NPO法人の退会と除名|会費未納への対応と正しい手順

会員をやめる、やめてもらう。どちらも定款の定めが土台になります。

NPO法人の社員は、いつでも退会できるのが原則です。

一方、除名は簡単ではありません。

定款の定めに従い、正しい手順を踏む必要があります。

この記事では、退会と除名の実務を解説します。

POINT 結論:社員は自由に退会でき、これを不当に制限する定款の定めは認められません。除名は正当な理由がある場合に限られ、本人に弁明の機会を与えたうえで総会の議決によります。社員が10人を下回ると、法人の存続に関わる問題になります。

社員と会員は同じではない

まず、言葉の整理から始めます。

NPO法上の社員とは、総会で議決権を持つ人です。

一般には、正会員と呼ばれることが多いものです。

職員という意味の社員では、ありません。

賛助会員は、通常は社員に含めません。

議決権を持たない、支援者としての会員です。

どの会員が社員にあたるかは、定款で決まります。

退会や除名の手続きも、種類によって変わります。

まず自分たちの定款で、区分を確認してください。

区分 議決権 設立要件の10人に数えるか
正会員(社員) あり 数える
賛助会員 通常なし 数えない
学生会員など 定款の定めによる 定款の定めによる
ボランティア登録者 なし 数えない

退会は自由が原則

社員は、いつでも退会できます。

これは、法律の考え方に基づくものです。

結社の自由の裏返しとして、抜ける自由も認められます。

そのため、退会を不当に制限する定めは認められません。

理事会の承認がなければ退会できない、といった定めです。

違約金を課すような定めも、問題になります。

定款には、退会届の提出という手順を書く程度にします。

書面で届け出ることを求めるのは、差し支えありません。

手続きを定めることと、制限することは違います。

退会の手続き

実務としては、退会届を受け取る形が一般的です。

書面で受けておくと、あとの争いを防げます。

受け付けた日を、記録しておきましょう。

会費の扱いも、決めておきます。

納めた会費を返さないと定款に書く団体が、多くあります。

年度の途中で退会した場合の扱いを、明確にします。

名簿から外し、案内の送付も止めます。

個人情報の取扱いも、あわせて確認しましょう。

不要になった情報は、決めた時期に消します。

会費未納をどう扱うか

実務でいちばん多いのが、会費の未納です。

連絡が取れないまま、年数が過ぎる例もあります。

多くの団体は、定款に自動退会の定めを置いています。

会費を一定期間納めないときは退会とみなす、という定めです。

1年分または2年分とする例が、よく見られます。

この定めがあれば、手続きは楽になります。

なければ、その都度の判断が必要になります。

いきなり除名とするのは、重すぎる対応です。

督促の記録を残したうえで、定款の定めに従いましょう。

会費未納への対応の順番

  • 納入期限を過ぎたら、まず案内を送る
  • 数か月後に、再度の督促を出す
  • 電話や電子メールでも連絡を試みる
  • 連絡の記録を残す
  • 定款の自動退会の定めを確認する
  • 該当すれば理事会で確認し、記録する
  • 名簿を整理し、社員数を確認する
  • 10人を下回らないか確かめる
  • 住所や連絡先が変わっていないか確認する

