NPO法人が契約するときの注意|名義・決裁基準・確認する項目

一般社団法人法
法人になると、契約は団体の名前で結びます。任意団体のころとは責任の重さが違います。

法人化して変わることのひとつが、契約の名義です。

代表者個人ではなく、法人が当事者になります。

その代わり、決裁の手順や記録の残し方が必要になります。

この記事では、NPO法人が契約するときの注意点を解説します。

POINT 結論:契約は「特定非営利活動法人○○ 理事長△△」の名義で結びます。代表権のない理事が単独で署名すると、効力が問題になることがあります。金額や種類で決裁の基準を規程に定め、契約書は必ず保管しましょう。

法人名義で契約する意味

任意団体には、法人格がありません。

そのため、契約は代表者個人の名義で結ぶことになります。

責任も、個人が負う形になりがちです。

代表者が交代すると、契約の引き継ぎで揉めることもあります。

法人になれば、契約の当事者は法人そのものです。

代表者が交代しても、契約はそのまま続きます。

個人の財産と、法人の財産も切り離されます。

この安定性が、法人化の大きな価値です。

ただし、その前提として名義を正しく書く必要があります。

契約書に書く名義

契約書の当事者欄には、法人名と代表者名を書きます。

特定非営利活動法人○○、理事長△△という形です。

住所は、登記された事務所の所在地を書きます。

個人名だけで署名すると、法人の契約になりません。

任意団体のころの習慣で、個人名で結んでしまう例があります。

法人化したら、必ず切り替えましょう。

押印は、法人の実印か契約用の角印を使います。

どちらを使うかは、規程で決めておくと運用が安定します。

重要な契約では、実印と印鑑証明書を求められることもあります。

誰が署名できるのか

契約を結べるのは、代表権を持つ理事です。

定款で代表権を制限していれば、理事長だけになります。

代表権のない理事が単独で署名すると、効力が問題になります。

相手方が善意であれば有効とされる場合もありますが、争いのもとです。

担当理事が交渉を進め、最後の署名は理事長が行う形にしましょう。

事務局長が署名できるかは、権限の委任があるかどうかで決まります。

委任するなら、その範囲を規程で明確にしておきます。

金額の上限を設ける形が、実務では分かりやすくなります。

誰が何を結べるのかを、団体の中で共有しておきましょう。

契約の種類 決裁の目安 注意点
事務所の賃貸借 理事会の決議 長期の固定費になる
リース・分割払い 理事会の決議 中途解約の条件を確認
委託事業の受託 理事会の決議 仕様と人件費の見合い
講師や外部への発注 規程の基準による 謝金の源泉徴収に注意
備品の購入 金額で基準を定める 少額は事務局で判断
保険 理事会または事務局 補償の範囲を確認
共催・協働の覚書 理事会の決議 役割と費用負担を明記

決裁の基準を決める

契約のたびに理事会を開くのは、現実的ではありません。

金額と種類で、決裁の基準を決めておきましょう。

たとえば、10万円以下は事務局長、それを超えたら理事長という形です。

継続的な支出をともなう契約は、金額にかかわらず理事会とします。

事務所の賃貸借やリースが、これに当たります。

基準を規程に書いておけば、判断に迷いません。

担当者が変わっても、同じ運用ができます。

基準を超える契約を結ぶときは、理事会の議事録に残します。

この記録が、後で経緯を説明する材料になります。

契約書を必ず作る

口約束で済ませると、後で必ず問題になります。

金額の認識が違う、納期が守られないといったことが起こります。

相手が知り合いであっても、書面にしましょう。

書面にすることは、相手を疑うことではありません。

お互いの認識を確認する作業だと考えてください。

簡単な内容なら、発注書と請書のやり取りでも構いません。

メールでの合意でも、記録としては残ります。

ただし、金額が大きい場合や期間が長い場合は契約書を作ります。

相手が用意した契約書は、内容を必ず読んでから署名しましょう。

契約書で確認すること

契約書を読むときに、見るべき点があります。

第一に、何をしてもらうのかという業務の範囲です。

曖昧だと、後で追加の要求を受けることになります。

第二に、金額と支払いの時期です。

前払いか後払いかで、資金繰りが変わります。

第三に、契約の期間と、更新の条件です。

自動更新の定めがあるかを確認しましょう。

第四に、中途解約の条件と、違約金の有無です。

第五に、責任の範囲です。

損害が生じたときに、どちらがどこまで負うのかを見ます。

契約前に確認すること

  • 業務の範囲が具体的に書かれているか
  • 金額と支払いの時期
  • 契約の期間と、自動更新の有無
  • 中途解約の条件と違約金
  • 責任の範囲と、損害が生じたときの扱い
  • 個人情報を渡す場合の取扱いの定め
  • 契約を結ぶ権限が自分にあるか
  • 決裁の基準を満たしているか
  • 予算に計上されているか

