「公益目的事業比率が50%を切りそうだ」と理事から言われました。何をどう数えて50%なのか、ボランティアの労力は入るのか教えてください。
公益法人には、活動のうち公益目的事業の割合が半分以上でなければならないという基準があります。認定法15条の公益目的事業比率=50%以上です。2025年4月1日施行の改正で収支の基準(中期的収支均衡)や財産の基準(使途不特定財産額)は変わりましたが、この50%は据え置きです。
根拠は公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律(以下「認定法」)15条と、費用額の数え方を定めた認定法施行規則(内閣府令)24条〜31条です。比率は「事業費と管理費の割り算」に見えて、実際には損益計算書にない費用を足せる調整が多くあります。この記事では、計算式、3つの費用額、足せるもの・引くもの、50%を割ったときの帰結を条文で整理します。
計算式(認定法15条)― 分子は公益実施費用額、分母は3つの合計
認定法15条は、公益法人は毎事業年度における公益目的事業比率が100分の50以上となるように公益目的事業を行わなければならない、と定めています。比率の定義は次のとおりです。
| 記号 | 項目 | 認定法15条 | 施行規則24条2項の出発点 |
|---|---|---|---|
| A | 公益実施費用額(公益目的事業の実施に係る費用の額) | 1号 | 損益計算書に計上すべき公益目的事業に係る事業費の額 |
| B | 収益等実施費用額(収益事業等の実施に係る費用の額) | 2号 | 損益計算書に計上すべき収益事業等に係る事業費の額 |
| C | 管理運営費用額(法人の運営に必要な経常的経費の額) | 3号 | 損益計算書に計上すべき管理費の額 |
3つの費用額は「損益計算書の事業費・管理費」が出発点(規則24条)
施行規則24条2項は、別段の定めがない限り、各費用額を損益計算書の区分から取ると定めています。公益目的事業会計・収益事業等会計・法人会計に区分して整理した損益計算書(認定法19条)が前提です。つまり経理の区分が正しくなければ、比率の計算も正しくなりません。
複数の事業等に関連する費用は、適正な基準で配賦しなければなりません(規則32条)。配賦が困難な費用は、公益目的事業と収益事業等に関連するものは収益等実施費用額に、管理運営に関連するものは管理運営費用額にする扱いが認められています(同ただし書)。つまり、迷った費用を公益目的事業側に寄せて比率を上げることはできず、逆方向にしか倒せません。
そのうえで規則25条以下が「別段の定め」を置いています。控除するもの、算入しないもの、算入できるものの3種類です。
控除するもの・算入しないもの(規則25条・26条)
| 項目 | 扱い | 根拠 |
|---|---|---|
| 引当金の取崩額(その年度に取り崩すべきこととなった額・取り崩した額) | 事業等の区分に応じて費用額から控除 | 規則25条 |
| 財産の譲渡損(原価−対価) | 費用額に算入しない | 規則26条1項 |
| 商品・製品(販売目的の不動産を含む)の原価 | 事業等の区分に応じて算入する | 規則26条2項 |
| 財産の評価換えによる帳簿価額の減額 | 算入しない | 規則26条3項 |
| 財産の運用により生じた損失 | 算入しない | 規則26条4項 |
有価証券の評価損や売却損を公益目的事業の費用に入れて比率を上げることはできません。一方で、公益目的事業として販売している書籍や物品の原価は、公益実施費用額に入ります。
算入できる「損益計算書にない費用」(規則27〜29条)― 土地・無利子貸付・無償の役務
ここが公益目的事業比率の計算で最も見落とされるところです。実際にはお金を払っていないが、払ったのと同じ価値を事業に投じているものを、費用額に算入できます。
| 算入できるもの | 算入する額 | 根拠 | 条件 |
|---|---|---|---|
| 自己所有の土地を事業等に使用した | その土地の賃借に通常要する賃料の額 − 実際に負担した費用の額 | 規則27条 | 正当な理由がない限り毎事業年度継続して適用 |
| 無利子・低利の貸付けを行っている | 同額を借り入れた場合の利率で計算した利子 − 実際の利率で計算した利子 | 規則28条 | 同上 |
| 無償で役務の提供(便益の供与・資産の譲渡を含む)を受けた | その役務と同等の役務を受けるために必要な対価の額(必要対価の額) | 規則29条1項 | 継続適用+事実を証するものと算定根拠を10年間保存(同4項) |
| 役務の対価が必要対価より低い | 差額のうち実質的に贈与・無償提供と認められる額 | 規則29条2項 | 同上 |
冒頭の質問にあった「ボランティアの労力」は、規則29条1項の無償の役務の提供に当たります。公益目的事業にボランティアが参加していれば、同等の役務を有償で受けた場合の対価相当額を公益実施費用額に算入できます。専門家が無償で講師を務めた場合も同じです。
公益充実資金と特定費用準備資金(現行の制度)の調整(規則30条・31条)
積み立てる資金も費用額に影響します。公益充実資金については、その年度の積立額に「将来の特定の活動の実施に係る所要額の合計÷積立限度額」を掛けた額を公益実施費用額に算入し(規則30条1項)、取崩額(公益目的保有財産の取得・改良に充てた分を除く)は公益実施費用額から控除します(同2項)。
公益目的事業以外の将来の活動のための特定費用準備資金(改正後も現行の制度として残っています)は、規則31条により、年度末の資金の額(または積立限度額)から前年度末の額を引いた増加分を、その事業等の区分に応じて費用額に算入します。収益事業等や法人運営のための積立は、分母側(BまたはC)を増やす方向に働きます。
計算の例
