公益法人の使途不特定財産と予備財産|上限は過去5年の事業費の平均・予備財産は理由と限度額の公表が条件(2025年4月〜)

公益法人
公益財団法人の理事です。寄付で預金が積み上がってきました。
「遊休財産は持ちすぎてはいけない」と聞いていましたが、2025年の改正で制度が変わったのですか。災害に備えて現金を残しておくのは駄目なのでしょうか。

2025年4月1日施行の改正で、財産の保有制限は名前も中身も変わりました。改正前の「遊休財産額の保有の制限」は廃止され、使途不特定財産額の保有の制限(認定法16条)になっています。上限の測り方が「その年度の事業費」から過去5年の事業費の平均に変わり、災害などに備えて持つ公益目的事業継続予備財産を上限の外に置けるようになりました。

根拠は公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律(以下「認定法」)16条と、計算方法を定めた認定法施行規則(内閣府令)33条〜37条です。この記事では、使途不特定財産額の計算式、上限の求め方、予備財産の要件と公表義務を条文で整理します。

使途不特定財産額とは(認定法16条2項)

認定法16条2項の定義はこうです。公益法人による財産の使用・管理の状況や財産の性質からみて、公益目的事業、または公益目的事業を行うために必要な収益事業等その他の業務・活動のために現に使用されておらず、かつ、引き続きこれらのために使用されることが見込まれない財産(内閣府令で定めるもの)の価額の合計額です。

簡単に言えば「使い道が決まっていない財産」の合計です。公益目的事業に使っている建物、公益充実資金として積み立てている預金、寄附者が使途を指定した寄附金などは、使い道が決まっているので除かれます。定義から除かれるもう一つが、次章の公益目的事業継続予備財産です。

改正前(2025年3月まで・廃止) 改正後(2025年4月から)
名称 遊休財産額の保有の制限 使途不特定財産額の保有の制限
上限の基礎 その事業年度の公益目的事業の事業費相当額 過去5年以内の各事業年度の公益目的事業費の1事業年度当たり平均額(規則34条)
災害等への備え 別枠なし 公益目的事業継続予備財産を使途不特定財産額から除外(16条2項・規則35条)
公表 予備財産を保有する場合は限度額・算定根拠・保有理由を毎年公表(16条3項・規則37条)

計算式(規則36条)― 資産から4つを引く

各事業年度の使途不特定財産額は、施行規則36条2項により、その事業年度の資産の額から次の合計を控除した額です。

控除するもの 中身 根拠
① 負債の額 基金(一般法人法131条)を含む 規則36条2項1号
② 控除対象財産の帳簿価額の合計 − 対応負債の額 下の表の6種類の財産 同2号・3項
③ 公益目的事業継続予備財産の額 規則35条の要件を満たすもの 同3号

②の「控除対象財産」は施行規則36条3項が6つ挙げています。ここに何が入るかで使途不特定財産額は大きく変わります。

控除対象財産 どんな財産か
1号 継続して公益目的事業の用に供する公益目的事業財産(認定法18条) 事業に使う建物・設備・基本財産として運用する有価証券など
2号 公益目的事業を行うために必要な収益事業等その他の業務・活動の用に継続して使用する財産(法人活動保有財産 収益事業の店舗・法人本部の事務所など
3号 公益充実資金 公益目的事業の将来の活動・財産取得のための積立(規則23条)
4号 法人活動保有財産の取得・改良のために保有する資金(資産取得資金・現行の制度) 取得に要する支出の最低額に達するまでの資金
5号 特定費用準備資金(積立限度額に達するまで・現行の制度) 公益目的事業以外の将来の特定の活動のための資金(規則31条・改正後も存続)
6号 寄附等で受け入れた財産で、交付者が定めた使途に充てるために保有する資金(指定寄附資金 使途指定の寄附金。果実は除く
POINT 「使い道が決まっている」と主張するには、それぞれの資金に規則の要件(積立限度額・公表・区分表示など)を満たす必要があります。帳簿上「預金」のままでは控除対象になりません。控除対象財産に分類できない財産は、すべて使途不特定財産額に数えられるのが基本です。

上限=過去5年の公益目的事業費の平均(規則34条)

認定法16条1項は、使途不特定財産額が「翌事業年度においても公益目的事業を行うために必要な額」として、過去の事業年度の公益目的事業費を基礎に内閣府令で算定した額を超えてはならないと定めています。その算定方法が施行規則34条です。

基準額の計算 内容
対象期間 当該事業年度の開始日前5年以内に開始した各事業年度
足すもの 損益計算書に計上すべき公益目的事業に係る事業費の額(1号)+規則26条2項・30条1項により公益実施費用額に算入した額(2号・3号)
引くもの 引当金の取崩額(4号)・規則26条により公益実施費用額に算入しない額(5号)・公益充実資金の取崩額(30条2項・6号)
期間が1年でない年度 その年度の額を月数で割って12を掛ける
基準額 上の額の1事業年度当たりの平均額

