NPO法人の運営では、定款のほかに規程を作ることがあります。
定款に細かいことを全部書くと、変更のたびに総会が必要になるためです。
どこまでを定款に書き、どこからを規程にするかが要点です。
この記事では、規程の作り方と運用を解説します。
なぜ規程が必要か
定款には、法律で書くべき事項が決まっています。
それ以外のことまで、すべて書く必要はありません。
むしろ、細かく書きすぎると運用が苦しくなります。
定款の変更には、総会の議決が必要だからです。
内容によっては、所轄庁の認証や届出も必要になります。
謝金の金額を少し変えるだけで、その手間がかかります。
そこで、変わりやすいことは規程に置きます。
規程なら、理事会の議決で改めることができます。
定款と規程の役割を分けることが、運営を軽くします。
定款と規程の関係
規程は、定款の下にある決まりです。
定款に反する規程は、効力を持ちません。
そのため、定款に委任の根拠を置いておきます。
詳細は理事会が別に定める、といった条文です。
この一文があるかどうかで、規程の位置づけが変わります。
委任の根拠がないまま作ると、扱いが不安定になります。
定款を作る段階で、この点を意識しておきましょう。
既存の定款に根拠がなければ、定款変更で追加します。
順番としては、定款が先で規程があとです。
| 決まりの種類 | 決める場所 | 変更の手間 |
|---|---|---|
| 定款 | 社員総会 | 議決+所轄庁の認証または届出 |
| 規程・規則 | 理事会(定款の委任による) | 理事会の議決のみ |
| 要領・マニュアル | 事務局 | 内部の決裁のみ |
| 個別の決定 | 理事会または事務局 | その都度 |
よく作られる規程
第一が、経理規程です。
お金の流れと、決裁の手順を定めます。
第二が、旅費規程です。
交通費や宿泊費の基準を決めておきます。
第三が、謝金の規程です。
講師や協力者への支払いの基準です。
第四が、就業規則です。
職員を雇う場合に必要になります。
第五が、個人情報の取扱規程です。
第六が、慶弔や災害見舞いの規程です。
団体の規模に応じて、必要なものから作ります。
最初に作るなら経理規程
規程をひとつだけ作るなら、経理規程です。
お金にまつわる争いが、いちばん起きやすいためです。
誰がいくらまで決裁できるかを、金額で定めます。
現金と預金の管理を、誰が行うかも決めます。
出納の担当と、承認する人を分けることが基本です。
一人が両方を行う状態は、避けたいところです。
小さな団体では難しい場合もあります。
その場合は、監事の確認の頻度を上げましょう。
規程に書いておけば、担当が代わっても続きます。
就業規則は法律の話になる
職員を雇う場合、就業規則が問題になります。
常時10人以上の労働者を使用する場合は、作成と届出の義務があります。
10人未満でも、作っておいたほうが安全です。
労働時間、休日、賃金、退職などを定めます。
内容が労働基準法に反していれば、その部分は無効です。
ひな形をそのまま使うと、実態と合わないことがあります。
ボランティアと職員の区別も、はっきりさせておきましょう。
雇用や社会保険の手続きは、社会保険労務士の業務範囲です。
判断に迷う点は、専門家に相談してください。
- 定款に委任の根拠があるかを確認する
- 他団体の例を集めて、たたき台を作る
- 実際の運用に合っているかを確かめる
- 理事会で議論し、修正する
- 理事会の議決で制定する
- 議事録に制定の事実を残す
- 施行日を明記する
- 関係者に配り、いつでも見られる場所に置く
実態に合わない規程は害になる
規程は、立派に作れば良いというものではありません。
守れない規程は、かえって害になります。
規程に反した運営をしている状態が、常態化するためです。
そうなると、規程自体が軽く扱われます。
たとえば、決裁の金額を低く設定しすぎた場合です。
毎回の少額の支出で理事長の承認が要ることになります。
結果として、誰も守らなくなります。
実際に回る水準で作ることが、いちばん大切です。
運用してみて合わなければ、理事会で直しましょう。
規程の書き方の基本
第1条に、目的を書きます。
何のための規程かを、一文で示します。
次に、適用の範囲を書きます。
誰に適用されるのかを、はっきりさせます。
本文は、条ごとに一つのことを書きます。
一つの条に複数の内容を詰め込むと、読みにくくなります。
数字は、できるだけ表にまとめます。
最後に、附則として施行日を書きます。
改正したときは、改正日も附則に追記します。
改正の履歴が分かる形にしておきましょう。
規程を作りすぎない
規程は、多ければ良いものではありません。
使われない規程は、管理の負担になるだけです。
小さな団体で、10も20も作る必要はありません。
まずは経理規程だけ、という団体も多くあります。
必要が生じたときに、追加していけば十分です。
実際に起きた困りごとから作るのが、いちばん実用的です。
謝金の額でもめたなら、謝金の規程を作ります。
想像で作った規程は、たいてい実態と合いません。
運営しながら、必要なものを見極めましょう。
規程の保管と周知
作った規程は、誰でも見られる状態にします。
事務所のファイルにまとめておくのが基本です。
電子ファイルも、共有の場所に置きましょう。
最新版がどれか分からない状態は、避けたいところです。
ファイル名に、改正日を入れておくと分かりやすくなります。
役員が代わったときは、規程一式を渡します。
新しい職員にも、着任時に説明しましょう。