| 項目 | 公益実施費用額 A | 収益等実施費用額 B | 管理運営費用額 C | 根拠 |
|---|---|---|---|---|
| 損益計算書の事業費・管理費 | 4,000 | 2,500 | 1,500 | 規則24条2項 |
| 引当金の取崩額を控除 | −100 | — | — | 規則25条 |
| 自己所有地の賃料相当額(公益目的事業に使用) | +300 | — | — | 規則27条 |
| ボランティアの役務の必要対価 | +600 | — | — | 規則29条1項 |
| 公益充実資金の積立額の算入 | +200 | — | — | 規則30条1項 |
| 合計 | 5,000 | 2,500 | 1,500 |
調整前は 4,000÷(4,000+2,500+1,500)=50.0%で基準ぎりぎりですが、調整後は 5,000÷(5,000+2,500+1,500)=55.6%になります。数字は制度を示すための仮のものです。実際の計算は規則46条1項5号の「公益目的事業比率に関する数値及びその計算の明細」の様式に沿って行います。
50%を割るとどうなるか ― 認定基準であり遵守事項でもある
公益目的事業比率は二重の位置づけです。認定法5条8号は、公益認定の基準として「15条の公益目的事業比率が50%以上となると見込まれるものであること」を求めています。そして15条自体が認定後の遵守事項(第二節)です。
| 場面 | 帰結 | 条文 |
|---|---|---|
| 認定申請時の見込みが50%未満 | 認定基準に適合せず、認定されない | 5条8号 |
| 認定後、実績が50%未満 | 第二節(14〜26条)の不遵守=公益認定を取り消すことができる事由。まず勧告(内容は公表)→命令 | 29条2項2号・28条 |
| 5条8号の基準に適合しなくなった | 同じく取消し得る事由 | 29条2項1号 |
単年度で割った場合に直ちに取消しになるわけではなく、行政庁はまず期限を定めた勧告を行い、その内容を公表します。勧告への対応は立入検査と勧告・命令の記事で整理しています。
提出と公表 ― 数値は毎年出す
公益目的事業比率に関する数値と計算の明細は、事業年度経過後3か月以内に作成・備え置き、行政庁へ提出する書類の一つです(認定法21条2項4号・22条1項・規則46条1項5号)。提出した書類は何人も閲覧でき(21条5項)、行政庁も公表します(22条2項)。規則27条〜29条の算入を使う法人は、算定根拠を明細に書けるようにしておく必要があります。
本記事は、制度を一般的に説明したものです。個別の事案についての判断や手続きの代行を行うものではありません。
- 税務の取扱いは、収入の性質や事業の実態によって結論が変わります。具体的な判定や税額の計算については、税理士または所轄の税務署へご確認ください。
比率を正しく出すためのチェックリスト
- 損益計算書が公益目的事業会計・収益事業等会計・法人会計に区分されている(認定法19条・規則24条2項)
- 引当金の取崩額を、対応する事業等の費用額から控除した(規則25条)
- 財産の譲渡損・評価損・運用損を費用額に入れていない。販売用の商品・製品の原価は入れた(規則26条)
- 自己所有地を公益目的事業に使っているなら、賃料相当額の算入を検討し、使うなら毎年継続する(規則27条)
- 無利子・低利の貸付けがあるなら、利子相当額の算入を検討する(規則28条)
- ボランティアなど無償の役務を受けているなら、必要対価の額を算入し、事実と算定根拠を10年保存する(規則29条)
- 公益充実資金の積立額の算入と取崩額の控除を反映した(規則30条)
- A÷(A+B+C)が50%以上になっているかを確認し、数値と計算の明細を規則46条の書類にまとめた
よくある質問
A. 公益実施費用額を、公益実施費用額・収益等実施費用額・管理運営費用額の合計で割った割合で、毎事業年度50%以上でなければなりません(認定法15条)。各費用額は損益計算書の公益目的事業の事業費・収益事業等の事業費・管理費が出発点です(規則24条)。
A. 変わっていません。中期的収支均衡や使途不特定財産額の基準は改正されましたが、公益目的事業比率50%以上は認定法15条に据え置かれています。
A. 入れることができます。無償で役務の提供を受けたときは、同等の役務を受けるために必要な対価の額を、その事業等の区分に応じて費用額に算入できます(規則29条1項)。正当な理由がない限り毎年継続して適用し、提供の事実と算定根拠を10年間保存します(同3項・4項)。
A. 通常の賃料の額から実際に負担した費用を引いた額を、事業等の区分に応じて費用額に算入できます(規則27条1項)。適用したら正当な理由がない限り毎年続けます(同2項)。
A. なりません。財産の評価換えによる減額、財産の譲渡損、財産の運用による損失は費用額に算入しません(規則26条1項・3項・4項)。販売目的の商品・製品の原価は算入します(同2項)。
A. 影響します。積立額に「将来の特定の活動の所要額の合計÷積立限度額」を掛けた額を公益実施費用額に算入し、取崩額(公益目的保有財産の取得・改良に充てた分を除く)は控除します(規則30条)。
A. 直ちにではありません。15条の不遵守は認定法29条2項2号の「取り消すことができる」事由で、行政庁はまず期限を定めた勧告を行い、その内容を公表します(28条1項・2項)。正当な理由なく命令に従わなければ必要的取消しです(29条1項3号)。
A. 事業年度経過後3か月以内に作成・提出する書類のうち、公益目的事業比率に関する数値と計算の明細を記載した書類です(認定法21条2項4号・22条1項・規則46条1項5号)。
公益目的事業比率は認定基準21号のうちの1つです。基準全体を4つの束で整理した記事はこちらです。
📖 参考にした公的機関の情報


