NPO法人の理事長交代|登記2週間の期限と引き継ぎの中身

代表を交代する。手続きだけでなく、引き継ぎの中身まで整理します。

NPO法人の理事長を交代するときは、2週間以内の変更登記が必要です。

あわせて、所轄庁への届出も出します。

手続きより難しいのが、実務の引き継ぎです。

この記事では、交代の段取りを順番に解説します。

POINT 結論:代表権のある理事が変われば、変更の日から2週間以内に登記が必要です。登記を怠ると、代表者個人に過料が科されることがあります。手続きは決まっていますが、通帳や契約の名義変更まで含めると、数か月がかりの作業になります。

交代が決まるまで

理事長の交代は、突然決めるものではありません。

任期の満了に合わせるのが、いちばん自然です。

任期は2年以内なので、改選の年が交代の機会になります。

次の候補には、数か月前から打診しておきましょう。

引き受ける側にも、心の準備が要ります。

善良な管理者としての注意義務を負うことも、説明します。

登記されて、氏名と住所が公開されることも伝えます。

任期の途中で交代する場合は、事情の説明が必要です。

会員に不安を与えない伝え方を、考えておきましょう。

選任の手続き

理事長をどう選ぶかは、定款で決まっています。

理事の互選とする定款が、多く見られます。

この場合、理事会で決めます。

総会で選任すると定めている団体もあります。

まず、自分たちの定款を確認してください。

定款と違う方法で選ぶと、選任自体が無効になり得ます。

新任の理事から理事長を出す場合は、先に理事を選任します。

総会で理事を選び、その後の理事会で理事長を互選する流れです。

同じ日に続けて開くことが、多くあります。

やること 期限 提出先
理事長の選任 定款の定めによる 理事会または総会
就任承諾書の取得 選任のとき 法人で保管
代表者の変更登記 変更の日から2週間以内 法務局
役員変更届 すみやかに 所轄庁
登記事項証明書の取得 登記完了後 法務局
金融機関の名義変更 登記完了後 取引銀行

就任承諾書を必ず取る

選任されただけでは、就任は確定しません。

本人が承諾して、はじめて就任します。

そのため、就任承諾書を書面で取ります。

登記の添付書類にもなるため、必ず必要です。

押印の要否は、法務局の取扱いによります。

本人確認に関する書類が求められる場合もあります。

事前に、法務局のウェブサイトで確認しておきましょう。

理事全員分をまとめて取っておくと、後が楽です。

再任の場合も、あらためて承諾を得ます。

2週間以内の変更登記

代表権のある理事が変わったら、変更登記が必要です。

期限は、変更の日から2週間以内です。

この期限は短いので、準備を先に進めておきます。

議事録、就任承諾書、登記申請書がそろえば申請できます。

登録免許税は、NPO法人の場合はかかりません。

登記を怠ると、代表者個人に過料が科されることがあります。

法人ではなく、個人の負担になる点が重要です。

登記申請の手続きそのものは、司法書士の業務範囲です。

自分たちで行うか依頼するかは、早めに決めましょう。

所轄庁への役員変更届

登記とは別に、所轄庁へ届出を出します。

役員変更届という様式が、用意されています。

変更後の役員名簿を、添えて提出します。

就任承諾書や、新任の役員の宣誓書が必要な場合もあります。

所轄庁によって、求められる書類が違います。

手引きを確認するか、電話で聞くのが確実です。

登記と届出は、別々の手続きです。

片方だけで終わったつもりになる失敗が、よくあります。

両方を予定表に書き込んでおきましょう。

理事長交代でやること

  • 定款で選任の方法を確認する
  • 候補者へ数か月前から打診する
  • 理事会または総会で選任する
  • 就任承諾書を書面で取る
  • 議事録を作る
  • 2週間以内に変更登記を申請する
  • 所轄庁へ役員変更届を出す
  • 金融機関の名義を変更する
  • 契約先へ代表者の変更を連絡する
  • 実印と銀行印の管理を引き継ぐ
  • 書類の保管場所と関係先の一覧を渡す
  • 進行中の案件の状況を新任者に共有する