ただし書があります。当該事業年度または前事業年度の額を基準額とする合理的な理由がある場合は、平均ではなくその年度の額を使えます(規則34条1項ただし書)。事業を大きく拡大した直後など、5年平均では実態より小さくなる場合の救済です。この場合は、定期提出書類(規則46条1項6号)にその合理的な理由を記載します(34条2項)。

POINT 上限が「5年平均」になったことで、単年度の事業費の増減で上限が揺れなくなりました。一方で、事業を縮小し続けている法人は上限が下がり続けます。縮小局面では使途不特定財産額の管理がむしろ厳しくなります。

公益目的事業継続予備財産(16条2項・規則35条)― 災害等に備える別枠

改正で新設された枠です。災害その他の予見し難い事由が発生した場合においても、公益目的事業を継続的に行うために必要な限度において保有する必要があるものとして内閣府令の要件に該当する公益目的事業財産は、使途不特定財産額から除かれます(16条2項かっこ書き)。

規則35条の要件 内容
1号 必要性 事業内容・資産と収支の状況・想定される事態・平時の取組などに鑑み、事由が発生しても公益目的事業を継続するための資金を保有する必要性があること
2号 限度額 その必要性に基づき、継続のために必要な資金の限度額が算定されていること
3号 上限 予備財産の合計額が、2号の限度額と、公益目的事業に係る経理の資産の額から負債等を控除した額のいずれか小さい方を超えないこと

そして公表義務があります。認定法16条3項により、予備財産を保有する公益法人は毎事業年度の末日において、限度額とその算定根拠(規則37条1項)と保有する理由(規則35条の要件に適合することの説明・同2項)を、インターネットその他の適切な方法で公表しなければなりません(同3項)。定期提出書類にも同じ内容を記載します(規則46条1項8号)。

POINT 「災害に備えて現金を残す」は、改正後は正面から認められた行為です。ただし、必要性の説明・限度額の算定・毎年の公表という3点セットが条件です。説明なしに積んである現金は、予備財産ではなく使途不特定財産に数えられます。

公益充実資金・資産取得資金・特定費用準備資金の使い分け

控除対象財産のうち「積み立てる資金」は3種類あります。改正で整理された関係を押さえておきます。

資金 目的 根拠 改正との関係
公益充実資金 公益目的事業に係る将来の特定の活動の実施、または公益目的保有財産の取得・改良 規則23条 改正で創設。公益目的事業のための積立を一本化
資産取得資金 法人活動保有財産(収益事業等・法人運営に使う財産)の取得・改良 規則36条3項4号・4項 改正後も存続
特定費用準備資金 公益目的事業以外の将来の特定の活動の実施のための費用 規則31条 改正後も存続

改正で変わったのは「公益目的事業のための積立」の部分です。公益目的事業の将来の活動や財産取得のための積立は公益充実資金に一本化され、収益事業等や法人運営のための資産取得資金・特定費用準備資金は別の資金として残っています。いずれも積立限度額・区分表示・公表などの要件を満たして初めて控除対象財産になります。

計算の例 ― 何が使途不特定財産に残るか

貸借対照表の項目 金額(仮) 扱い
資産合計 5,000 出発点
負債合計(基金を含む) −800 規則36条2項1号
公益目的事業に使う建物・備品(公益目的事業財産) −2,000 控除対象財産1号
公益充実資金(要件充足・公表済) −600 控除対象財産3号
指定寄附資金(使途指定の寄附) −300 控除対象財産6号
公益目的事業継続予備財産(限度額・理由を公表) −500 規則36条2項3号
使途不特定財産額 800 これが上限(過去5年の公益目的事業費の平均)以下か

この例では、過去5年の公益目的事業費の平均が800以上なら基準を満たし、それより小さければ超過です。超過しそうなときの選択肢は、公益目的事業への支出を増やす、公益充実資金として積み立てる(要件と公表が要る)、公益目的保有財産を取得する、のいずれかです。数字は制度を示すための仮のものです。

提出・公表と、超過したときの帰結

使途不特定財産額に関する数値と計算の明細は、事業年度経過後3か月以内に作成して行政庁へ提出する書類に含まれます(認定法21条2項4号・22条・規則46条1項6号)。予備財産を持つ法人は、その限度額・算定根拠・保有理由も提出します(同8号)。提出書類は何人も閲覧でき、行政庁も公表します(21条5項・22条2項)。

16条は認定法第二節(14〜26条)の規定なので、上限を超えていることは29条2項2号の公益認定の取消し事由です。公益認定の基準としても、5条9号が「使途不特定財産額が16条1項の制限を超えないと見込まれること」を求めています。実務上は、行政庁がまず期限を定めて勧告し(28条1項)、その内容を公表します。

