公益法人の中期的収支均衡とは|黒字は5年で解消・過去の赤字と通算できる・公益充実資金への積立は費用に数える(2025年4月〜)

公益法人
公益社団法人で決算を担当しています。
今年度は寄付が多くて公益目的事業が黒字になりました。改正前は「黒字は2年で使い切る」と聞いていましたが、今はどうなっていますか。

2025年4月1日施行の改正で、公益法人の収支のルールは名前ごと変わりました。改正前の「収支相償」は廃止され、中期的収支均衡になっています。黒字を出してはいけないのではなく、5年という期間の中で収支が釣り合っていればよいという考え方です。

根拠は公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律(以下「認定法」)14条と、計算方法を定めた認定法施行規則(内閣府令)15条〜23条です。この記事では、何を収入と費用に数えるのか、5年の判定はどう行うのか、剰余が残ったらどう解消するのかを条文で整理します。

中期的収支均衡とは ― 認定法14条と「5年」

認定法14条は、公益法人が公益目的事業を行うに当たって、公益目的事業に係る収入を「その実施に要する適正な費用(公益目的事業を充実させるため将来において必要となる資金として積み立てる資金を含む)」に充てることにより、内閣府令で定める期間において、その収支の均衡が図られるようにしなければならないと定めています。

その「内閣府令で定める期間」が施行規則15条の中期均衡期間=5年間です。条文が「積み立てる資金を含む」と書いていることで、将来の事業のための積立(公益充実資金)が費用の側に入る仕組みになっています。

改正前(2025年3月まで・廃止) 改正後(2025年4月から)
名称 収支相償(改正で廃止) 中期的収支均衡
黒字の扱い 原則として出さない。出た黒字は2年以内に解消 5年間の中で解消すればよい
過去の赤字 通算できない 4年以内の欠損と通算できる(規則16条3項)
判定の単位 各公益目的事業ごと+公益目的事業全体の2段階 公益目的事業の全体で1本
積立の扱い 公益目的事業のための積立も特定費用準備資金・資産取得資金として目的ごとに管理 公益充実資金の積立額を費用に数える(規則16条2項2号ロ)
判定の指標 改正前の収支相償の計算(廃止) 残存剰余額が5年経過時点で零を超えないか(規則21条)
POINT 改正前の「収支相償」は、黒字を出すと2年以内の使い切りを迫られ、赤字の年があっても翌年の黒字と相殺できませんでした。改正後は5年の幅と赤字との通算が入り、寄附が多い年・少ない年のある法人でも運営しやすくなっています。

年度剰余額の計算式(規則16条2項)― 何を収入と費用に数えるか

毎事業年度の終了後、公益法人はその年度の年度剰余額(収入額が費用額以上のとき)または年度欠損額(下回るとき)を計算します。収入額と費用額の中身は次のとおりです。

区分 項目 根拠
収入額 イ 損益計算書に計上すべき公益目的事業に係る経常収益(一般純資産に係るものに限る) 規則16条2項1号イ
ロ その年度の公益充実資金の取崩額(公益目的保有財産の取得・改良に充てた分は除く) 同1号ロ
ハ 収益事業等を行う法人は、収益事業等から生じた収益の50%(管理費のうち収益事業等に配分される額を控除した後の収益) 同1号ハ
費用額 イ 損益計算書に計上すべき公益目的事業に係る経常費用(一般純資産に係るものに限る。公益充実資金の取崩し等で取得した公益目的保有財産の減価償却費のうち対応部分は除く) 規則16条2項2号イ
ロ その年度の公益充実資金の積立額 同2号ロ

年度剰余額=収入額−費用額です。収入額が費用額を下回る場合は年度欠損額になりますが、欠損額を零とすることもできます(16条2項ただし書)。欠損を計上するかどうかは法人が選べる、という条文です。

POINT 費用の側に公益充実資金の積立額が入るのが、この制度の要です。黒字が出そうな年に、将来の事業のために公益充実資金へ積み立てれば、その分は費用に数えられ、剰余は減ります。ただし積立には規則23条の要件があります(後述)。

