と最低7人が必要ですが、財産を目的に固定できるという性格があります。

Q. 任意団体の財産をそのまま一般財団法人に移せますか?

A. 組織変更という制度はないため、新たに一般財団法人を設立し、任意団体の財産を拠出または寄附する形になります。このとき構成員全員の合意が必要になるのが通常で、税務上の取扱いも生じるため、事前に確認しておく必要があります。

Q. 法人化しないまま活動を続けても違法ではありませんか?

A. 違法ではありません。任意団体として活動すること自体に問題はなく、実際に多くの団体が任意団体のまま運営されています。法人化は義務ではなく、財産や契約のリスクを減らすための選択肢です。

Q. 設立に必要な300万円は、団体の会費から出せますか?

A. 出せます。ただし拠出した財産は法人のものになり、設立者に返ってきません(153条3項2号)。会費を積み立てた財産を拠出する場合は、構成員に「戻らないお金である」ことを説明したうえで合意を得ておく必要があります。

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