この記事の位置づけ

本記事は、制度を一般的に説明したものです。個別の事案についての判断や手続きの代行を行うものではありません。

  • 税務の取扱いは、収入の性質や事業の実態によって結論が変わります。具体的な判定や税額の計算については、税理士または所轄の税務署へご確認ください。

年度末のチェックリスト

使途不特定財産額を確定する前に

  • 公益目的事業財産・法人活動保有財産を、帳簿上で「継続して使用する財産」として区分できている(規則36条3項1号・2号)
  • 公益充実資金は規則23条の要件(限度額・公表・特別の手続・区分表示)を満たしている
  • 現行の資産取得資金・特定費用準備資金(改正後も存続)は積立限度額の範囲内で、備置き・閲覧の措置をとっている(規則31条・36条4項)
  • 指定寄附資金は募集の期間・受入額・使途などを備え置いている(規則36条5項)
  • 予備財産を持つなら、必要性・限度額・算定根拠・保有理由を文書化し、公表した(規則35条・37条)
  • 過去5年の公益目的事業費から基準額(上限)を計算した。ただし書を使うなら合理的な理由を提出書類に書いた(規則34条)
  • 使途不特定財産額≦基準額を確認し、数値と計算の明細を規則46条の書類にまとめた

よくある質問

Q. 使途不特定財産額とは何ですか?

A. 公益目的事業や、そのために必要な収益事業等・業務・活動のために現に使用されておらず、今後も使用が見込まれない財産の価額の合計です(認定法16条2項)。資産の額から負債・控除対象財産・公益目的事業継続予備財産を差し引いて計算します(規則36条2項)。

Q. 上限はどう決まりますか?

A. 当該事業年度の開始日前5年以内に開始した各事業年度の公益目的事業費(規則で定める調整後)の1事業年度当たり平均額です(規則34条1項)。合理的な理由があれば当該事業年度または前事業年度の額を基準額にでき、その理由を提出書類に記載します(同ただし書・2項)。

Q. 改正前の遊休財産とは何が違いますか?

A. 改正で廃止された遊休財産額の保有の制限は、上限がその事業年度の事業費相当額でした。使途不特定財産額の保有の制限では上限が過去5年の平均になり、災害等に備える公益目的事業継続予備財産を別枠で保有できるようになりました。

Q. 災害に備えて現金を持っておくことはできますか?

A. できます。公益目的事業継続予備財産として、必要性があり、限度額が算定され、その限度額と公益目的事業に係る経理の純資産相当額のいずれか小さい方を超えない範囲で保有できます(規則35条)。保有する場合は毎年度末に限度額・算定根拠・保有理由を公表します(認定法16条3項・規則37条)。

Q. 控除対象財産には何が入りますか?

A. 継続して公益目的事業に使う公益目的事業財産、法人活動保有財産、公益充実資金、資産取得資金、特定費用準備資金、指定寄附資金の6つです(規則36条3項)。それぞれ規則の要件を満たしている必要があります。

Q. 特定費用準備資金や資産取得資金は無くなったのですか?

A. 無くなっていません。公益目的事業のための積立が公益充実資金に一本化されただけで、公益目的事業以外の将来の活動のための特定費用準備資金(規則31条)と、法人活動保有財産のための資産取得資金(規則36条3項4号)は改正後も控除対象財産として残っています。

Q. 上限を超えるとどうなりますか?

A. 認定法16条は第二節の規定なので、29条2項2号の公益認定の取消し事由に当たります。行政庁は期限を定めて勧告し、内容を公表します(28条1項・2項)。正当な理由なく命令に従わなければ必要的取消しです。

Q. 数値はどこに書いて提出しますか?

A. 事業年度経過後3か月以内に作成・提出する書類のうち、使途不特定財産額に関する数値と計算の明細を記載した書類(規則46条1項6号)と、予備財産の限度額・算定根拠・保有理由を記載した書類(同8号)です。

あわせて読みたい

使途不特定財産の上限計算に使う「公益目的事業費」と同じ土台で、公益目的事業比率50%も判定されます。計算式と算入できる費用はこちら。

あわせて読みたい

予備財産は限度額・算定根拠・保有理由の自主公表が条件です(16条3項)。公表と閲覧の全体像はこちら。

あわせて読みたい

使途不特定財産の制限は、公益目的事業財産(18条)の考え方と一体です。公益法人とは何かからの全体像はこちら。

【免責事項】本記事は一般的な情報提供を目的として作成したものであり、正確性・最新性に配慮していますが、内容の完全性・正確性を保証するものではありません。法令・制度・税制は改正される場合があり、個別の事情により取り扱いが異なることもあります。本記事の情報を利用して行われた一切の行為およびその結果について、当サイトおよび筆者は責任を負いかねます。実際のお手続きや判断にあたっては、必ず公的機関の最新情報をご確認のうえ、必要に応じて専門家にご相談ください。