収益事業等の収益の50%が「公益目的事業の収入」に入る理由

収益事業等を行う公益法人は、収益事業等の収益の50%を公益目的事業の収入額に含めます(規則16条2項1号ハ)。認定法18条4号が「収益事業等から生じた収益に内閣府令で定める割合を乗じて得た額に相当する財産」を公益目的事業財産として公益目的事業に使うことを求めており、その割合が50%とされていることに対応しています。

ここでいう「収益」は、収益事業等における収益から、管理費のうち収益事業等に配分される額を控除した額です。売上ではなく、管理費配賦後の利益ベースで50%を計算します。50%を超えて公益目的事業に繰り入れることも認められており、その場合は後述の特例算定(規則19条)が関係します。

5年判定の仕組み(規則16条3項・18条・21条)― 残存剰余額が「5年経過して零を超えない」

年度剰余額が出た年は、まず過去の欠損と通算します。その年度の開始日前4年以内に開始した事業年度の残存欠損額(過年度残存欠損額)の合計を年度剰余額から差し引いた額が、その年度の暫定残存剰余額です(規則16条3項)。過年度残存欠損額の合計が年度剰余額以上なら暫定残存剰余額は零です。

次に、剰余を後述の使途に充てた額(解消額)を差し引いたものが、その年度に係る残存剰余額です(規則18条2項)。解消額は、古い年度の残存剰余額から順に充てられます(18条1項)。欠損が出た年は、年度欠損額を過年度残存剰余額のうち最も古い年度のものから順に控除します(17条かっこ書き)。

判定は規則21条です。各事業年度に係る残存剰余額のうち、その年度の末日から中期均衡期間(5年)が経過した事業年度に係るものが零を超えないとき、中期的収支均衡が図られているものとされます。つまりある年の剰余は、その年度末から5年以内に、欠損との相殺か解消額への充当で零にすればよいということです。

事業年度 年度剰余額(+)/年度欠損額(−) 処理 残存剰余額の状態
X1年度 +300 そのまま残存剰余額300 X1年度分:300
X2年度 −100 欠損100を最も古いX1年度の残存剰余額から控除 X1年度分:200
X3年度 +50 過年度残存欠損なし。X3年度分の残存剰余額50 X1年度分:200/X3年度分:50
X4年度 0(公益目的保有財産の取得150を解消額に) 解消額150を最も古いX1年度分から控除 X1年度分:50/X3年度分:50
X5年度 −60 欠損60をX1年度分50→X3年度分10の順に控除 X1年度分:0/X3年度分:40
X6年度末(X1年度末から5年経過) X1年度分の残存剰余額が零を超えないか判定 X1年度分0=均衡。X3年度分40はX8年度末までに零に

この表は制度の動き方を示す仮の数字です。実際の計算は、公益充実資金の積立・取崩しや公益目的保有財産の減価償却の扱いが入るので、規則46条1項4号の「中期的収支均衡に関する数値及びその計算の明細」の様式に沿って行います。

剰余を解消できる3つの使途(規則17条)

残った剰余は、次の使途に充てた額を「解消額」として差し引けます。

使途 解消額になる額
1号 公益目的保有財産に係る資産の取得または改良 その取得価額または改良に要した額の全部または一部
2号 災害その他、公益目的事業の実施が著しく困難となる事態(内閣総理大臣が定めるもの)で生じた資金不足を補うために不可欠な借入れの元本返済 返済に充てた額
3号 公益目的事業の内容その他の事情を勘案して、公益目的事業の実施に必要不可欠として行政庁の確認を得た事項 その事項に要した額

典型は1号です。事業に使う建物・設備・車両などを公益目的保有財産として取得すれば、その取得価額を剰余の解消に充てられます。逆に、単に預金として持ち続けるだけでは解消になりません。5年目に近づいた剰余は、公益目的保有財産の取得か公益充実資金の積立(次章)で処理するのが実務の流れです。

公益充実資金(規則23条)― 積立が費用になる代わりに6つの要件

公益充実資金は、公益目的事業に係る将来の特定の活動の実施、または将来の特定の公益目的保有財産の取得・改良(合わせて「公益充実活動等」)の費用に充てるために積み立てる資金です。改正前に公益目的事業のために別々に積み立てていた特定費用準備資金・資産取得資金を一本化したものです。収益事業等や法人運営のための特定費用準備資金・資産取得資金は、改正後も別の資金として残っています(規則31条・36条3項)。積立額を費用に数えられる(規則16条2項2号ロ)代わりに、規則23条1項の要件をすべて満たす必要があります。