存在を知られていない規程は、ないのと同じです。
年に一度、見直す機会を作るのもよい方法です。
定款に書くべきことを規程に落とさない
注意したいのが、逆の失敗です。
定款に書くべきことを、規程で済ませてしまう場合です。
法律で定款の記載事項とされているものは、規程では代えられません。
目的、名称、事務所、事業、社員に関する事項などです。
役員に関する事項や、総会に関する事項も同様です。
これらを規程に書いても、定款が優先されます。
定款の記載事項は、法律で決まっています。
迷ったら、定款の記載事項の一覧を確認してください。
規程は、あくまで補うためのものです。
規程は誰のために作るか
規程を作る目的は、団体を縛ることではありません。
担当者が迷わずに動けるようにするためです。
前例が分からないとき、規程があれば判断できます。
人が代わっても、同じやり方が続きます。
属人化を防ぐという意味では、引き継ぎ書に近いものです。
同時に、担当者を守る役割もあります。
規程に沿って処理したと言えれば、個人の判断が問われません。
規程がないまま金額を決めれば、あとで不公平だと言われます。
基準があること自体が、団体の信用につながります。
謝金と交通費の基準
実務でいちばん困るのが、謝金と交通費です。
相手によって金額が違うと、必ず不満が出ます。
そこで、基準を決めておきます。
講演の時間や、役割に応じた区分を作りましょう。
交通費は、実費とするか定額とするかを決めます。
実費なら、領収書の提出を求めることになります。
定額なら、区間ごとの金額表を作っておきます。
遠方からの依頼で、宿泊が必要な場合の扱いも決めます。
基準を先に示せば、依頼のときの説明が楽になります。
例外を認める場合の手順も、書いておくと安心です。
個人情報の取扱規程
会員名簿や寄付者名簿を持つ以上、個人情報の管理は避けられません。
取扱規程を作っておくと、判断の基準ができます。
取得するときの目的を、どう伝えるかを決めます。
保管の方法と、アクセスできる人の範囲を決めます。
外部に提供する場合の手順も、書いておきます。
不要になった情報を、いつ消すかも重要です。
事故が起きたときの連絡の手順も、あらかじめ決めます。
ボランティアにも、守秘の約束をしてもらいましょう。
紙の名簿を持ち歩く場面が、いちばん危険です。
総会と理事会のどちらで決めるか
規程を作るとき、決める場所を間違えないことが大切です。
定款で理事会に委任していれば、理事会で決められます。
委任がなければ、総会で決めることになります。
総会は年に1回しか開かない団体が、ほとんどです。
そのたびに待っていては、実務が止まります。
だからこそ、定款の段階で委任を入れておきます。
ただし、役員の報酬に関する事項は扱いが異なります。
定款や総会の決議で定めるのが通例です。
迷ったら、定款の条文を先に読み直してください。
決める場所を誤ると、あとで効力が問題になります。
作った規程を実際に使う
規程は、作った時点では紙にすぎません。
実際の場面で参照されて、はじめて機能します。
理事会で判断に迷ったら、規程を開く習慣を作りましょう。
規程に書いていなければ、そこが不足している点です。
その場で決めたことを、次の改正に反映します。
この繰り返しで、規程は実態に近づいていきます。
年に一度、見直しの議題を理事会に置くのが有効です。
使われていない規程は、廃止してもかまいません。
数を減らすことも、立派な整備です。
規程の作り方のまとめ
変わりやすいことは、定款ではなく規程に置きます。
規程は理事会の議決で改められるため、運営が軽くなります。
ただし定款に反する規程は無効です。
定款に委任の根拠を置いてから、規程を作りましょう。
最初に作るなら、経理規程です。
実態に合わない規程は、守られず害になります。
実際に回る水準で作り、必要が生じたら追加してください。
雇用に関する部分は、社会保険労務士の業務範囲です。
謝金と交通費の基準を先に決めておくと、依頼の説明が楽になります。
個人情報の取扱規程も、名簿を持つ以上は避けて通れません。
年に一度、理事会に見直しの議題を置くのが有効です。
使われていない規程は、廃止して数を減らしてかまいません。
規程は団体を縛るものではなく、担当者を守るためのものです。
よくある質問
A. 法律上、すべてを義務づけられているわけではありません。ただし常時10人以上の労働者を使用する場合の就業規則など、義務があるものもあります。
A. 定款で理事会に委任していれば、理事会の議決で制定できます。委任の根拠がないまま作ると、位置づけが不安定になります。
A. 定款です。定款に反する規程は効力を持ちません。法律で定款の記載事項とされているものも、規程では代えられません。
A. 経理規程です。お金にまつわる争いがいちばん起きやすいためです。誰がいくらまで決裁できるかを金額で定めてください。
A. 理事会の議決で改正します。守れない規程は、規程自体が軽く扱われる原因になります。実際に回る水準に直してください。
A. たたき台は作れますが、内容が労働基準法に反していればその部分は無効です。雇用や社会保険の手続きは社会保険労務士の業務範囲なので、相談してください。
本記事は、制度を一般的に説明したものです。個別の事案についての判断や手続きの代行を行うものではありません。
- 社会保険・労働保険の加入手続きは、社会保険労務士が取り扱う業務です。
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