委託事業を受けるとき

行政から事業を委託されるのは、有力な財源です。

ただし、契約の内容をよく確認する必要があります。

仕様書に書かれた業務の範囲を、正確に把握しましょう。

人員がどれだけ必要かを見積もり、金額と見合うかを判断します。

安く引き受けると、団体の体力を削ることになります。

受託できないなら、断る判断も必要です。

再委託が禁止されている場合もあるので、確認しておきましょう。

実績報告の様式と期限も、契約の段階で押さえます。

年度をまたぐ場合は、支払いの時期にも注意が必要です。

入金が年度末になるなら、それまでの資金を用意しなければなりません。

個人情報を渡すとき

業務を外部に委託するとき、個人情報を渡すことがあります。

会員名簿を印刷会社に渡して、会報を発送してもらう場合などです。

これは第三者提供ではなく、委託にあたります。

ただし、委託先を監督する責任は団体に残ります。

契約書に、個人情報の取扱いに関する条項を入れましょう。

目的外の利用の禁止、再委託の制限、返却や削除の義務などです。

安いという理由だけで委託先を選ばないことも大切です。

情報が漏れたときの責任は、最終的に団体が負います。

委託の範囲を、必要最小限にとどめる工夫もしましょう。

契約書の保管

結んだ契約書は、必ず保管します。

事務所に、契約書をまとめるファイルを1つ用意しましょう。

種類ごとに分けると、探すときに楽になります。

契約の期間が終わっても、しばらくは保管しておきます。

後から問い合わせを受けることがあるためです。

電子データでも保存しておくと、紛失に備えられます。

自動更新の契約は、更新の時期を一覧にしておきましょう。

不要になった契約を、解約し忘れる例は多くあります。

毎年の予算を立てるときに、契約の一覧を見直す習慣をつけてください。

契約でよくあるつまずき

第一に、代表者個人の名義で結んでしまうケースです。

法人の契約にならず、責任も個人に残ります。

第二に、代表権のない理事が単独で署名するケースです。

第三に、口約束で進めて金額の認識がずれるケースです。

第四に、自動更新に気づかず不要な契約が続くケースです。

第五に、中途解約の条件を確認せずに結ぶケースです。

第六に、予算にない支出を契約してしまうケースです。

第七に、契約書を保管しておらず内容が確認できないケースです。

いずれも、規程と手順を整えれば防げます。

相手が用意した契約書を読むとき

委託元や取引先が用意した契約書は、内容を必ず読みます。

定型だから大丈夫だろう、と流すのは危険です。

自分たちに不利な条項が入っていることがあります。

損害賠償の範囲が無制限になっていないかを見ましょう。

契約の解除ができる条件が、一方的でないかも確認します。

納期や成果物の基準が、実現できるものかも見きわめます。

疑問があれば、遠慮せず質問してよいものです。

交渉して修正してもらえることも、少なくありません。

理解しないまま署名すると、後で身動きが取れなくなります。

判断に迷う内容なら、専門家に相談する選択肢もあります。

覚書と協定書

他団体と協働するときは、覚書を交わすことがあります。

共催のイベントや、継続的な連携が典型です。

契約書ほど堅い形でなくても、書面にする意味は大きくなります。

役割の分担を、明確に書きましょう。

誰が何を準備し、誰が当日を仕切るのかを決めます。

費用の負担も、割合や上限を書いておきます。

収入がある場合は、その配分も定めます。

事故が起きたときの責任の所在も、決めておきましょう。

広報での名義の出し方も、意外と揉めやすい部分です。

主催なのか共催なのか協力なのかを、はっきりさせておきます。

会員や利用者との関係も契約

意識されにくいのが、会員や利用者との関係です。

これも広い意味では、契約に近い関係になります。

会費を受け取り、その対価として会報や情報を提供します。

定款や会員規程が、その内容を定める役割を果たします。

利用者にサービスを提供する場合は、利用規約を用意しましょう。

料金、提供する内容、中止の条件などを書きます。

免責の範囲も、あらかじめ示しておくと安心です。

書面がないと、認識の食い違いが起きたときに拠り所がありません。

難しい文章にする必要はなく、平易な言葉で十分です。

申込みのときに渡し、控えを保管しておきましょう。

契約の一覧を作る

契約が増えてくると、全体像が見えなくなります。

一覧表を作って管理しましょう。

相手方、契約の内容、金額、期間、更新の有無を並べます。

担当者の欄も設けておくと、問い合わせ先が明確になります。

年に一度、この一覧を見直す時間を取ります。

不要になった契約が、そのまま続いていることがあります。

使っていないサービスの料金を、何年も払っていた例もあります。

予算を立てるときに、あわせて確認するとよいでしょう。

解約の申出に期限がある契約は、その時期も書いておきます。

この一覧が、固定費を見直すいちばんの材料になります。

担当者が交代するときも、この表を渡せば引き継ぎが早く済みます。

契約書そのものと同じ場所に、まとめて保管しておきましょう。

契約するときの注意のまとめ

法人化したら、契約は法人名義で結びます。

当事者欄には、正式名称と代表者名を書きます。

契約を結べるのは、代表権を持つ理事です。

金額と種類で決裁の基準を決め、規程に書いておきましょう。

口約束を避け、書面で残すことが基本です。

業務の範囲、期間、中途解約、責任の範囲を必ず確認します。

契約書は保管し、自動更新の時期を一覧にしておきましょう。

よくある質問

Q. 契約書の名義はどう書く?

A. 特定非営利活動法人○○、理事長△△という形で、法人名と代表者名を書きます。住所は登記された事務所の所在地です。個人名だけでは法人の契約になりません。

Q. 理事なら誰でも契約できる?

A. できません。契約を結べるのは代表権を持つ理事です。定款で代表権を制限していれば、理事長だけになります。

Q. 事務局長が署名してもいい?

A. 権限の委任があるかどうかで決まります。委任するなら、金額の上限など範囲を規程で明確にしておきましょう。

Q. 口約束でも契約は成立する?

A. 法律上は成立し得ますが、認識のずれが後で問題になります。相手が知り合いでも、書面かメールで記録を残しましょう。

Q. 委託事業を断ってもいい?

A. 構いません。人員と金額が見合わない受託は、団体の体力を削ります。仕様書をよく読み、見積もったうえで判断してください。

Q. 外部に名簿を渡すときは?

A. 委託にあたるため第三者提供の同意は不要ですが、監督する責任は残ります。目的外利用の禁止や再委託の制限を契約書に入れましょう。

📖 参考にした公的機関の情報

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