要件
1号 公益充実活動等に係る費用等の支出に充てるために必要な資金として積み立てられるものであること
2号 事業年度終了後、インターネットその他の適切な方法で速やかに公表していること(活動等ごとの内容と実施時期/積立限度額とその算定根拠/当年度の取崩額と積立額/年度末の資金の額/前年度の同事項)
3号 公益充実活動等以外の支出に充てるために取り崩す場合について、特別の手続が定められていること
4号 年度末の資金の額が積立限度額(活動等ごとの所要額の合計)以下であること
5号 財産目録・貸借対照表またはその附属明細書で、他の資金と明確に区分して表示されていること

そして取崩しの義務があります(規則23条2項)。目的の支出がなされたときはその額まで取り崩し、正当な理由がないのに目的の活動を行わない事実があったときは、その時点の当該活動に係る資金の額を取り崩さなければなりません。後者の場合、以後の積立限度額はその活動の所要額を除いて計算します(同3項)。「積んだまま使わない」を防ぐ仕組みです。

POINT 公益充実資金は「剰余を消す道具」ではなく、使う予定と限度額を公表した上での積立です。公表事項(2号)は定期提出書類にも入ります(規則46条1項7号)。積立の根拠が説明できないと、立入検査や勧告の対象になります。

収益事業等を行う法人の特例算定(規則19条)

収益事業等を行う公益法人で、公益目的事業の費用が収入を上回るときは、規則16条の方法に代えて特例残存欠損額を計算できます(規則19条)。収益事業等の収益を50%を超えて公益目的事業に繰り入れた場合に、その繰入れを反映させるための計算です。

特例収入額(19条1項1号) 特例費用額(同2号)
公益目的事業の経常収益/公益充実資金の取崩額/公益目的保有財産の処分で得た額/収益事業等の収益の50% 公益目的事業の経常費用(公益目的保有財産の減価償却費を除く)/公益充実資金の積立額(活動等ごとの月割り上限あり)/公益目的保有財産の取得価額・改良額/過年度の特例残存欠損額(4年以内)

特例残存欠損額は、特例費用額から特例収入額と「収益事業等から公益目的事業に繰り入れた額」を差し引いて計算します(19条2項)。計算が複雑なので、収益事業等の比重が大きい法人は、様式と内閣府の手引きに沿って処理することになります。

提出と公表 ― 数値は毎年、行政庁と公衆に出る

中期的収支均衡に関する数値と計算の明細は、事業年度経過後3か月以内に作成・備え置き、行政庁へ提出する書類の一つです(認定法21条2項4号・22条1項・規則46条1項4号)。公益充実資金についても、規則23条1項2号の公表事項を記載した書類を提出します(規則46条1項7号)。

提出した書類は何人も閲覧でき(認定法21条5項)、行政庁も公表します(22条2項)。数値の作り方は定期提出書類の記事で全体を整理しています。

この記事の位置づけ

本記事は、制度を一般的に説明したものです。個別の事案についての判断や手続きの代行を行うものではありません。

  • 税務の取扱いは、収入の性質や事業の実態によって結論が変わります。具体的な判定や税額の計算については、税理士または所轄の税務署へご確認ください。

均衡が崩れたときの帰結

中期的収支均衡は認定法14条の義務であり、認定法第二節(14条〜26条)に含まれます。これを守っていないことは29条2項2号の公益認定の取消し事由に当たり、その疑いがあれば行政庁は期限を定めて勧告し、内容を公表します(28条1項・2項)。勧告に正当な理由なく従わなければ命令、命令に従わなければ必要的取消しです。

また、公益認定の基準としても、5条6号は「14条の収支の均衡が図られると見込まれること」を求めています。認定申請時の収支予算と、認定後の実績の両方で見られる基準です。