除名は最後の手段

除名は、団体から強制的に外すことです。

本人の意思に反するため、慎重な扱いが求められます。

まず、定款に除名の定めがあるかを確認します。

定めがなければ、除名はできません。

定めがある場合も、正当な理由が必要です。

手続きも、定款のとおりに踏まなければなりません。

争いになれば、裁判で無効とされることもあります。

感情的な対立から進めると、団体の側が不利になります。

除名は、ほかに手段がないときの最後の選択です。

正当な理由とは

除名が認められるのは、正当な理由がある場合です。

定款や規程に違反した場合が、その代表です。

団体の名誉を著しく傷つけた場合も、含まれます。

目的に反する行為を、繰り返した場合も同様です。

一方、意見が合わないという理由は、正当とはいえません。

執行部を批判したから除名する、といった扱いは危険です。

会費の未納は、まず自動退会の定めで処理します。

事実関係を、記録で示せることが前提になります。

印象や噂だけで、進めてはいけません。

弁明の機会を与える

除名で最も重要なのが、弁明の機会です。

本人に、言い分を述べる場を与えなければなりません。

これを欠くと、手続きの不備として無効になり得ます。

総会の議決の前に、書面または口頭で機会を設けます。

通知は、事前に書面で出しましょう。

何が問題とされているかを、具体的に示します。

抽象的な通知では、弁明のしようがありません。

本人が出席しない場合も、機会を与えた記録を残します。

通知の写しと、送付の記録を保管してください。

総会の議決による

除名は、総会の議決によるのが原則です。

NPO法でも、正当な理由と弁明の機会が定められています。

定款で、特別の多数を求めていることもあります。

理事会だけで決めることは、できません。

議案として、あらかじめ通知に記載します。

当日に突然、動議として出すのは適切ではありません。

議事録には、経過を詳しく残します。

弁明の内容と、それに対する議論も記録します。

後日の争いに備えて、証拠を整えておきましょう。

社員が10人を下回るとき

退会や除名で、社員が減ることがあります。

NPO法人は、社員10人以上が要件です。

10人を下回った状態が続くのは、望ましくありません。

設立の要件であると同時に、存続にも関わります。

解散の事由として、社員の欠亡が定められています。

まずは、新しい社員を迎える努力をしましょう。

賛助会員から、正会員になってもらう方法もあります。

活動に関わっている人に、声をかけてみてください。

名簿の管理を、日ごろから正確に行うことが前提です。

もめごとを防ぐ運営

退会や除名の多くは、日ごろの運営から生まれます。

第一に、決定の過程を開くことです。

知らないうちに決まったという不満が、対立を生みます。

第二に、議事録を会員が見られるようにすることです。

第三に、会費の使いみちを説明することです。

第四に、意見を言える場を作ることです。

総会以外にも、意見交換の機会があると違います。

第五に、役員が特定の人に偏らないようにすることです。

風通しの良さが、いちばんの予防になります。

名簿の管理

社員名簿は、法律で備え置きが必要な書類です。

退会や入会があれば、その都度直します。

年に一度しか更新しない状態は、危険です。

総会の招集で、届かない通知が出てきます。

招集の手続きに不備があると、決議が争われます。

住所と連絡先は、変更を届け出てもらう仕組みにします。

定款や規程に、その旨を書いておきましょう。

個人情報を含むため、保管にも注意が要ります。

閲覧の求めには、定款と法令に沿って対応します。

定款に何を書いておくか

退会と除名は、定款の定めが土台になります。

第一に、退会の手続きを書きます。

退会届を提出することとする、といった定めです。

第二に、会費未納による自動退会の定めを置きます。

何年分の未納で退会とみなすかを、具体的に書きます。

第三に、除名の事由と手続きを書きます。

正当な理由と、総会の議決によることを明記します。

第四に、納めた会費を返還しない旨を書きます。

第五に、会員の種類と、それぞれの権利を書きます。

これらがあるだけで、判断に迷う場面が減ります。

退会したい人を引き止めない

退会の申し出があると、引き止めたくなるものです。

しかし、強く引き止めるのは適切ではありません。

退会は自由が原則だからです。

理由を聞くのは、かまいません。

運営への不満が理由なら、貴重な情報になります。

ただし、それを翻意させるための場にはしないことです。

気持ちよく送り出せば、支援者として残ることもあります。

賛助会員として関わり続ける形も、提案できます。

関係を断つ必要は、まったくありません。

入会を断れるか

退会の裏返しとして、入会の可否も問題になります。

NPO法人は、社員の資格に不当な条件を付けられません。

会費を払える人だけ、といった制限は問題になります。

特定の思想や信条を、条件にすることもできません。

一方、活動の目的に賛同することを求めるのは、差し支えありません。

定款に、入会の手続きを書いておきます。

申込書を出し、理事会で確認する形が一般的です。

正当な理由なく断ると、争いになり得ます。

断る場合は、理由を記録に残しましょう。

過去に問題行為があった場合などが、これにあたります。

休会という選択肢

退会か継続かの二択にしない方法もあります。

休会の制度を、設ける団体があります。

転勤や育児、療養などで一時的に関われない場合です。

会費を免除または減額して、籍を残します。

戻ってきやすい形を作ることが、目的です。

ただし、社員としての議決権をどう扱うかは要注意です。

休会中も社員のままなら、総会の招集通知は必要です。

定足数の計算にも、影響します。

議決権を持たない扱いにするなら、定款に明記します。

曖昧なままにすると、総会の決議が争われます。

会員名簿の閲覧を求められたら

会員から、名簿を見せてほしいと言われることがあります。

総会の招集を求める場面などで、起こります。

対応は、慎重に判断してください。

社員名簿は、備え置きの義務がある書類です。

一方、他人の個人情報を含んでいます。

定款や法令で、閲覧の範囲が決まっています。

求めがあった場合は、その根拠を確認しましょう。

目的を聞き、記録に残します。

一律に断るのも、無条件に渡すのも適切ではありません。

判断に迷う場合は、所轄庁に相談してください。

退会と除名のまとめ

社員は、いつでも退会できるのが原則です。

退会を不当に制限する定款の定めは、認められません。

会費の未納は、まず自動退会の定めで処理します。

除名は、定款に定めがあり、正当な理由がある場合に限られます。

本人に弁明の機会を与え、総会の議決によります。

手続きを欠くと、無効とされることがあります。

社員が10人を下回らないよう、名簿を正確に保ちましょう。

もめごとの多くは、日ごろの風通しで防げます。

入会にも不当な条件は付けられないため、手続きを定款に書いておきます。

休会の制度を設けるなら、議決権の扱いを定款に明記してください。

名簿は入退会のたびに直し、招集の通知が届く状態を保ちましょう。

よくある質問

Q. 社員は自由にやめられる?

A. やめられます。退会は自由が原則で、これを不当に制限する定款の定めは認められません。退会届の提出という手順を定める程度にとどめてください。

Q. 会費を払わない会員はどうする?

A. まず案内と督促を出し、記録を残します。定款に「一定期間納めないときは退会とみなす」という定めがあれば、それで処理します。いきなり除名とするのは重すぎる対応です。

Q. 除名はどうやって決める?

A. 定款に定めがあり、正当な理由がある場合に限られます。本人に弁明の機会を与えたうえで、総会の議決によります。理事会だけで決めることはできません。

Q. 意見が合わない会員を除名できる?

A. できません。意見が合わない、執行部を批判したといった理由は正当とはいえません。争いになれば、除名が無効とされることがあります。

Q. 社員が10人を下回ったら?

A. 設立の要件であり、社員の欠亡は解散の事由でもあります。新しい社員を迎える努力をしてください。賛助会員から正会員になってもらう方法もあります。

Q. 賛助会員も社員に数える?

A. 通常は数えません。NPO法上の社員とは総会で議決権を持つ人を指し、一般に正会員がこれにあたります。どの会員が社員かは定款で決まります。

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