銀行口座の名義変更

登記が終わったら、金融機関の手続きに移ります。

法人口座の代表者名義を、変更します。

登記事項証明書と、新旧の代表者の書類が必要です。

届出印を変える場合は、あわせて手続きします。

金融機関によって、必要な書類が違います。

事前に電話で確認してから、窓口へ行きましょう。

この手続きが終わるまで、引き出しに支障が出ることがあります。

大きな支払いの予定があれば、時期をずらします。

インターネットバンキングの権限も、忘れずに移します。

契約先への連絡

代表者が変わったことを、契約先へ知らせます。

事務所の賃貸借契約が、その代表です。

委託や補助を受けている場合は、行政の担当課にも連絡します。

保険の契約者名義も、確認が必要です。

公共料金や通信の契約も、名義が代表者個人になっていないか見ます。

個人名義のままだと、あとで面倒が生じます。

取引先への挨拶は、書面で出すのが丁寧です。

前任者と新任者が、連名で出す形もあります。

関係が切れないよう、引き継ぎの挨拶回りをしましょう。

実務の引き継ぎが本題

手続きより難しいのが、実務の引き継ぎです。

前任者が長く務めていた団体ほど、情報が個人に溜まっています。

第一に、書類の保管場所を引き継ぎます。

定款、規程、議事録、契約書、過去の提出書類です。

第二に、年間の予定表を渡します。

毎年いつ何をするかが、1枚で伝わります。

第三に、関係先の一覧を作ります。

所轄庁、法務局、金融機関、行政の担当課、主な取引先です。

第四に、パスワードや鍵の管理を引き継ぎます。

第五に、進行中の案件の状況を共有します。

前任者との関係

交代したあとの関係も、決めておきましょう。

前任者が理事として残るのか、退任するのかです。

残る場合は、役割をはっきりさせます。

肩書きだけ残ると、指揮の系統が二重になります。

新任の理事長が動きにくくなるためです。

完全に退く場合は、相談の窓口だけ残す形もあります。

いずれにせよ、団体の内外に説明しましょう。

会員が誰に連絡すればよいか、迷わない形が理想です。

交代は、団体を次に続けるための機会です。

任期途中の交代

任期の途中で交代する場合もあります。

辞任、死亡、病気などが理由です。

この場合も、手続きは同じです。

辞任のときは、辞任届を書面で受け取ります。

後任は、定款の定めに従って選びます。

理事の定数を割る場合は、理事の選任も必要です。

総会を開かなければならないこともあります。

急なことが多いため、平時に段取りを決めておきましょう。

代表者が動けなくなったときの備えも、考えておく価値があります。

よくある失敗

第一が、登記を忘れる場合です。

2週間という期限は、すぐに過ぎます。

第二が、所轄庁への届出を忘れる場合です。

登記だけで終わったつもりになりがちです。

第三が、就任承諾書を取っていない場合です。

登記の段階で、そろっていないことに気づきます。

第四が、定款と違う方法で選んだ場合です。

選任からやり直しになります。

第五が、銀行の手続きを後回しにする場合です。

支払いが止まって、はじめて困ることになります。

後任が見つからないとき

交代したいのに、後任がいない団体は多くあります。

この状態を放っておくと、団体が動かなくなります。

第一に、役割を分けることを考えましょう。

理事長が一人で担っている仕事を、複数人で分担します。

負担が減れば、引き受けやすくなります。

第二に、事務局を整えることです。

日常の実務が事務局で回れば、理事長の負担は軽くなります。

第三に、副理事長を置いて、段階的に慣れてもらう方法もあります。

第四に、外部から迎えることも選択肢です。

会員以外を理事にできるかは、定款で確認してください。

交代を機に見直すこと

代表が変わる時期は、見直しの好機です。

第一に、定款が実態に合っているかを確認します。

設立から一度も見直していない団体が、少なくありません。

第二に、規程を点検します。

使われていない規程は、廃止してもかまいません。

第三に、口座や契約の名義を整理します。

個人名義のまま残っているものが、見つかることがあります。

第四に、書類の保管場所をまとめます。

第五に、年間の予定表を作り直します。

次の交代のときに、同じ苦労をしなくて済みます。

印鑑の引き継ぎ

見落とされやすいのが、印鑑の管理です。

法人には、法務局に届け出た印鑑があります。

いわゆる法人実印で、登記や重要な契約に使います。

代表者が変われば、届出印の変更も検討します。

同じ印鑑を使い続けることも、可能です。

ただし、保管の責任は新任の代表者に移ります。

銀行印と実印を、同じにしないほうが安全です。

角印は、日常の書類に使います。

誰がどの印鑑を保管するかを、決めて記録しておきましょう。

押印の記録を残す帳簿を作る団体もあります。

会員への伝え方

交代は、会員にとっても大きな出来事です。

総会の場で、あらためて紹介しましょう。

前任者からは、これまでの感謝を伝えます。

新任者からは、これからの方針を話します。

会報やウェブサイトでも、知らせます。

交代の理由を、簡潔に説明しておくと安心されます。

任期の満了によるものなら、そう伝えれば十分です。

説明がないと、内輪もめを疑われることがあります。

外部の支援者にも、同じ内容を伝えましょう。

理事長の交代のまとめ

選任の方法は、定款で決まっています。

理事の互選とする団体が、多くを占めます。

就任承諾書を書面で取り、議事録を作ります。

代表権のある理事が変われば、2週間以内に変更登記が必要です。

所轄庁への役員変更届も、別に必要です。

登記のあとは、銀行の名義変更と契約先への連絡に進みます。

手続きより、書類と関係先の引き継ぎに時間がかかります。

登記申請の手続きそのものは、司法書士の業務範囲です。

印鑑の保管を誰が担うかも、記録して引き継いでください。

会員と外部の支援者には、交代の理由を簡潔に説明しましょう。

後任が見つからないなら、役割を分けて負担を軽くするのが先です。

よくある質問

Q. 理事長は誰が決める?

A. 定款の定めによります。理事の互選とする団体が多く、その場合は理事会で決めます。総会で選任すると定めている団体もあるため、まず定款を確認してください。定款と違う方法で選ぶと、選任自体が無効になり得ます。

Q. 登記の期限は?

A. 変更の日から2週間以内です。怠ると代表者個人に過料が科されることがあります。議事録と就任承諾書を先に準備しておきましょう。

Q. 所轄庁への届出も必要?

A. 必要です。登記とは別の手続きで、役員変更届に変更後の役員名簿を添えて提出します。登記だけで終わったつもりになる失敗がよくあります。

Q. 就任承諾書は必ず要る?

A. 要ります。選任されただけでは就任は確定せず、本人の承諾が必要です。登記の添付書類にもなります。再任の場合もあらためて取ってください。

Q. 任期の途中でも交代できる?

A. できます。辞任届を書面で受け取り、定款の定めに従って後任を選びます。理事の定数を割る場合は、理事の選任も必要になります。

Q. 銀行の手続きはいつ?

A. 登記が完了してからです。登記事項証明書が必要になります。手続きが終わるまで引き出しに支障が出ることがあるため、大きな支払いは時期をずらしてください。


この記事の位置づけ

本記事は、制度を一般的に説明したものです。個別の事案についての判断や手続きの代行を行うものではありません。

  • 設立登記など登記申請の手続きは司法書士が取り扱う業務です。ご自身で法務局へ申請することもできます。

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