年度末のチェックリスト

決算で確かめること

  • 公益目的事業の経常収益・経常費用を、一般純資産に係るものに限って集計した(規則16条2項)
  • 収益事業等の収益から管理費の配分額を控除し、その50%を収入額に入れた(同1号ハ)
  • 公益充実資金の取崩額を収入に、積立額を費用に入れた(同1号ロ・2号ロ)
  • 年度剰余額から、4年以内の過年度残存欠損額を控除して暫定残存剰余額を出した(16条3項)
  • 公益目的保有財産の取得などの解消額を、最も古い年度の残存剰余額から順に充てた(17条・18条)
  • 5年が経過する年度の残存剰余額が零になっているか確認した(21条)
  • 公益充実資金の積立限度額・算定根拠・取崩額・積立額・年度末残高を公表した(23条1項2号)
  • 数値と計算の明細を規則46条の書類にまとめ、3か月以内に提出する(認定法22条)

よくある質問

Q. 中期的収支均衡とは何ですか?

A. 公益目的事業の収入を適正な費用(公益充実資金への積立を含む)に充てることで、5年間の中で収支の均衡を図る義務です(認定法14条・施行規則15条)。2025年4月1日施行の改正で、それまでの収支相償に代わって導入されました。

Q. 黒字が出たらどうなりますか?

A. 年度剰余額として計算し、4年以内の過去の欠損と通算したうえで残った残存剰余額を、その年度末から5年以内に、公益目的保有財産の取得などの解消額に充てて零にします(規則16〜18条・21条)。5年経過時点で零を超えていなければ均衡が図られているものとされます。

Q. 改正前の収支相償とはどう違いますか?

A. 改正で廃止された収支相償は、黒字を2年以内に解消し、過去の赤字と通算できず、各事業単位でも判定していました。中期的収支均衡は5年間・赤字との通算可・公益目的事業全体で判定し、公益充実資金の積立額を費用に数えます。

Q. 収益事業の利益はどう扱いますか?

A. 収益事業等の収益(管理費の配分額を控除後)の50%を、公益目的事業の収入額に含めます(規則16条2項1号ハ)。50%を超えて繰り入れる法人は、特例算定(規則19条)を使えます。

Q. 公益充実資金とは何ですか?

A. 公益目的事業の将来の特定の活動や、公益目的保有財産の取得・改良の費用に充てるために積み立てる資金です(規則23条)。積立額は費用に数えられますが、活動等ごとの内容・実施時期・積立限度額と算定根拠・取崩額と積立額・残高を毎年公表し、目的外の取崩しには特別の手続を定め、限度額を超えず、他の資金と区分表示することが要件です。

Q. 公益充実資金を積んだまま使わないとどうなりますか?

A. 正当な理由がないのに目的の活動を行わない事実があったときは、その活動に係る資金の額を取り崩さなければなりません(規則23条2項2号)。以後の積立限度額もその活動の所要額を除いて計算します(同3項)。

Q. 欠損が出た年はどう処理しますか?

A. 年度欠損額は、過去の残存剰余額のうち最も古い年度のものから順に控除します(規則17条・18条3項)。欠損額を零とすることも認められています(16条2項ただし書)。

Q. 均衡が図られていないと公益認定はどうなりますか?

A. 認定法14条は第二節の規定なので、守っていないことは29条2項2号の取消し事由です。行政庁はまず期限を定めた勧告を行い、その内容を公表します(28条)。命令に正当な理由なく従わなければ必要的取消しです(29条1項3号)。

あわせて読みたい

収支の均衡と並ぶもう一つの財務基準が使途不特定財産額の保有制限(16条)です。上限の計算と予備財産の要件はこちら。

あわせて読みたい

3つ目の財務基準=公益目的事業比率50%以上(15条)。計算式と、ボランティアの役務や自己所有地を費用に算入できる規則27〜29条はこちら。

あわせて読みたい

公益充実資金は「公表していること」が要件です(規則23条1項2号)。公表の中身と時期、閲覧請求への対応はこちらです。

あわせて読みたい

中期的収支均衡は認定基準(5条6号)であり認定後の義務(14条)でもあります。他の基準・義務との位置関係はこちらです。

【免責事項】本記事は一般的な情報提供を目的として作成したものであり、正確性・最新性に配慮していますが、内容の完全性・正確性を保証するものではありません。法令・制度・税制は改正される場合があり、個別の事情により取り扱いが異なることもあります。本記事の情報を利用して行われた一切の行為およびその結果について、当サイトおよび筆者は責任を負いかねます。実際のお手続きや判断にあたっては、必ず公的機関の最新情報をご確認のうえ、必要に応じて専門家にご相談ください。